「 ━━━古来より、飯の美味い土地はいい土地だという。ウチも是非そうありたい。まぁ兎も角、自分たちが食う分は自分たちで賄うべきだ…今日は他の部署の皆も力を貸してくれ」
今日は街の皆で畑を耕します。リリナさんは今日は所謂チームリーダーというか場の総監督的役目をするために、寺子屋の子供達は俺と共に畑いじりをすることになる。
まぁ土を掘ったり苗を植えたりするだけなんだけどな。それでも楽しいものなのだ。
「腹が減っては何とやらと言いますからのう」
「子供達を飢えさせたくはありませんな」
「そうだろそうだろ!」
「それに小さい頃から土いじりしてたら興味持ってくれるかもしれませんかね…自分たちの作ったものが美味しいものになる……いいですよね」
「だよな〜!」
「分かります!!美味しいもの……食べたいですよね!!」
そう言いながら、現れたシオンさん。紫色の湯気を出しつつ、何故だか悲鳴や呻き声みたいなのが聞こえてくる何かを皿に携えてやってきていた。あれは…何?
「さー!植え付け開始〜!!」
リムルさんが無視して皆に号令をかけていた。恐らく料理というのは分かるが、なんの料理かがまるで分からない。知らないとかではなく、見た目が料理ではないからだ。
「……シオンさん」
「あ、食べますか!?」
「食べたあとすぐ動くと運動量によっては吐き出しちゃうかもなんで料理はちょっと……」
「は…!?」
「いや、そこじゃないよね?もっと突っ込むべきところあるよね?」
違うかったらしい。しかしシオンさんにああ言ったものの、作ったものを食べないというのは…食材に対して失礼じゃないだろうか。子供達も見ている。これは誰かが食べなければならないものである。
《辞めましょう》
いやいや先生?食べ物は大事にしないといけないし、食べれる時に食べとかないと…すぐ動くと、とは言ったが無駄にしろという意味ではないんですよ?
《既に無駄になってます》
そんなことは無いでしょう……全く先生ってばもしかして贅沢思考?作ってくれた人に愛情があればいいんですよ、リムルさんに向けた愛情でもシオンさんには間違いなく料理に対するやる気と愛情がある。それはいいことです。
「まぁ無駄にしたらダメですからね…食べますよ」
「えっ!?」
「まぁ!ではこの1皿分を…」
「頂きます」
というわけで1皿だけだったので貰いました。かき込んで食べると味わえなくなるので、それなりに味わえるように食べます。
《毒耐性発動、状態異常無効発動、痛覚無効発動》
液状だったのに何故か口の中でえらく硬そうな音がする。不思議な食感と見た目だ。味も不思議で、最初に舌にピリッとした痛みがあったがすぐに落ち着いてくる。湯気が出ていたので熱い料理かと思っていたが、食べれば飛べるほど体温が下がるようなひんやりとした気分になる。
「お、おい…顔面が真っ青だぞ…?」
「なんか不思議な味と食感ですね……人選びそうな感じがします」
「選ばれないんだよ普通は…!」
確かに…しかし異世界には滅茶苦茶臭い料理とかなんで無毒化出来てるか分からないものがあるんだし、こんな料理があっても不思議ではないだろう………おや甘くなってきた。ほんとに不思議な味だ。
「ご馳走様でした」
「どうでした!?」
「独特な味です」
「毒々しい味の間違いだろ…」
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「せんせー!掘るのたのしー!」
「良かったなぁ」
子供達は土をホリホリして楽しんでいる。苗を一生懸命運んで、植えて、そして土を少し被せる。これが秋頃には実ると考えると実に感慨深い。
「おーい!そっちはどうだ〜?」
「お、リムルさん。順調ですよ〜、子供達も楽しんでやってくれてます」
「良かった良かった!」
「子供たちといえばなんですけど…」
「ん?」
「果樹園とか、作れたら喜びそうですね」
「あー、果樹園……甘い果物はみんな大好きだからなぁ…今は森の恵みに頼ってるところだけど、ゆくゆくは育ててもいいかもしれないなぁ……」
「━━━そうだな、食べ物の幅が広がればその分皆が喜ぶだろうからな…いいと思いますよ俺、果物育てるの……なんなら今からでもやりますか?」
どこからともなくベニマルさんがやってきた。別にいいけどこの人急に会話に入ってきたな……何で?もしかして果物好きなの?
「…あ、そういえばさっき大豆植えてましたね…醤油作るんですか?」
「まぁ醤油以外も色々とな…うぅ…」
………少し前の話だが、さっきシオンさんが頬を赤らめて凄い勢いでメモをとっていたのだ。そしてそれをリムルさんが止めていたのだが…恐らくこの人が悪い案件の何かだろう。この人割といらんとこで調子乗って痛い目見るタイプな気がする。
「まぁ慣れればあの味もいいんじゃないですかね…」
「お前それ本気で言ってる?」
「先生が耐性発動させるおおげさっぷりでしたけどね」
「お前それ言うのやめろって言って…いやそれ以前に大袈裟でもなんでも無いぞそれ!」
先生も《毒耐性貫通してきたから状態異常無効発動させました》とか言ってきたけどみんな大袈裟なんだって。料理で状態異常なるわけないじゃん。それやったらシオンさんだいぶヤバいってのHAHAHA…なんて言ったんだけど。
「………」
《…………》
「何で無言なんですか」
因みにベニマルさんは、シオンさんの料理が耐性を貫通するという話を聞いてドン引きしていた。特殊な味だけど耐性絶対必要ないって。
《なら耐性切りますよ?》
…ごめんて。怒らないでよ。というかああいうのって切れるんだ…常時発動型のスキルかと思ってたんだけど。
《……基本そうですが、意識的にオフにすることもできます。例えばアルコール等は毒耐性によって無害化されるので所謂『酔う』という状態になりません。毒耐性を切り、痛覚無効をそのままにしておけば二日酔いは起こりません。
それと辛味のある料理などは痛覚に訴えかけるのが多いので、痛覚無効をそのままにしているとから辛さを感じられません》
へぇ…まぁアルコールに関しては今のところ飲むつもりは無いけど、そういう小技できるんだなぁ…まぁ付き合いで飲むこともある…のか?
《この街の魔物は宴は好きですから、酒は飲めて損は無いと思われます。酔うことは損しかないですが》
それはそうだね…飲んでも呑まれるなとはよく言うもんで。多分リムルさんとか痛覚無効そのままにして毒耐性だけ切って楽しんでそうだ。
《………》
「せんせー!植え終えたよ〜!!」
え、何?どしたの先生……って思ったが直後に子供達から呼ばれてしまう。何かをいいたげだったような気がするが、特に何も言わない以上俺からは何も言えない。時間もちょうど良かったのもあり、俺は子供達を連れて昼ご飯へと向かう。先生と話してる間にリムルさんとベニマルさんは離れていた。まぁあの人達この街の事実上ツートップみたいな所あるから仕方ないか…
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「植え付け完了を祝して…かんぱーい!おつかれー!」
あの後色々あったが、無事に植え付けは終了。秋になれば作物が実り豊作となる……かもしれない。どちらにせよ今回はそれの完了を祝しての……宴である。まぁぶっちゃけそれは楽しいのでいいんだけれど……
「…誰だアレ……?」
途中から見知らぬお方が植え付けを隠れてみていたのだ。俺以外にも気づいてる人はいたし、その上で軽く挨拶だけしたりして実質スルーとか決め込んだりしてたので何も気にしていなかったが……
「どしたんすか?」
「いや…あの緑の人誰か知ってる?ゴブタ君」
「あぁ、トレイニーさんっすね。初めて見たんすか?」
「うん…ここの人?」
「んー…オイラ達の町…ができる前から住んでる森の管理者っすね」
《彼女は種族
へぇ……で、なんでまたそんな人が来たんだろうか。ゴブタ君が特に気にして無さそうだし、別に管理者的にこの畑はアウト…とかではないだろう。そもそも春からキャベツ作ってたらしいし。
《恐らく手伝いたかったのかと……彼女達はその性質上植物と綿密な関係性があり、こういった事に関しての情報は基本的に間違いがないでしょう》
あぁ……ん?じゃあなんでこの人今日参加してなかったんだ?しかも影から隠れるようにして見てるなんて…まるで誘われてなかったみたいな……
《誘われてないと考えられます》
……マジ?あ、なんか泣き始めた。リムルさん誘い忘れてたなあれ。可哀想に……
「あ、泣かせた泣かせた〜」
「責任とってあげないとだめですよ〜」
「お前らヤジ飛ばしてんじゃないよ!!あ、秋頃の収穫時にはには誘いますから、ね!!?だからどうぞ何卒……」
「……くすんっ」
なんてやり取りをしつつ、改めて畑を見る。今はまだ埋め立ての苗…それが時間をかけて育っていき、秋には俺達の恵みとなる。また種や苗を植え、そして実り…そして恵みとなる。そのサイクルが、皆の体を作り…命を紡いでいく。
俺達は土を食って育った野菜を食べて育つ……そのサイクルを、続けていく。
「…楽しみだな、収穫が」
《……えぇ、そうですね》
━━━余談だが。この後帰り際、リムルさんに誘われてとあるスナックへと遊びに行ったのだが……トレイニーさんはそこのママさんをやっていた。それでいいのか森の管理者。
「ポテチ、食べます?試作もありますよ」
「チーズとかかけたら背徳的ですよ」
なんてことを話していた。スナックなのでお酒も飲もうと思っていたのだが……先生がひたすら『必要ない』と語気を強めていくので、仕方なく飲まずにお茶だけ飲んで帰ったのだった……そんなに飲むのダメ?
《ダメです、未成年飲酒は犯罪になるのと成長の阻害を引き起こしてしまう可能性があります》
それ異世界の法律の都合だよね!?と言いたいが健康はどうにもならない。先生は俺の呼び方の通り…紛うことなき『先生』なのである。ちょっと厳しいよ先生……というかそもそも毒耐性あるよね俺!?
《ダメです》
あ……はい……