こんにちわ、ハイドです。ジュラの森の魔物の国で先生をやることになりました。朝から子供達のお勉強、昼にご飯を食べて午後にさようなら。そこから戦闘訓練に入って夕方に解散。夜には家に帰って寝る生活を心掛けています。因みに学習者さんが俺の意識のオンオフを司ってくれてるので寝る時も起きる時も一瞬です、凄いね。
そんな生活を続けて5日ほど。つまるところ俺がこの街で目が覚めてから1週間程経過したある日の事、この街の盟主リムルさんからのお声がけがありました。
「今日休みだろ?戦闘訓練俺も行くよ」
「はぁ……まぁゴブタ君も喜ぶんじゃないですかね」
今日は寺子屋の先生はおやすみ……というよりも、リムルさんが人の休みと子供の情操教育に力を入れているのだ。所謂ホワイトな職場&健全な学校生活というものだろうか。
「ゴブタがぁ…?あー、人数増えるからな……」
「いっつもボコボコにされてるんですよね、ゴブタ君」
まぁ多少の怪我に関してはリムルさんの作る回復薬で治るんだけどね。痛いもんは痛いのだ。俺には痛覚無効があるのでさらっとそれを使ってるけど。
「そういや戦闘訓練の時って得物何使ってるんだ?」
「木刀借りてますねぇ、まぁ別に得物に得意不得意ないんですけどね」
「……そういやそうだったな、なんだっけ?お前めっちゃユニークスキル持ってるもんな」
「3つ!3つですから!」
「俺はそんなに持ててないんだけどなぁ!」
凄く嫌味ったらしく言われてしまった。
ちなみに今話題に出てるユニークスキル…つまるところ3つ目。
「まぁいいや、さっさと戦闘訓練しに行こうぜ〜」
「はい……ところであの…」
「何?」
「影からフリスビー見えてるのは一体…?」
影の中にランガさんがいるのは知っている。だがそのランガさんが少し物悲しそうにフリスビーを見せてきているのだ。突っ込むほどのことでもないと思ったが、ちょっと気になったので……
「…さっきまでその…あそ…いや、飛んでいる獲物を捕まえるという特訓をだな…」
この人ランガさんでフリスビー投げしてたの?いやまぁランガさん思ってた倍犬だから仕方ない、のか…?なんて思ってたら…おや、何故か前からゴブタ君が歩いてきた。
「あれ、ゴブタ君今戦闘訓練の途中じゃないの?」
「げっハイドさん……リムル様も…!?」
「お前こんな所で何を」
「いやぁー!奇遇っすねー!リムル様こんな所でいるなんて珍しいじゃないっすか!!もしかしてリムル様今日休みっすか!?」
「え、あぁ……まぁそうなんだが手持ち無沙汰でな」
「せっかくの休み!楽しまないと損っすよ!折角だしここはオイラが案内するっす!ハイドさんもまだ街に詳しくないだろうから、大舟に乗ったつもりでいてほしいっすね!」
……誤魔化したな、ゴブタ君。もしかしてサボりなのだろうか?いや、まだ分からないな……とりあえずついて行こう。実際詳しくないから助かるのだ。
「どうすか!この辺の屋台美味いんすよねぇ!」
「おお、確かに」
「ゴブイチさんの肉串美味いよねぇ」
「向こうには土産物屋もあるっすよ」
魔物の国、と言われると人間は忌避するだろうが…旅の商人とかがたまに来る分には品質はかなりいいらしく、よく買っていくのを見かけている。
「おねーちゃんの店とかも欲しいっすね!!」
「おぉ!」
「………」
おねーちゃんの店、所謂美人とお酒飲んだりしたり、それ以上の事をするところというのが先生の談。しかし俺は思うのだ。リムルさんってそういう店に入っていいのかと。本人は一人称俺と言っているから精神的には男なのだろう……ところで先生。
《はい》
さっきサラッと俺が『それ以上』のところを考えようとした時思考にノイズ走ってなんも分からなかったんだけど、何するところかって考えるのくらいは良くないですか?俺見た目的にはうら若き少年ですよ?
《そんな事実はありません、それはそうと考えるのはダメです。責任が取れないうちからそのようなことを考えては、行為に及ぶ可能性があります》
さいですか……平行線になりそうだからその言葉を心に刻んでおくとして…それはそうとリムルさんは傍から見てたらうら若き美少女である。本人がどう言おうとも、その見た目はあまりにも美少女かつ未成年にしか見えないのだ。この人俺のことをマイペースだなんだと言うが、自分の見た目を客観視して欲しいものである。そんな店に入った頃にはあらぬ噂…いやその前にシュナさんとシオンさんにおしおきされそう…特にシュナさんは多分やばい、俺も逆らいたくない……とか考えてると、なにかに勘づいたのかゴブタ君が急に焦り始める
「━━━はっ!?この気配は…!やばいリグル隊長と師匠っす〜!!逃げるっすよォ!!!」
「え、ちょ、おい!?」
そして何の気配を感じとったのか、ゴブタ君はリムルさんの手を掴んでどこかへと連れ去ってしまった。その直後に、前の角からリグルさんとハクロウさんの2人が現れる。
「あ、ハイド殿…ゴブタを見かけませんでしたか?」
「あやつ、気がつけば抜け出してサボりをしているようでなぁ…この辺りから気配を感じたのじゃが…」
…ふむ。この場合は言うべきか言わないべきか。俺は元々戦闘訓練に参加するつもりだった。そしてリムルさんも暇潰しに参加するつもりだった様だが……ゴブタ君は嫌がってサボったようだ。しかしこのままサボりきると、余計に酷い目に合うのが目に見えている…つまり俺のすることは……
「あっちに行きました」
「サボんな、行ってこい」
「ゲエーッ!?う、裏切ったっすね2人共ォ!?」
俺が指さした瞬間にリムルさんがゴブタ君を路地裏から弾き出していた。どうやら上手いこと噛み合ったようである。そうして逃げきれず捕まったゴブタ君はそのまま戦闘訓練へと連れていかれ…着いてまに俺も着いていくのであった。
.
「はっ!」
「甘い」
頭に一撃。
「なんのっ!」
「遅い」
右肩に一撃。
「そぉい!」
「まだまだ」
背中に一撃……うーん。全て避けられて当たる素振りすらまともにない。なんだこれは。いや、ハクロウさんがどういう戦い方してるのかは教えてもらった。気闘法という
……それまでに日数からは考えられないくらい数え切れない程攻撃を受けてしまっているけど…それを使えば姿を一時的に消したり、瞬時に移動したり、武器とか拳を強化できたりするのだ。
…………はい、そんだけけて説明も受けてその上でなお全く姿が捉えられません。
《練度が足りません。スキルで習得した技術は、体に馴染んでいるものではないのです…どちらかと言えば模倣に近いので、使うタイミングや使い方等…その他にも色々ありますが、経験値が低いのに強力な技を覚えている状態に等しいです》
ゲームの説明みたいなことを言うね、君ね。しかし実際その通りなのだ。どんな技でも使うタイミングが悪かったら意味が無い…そういう事なのである。
《………》
ん、何?なんかいいたげな雰囲気を感じるけど…いや俺もわかってるって。道具も技も使い時って話でしょ?だからこうやって思考加速で悩んでるわけで……
《……スキルのおかげで基本的な戦闘は一通りこなせます。この訓練は、1つの武具や戦闘方法に拘る必要性は皆無です。スキルの使用も禁止されていません》
……なるほどね?
学習者先生は的確なアドバイスをくれたようだ。確かに俺は木刀で叩くのをメインにしていた。よく考えたら確かにそこに拘る必要性はなかったんだな。
「…どうしたかの?」
「あ、すんません…ちょっと考えてて……」
「ふむ…もう一本行くか?」
「はい!!」
……因みに俺一人でやってるかと思われてるが、俺に三撃入れている間に他の警備隊の人達軒並み倒されている。ゴブタ君に至っては空中で連撃を入れられている始末。ゴブタ君も弱い訳では無いと思うが……この人が特別強すぎるだけなのかもしれない。
が、とりあえず今は俺のことである。
「ほっ!」
「あまり変わっとらんぞ…ほれそこ━━━!!」
木刀を勢いよく振り下ろすが…一瞬で後ろに回られ、このままでは膝裏に一撃を入れられるだろう。所謂膝カックンをされてしまうかもしれない。しかし俺は誇張したらありとあらゆる戦闘法に熟知した男なのだ。やろうと思えば…!
「後ろォ!!!」
「ぬっ…!?」
振り下ろした勢いのままサマーソルト。読んだわけじゃないが違うかったら違うで即座に次の方法を試すだけである。そうして振り下ろされる木刀と俺のサマーソルトがぶつかり合い、不意のサマーソルトによって木刀は弾かれ………ない。
「なんでッ!?」
「考えは良かったがのう……そうそう簡単に弾けるもんではない、ということじゃな」
逆に弾かれてサマーソルトは急遽変更。回転して頭をうちつけていた。思ってたよりも強い力で膝カックンされかけていたようだ。しかし…方向性は悪くないと思う。ということで……
「続き、お願いします!」
「あいわかった…!ではゆくぞ!」
その後結局さらにスパートを上げてボコボコにされ、ゴブタ君は最早葡萄と見紛う程にボコボコにされてから…俺は帰路へと着いたのであった。
,
「━━━畑?」
「そ!明日は皆で畑を耕すつもりなんだ!ハイドもどうだ!?」
「なるほど…子供達も楽しんでできそうですね。自分たちで食料を作るって言う楽しみを覚えたら、農業部門の人数もいずれ潤うでしょうし」
「そうそう!米とか大豆とか作るつもりなんだ〜!あと芋」
「あー、芋は大事ですね芋は」
さつまいもだったかな?物凄く育てやすいから食料として破格に使いやすいの。
《さつまいもとじゃがいもは長くても5ヶ月で収穫できます。異世界基準であれば現在は初夏の5月頃ですので…秋には収穫が可能です》
5ヶ月か、早いね。それに子供達の芋の掘り出しも楽しいだろうし…子供達が飢え無くなるし、作るだけ作っておけば食べれるタイミングが増える。タイミングが増えたら食える時に食うということがしやすい。うん、最高。
「秋が楽しみですね」
「気が早いが…確かにな!」
こうして俺は町ぐるみの行事に参加することとなった。
……にしても、なんか妙に飢えることとか食う事にこだわりを覚えてしまった。なんかあったのかな俺。
権能
・武装戦闘:武器を持っての戦闘に補正がかかる。なお武器の認識は本人依存となる。
・戦闘解析:戦闘における知識の積み重ねが確実に経験値となる。同程度の相手ならば行動パターンなどの解析はすぐに終わり、確実に勝てる。戦闘を重ねれば重ねるほど強くなるが、戦闘方法が認識できない場合又は、相手が破格に強い場合はその限りでは無い