「……で、えーっと…フューズさん。でしたっけ?俺に用事があるらしいですが…なんの用で?」
こんにちわ、ハイドです。本日は人間のお客さんがいっぱいきました。なんでもリムルさんが目当てだとか?モテモテですね、まぁ見た目女の子だから当たり前だよね。って話をしたらほんとにキレられるのでやめときます。
「今から十月程前になりますが…森の調査を開始したこいつらから報告を受けました。まずはギルドの英雄を丁重に弔っていただいた事に感謝を。お礼が遅くなり申し訳ない」
そう言って軽く頭を下げるフューズさん。こいつら、と呼ばれた3人組…カバルさん、エレンさん、ギドさん。その3人は今なんか凄い一心不乱にポテチを食べてた。美味しいよね、秋の新作。食いすぎじゃない?
「ご丁寧にどうも、けどただそれだけの為に来たわけじゃないでしょう?」
「えぇ…数ヶ月前のことです。ブルムンド王国の
そう言って、ソウエイさんに視線を向けるフューズさん。あぁ、まぁソウエイさんなら有り得るか。
「その時に━━━」
「『悪い悪い、言うの忘れてたわ。オークロードの件は片付いた』…と言いました」
この場の全員が笑うのによく耐えたと思う。この人モノマネめっちゃ上手いもん。俺も今先生が表情筋操作してなかったら笑い転げてた自信ある。
「…まぁ、その際に色々と聞かせてもらいましたが…オークロードはたしかにもう居ない。けれど討伐をなし得たのがまた別の魔物だとすると、我々人間としては驚異が去ったとは言いづらいのです」
「…なるほど、ドワーフ王が来たのと同じ理由か」
「ドワーフ王…?来たのですか?」
「あぁ、ガゼル王が俺を見極めるとか言ってな……で、ウチとドワルゴンで盟約を結んだんだ」
「は…盟約…!?」
まぁ、そうなるよな。要はこの国を認めたって話なんだから。一国の、それも力のある国が…聞いてる感じ、ブルムンド王国はドワーフ王国と比べて国力が弱いらしいし。
《ドワーフ王が決めたのなら、基本的には他の国も従うでしょう。それくらいの強さがドワーフ王国にはあります》
「━━━失礼します、リムル様例の回復薬の売り方の件ですが…あ、失礼来客中でしたか」
「あ、ベスターさん」
「皆さんお揃いで…後ほどまた失礼します」
「悪いな、ベスター」
そう言ってベスターさんは1度離れる。この人昔ものすごい悪っぽい大臣だったって聞いてるけど、全然そんなふうに思えないよなぁ。物腰柔らかで。
「ベスター……?ドワーフの…ベスター……ドワルゴンの大臣のあのベスター殿か!!!?」
「そうだよ、元大臣だけどな。今ではカイジンと双璧をなすウチの優秀な研究者兼科学者だ」
「この間フルポーション完成させてましたもんね」
「おう、ほんと凄……フューズ君固まっちゃったな…頭の中で処理させておこう。その間に……そっちの兄ちゃん達は何しに来たんだ?君らはブルムンドからの使者じゃないって聞いてるが」
「僕達は━━━」
「その前に聞かせてくれ……何でスライムが喋ってんだよ」
ヨウムさんツッコミおっそいなぁ。いや気持ちはわかるよ?なんで?どうやってって普通に思うよね。でもそれ話さえぎって聞くにしても初手でやるべき事だよ。今じゃない。
「……いやでもその体でどうやって発声してるんです?」
「え、お前も?」
「だよなぁ!?おかしいよなぁ!!?なんで誰も突っ込まないんだよ!!スライムだぞ!!?後ろの強そうな奴ら差し置いてなんでこんなぷるっぷるなのが偉そうにしてんだよ!」
「ごもっとも…」
「強さならミリム様が凄まじいですもんね」
「うむ!!!!けど私とリムルはマブダチだからな!わーはっはっ!!」
「貴様、リムル様に失礼ですよ!」
「うるさい黙ってろおっぱい!!」
すごい音がなった。でも死んでないから手加減はきちんとしている。うん、流石だシオンさんは。秘書らしい…秘書に手加減できるほどの実力いる?
《弱肉強食の魔物の世界で秘書をやるなら実力は必要では?》
なるほど確かに。
「あ、つい……」
「ついじゃねーよ……ったく…すまんなウチの秘書が。ちょっと我慢が足りないところがあるんだ。でもセクハラはいかんよ」
「一本角は短気なのだ!わはははは!!」
「シオンです」
「そうそれ!」
いつものやりとりを終わらせつつ、リムルさんはヨウムさんに回復薬で治療を施していた。そして、ヨウムさんの代わりに仲間のロンメルさんが説明を始める。
「私達はファルムス王国の調査団です。彼は団長のヨウム、私はお目付け役のロンメルといいます。こちらにお邪魔したのは成り行きですが…調査対象のオークロードがいないのは幸いでした」
調査団?確かオークロードって滅茶苦茶強いんじゃなかったっけ?
《単一個体としても強力なのはそうですが、1番脅威なのはオークロードの配下達でした。仲間の死をもろともせず、相手や周りを喰らいながら軍団ごと成長していく万を超える軍勢…彼らが通った後にはぺんぺん草も生えないという有様です》
ぺんぺん草って今日日聞かないなぁ…なんて事はともかく、その調査団にしては…人数も兵装も、なんなら見た感じ実力だって無さそうだ。
「凡そ今ので察していただいたとは思いますが…目に見えて危険な調査ですのに、領主が強欲であるためにまともな装備が用意されず……」
「……よく、逃げ出さなかったものだな」
ベニマルさんが、ポツリと呟いた。俺が直接見て感じた訳じゃないけど、恐らくヨウムさん達より進化前のベニマルさん達の方が遥かに強いだろう。ただでさえ、オークロードとは因縁があるって聞いてるし…ベニマルさんにも思うところはあるのだろう。
「逃げ出さないために私が同行しているのです、契約魔法という魔法で強制的に逃げられないように縛るという術ですが………」
えぐいな、じゃあ逃げ出さなかったってより逃げ出せなかったって方が正しいのか。あれ、でもお目付け役とはいえそれならかけるだけかけてから離れてたらよかったんじゃ……
「まぁその魔法は領主から離れた時に解かせて貰ったんすけどね」
「「「へ?」」」
全員が声を合わせた。当たり前だ。強制的に働かせてる〜って思えば、そうならないようにしていた、という話になっている。何事?
「あ、あの…貴方はお目付け役、では…?」
「それやって大丈夫なんです…?」
シュナさんが困惑していたが、俺だって同じだ。というか全員困惑してる。この人今『領主裏切りました』って報告したんだよ?いやそれをこっちから言う必要も理由もないけどさ。
「えぇ、まぁお目付け役だったんですが…今はこのヨウムについて行くと決めたんです」
あぁ、これはあれだ。『ガラが悪いけど性格はいい人なのでその心意気に惚れた』ってパターンだ。憧れの的である。まぁ確かにちょっといいよねヨウムさん。すんごいガラ悪いけど。あと言葉遣いも。だって、そんな魔法がないってことは━━━
「なぁ、どうして逃げなかったんだ?危険な調査に安い装備、領主の金払いも良くなさそうだけど?」
「んなこたァわかってるよ、オークロードがまじでいてよ。それが街に近づいてるってのも確かなら…ちゃんと確認して、ちゃんとした情報教えてやらねぇと街の奴らが危ねぇじゃねぇか」
……ほら、この人いい人だ。自分の身より、他人を案じれるタイプの人。だから自分から、自分の意思でここにいるんだ。
「あの町にぁ説教くせぇジジイ、酒場のお節介なババア…後をついてまわるうぜぇガキ共だっているんだ。んな奴らが死んだら、目覚めが悪りぃってだけだ…勘違いすんな」
「めちゃくちゃ人格者じゃないですかヨウムさんって」
「うるせぇ……まぁ、あのタヌキ伯爵が困る姿は見たいがな……ロンメルから聞いた話じゃ、国からの防衛費の援助金すら懐に入れてたんだぞあいつ」
「うわぁ…安全より財布って……」
「リムル様ならそんなことは絶対にいたしません!」
普通に悪どいな。そりゃ回せる費用が無いわけだ。そんで無いところでオークロードの噂。そら焦るわけだ。
「そもそもだな、危険極まりない調査にこんな小僧使うか?もっと熟練の魔法使いの一人や二人抱えてんだろうが」
確かに……体良く死ねば『私の傭兵団が〜』みたいなノリになっときゃ責任の追求されづらいだろうしな。そう考えると、リムルさんが先に倒しといてよかった…って話なんだが。
「そういやカバル達を助けてくれたらしいな、ありがと」
「いや、俺は何も……そいつと、その仲間がいなけりゃ危なかった」
「あぁこりゃどうもご丁寧に」
「…………」
倒したのゴブタ君達なんだけどね、俺は足引っ掛けて転がしただけだし。なんて思っていたのだが…急にリムルさんが黙り込んでしまった。この感じ、アレだな。良くないことを考えてるリムルさんだ。そしてなんでこの人リボン巻かれてるんだ?いつ巻かれた?もしかしてミリム様か?
「リムル様?」
「何か企んでおられるな」
「ふふ、そうですね」
「ちょっといいかフューズさんとやら」
「はっ、はい?」
「オークロードが倒されたという情報は既に出回っているのか?」
「あ、いや…その情報を知っているのは俺とそこの3人です」
そこの3人こと、エレン、ギド、カバルの3人はポテチを食い尽くしていた。話聞いてないでずっとポテチ食ってたもんな!美味しいけどさ、秋の新味。
「知らせたのは1部の大臣…それに、ブルムンド国王だけです。一般に発表はされていません。確かな情報を得る前に発表しては混乱を招きますので……」
「なるほど、ならば好都合だな………よし、決めたぞヨウム君」
「あ?なんだよ」
「君、英雄になる気は無いか?」
この一言が、割と俺達にも多大なる影響を及ぼす事になるのだが…そんなのは、まだ誰も知らない話なのであった。