こんにちは、ハイドです。
最近寒くなってきました。テンペストは新国家、出来たてホヤホヤの国で尚且つ国が森になっているのもあり、木造建築やその他諸々が非常に多くあります。つまりはとても燃えやすい国ということです。そのため最近は火の用心キャンペーンなどをやっており、そのイメージキャラクターとしてベニマルさんが選ばれ………なんか違くない?となっています。
《木造は燃えやすいので、消火活動を円滑にするためには周りの燃えやすいものを離したり壊したりすると被害が少ないのだとか》
という先生の有難い知識も教えてもらったところで、本日の本題です。本日は寺子屋は午前授業、午後からは自由時間ということでゴブタ君の部隊と共に森の警護に回っています。
「……ハイドさん動くの早くないっすか?」
「そうかな?」
「いやオイラ達は分かるっすよ?乗っけて貰ってるっすし」
テンペストウルフに乗っかってるから早い、なるほどそうだね。そりゃゴブタ君達が走るよりも遥かに早いよね。歩幅とか単純な移動速度とか諸々。
「なんでハイドさん素でオイラ達に追いついてるんすか」
「いや最近気づいたんだけどさ、走るよりスイングした方が早いんだよね」
「あぁ、なんかさっき『あ〜ああ〜』とか言ってたのそれっすか…?」
そう…粘糸を腕から出して自分より高い位置の枝に引っ掛けたり、正面の木に付けて引っ張ったりして速度を上げれるのだ。もうちょっと訓練したら、もっと早くなれるだろう。ついでと言わんばかりに翼っぽいのも生やして滑空してるし。分かりやすくいえば羽の生えた某蜘蛛男だ。東を映す方じゃない方ね、本場の方。でもターザンはターザンでしたいよね。
「そうそう……にしてもここら辺も寒くなったもんだねぇ」
「まだ問題は無さそうっすけど、雪降り始めると面倒っすよ〜?獣は冬眠してくるやついるし、果物とか野菜とか取りづらくなるんすから」
「だよね〜この間の収穫で取れるだけ取れてよかったよほんと」
はっきり言えば…食べ物は一応俺の力で作り出せる。魔素を消費すれば問題ない、効率面度外視すれば…の話だが。チマチマ作ったりして練度は上げて効率面はよくしてるが…それでもまだ燃費が悪い。足の伸ばせるくらいの風呂1杯分使ってリンゴ1個とかなのだ。そのくらいの燃費の悪さだ。
「いい感じの奴いないっすかね〜……」
「例えば?」
「
「へー…」
蜘蛛な気がするが……昆虫食と言うやつだろうか?いや、蜘蛛は昆虫じゃないって話だから厳密には違うんだろうけど…どんな味がするのかわかる?先生。
《蟹です》
即答である。なるほど蟹、陸の蟹か。ならあんまり気にしなくても良さそうだ。見た目が蜘蛛蜘蛛してたら忌避感を覚える人とかいそうだけど…ゴブタ君はあんまり気にしなさそうである。と、ここで何やら違和感。
「ん…?」
「どうしたっすかー?」
「なんか向こうの方騒がしくない?」
「んん…?向こうは今言ってた奴の巣があるはずっすけど…危険地帯とか入り込まないようにつって、リムル様から見回りする時は毎度毎度見るに言われてやってるから覚えてるっすよ」
ナイトスパイダーの巣…なるほど、確かにかなり危険だ。うっかり素を触ろうものなら、ナイトスパイダーの餌食になってしまうのだから。
「まぁ巣は分かりやすいから、見た時にわざわざ触る奴なんて居ないっすけどね〜!」
「だよね〜!」
二人でアッハッハと笑う。うん……しばらく笑ってから、俺達は改めて耳を澄ませる。今度はよりいっそう大きい音で聞こえてくる。うん、どう考えても巣を突っついたヤツいるな。
「行こっかゴブタ君」
「ッスね」
そうして俺達はナイトスパイダーを対峙するために移動するのであった。
,
「ゴブタ君達は影移動お願い、俺は先出るよ」
「了解っす!!」
しばらく移動して、ナイトスパイダーを捉えた俺達。そこには結構な人数の人間がいた…何でこんなとこにいるのかは分からない。冒険者っぽいので、単に森の魔物狩りだろうか?だとしたら不用心極まりないだろう……なんて言ってたら、その中の1人の剣が折れていた。闘気を使い、一気に加速をかけてその折れた当人とナイトスパイダーの間に入って攻撃を弾いて防ぐ。
「大丈夫ですか?」
「お、おう……」
「っと、足に糸引っ掛けて……エンヤコラー!!!」
前…じゃない、後ろ…でも無い…横足?に糸を引っ掛けて思いっきり引っ張る。これまた闘気を込めて思いっきり引っ張ったお陰か、ナイトスパイダーはバランスを崩してひっくり返ってしまう。
「皆!!」
「行くっすよー!!」
と言いながらスパスパ足を切り落としていくゴブタ君。なんと鋭い太刀捌きだろう。きっと業物に違いない……いやまぁゴブタ君握ってるのは小太刀なんだけどさ。
「良い奴貰ったねーゴブタ君!」
「クロベエさんの小太刀さすがっすよ〜!さぁて、とっとと仕留めて今日の晩御飯っすよー!!」
「鍋にしよう鍋!!」
なんでかと言われると、思ってたよりナイトスパイダーが蟹だったので。寒くなってきたしカニ鍋にしたくなってしまったのだ……と、忘れてた。結局この人達何?
「……で、えっと…貴方達は何をしにこの森に?」
「………私はブルムンド王国の
「なるほど」
ちょっといかつい感じのおじさんことフューズさん。どうやらリムルさんに用事がある様子。詳しい事は、リムルさんのとこにまで案内してから話してもらうとしよう。
そして何やらソワソワしてる柄の悪そうな男性に目を向ける。
「お、おい…手伝わなくていいのかよ」
「あれくらいならゴブタ君達でいいからなぁ…それで、貴方は?」
「…あ?」
「来た理由、貴方は別にフューズさんとこの人じゃないでしょ?」
理由としてはこの短時間でもわかるくらいにはフューズさん達との距離感を感じたからだ。逆にフューズさんのとこにいる3人組は、俺の事指さして『新入りの人かな?』『強いっすね〜』『ほら見ろ巣をつついたから旦那の仲間の人と会えたんだ』って会話してる。あんたかナイトスパイダーの巣をつついたのは。
「あー……とりあえず案内してくれよ。内容はそこで話す。どーやら、なんか複雑な感じっぽいからな……」
「……なるほど」
この人粗雑なように見えて…結構慎重だ。どういう理由でここまで来たかは分からないけど、どうやらこの人もリムルさんが目的のようだ…一体なんだろうか。
「ところで名前は?」
「ヨウムだ、ファルムスの…まぁ傭兵団みたいなもんって思っててくれ…そこら辺も詳しいこと話すからよ」
「了解、とりあえず全員でナイトスパイダー運んじゃいましょうか」
ちょうどゴブダ君が討ち取っていたらしい。バラバラにされたナイトスパイダーが、こっちを見ていた。うーん、顔だけなら確かに蜘蛛だけど全体見るとほんとに蟹である。茹でる前の。
「……マジで倒したのかよ、うっそだろ……」
「なーべ!なーべ!あ!ハイドさん話終わったっすか〜?」
「うん、どうやらリムルさんに用事があるみたいだから、ゴブタ君達、先戻っててもらっていい?これ運ぶのに荷台もいるし、それついでにリムルさんに客が来たって言っといて欲しいんだよ」
「了解っす、ついでに運べる人も連れてくるっすね〜」
「お願いね〜」
そう言ってゴブタ君達は影の中へと消えていく。うーん、やはり便利だ影移動。まぁ俺も使えるんだけどね、ゴブタ君程の練度があるかと言われると怪しいところである……って、やべ。ゴブタ君に誰が来たのかとかどんな理由で来たのかとか言って貰えたら楽だったなこれ。
「……で?俺らはこのまま待ちぼうけか?」
「まぁ他のが寄ってきたら倒せばいいだけなんで待ちぼうけでもいいですかね……」
「……鍋とか言ってたけど…食うのか?これ」
あぁ、こういうのって慣れてないと食べるのきついか流石に…しかも人間だもんなこの人ら…普段食わないだろうしこういうの。
「食べますね」
「………そうか…」
何故か今生の別れかのごとく天を見上げるヨウムさん。別に食っても死にはしないのに。まぁ食わなきゃわかんないか。なんかフューズさんの方から『肉ないの?』『肉食べたいね』『肉鍋したいでやんすねぇ』とか聞こえてくる。あの3人マイペースすぎんか。
「……あ、迎えきましたね」
人手がどうやらテンペストから来たようで、案内するついでにナイトスパイダーを荷車に乗せていく。パーツ一個一個載せては縛っていくその様子を、客人全員が黙って見守っていた。
《おいハイド》
あれ、リムルさんから思念伝達が来た。なんだろう、なんかあったんだろうか。いやあったわ。多分ゴブタ君が喋った客人の内容の話だろう。
《客が来たけどどんな理由かも誰が来たかもわかんね、ってゴブタが言ってたぞ》
どうやらそうだったようだ。
《まぁ本人達が事情もまとめて説明する、って言ってるんで…なんか2グループ来てますけど、どっちもリムルさん目当てらしいですよ?モテますね、まぁどっちも男ですけど》
《気色悪いこと言わないで貰えると助かるんだけどなぁ!で?誰が来たかくらいは聞いてるんだろ?》
《ファルムスの傭兵団、ってのと…ギルマスって人が来てます。ギルマスの人の傍にリムルさんの事旦那って呼ぶ金髪青鎧、茶色のプレート付けた短剣使い、あと魔法使いの金髪の女性がいますけど知り合いですか?》
《エレン達だな、俺の友達だよ。わかった、じゃあそのまま案内してくれ。捕まえたナイトスパイダーはシュナ主導で調理してもらえるからさ》
《OKです》
そうして思念伝達を切る俺。さて…この2グループが一体なんの用事で来たのか…色々波乱が巻き起こってそうな気がするが、なるようになれ…という事だろうか。
そんなことを考えながら、俺達はテンペストへと戻っていくのであった。