混ざりし世界の正体不明   作:長之助

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七夕到来

こんにちわ、ハイドです。今は七夕に向けて街の皆でいつもの仕事をしながら準備に励んでいるところです。そういう俺は、スミレさんとゴブタ君と一緒に鍛錬の合間の休憩で駄弁っているところである。

 

「七夕、ですか……」

 

「そうそう、リムルさんがやってくれるんだって」

 

「因みにどういう奴か知ってるんすか?」

 

「えっと…短冊、って言うのに願い事を書くの。それでその願いが叶いますように〜…って星にお願いをするお祭り、かな」

 

「由来の話は……まぁこの際置いておこう。この街にはこの街のやり方ってあるだろうし……」

 

という建前である。実は俺、事の発端を知っているのだ……巫女姫であるシュナさんの為に神事を用意したというのが事の発端。それを思いついた理由は…シオンさんが流れ星に対して大声で願い事を叫びまくったから。そのせいか、若干荒れているのだ。その事実を言うと、スミレさんは兎も角ゴブタ君は100%余計な口を開きかねない。故に黙っておく。彼のためにも……

 

「へー…」

 

「まぁ、実際に叶えてくれる存在がいるって話でもないけどね…大体は自分の目標を見つめ直すって行事になってると思うよ」

 

「あー、でもまぁ目標決めるのはいいっすねぇ」

 

「因みに何か……ゴブタ君は願い事ある?」

 

「あー、自分はあれっすね……凄い有能な部下を従えて悠々自適に過ごしたいっすね!」

 

……前から感じていたが、ゴブタ君はかなりリムルさんにそっくりの思考をする。ウマが合う、と言うやつだろう。だから割とリムルさんと気さくな付き合いが出来ているのだろうか。

 

「…………願い…」

 

ボソリと、スミレさんが呟く。七夕の話を振った時から、どこか彼女は考え事をしている時が多いように感じる。しかしあまり深入りするべきでは無さそうな気配を感じたので、俺は追求しない。藪蛇という訳では無いが、ここでわざわざ彼女の内面を掘り込む必要も無いだろう。

 

「そういやハイドさんは何か願い事とかあるっすか?」

 

「うーん……そうだなぁ……」

 

「記憶喪失、って聞いてるんで…やっぱり記憶が戻りたい、とか?」

 

…記憶か。ぶっちゃけて言うと、記憶を取り戻すことに積極的な姿勢は出していない。というかどうしたらいいか自分でもよく分からないのだ。最近は先生も口出してくる頻度が1日に一回あるかどうかってくらいだし……しかし願い事というと…そうだな………

 

「……生徒達が健やかに育つように、かなぁ」

 

「ゲルドさんみたいな事言うんすね、まぁわかるっすけど」

 

「だね…私もまだ大人、ってわけではないけど…ここの子供達を見てると、元気に育って欲しいなぁ…って思うし」

 

どうやら2人も理解してくれたようだ。というかゴブタ君は多分年齢的には俺もあまり変わらないのでは…?彼は進化したらしいので、実際の年齢が人間的にはどのくらいなのかは気になるが……まぁ可愛いものは皆好きだろうから…そういう気持ちなのだと思っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……うーん」

 

ココ最近眠れていない。眠気が来ないと言った方が正しいか。先生から『今日はもう寝ようぜ』がないと眠れない体なのかもしれない……そんな事はさておき、今俺は街から少し離れて森の中を歩いていた。気配はある程度消して歩いているのと、魔力感知を併用しているので魔獣は避けて動いている……が、街から離れた理由としては不思議な気配を察知してそこまで向かっていたのである。ソウエイさんやあの人の部下が対応するには少し離れた位置すぎると言うのもある。きちんと彼らには伝えているのと、向こうも確認していたのもあり…俺が対応に出向いたというわけだ。リムルさんに報告するのは、戦闘開始された瞬間…という事になった。

 

「……誰だ、そこにいるのは」

 

「そりゃこっちのセリフ。こんな夜更けに街に近づいてくるなんてお前こそ何者だ?」

 

見た目は小鬼族(ゴブリン)の系譜…だがその身長はリグルさんやリグルドさんと比べても、同じくらいには大きい。そして両手には斧と鉈という物騒な武器を装備している。

俺は目の前の彼のことを予め教えて貰っていた……名はカタキ、リムルさんに仇なす邪人鬼族(イビルゴブリン)という種族なのだそうだ。

 

「貴様もリムルの仲間か?」

 

「だったら?」

 

「ならば…貴様も対象だ!!」

 

彼のスキルの事も聞いている。ユニークスキル『復讐者(ウラムモノ)』その力は、戦った相手からスキルをコピーして得るというもの。既にリムルさんとは何度か戦った上で、あの人のスキルをいくつか得ているらしい。しかし対象か…復讐の事も聞いているが、本当にそう感じているのか怪しいところだ。なんと言うか、言葉の勢いこそ強いものの……どこか空虚に感じている。果たして、その怒りは、恨みは…今俺に向けられているのだろうか。

 

「まぁ待て」

 

「……なんだ」

 

ほら、言葉を聞いてくれた。武器こそ向け、暗い夜闇でも分かるかのような眼光があるが…どうにも覇気を感じない。敵意も仕方なく抱いているというか、そんなレベルだ。

 

「別に戦いに来たわけじゃないんだ、ゆっくりと近づいてくる割には…気配もダダ漏れだったし、このまま帰ってくれるなら俺は追いかけないし何もしない」

 

「………嫌だと言ったら?」

 

「この国で多分1番遠慮ない人が部下を引き連れてやってくる」

 

本人も自覚しているだろう。リムルさんも遠慮ない時はほんとに遠慮なく仕掛けに行くが、痛めつけるよりも前に力の差を見せつけるで済ませようとするだろう。

しかしソウエイさんは違う、あの人割とサディスト…いやかなりだな。かなりサディストだから絶対ボコボコにする。別にそうなったらなったで同情するだけなんだが……

 

「………はぁ…」

 

「…ちょっと話する?別に一方的でもいいからさ」

 

「……まぁ、いいだろう。気が削がれた」

 

こうして、ちょっと特殊な環境でハジメマシテの人と俺は座り込んで話をすることになった。単に雰囲気を出したいので、焚き火も即座に作る……が、聞こえるのは焚き火の音ばかりでお互いに話題が出てこない………まぁ初めましてだし仕方ないか。話題を振ってやろう…と思っていたら。

 

「……復讐をするのは、駄目なのだろうか」

 

「…どうだろうな。殺された本人達が『やってくれ』と言っているにせよ、自分がやりたいにせよ…その行為が善か悪かって二極化するのは違うんじゃないかな」

 

俺の考え、という話にはなるが…法的な話をするならばアウトだろう。それは間違いない。しかし、感情的な話ならばどうだろうか?場合によっては、同情する者も現れるかもしれない。

まぁ魔物には弱肉強食のルールがある。復讐心を果たす場合、正義はどんな理由であれ勝者…つまり強者の側になるだろう。

 

「……確かにな」

 

「けど…どんな形にせよ、果たさないといけないと感じたなら…しない後悔よりする後悔の方がいいんじゃないか?」

 

「……お前はリムルの仲間だろう?」

 

カタキが驚いたように俺を見る。まぁ、確かにな。俺は今リムルさんに仇なす様に教唆している訳だ。そりゃびっくりしちゃうだろう…というか、それをしようとしてる本人が言うのか。やっぱ彼、根はいい奴なのだろうか。

 

「そうだよ?確かにリムルさんを殺そうとするなら、俺だって敵対するよ。けどそれはそれこれはこれ……復讐を果たすのが仲間の為だ、って言われて尚俺は『でも辞めるんだ』とか言えるほど聖人じゃないよ」

 

そして互いに無言の時間が始まる。彼は今何を考えているだろうか?過去の仲間の事だろうか、それとも今の事?もしくは未来の?それは彼にしか分からないけど、俺は彼が喋らないと思い口を開く。

 

「けど、1回は見つめ直した方がいいと思う。自分自身が今どう思っているのか、気持ちをどう解決するべきなのか……をね」

 

「見つめ直す、か……」

 

恐らく彼は自らの復讐を果たそうとするだろう。だがそれは一向に終わらない戦いになる…というものでもない気がする。彼の復讐は牙狼族に殺された仲間達から始まった。その矛先がリムルさんに移り、そして何度も何度も戦ったのだ。だが彼は復讐を果たす際に見た街で…何度も目撃しただろう。楽しそうに暮らす仲間を、街に住み着いた新たな仲間を、そしてそれらと過ごす皆を。

何より、知らないはずはない……この間殺し合いをしていた豚頭族(オーク)があの街に住んでいるという事を。

 

「…貴様は、不思議な奴だな」

 

「自分でもそう思うよ」

 

「……今日は、帰らせてもらう」

 

「リムルさんに会っていく?」

 

「………いや、いい…今日は引き返すとしよう。だが…奴に伝えろ、次に会う時を覚悟しておけ…とな」

 

「ん、じゃあ伝えて……あ、そうだついでに」

 

「…なんだ、まだ何かあるのか」

 

俺は懐から取り出した木の板と筆をカタキに渡す。一瞬不思議そうな顔をしていたが…しばらく見つめたあと、やっと口を開く。

 

「………なんだこれは」

 

「今街では『七夕』ってお祭りをやる予定でさ、紙がないから代わりにその板に自分の願い事を書いて笹につるすって祭り」

 

「…で?」

 

「願い事、書いていきなよ。別に街の住人とか関係ないしさ」

 

断られるかな、って思ったが…1分程板を見つめた後に…サラサラと書き始めていく。書き終わったらすぐに俺の方へと道具一式ごと投げ渡してきた。ノリいいね君。

 

「…見ても構わん、それは必ず吊るしておけ」

 

そう言ってカタキはすぐに離れていく。少しだけ彼の行先へと目線を追っていたが…夜中なのですぐに見えなくなった。彼の願いごとが書かれた板だが……俺は懐にしまった。人の願い事を見るのは良くないだろう。俺はそのまま踵を返し、帰路へと着くのであった。

なおその後…リムルさんからすんごい怒鳴られたのであった………その後ちゃんと伝言は伝えたぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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異世界では7/7に値する日。その日は祭りであった。シュナとシオンが舞を披露し、街の民が笹に願いを吊るしていく。それは自らの目標であり、自らの祈りであり……様々な願いが彩られていた。

 

「皆願い事書いて吊るしてくれると…開催したかいがあるってもんだ!」

 

街の盟主であるリムルは、大量に飾られた笹を見て満足そうに微笑んでいた。その中でふと、1つの板が目に入る。そこに書かれてた願いの主の名前はなかった。しかし、その願い事を見てリムルはさらに満足気となっていた。

 

「……ハイドから書いたって事だけは聞いてたけど、叶うといいな…この願い事」

 

そうして、覗いてしまったことを軽く詫びつつも…書かれた願いごとが叶うようにとリムル祈る。そこに書かれていた願い事は━━━

 

『かつての仲間達が、安心して眠れますように』




どーこ調べても見当たらないんで自己流で考えました。他スピンオフキャラもタイミングみて自己流で書いていきます。オリジナル権能あり
復讐者(ウラムモノ)(ゲーム中得たスキルは省き、元々の『のみ』に絞ります)
・戦闘解析:戦闘対象の解析を行う
・能力複製:解析スキルによって判明したスキルを取得する
・精神耐性:精神に干渉する物に対する耐性

生還者(イキノコルモノ)
・限界突破:身体能力の底上げ
・高速回復:回復速度が従来よりも早い
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