こんにちは、ハイドです。今俺は子供達にいつもと同じように授業を受け、そして全員と帰りの会し終えたのですが……そのまま帰ろうとした瞬間に『いつも』が崩れる気配を感じ取りました。というかなんか街のほんと端…というか入口の方…なんか来てない?しかもすっごい強い人もいる……結構な数きてるっぽいけど…向かうべきかな。
《いえ、既に個体名:リムル=テンペストが対応していますし…鬼人達も対応しています》
うーん…大丈夫そうではあるが、気にはなるな。今日は仕事も終わったし、向かってみよう。ところで誰が来てるかわかる?
《ドワーフの王、ガゼル・ドワルゴです。『英雄王』とも呼ばれています。》
そんなすごい呼び名の人が来てんのか……まぁ実力相応の強さ、って感じなんだろうね。リムルさんとガチ対決したらどっちが勝つのさ、因みに。
《………》
…こりゃ、ガゼル王っぽいね。というかそんだけ強いのかよ……本気で戦う気なら、多分もっと数を連れてきただろうから大丈夫と踏んでるけど……そうならなくて良かった……
と、思いつつ俺はダッシュでその場へと向かう。そうして向かった先では…大量のペガサスとさっき言ってた王様っぽい人…既に来ていた鬼人の人達とリムルさん、ゴブタ君とカイジンさんがいた。あ、リムルさん人型になった。
「…あ、ハイドさん。子供達の方はいいっすか?」
「丁度みんな授業終わったところでね……ところで、状況は?」
「動いてないっすよ……何の目的で来たかもわかんないっす」
俺はゴブタ君にこっそり話しかけて情報を聞き出す。何も動いてないのね……その割に鬼人の人達皆ピリピリしてるけど…いやよく見たらリムルさんの影から唸り声聞こえてくるし角見えてる。ランガさんキレかけじゃん!
「━━━そんなに警戒しないで欲しいんだけどな」
「それを決めるのは俺だ」
そう言いつつ、王様は剣を抜く……え、あれ。ガチ戦闘なの?全軍率いて責め立てて来るかと思ってたけど…少数精鋭での正面突破?にしたって、わざわざここに止める意味合いもない。何しに来たのこの王様。
「貴様を見極めるのに言葉は不要……この剣1本で十分だ。この森の盟主等という法螺吹きには、分というものを教えてやらねばならないな」
「あ…!もうなんか集まってる…!」
「あ…」
後ろからスミレさんが来た。どうやらいちばん最後にたどり着いた様だ。しかし状況はかなり悪い。舐め腐っている、という訳では無いが如何せんこの街の主のリムルさんにすごい喧嘩を売ってしまっている。そのせいで鬼人の方々がそろそろやばい。このままだとドワーフ達との戦闘になってしまいそう。とは言うが、俺に止める義理はない…どころか一応リムルさん側として参加してもいいくらいである……と、その時数枚の葉がどこからともなくふわりと飛んで来た……かと思えば、気づけば3人のトレイニーさんがいた……顔似てるけど姉妹かな?
「━━━我等が盟主に対し、傲岸不遜ですよ?ガゼル王」
「なんだって…!?
「よう、トレイニーさん」
「ご無沙汰しています、リムル様…いつぞや以来ですね」
畑仕事の時の事を言っているのだろうか。ぼかしてくれて助かった。あの話するとトレイニーさんの今ある威厳が若干下がっちゃうからね、うん。
なんて呆れた目で見ていたが……向こうの人達はざわめいている。よく考えたらドライアドは森の管理者をしていた…それがリムルさんの事を上に立てるような言い方をしていれば、こうもなるか。
「━━━ふはっ、ふははは!!森の管理者が言うのであれば真実なのであろう!法螺吹き呼ばわりは謝罪するぞ、リムルよ…だが貴様の人となりを知るのは別の話!剣を抜けい!!」
えぇ………いやいや、トレイニーさんが認めるなら別にいいでしょって思うんだけどな。どういう理屈?『拳を合わせれば考えてることがわかる』の亜種?
《そうかと》
うわぁ……あの人自分の実力分からない訳じゃないでしょ…殺すかもしれないのに、わざわざやる必要ってあるのか?少なくとも、こっち側の凄まじい殺気に気づいてない訳じゃないでしょうに。
《ガゼル王にはユニーク、エクストラを含めた複数のスキルがあります…
どういうスキルなのだろうか…って聞こうとしたら、なんだろう…ガゼル王が今こっちに目線投げた気がする。というか今の視線…俺に、か?いや考えすぎかな…
「……バーン!そこにいる者の相手をしてやれ!」
「へっ、いいんですかい?」
「…………?」
そこにいる者?俺は当たりを見回し…隣にいたベニマルさんを指さす。ガゼル王首横振り、反対側の隣にいたスミレさん指さす……これも違う。後ろにいたゴブタ君を指さす…ため息つかれた…うん、まぁ……なんで?
「……おい、なんであいつを……ハイドを指名した?」
「貴様自身の人となりは俺が確かめるが……実力も、ついでに見ておこうと思ってな。『アレ』を制御できるのか、という話だ」
「…知ってんのか?あいつを」
「知らん、だが類を見ない存在には違いあるまい…俺がそう感じたのだからな」
……いやまぁ、いいやもう。どうせ引く気はないんだろうし……しかしなんで今俺指名されたんだろうか。ゴブタ君が後ろで『なんかしたんすか?』って顔してるけど、俺がそれを知ってるわけがない。初対面なんだけどなそもそも。リムルさんも原因がわかってなさそう、マジで何?
《…………チッ》
先生が舌打ちをしている。イライラしているようだ………しかしそれに関しては、俺だって同じくらいだ。何故か指名されて意味不明すぎだと思っているところである。
《…さっさと終わらせるための手段を講じます》
……?なんか俺以上にイライラしてる気がする。いや、さっさと終わらせられるならそれに越したことは無い。先生の指示のままに俺は手をかざすと……おや、剣が出てきた。真剣……なのだが形がおかしい。形がクソ長い音叉みたいな物になっている。
「へぇ…随分とヘンテコな得物を使うじゃねぇの」
「そりゃ失礼…で?リムルさんは人となりを見るための戦いだってお題目垂れてたが、こっちはどうしたらいいんだ?」
リムルさんの人となりを見るために、剣同士のぶつかり合いを望む。しかし俺の方はそういう訳じゃない。つまるところ、殺る気こそないが…殺るのもOKという話である。
「バーンに力を認めさせれば良い、その上で判断する」
《殺しを行えば不興を買うのはまちがいないでしょう、そうした場合こちら側に不利益があります》
………俺一人だけならともかく、リムルさんや街の子供達に迷惑はかけられないな。仕方ない、戦闘不能にさせるだけで済ますか……ところで先生?この剣どうやって使うの?
《簡単です、間に相手の剣を挟みます》
うん
《捻ります》
おお
《捻った剣の面を思いっきり蹴り潰しましょう》
あ、そっち方面!?
《レールガンにも出来ますよ?》
殺しはなしで!!というかさっきその話したの先生じゃん!いやまぁいいや!それができるならやるに超したことないし!じゃあその方向性で!
「…もういいかい?」
「……えぇ、どうぞ?」
リムルさんとガゼル王は既にぶつかり合っている。ならこっちもさっさとぶつかり合うべきだな。というかそもそも剣にしなくてもスキルフル活用でよかったんでは…?いや、まぁいいか。剣叩き折って戦闘不能が1番……って考えてる時に、相手のバーンさん、だっけ?が飛び込んでくる。
《見切れない動きではありません。個体名:ハクロウとの修行の成果です》
やってて良かったハクロウさんとの修行!!この音叉剣で上手く鍔迫り合いを回避しながら、戦っていく…がどう考えても本気じゃないな相手は。いやまぁ戦闘訓練受けてるだけの非戦闘員と、ガチの騎士じゃあ技量そのものに差があるから仕方ないんだけどな。まぁ負けるつもりはないよ。
「なるほど…手練っちゃ手練か?」
「そんな強くないんですけど、ね!!ぎゃふっ!!」
音叉剣で突くが、華麗に躱されて蹴り飛ばされてしまう。変な声が出るが、蹴り飛ばした後にそのまま向こうが突撃を入れてくる。間髪入れずやってやつだな。
「間髪入れて欲しい…」
《好機です、体だけこちらが動かします》
「えっ」
「ん…!?」
突撃してくる相手に合わせ、先生が俺の体を動かしていく。構え、そして振り抜く。そうすれば俺の首は切り飛ばされそこで終わるだろう。だが先生はその動きに合わせて音叉剣をただゆっくりと構えるだけであった。
「何!?」
先程までの毛の生えた程度の動きから一変、自分の動きに完全に合わせに来たのだ…そりゃ驚くだろう。音叉剣の隙間、そこに先生は相手の剣を起用に入れる。当初の予定通りと言うやつだ。
そのまま先生は俺の体を使い、音叉剣を捻って相手の剣を簡単に抜けないようにしていた。そして、そのまま音叉剣を地面に差し込んですぐには抜けないように工夫……あとは簡単だ、粘鋼糸を足に巻き付け……一気に蹴り抜く!
「せい!!」
「あ゙!?」
…………蹴り壊せはしなかったが、音叉剣が代わりに壊れた。そしてそのまま殺しきれなかった蹴りの力によって、手から離れた剣は地面を滑り草木の中へと飛び込んでいく………予定とは違うが、よし!
《…思っていたよりもいい剣だった様です。今の貴方の力ではレア以上は壊せないということが分かりました》
という談。レアというのは武器の等級の話のようだ。蹴り壊せるくらい強くなりたい……とまではならないかな、単なる教師だからね一応俺は。
「………まだ続けます?向こうは終わってるみたいですけど」
「………いや、俺の負けだ」
既に終わっていたのか、リムルさんとガゼル王は武器をしまいこちらを見ていた。どうやら勝ったのはリムルさんの様だが…2人がこちらに近づくのと同時に、1人近づいてくる人物がいた………ハクロウさんである。
「ほっほっほっ、お二方、お見事。ですが打ち込みの方はまだまだ……明日からもう少し厳しくいきましょうぞ」
「うへぇ…」
「ま、マジで言ってます…?」
「━━━失礼、剣鬼殿ではありませんか?」
リムルさんと俺が辟易してる中、ふとガゼル王がハクロウさんに声をかけていた……というか知り合いなのか?この2人。リムルさんに目線を投げるが、首を振るだけであった。知り合いかどうかは知らない、と。
「……先程の剣気、如何程の猛者かと思えば…随分と成長なされた」
「剣鬼殿にそう言ってもらえるとは恐縮です」
「ふむ…森で迷っていた小僧に剣を教えたのは懐かしき思い出……おっと、失礼。先程も言いましたが、ここまでの剣士になるとは…見事ですぞ、ドワーフ王よ」
「あれから300年ですか」
「ほっほっほっ」
「……世間って狭いですねぇ」
「マジでな……」
ハクロウさんとガゼル王が久方ぶりの団欒を楽しんでる横で、俺とリムルさんは世間の狭さに最早感動すら覚えていた。と思えば2人はこちらに寄ってきて……ガゼル王はリムルさんの背を叩いていた。
「さぁ、早く案内してくれリムル…上空から見た限りじゃあ綺麗な街並みであったぞ?美味い酒くらいあるのだろう?」
「……まぁ、あるけど…なんか軽くない?」
「はっはっは、こっちが素よ」
軽いなぁガゼル王。しかし公私混同しないような人というのも、王の素質と言うやつだろうか。リムルさんとはある意味真逆かもしれないけど……いや、真逆でありながらも似てるよなこの2人。
……こうして、突然&急な事ではあるが……ドワーフ王であるガゼルとその騎士団…