完成しているのは間違っているだろうか   作:新人作家

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久しぶりに一人称視点(後半)で書きました。
設定をちょいちょい忘れそうになる。


第12話

 

 『何を考えている、ロイマン···!』

 『酷い···!』

 

 階層主(ウダイオス)戦の終了後、リントから事情を聞いたリヴェリアとアイズは怒りを露にした。

 ギルド長から課せられた"冒険者の義務"。順次階層攻略を成し遂げつつ、魔石やドロップアイテムの献上という命令(オーダー)。内容的に中堅派閥以上から行われる遠征であるが、義(・)務(・)の(・)た(・)め(・)支援を受けられないにも関わらず、失敗すれば罰則(ペナルティ)を負わなければならない不条理。拘束時間は最低一日72時間(?)の残業代無し。物資は自腹。手当て無し。

 都市外からやって来た無名の上級冒険者(Lv.4)だからこそ、"正規の規則(ルール)"を知らない彼に"偽りの規則(ルール)"を植え付けることができ、延々と搾取できるシステムを確立した。無理難題だとしても彼は"できてしまう"。できてしまうから、違和感を抱くこともできても気付けない。

 まあ、ダンジョンが思ったより楽しくて気にしなかったのもあるが。

 

 妖精(エルフ)の同胞に行う仕打ちに、同種族である男に軽蔑と共に憤慨する。

 

 『そんな義務、もう果たさなくてもいい。私が何とかする』

 『私も、頑張る』

 

 二人の決意は固くなった。

 この二人の話を聞いた仲間や他の有力派閥が直談判(カチコミ)を行い、ロイマン史上ギルド勤めになって初めて体感する地獄を味わうことになる。

 

 そんなことになるとは露知らず──道中の上層でぶっ倒れているベルをアイズに任せて──本拠地(ホーム)に帰ったリントは、よく帰ってきたねぇ!ベル君がいない!おかえりぃ!どうしよぉ!とギャンギャン騒ぐ主神(ヘスティア)を無視して仮眠をとった。事情を話したら話したでおのれヴァレン某ぃ!とギャンギャン騒ぐので。

 

 ベル君は魔法を発現させたらしい。すごいね。

 

 

 

 

 リント・クライムロード(12) Lv.5

 力:F376→D505

 耐久:G288→F315

 器用:F359→D524

 敏捷:F390→D513

 魔力:E→D566

 

 発展アビリティ

 狩人D

 幸運D

 精癒C

 勇猛C

 神秘D

 魔導C

 覇撃D

 覇光D

 加護C→B

 

 魔法

 【バラエティ・ボルト】

 ・速攻魔法

 ・希望属性

 

 【ディア・ミメシス】

 ・吸収魔法

 ・魔力付与

 

 【──】

 ・■■魔法

 

 スキル

 【完成大器】

 ・魔法、スキル、発展アビリティの完成

 ・経験値量増加

 

 【闘争本能】

 ・戦闘時、アビリティの超高補正

 ・傷、体力、精神力の超回復

 

 【一撃覇者】

 ・任意発動

 ・チャージ実行権

 

 【空間収納】

 ・ストレージ

 ・重量過重時における能力補正

 ・収納量は魔力に依存

 

 【技能増幅】

 ・発展アビリティ及びスキル効果増幅

 ・レベル上昇に伴う増加量上昇

 

 (すっっごい伸びてる······!?)

 

 ヘスティアは驚愕した。もう一人の眷属に驚かされることはあるが、彼はその比ではない。

 下層攻略中に起きた事故により、深層行進(デス・パレード)を強いられたリントは襲いかかるモンスターの大群を初見で退けた。

 

 その経験がアビリティに反映されている。

 

 「······死んでないですよ?」

 「そういう問題じゃないやいっ!!」

 

 くそ、コイツ······。無事だったからよかったものの。

 

 「ダンジョンに行くのかい?」

 「行(・)か(・)な(・)い(・)で(・)す(・)。少なくとも今は」

 「······冒険者の義務が無くなるから?」

 「それもありますね」

 

 ギルドとはいえ、発言力のある【ロキ・ファミリア】の副団長(リヴェリア)と幹部(アイズ)を無視できない。ほぼ確実に撤回されるだろう。······義務とかなかったんだなぁ。前世だと懲役ものだが、どうなるのやら。

 ちなみにヘスティアは義務を課せられた初日からギルドに訴えたりと、色々動いてくれていた。全部突っぱねられて自分の無力さを呪っていたが。

 

 「強くても、今回みたいに世間知らずにつけこまれて利用されて騙されたら意味がない。Lv.5だけど最強には程遠いし、ギルドだけじゃなくて娯楽に餓えた神々もいる」

 

 実際、出発も帰宅も早朝か深夜になるため日中に出歩くことは少ない僕だが、武器の整備や道具類(アイテム)の補充で仕方なく昼間に動いている時、神々は僕を見つけては勧誘してきた。

 巻き込まれる形で二人の方にも干渉しているらしいが、【ヘルメス・ファミリア】が動いてくれているお陰で事なきをえている。同じファミリアだったことと、主神の指示(オーダー)らしい。

 

 「そしてこのファミリアにはベルという駆け出し(Lv.1)がいる。腕っぷしで解決できない事態に備えて、僕らを守ってくれるコネを作ります」

 

 他所の眷属を手に入れるとか単純に気に入らないためとかで、神を手に掛ける神もいるくらいだ。し(・)ば(・)ら(・)く(・)戦(・)え(・)そ(・)う(・)に(・)な(・)い(・)の(・)が(・)残(・)念(・)だ(・)が(・)、必要なことだ。

 発展アビリティ【神秘】のゴリ押し。鍛冶系の椿さんは頼めば助けてくれそうなので、それ以外のファミリアに有用な道具類(アイテム)を作成して取引してみる。契約まで結べたら御の字だ。

 

 「手始めに回復薬(ポーション)を売りたいですね。予備(ストック)もあるし、作り慣れてて時間が掛かりませんから」

 「あ、じゃあ僕の神友を紹介するよ!ベル君の行きつけのお店で、住所は──」

 

 

 

 

 【青の店舗】。

 大通りから離れた所にひっそりと佇む道具店であり、主神ミアハと眷属ナァーザの二人で営んでいる商業系の零細派閥。

 他人を思いやり薬をタダで渡すほどの善神で、同じく善神にして零細のヘスティアと気が合い、その伝でベルが通うようになったとか。

 

 今回ここに来たのは回復薬の鑑定依頼。品質と安全性を調べた上で取引したい。一応【学区】でも合格点を貰ってはいるがアレから他の材料を足しているし、何よりベルにも使わせている。中毒症状が出たら大変だ。

 主神(ヘスティア)曰く善神だから騙されることなく誠実に対応してくれるらしい。正直ありがたい。

 

 「こんにちは、鑑定依頼に来ました──」

 「早く出すもん出さんか、ミ~ア~ハ~!!」

 「失礼しました!」

 

 ······なんか、やってた。

 今日は帰ろうかな。

 

 「待て待て、リントよ。待つのだ」

 「おっと」

 

 帰ろうとした矢先、扉の向こうからミアハが現れる。

 

 「あれ?僕の名前······」

 「ヘスティアからはよく聞いておったからな。知っておるぞ。そうでなくとも、そなたは有名人だ」

 

 それでも特徴だけで分かるものなのか。神ってすごい······。

 

 「今日はこの辺で、と思ったが」

 「とっとと帰れ、ジジイ」

 「──ん?」

 

 白髪白髭の恰幅のいい老神が、顎を擦りながらこちらに目を向ける。隣には僕と背丈が変わらない少女が一人。同年代だろうか?目が合った。こんにちは。カウンターで老神を睨んでいるの犬人は、聞いた話だとミアハの眷属か。この人、神に凄い態度だな。

 

 「お主、リント・クライムロードだな?噂の【紅光の竜殺し(フラッシュファイヤー・ドラゴンバスター)】と呼ばれておる」

 「そうですが······って、なんすか最後の」

 「ん?なんだ、知らんのか。十八階層に現れたワイバーンを炎の付与魔法(エンチャント)で仕留めたそうじゃないか。それ以前にも双頭竜(アンフィス・バエナ)を討伐しておる。炎と竜殺しを合わせて【紅光の竜殺し】。にわかに信じられんがな」

 「次の神会で、それが二つ名になることがほぼ決まっておるそうだ」

 

 と、神二柱から丁寧に教えてもらった。世間じゃそんな呼び方をされてたのか。ダサいし頭悪そうに聞こえる。何より炎以外も使えます。

 

 「それより小僧、鑑定依頼を受けにきたのじゃったな。こんなボロ屋敷に来たんなら、回復薬のであろう?儂らに見せて見ろ、特別にタダにしてやる」

 「私からもお願いします。どんなものか、個人的に気になります」

 「ちょっと、勝手なことしないで。Lv.5が作るものなんて高品質なものに決まってる。···言いくるめてこの店で売ってもらうから」

 「これこれ、皆で見ればよかろう。調合のプロが揃っておるのだし」

   

 回復薬が入った瓶を受けとると、ワイワイガヤガヤと奥の部屋へ入ってく。取り残された僕は、一人店の中を見渡した。

 

 数分後。

 

 「貴様が作ったのはただの回復薬なのだな?」

 「まあ、はい。【学区】で学んだ製法を基本(ベース)に自分なりにアレンジを加えました」

 「ゔぁかもんがっっ!ただの回復薬が万能薬(エリクサー)並みの効果を発揮するわけないだろうが!!吐けぃ!自分なりのアレンジとやらを!どんな材料を加え、どんな製法で調合したのか事細かくな!」

 「これディアン、それはルール違反であろう」

 

 興奮して言葉を粗げるディアンケヒトを、ミアハが宥める。

 聞く限り問題なさそうなので、机に材料を並べた。

 

 「材料はこちらです」

 「ふむふむ、既存の材料に天使草を入れたのか。眠気のリスクを別の材料で相殺して打ち消すとは生意気な」

 「ほう。よく思い付いたな」

 「斬新」

 「技術もそうですが、知識も一流の域に達してますね」

 

 やんややんやと褒められる。嬉しい。

 

 「······ん?この赤い液体はなんじゃ?」

 「ああ、人魚(マーメイド)の生き血ですね」

 

 瓶の中でちゃぷちゃぷ揺れる赤い液体に、なるほどと納得する。

 

 「「「「人魚の生き血ぃっ!!?」」」」

 

 納得できなかったようだ。失敗(ファンブル)。

 

 「下層域かつ人魚の特性から採取難易度が高く、それ故に高額で取引される希少素材(レアドロップ)!滅多に市場に出回らん代物をただの回復薬に使ったのか!?」

 「え?ダンジョンに潜れば手に入りますよね?」

 「小僧(こっぞお)ぉっ!!」

 

 目の前の幼童は生き血を使うことに躊躇いがなく、発言から捕獲する術を持っていると察せられる。ディアンケヒトは声を粗げ、他は驚愕した。

 

 「······そういえば、ギルドから生き血の取引がありましたよね」

 「それならうちのファミリアにもあったぞ。何やら大量に入手したから買わないかと誘いが来たな」

 「市場価格より一割減だったけど······高くて買えなかった」

 「ふん!安くなろうが高級品、貧乏ファミリアに相応しい代物じゃないわ!こうも安されると疑ってしまうが、取引相手があのギ(・)ル(・)ド(・)だったから儂らで買い占めたわ!」

 

 くどいようだが、人魚の生き血は希少素材。ギルドで売却する場合予め設定された金額となり、交渉での値上げは見込めない。しかし、医療系や生産系での売却だと、交渉によってはギルドより高額で取引できる。

 そのため採取物(ドロップアイテム)は、【ディアンケヒト・ファミリア】などの商業系に持ち込むのが一般となっている。

 

 「ギルドから取引の提案が来たってことは、どこぞの間抜けか都(・)市(・)外(・)か(・)ら(・)来(・)た(・)世(・)間(・)知(・)ら(・)ず(・)が儂らではなく、ギルドに持ち込んだからだな······ん?」

 「「「······ん?」」」

 

 ギルドが生き血の取引を持ち掛けた。

 ↓

 商業系ではなくギルドに大量に持ち込んだ人物がいる。

 ↓

 人魚は下層のモンスター、行けるのは第二級冒険者以上から。

 ↓

 ···目の前の幼童は最近都市外からやって来たLv.5。下層探索ができるほどの実力を保有し、通常の回復薬に生き血を混ぜることに抵抗がない。

 

 「······?」

 

 「「「「······」」」」

 

 四人は顔を見合わせコクりと頷いた。リントに向いて一言。

 

 「「「「お前かっっ!!」」」」

 

 その後、ギルドから課せられた"冒険者の義務"を話をし、事情を知った四人はそれぞれ不快感を露にした。

 

 「阿呆め。金のなる木を潰しにかかるとは」

 「酷い、酷すぎます。人がしていい所業じゃない···!」

 「冒険者個人よりも利益を優先したのか。右も左も分からぬ幼子の無知を利用して」

 「才能の芽を摘む行為。世界の損失」

 

 

 

 

 

 

 

 「ほう。それで?」

 「ギルドに直談判(カチコミ)に行った。それぞれのファミリアと契約を結べたのは、嬉しい誤算だったね」

 

 その際両派閥から改宗しないかと熱烈に誘われたが断った。ダンジョン探索中心にやっていきたいから。

 

 ······ん?

 

 「仕事はもういいの?」

 

 目の前の女性─椿さんが鍛冶道具を片付ける。三度の飯より鍛冶を優先するこの人が珍しい。

 

 「今からギルドに行く。手前の契約相手を理不尽に虐げ搾取した報いを受けさせる」

 

 愛用の刀を握り、工房を飛び出した。

 そういえば雑談すれど、義務の話をこの人にしてなかったな。してたら、契約を結んだ時に斬りに行ってたのかな?行動力が凄い。

 

 じゃなくて!

 

 「斬るのはダメだからね!?言葉で解決しよ!」

 

 追いかけないと、ギルドが血の海になる!




小話
 リントの担当はエイナだったが、義務に憤慨しギルド長に反発したことで外された。今でも気にかけている。ミイシャはギルド長が冒険者を搾取している噂を友達に流し、換金担当はこっそり換金額を上げている。ギルド職員内にはリントの味方が多い。
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