完成しているのは間違っているだろうか   作:新人作家

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この話をずっと書いてました。超難産でした。


第10話

 

 深層。【真の死線(トゥルー・デッドライン)】と定められるほどの超危険地帯。適正レベルはLv.4とされているが、第一級冒険者ですら命を落としかねないほどの環境であり、単独(ソロ)での攻略は不可能に等しい。

 もし単独で行動できる者がいるとすればそれは、Lv.7に至り都市最強と謳われる【猛者】オッタルだけだろう。

 

 限られた強者だけが生き残れる、それが深層と呼ばれる地獄を体現した魔の巣窟である。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 「ハァ、ハァ······痛ってぇ···」

 

 下から現れたモンスターに喰われ、酸性の胃液に晒され、内側からズタズタにしたことで何とか吐き出され脱出に成功したが、爛れた肌に風が触れるごとに刺されるような激痛が走る。

 それでも狼狽えることなく思考を途切らせないよう努められるのは、数多の修羅場を潜り抜けてきた経験が精神的な成長を促したか。それか、まあ、死んできた経験か。

 

 何にせよ、今必要なのは落ち着くことなのでとても助かる。

 

 「······っ」

 

 ()()()()。いや、正確にはスキルによる自動回復が機能しているが、回復速度が目に見えて遅い。胃液が全身に付着しているからだろう。回復していないわけではないが、確実に阻害されている。

 

 「問題は······」

 

 ここがどこか。

 特徴としては、上層や中層でよく見る洞窟タイプ。()()()をしており、通路やその天井が広大で巨大。ギルドから貰った下層までの情報で合致する階層はない。

 

 「······深層」

 

 どっ、と冷や汗が湧き出る。汗が焼けた肌に滴り走る激痛を忘れるほどの緊張感(プレッシャー)に支配される。

 モンスターと会敵していないにも関わらず、今までの探索が、今までの冒険が、全て児戯に思える。

 

 ボロボロになった衣服の上から、火妖精の外套(サラマンダー・ウール)を羽織る。

 中層進出の折に買ったのだが、結局着なかったものだ。今は着替える暇はないので、割と頑丈なこれを装着する。

 

 緊張感に胃袋掴まれてるような不快感を抱えたまま、深層を進んだ。

 

 

 

 三十七階層。

 深層最初のエリアで、白濁色の壁面から【白宮殿(ホワイトパレス)】と呼ばれる。この階層だけでオラリオがすっぽり収まるほどの規模で、地図化(マッピング)が進んでないことからまだ発見されていない【未開拓領域】が多数存在すると言われる。

 そして最大の特徴である五つの【大円壁】。無数にある階段を登り降りしながら錯綜する迷路を進み、【玉座の間】【騎士の間】【戦士の間】【兵士の間】【獣の間】を順に潜り抜けなればらない。三十六階層に上がるには【獣の間】を進む必要がある。

 

 そしてリントがいるのは【戦士の間】。それを知らないリントは、()()()()()()()()()()()()()()

 

 「なん···だ、こいつら!」

 

 『『『ギャギャギャ!』』』

 

 マントを着た羊に遭遇していた。

 スカル・シープ。羊型のモンスターで、体表に覆われたマントに似た皮で肉体をカモフラージュをすることから、【死の隠者】と呼ばれている。

 

 一撃は対したことないが、とにかく素早い。一撃離脱の連携を繰り返され、反撃しようにもロクにダメージを与えられず、こちらが負傷して生傷が増えていく一方。決着を急がなければ負けるのは自分だ。

 

 なので、突っ込むことにした。

 

 『ギャギャ!?』

 

 「一撃喰らわせたら離脱する。一撃一撃は軽い。軽いから仲間と連携して負傷を蓄積させる。なら、離脱する方向に突っ込めばいい」

 

 羊型モンスターは小柄で身軽なため、飛び跳ねるようにその場を離脱する。

 地面に脚が着くまで、回避はおろか攻撃と防御ができない。無防備を晒すことと同義である。

 

 「脳筋戦法(パワープレイ)だが、これが一番効くだろ」

 

 すかさず残りのモンスターが飛び掛かってくるが、全部無視する。ズバズバと爪なんかで体を引っ掻いてくるが、この程度、自動回復(スキル)が無くても耐えられる。

  

 双剣によって繰り出された無数の斬撃を浴びせ、灰に変えた。

 

 「──そこか」

 

 さっきの攻撃で魔石の位置はだいたい把握できた。魔石位置に個体差はあるだろうが、微塵切りにしてやるつもりで斬るので外すことはないだろう。

 

 「死ね」

 

 『『ギャッ!?』』

 

 短い断末魔を上げて絶命した。

 

 謹慎中に作ったどこでもシャワーを浴びれる魔道具を取り出し、頭から浴びる。焼ける胃液を洗い流すことで、自動回復の出力を取り戻す。傷口に染みるが我慢だ。

 

 「······よし」

 

 爛れた肌も引っ掻かれた傷もみるみると治る。それと同時に体力が回復する。

 

 先の戦いで緊張が解れ、心に余裕ができた。深層への環境適応が始まったのだ。

 

 『『『アオォォォォォン!!!』』』

 『『『キシャアアアアアア!!!』』』

 『『『オオオオオオオオ!!!』』』

 『『『ギャギャギャギャ!!!』』』

 

 と、何事も上手くいかないのがダンジョン。

 

 「ルー・ガルー、リザードマン(?)、骨、羊······おいおい、まだ増えるのか···!?」

 

 一体がLv.4上位の実力を誇る深層種が、無数にある通路から大量に発生するのと同時に、壁から新たに誕生する。

 深層における【怪物の行進(モンスター・パーティー)】は、万全を期したパーティですら全滅に追い込む地獄絵図と化す。

 

 「······」

 

 それでも、地獄に対して抗わないなんて選択肢はリントには存在しない。

 

 

 

 

 

 

 『『『ァアアアアアアアア!!』』』

 

 百を優に超える深層種の集団に対し、リントが取った行動は、

 

 「──【ディア・ミメシス】!!」

 

 ──戦闘。 

 

 一見愚策のように思える行動だが、リントが居る場所は貴族の豪邸が建つほど大きく開けた場所であり、隠れるにしても四方八方から迫られている状況のため遮蔽物は意味をなさない。

     

 「──【バラエティ・ボルト】おぅっふ!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、これは身を包む"無色"の魔力に、"色"を与える儀式。敵が属性攻撃を仕掛けない以上自分でやるしかないのだ。つまり自爆、痛い。

 選んだのは雷属性。通常の付与魔法(エンチャント)は身体強化と属性の特性効果の二つだが、僕の付与魔法には()()()()()()()()()()()()。自前のアビリティとスキル、その特性を活かした技能でカバーする。

 バチバチと放電(スパーク)する稲妻は触れた敵を感電させ、自身には神経を刺激して五感と反射神経を向上させる。その結果、雷撃の鎧と爆発的な反応速度を実現させた。

 

 「──しっっ!!」

 

 『『『───』』』

 

 一息で三体の首を斬る。一切知覚できず、悲鳴を上げることなく絶命する。

 それだけでは終わらない。続け様に一体、二体、三体、四体、五体···悲鳴を上げる身体に鞭打ってその命を刈り取っていく。

 

 モンスターの目に映るのは雷光の残滓。あまりの速さに姿を捉えられず、その場には残滓だけが漂っている。

 

 『···っ、···!?』

 

 理性の欠片もないモンスターが、初めて見せた困惑。超高速で動く光を目の端で捉えたと思いきや、背後の同胞の首が飛ぶ。

 訳も分からず、どうすることもできず、浮遊感に襲われて息絶えた。

 

 ルー・ガルーの首を切り落とし、次を行く。

 モンスターの弱点は例外なく魔石。核ともとれるそれを破壊すれば灰へと変わる。

 深層種のモンスターに囲まれたこの状況で、魔石を見つけ、ピンポイントで破壊するのは困難を極める。ズレたら最後、生命力が強いコイツらは負傷を無視して襲いかかるだろう。この一方的な蹂躙劇に綻びが生じる。

 

 故に首を切り落とす。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!?(ギャ~~~~~~~~~~!!?)

 

 それはそれとして、すっっっっごく痛い!!神経を物理的に焼いてるから物凄く激痛が走ってる!そして加減をミスったら廃人確定コース。自動回復がなければ使った瞬間、即ゲームオーバーだ。

 当然、こんな自滅めいた使い方は階層主相手でもしないし、十八階層で戦った漆黒のワイバーンにもしなかった。いつもなら鎧のように纏うだけなのだが、今は深層の【怪物の行進(モンスター・パーティー)】真っ只中。質と量を過剰なまでに伴った部屋(ルーム)の隙間すら爪牙で埋め尽くすほどの群れを掻い潜るには、こんな無茶を意地でも通す必要がある。

 

 (──()())

 

 今使っている武器はいつもの短剣。これを変えて、リーチがある大剣に【ディア・ミメシス】を纏わせて振り回せばまとめて倒せる。【一撃覇者(チャージ)】を組み合わせればそれこそ一網打尽にして凪払える。

 

 真っ正面から馬鹿正直に挑んで、無茶をする必要なんてないのだ。逃げるのは雑魚の発想だと罵る者はいない。

 

 「······はっ」

 

 呆気なく終わらせるのはもったいない。

 

 【闘争本能】なんて物騒なスキルが発現するくらいだ。正面から挑んで戦闘を楽しむのはもはや予定調和なまである。

 自分のことを心は普通の冒険者だと思っていたが、イカれ野郎であることを完全に否定できなくなったな。

 

 (······まあ、どうでもいいか)

 

 『『『ギャッ!!?』』』

 

 まずは、目の前の敵を片付け──

 

 「──なんだ!?」

 

 ズドォン!!ズドォン!!ズドォン!!

 絶え間無く轟音と振動が階層を揺らす。突然のことに、僕もモンスターも動きを止めてしまう。

 

 これは戦闘音だ。ずっと奥の部屋で、モンスターと誰かが一対一の死闘を繰り広げている。音の規模から推測するに、これは──

 

 「······階層主か···!?」

 

 深層の階層主。それはつまり、想像を絶するほどの怪物。今の自分は果たして、どこまで太刀打ちできるのか。

 

 「······」

 

 武器を大剣に変えた。周りのモンスターを迅速かつ効率的に掃討する。

 

 おで、階層主、見たい。




ラムトン
 お"っ"え"ーー!

リント
 ルー・ガルーなど深層種を知っている理由は、都市外で見掛けた時に旅の同行者に教えて貰ったから。それ以外は見掛けてないため知らない。初めて命の危機という恐怖らしい恐怖を知った(何度も死んでるくせに)。深層種集団戦闘<深層種の階層主観戦(あわよくば)
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