「……あれ?何してるんですか?」
「お?ハイドいいとこに来たな、今焼き芋してんだよ焼き芋」
こんにちわ、ハイドです。今はテンペストで作ってる畑の採集を行っています。そんな中でリムルさんが何かをしているのを発見。近寄ってみるとゴブタ君とミリム様、シュナさんに俺の生徒の1人であるコゴブちゃんを発見。落ち葉を集めたところから煙が上がっており、確かにリムルさんの言う通り焼き芋をしているようだ。
「折角取れたしな」
「まぁ楽しむのは必要ですよね」
「やっきいも!やっきいも!」
ゴブタ君とミリム様、コゴブちゃんが揃って機嫌が良さそうだ。まぁ焼いただけの芋なのに滅茶苦茶美味しいしね、焼き芋。
「ほう、お前は焼き芋の味を知っておるのか?」
「知ってというか…知らないんですか?」
そう言えばミリム様って食事の必要あるのか?見た感じ人にしか見えないし、必要っちゃ必要なんだろうけど…種族によっては食事の必要性がないと先生が言ってた気がする。
《この世界では進化していくと寿命が伸びていくと同時に、生殖や食事を段々と必要としなくなっていきます。それでも行う個体はいるものの、大体は進化前の名残が残っていたり…というのが基本的です》
なるほど……あれ?ミリム様が必要かどうかの答え出てなくない?結局必要とはしてないってこと?
《………》
え、なんで無言?いや、でもよく考えたら唯一の
《それでお願いしま……それです》
今なんか口滑らせかけた気がするけど…まぁいいや、焼き芋がそろそろ出来る頃だろう。なんて思ってたら、リムルさんが落ち葉の中をゴソゴソと枝で掻き分けていた。
「リムルさん手突っ込んだ方が早くないですか?」
「火傷す……いや熱変動耐性あったな俺…いやほらあれだ!普段から気をつけてやっとかないと周りの子供が真似しちゃうからな!」
「なるほど…それは確かに」
確かに不用意なことしたらみんなが真似しちゃうかもしれないよな。言われてみればその通りだ。なんか目の前でリムルさんが『よし!上手くごまかせたな!』って顔してるけど……まぁ誤魔化されたってことにしておこう。実際その通りだし。
「というわけで…ほい、焼き芋」
「あ、頂きます………なんか1名、一心不乱に食ってますけど」
チラリと目線をずらすと、そこには既にすごい勢いで食ってるミリム様がいた。いやえぐい、普段からどれだけ食事に飢えてたんだ。
「美味ーっ!!!?どうしたらこんなに美味くなるのだ!?」
「どうしたらって…焼き芋なので、そのまま焼いただけですよ…もう一本食べます?」
「食べるのだ!!!!はぐはぐはぐはぐはぐ…!あ、あんな硬くて土臭いものがこんなにも甘くてほくほくに…!!」
聞いてて悲しくなってくる…土臭いってことは下手したら水洗いとかも不十分だったのだろうか。だとしてもだろう…えっと、なんだっけ先生?
《彼女の配下…というよりも信徒、というほうが正しいのかもしれませんが…質素な食事が主になっています。野菜や果物は生で、肉や魚は焼いて…というのが基本です。因みに調味料という概念はありません》
………なんて?
《調味料がないんです、概念ごと》
まじかよ…別に複雑な味にしろという訳じゃない…塩振って魚焼くことすらしないということなのか……いや、まぁ…食べれない訳じゃないけど…下味って大事だと思うんだけどなぁ…
「お前ほんとどんな食生活してたんだ……」
「きっと愛の無い環境で育ったんですね……わかります…」
「愛…確かに感じられませんね……」
あったとしても滅茶苦茶に歪んだ愛だろう。蜂蜜とかで喜ぶ子供舌に生野菜や下味なしの焼肉焼き魚はきついだろう。ただミリム様はこれでなんだかんだ空気が読めたりする方なので、言い出さないのかもしれない。
「後で宴だな〜こりゃ」
「いいですね、収穫祭」
「あらまぁ!ならみんなで腕によりをかけないといけませんね!」
随分と楽しそうだなシュナさん…たまに思うが、この人は人の世話を焼いたり家事をしたりするのがめっぽう好きなのだろうか。お母さん気質というか…そんな気配がする。
「おや、ハイドさん…今なにか?」
「いえ、何も」
おかしい、心を読まれた?いや読まれたところで特に変なことは考えてないはずだが……
「……あ、向こうでトレイニーさんがじゃがいも担いでますよ」
「あ、ほんとだ…おーいトレイニーさーん!」
ふと目を逸らした先にトレイニーさんを発見。リムルさんは即座にそっちへと向かった………あれ、というか今トレイニーさん今じゃがいも入った籠持っていこうとしてなかった?なんで?
「………まぁ、いいか……にしても大豊作でしたね」
「そうですねぇ…ミリム様も大満足されてますし」
「ここは食事が美味しくて楽しいのだ〜……」
幸せそうな顔をしている…見てるとなんか悲しくなってくるな。焼き芋すら今まで楽しんだことがないのは、もはや不憫の枠なのではないだろうか。
……焼くといえば、キノコも幾らか取れてたな。と思った矢先、挨拶が終わったのかリムルさんが帰ってきていた。丁度いい、聞きたいことができたところである。
「リムルさん、そう言えば納豆の為に大豆植えてませんでした?」
「ん?実際今回収穫できたしな……なんで?」
「いや…醤油が欲しいなって……」
チラリと目線を取れたキノコに移す。椎茸ももちろんだが、松茸とかも取れている。『よく見かけるしあんま美味しくない』って言われてたけど…焼けばいい匂いするし美味しい!!筈…
「…後で俺らで七輪できのこ焼くか」
「……そうしましょう」
「なんだ?何の話なのだ?」
おやミリム様が興味を持たれている。この人にはぜひ美味しいご飯をいっぱい食べて欲しいところではあるので、誘ってみてもいいかもしれない。
「いえ、美味しい美味しいご飯の話を」
「む?なんだお前ら、キノコを食べるのか?」
俺達の目線に気づいたのか、ミリム様は鋭い推理を炸裂させていた。俺とリムルさんは目を合わせる。そこには一切のスキルの関与しない、目を合わせただけで意思の通じる感覚があった。
「焼いただけの料理は肉やさつまいもだけじゃないってこと…!」
「教えてあげましょうか…!」
「?????」
『なにいってんだこいつら』みたいに見られている。いや、もう見られてても構わない。美味しい料理を適宜出してあげてこの人を笑顔にするんだ、そしてテンペストにずっぷり沼らせてあげるんだ。
「ところでハイドって料理できるの?」
「知識と記憶はありますよ……リムルさんは?」
「勿論俺だって………大賢者、いける?いける?よしっできるぞ?」
なんか今小声で聞こえてきたけど、聞かなかったことにしてあげよう。と思ってた矢先、リムルさんはふと何かを思いついた顔をしていた。俺達が料理をする以外に何かいい手を思いついたご様子。
「シュナー!ペコどこにいるー?!」
「あの子なら食堂の方にかかりきりだと思われますが…」
「おっけー!よーしミリム!美味いキノコ料理ご馳走してやる!ついでにハイドも着いてこい!ペコなら美味いものを出してくれるはずだ!!」
「あー、ペコ君…」
ペコ君…リムルさんのお抱え料理人という立場である。ユニークスキル『
「ほう!それは楽しみなのだ!」
「まぁ俺もご相伴にあずかりますよ」
とは言っても、子供達がきっちりいるか確認してからになるだろう。俺は子供達を預かる重要な仕事に着いているのだ。
「……あ、そう言えばリムルさん」
「ん?どうした?」
「前に言ってたテンペスト新住人や商人に対するセミナーの件、何とかできそうですよ。子供達もベスターさんが授業受け持ったりしてくれますしね」
「お、そりゃあよかった。にしてもベスターと仲良くなったよなぁお前も」
ベスター…ドワーフ王国の貴族さん。実を言うとテンペストがテンペストになった次の日に、ガゼル王が拉致…ではなくここに連れてきた人材である。リムルさんが言うのはプライドの高い小悪党という感じだったらしいが、正直信用ができない。だってめちゃくちゃ腰の低い人って言う認識しかないんだもの。
「まぁ研究してる内容とか興味深いですしね…ついでに俺も色々学ぶことがありますし」
「勉強熱心だなぁお前もベスターも…研究者肌なのかもな」
研究者か…まぁテンペストがもっと大きくなって、教師がいっぱい増えたらそっちに鞍替えするのもありかもしれないな。
「ま!今はともかく飯だ飯!美味いの作らせるぞ〜!」
「リムルさんいつかペコ君にブチギレられますよ…?」
お抱えというのもあり、かなり無茶ぶりしているという噂がある。この人いらんとこで調子乗ったりするから、自重して欲しいものだが…絶対酒の席で1回は痛い目を見てるタイプな気がする。
「……さて、俺もやることやっていくか」
子供達の送り迎え、それを終わらせて2人に合流するとしよう。そう考えた俺は、子供達の点呼を取って帰らせた後…2人と1緒にペコ君の料理に舌鼓をうつのであった。
因みにその時食べたキノコ料理は…俺を含めた3人に、絶賛されるほどの美味なのであった。