水柱の継子(自称)   作:ポケットピスケット

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番外編
冬と言ったら?


 

「さぁ!お館様主催 第1回 鬼殺隊雪合戦の始まりだぁぁぁ!」

 

扇子をマイク代わりに掲げ、声を張り上げる粂野さん

“緊急招集”の名目で集められた柱と継子たちは、揃いも揃って困惑の表情だ

 

「一体、これは…」

 

小さく呟いた悲鳴嶼に、柔らかな声が返る

 

「皆で、たまには息抜きをと思ってね」

 

嬉しそうに微笑むお館様

 

「実況は私、粂野国近!そして解説は、蟲柱・胡蝶しのぶ様だ!」

 

「よろしくお願いします」

 

にこにこと上品に微笑むしのぶは、しっかりと炬燵付き実況席に腰を下ろしている。

思わず声を荒げた

 

「ちょっと待って!?なんで実況席ぬくぬく仕様なんですか!?僕たち外なんですけど!?」

 

「風邪をひいてしまっては大変ですから」

 

「その理屈なら全員中止ですって!!!」

 

「優勝チームには…お館様との夕餉をご用意!!」

 

一瞬、空気が変わった

 

「お館様と…」「食事だとォ…」

 

目の色が変わる柱たち、お館様が関わるとすぐ本気になるなぁ…この人たち…

 

「早速、ルール説明だ」

 

基本ルール

各チーム、自陣に雪だるまを1体作る(制限時間5分)

 

攻撃ルール

雪玉のみ使用

手で直接壊すのは禁止(接近戦NG)

顔面禁止

近距離(2m以内)禁止

 

勝敗について

雪だるまが最後に残っていたチームの勝利

 

「以上だ!そしてチーム分けについては、事前にこちらで決めてある!

 

不動の守りで雪だるまを守りきるっ!

悲鳴嶼・時透兄弟・玄弥 → てっぺきチーム

 

柱と継子のコンビネーションを見せてやれ!

宇髄・煉獄・獪岳・錆兎 → ごうらいチーム

 

同世代の仲の良さは如何に!?

不死川・伊黒・冨岡・岬 → かぜみずチーム

 

なお、恋柱・甘露寺蜜璃様は…握力が強すぎるため、雪玉を粉にしてしまうという理由で不参加となっております。ご了承ください!」

 

少し離れた場所で、蜜璃ちゃんがしょんぼりしている

 

「参加したかったわ…」

 

その声を背に、雪原に緊張が走った

お館様が静かに告げる

 

「…怪我のないようにね」

 

粂野さんが大きく手を振り上げる

 

「位置につけぇぇぇ!!」

 

雪が軋む音と共に、3チームが散開した

…鬼殺隊、冬の戦いが今、始まる

 

「雪だるまを作るところからだよね」

 

「海斗と冨岡で胴体を。俺は、頭を作る。小芭内は胴体の周囲を盛って補強だァ」

 

実弥の指示に従って、腰より少し下の高さの胴体を作り、安定しやすいように底を平らに整えたて置く

その上に頭を乗せた、接合部分のところを雪で固めていく

 

「よォし、後は全体的に軽く叩いて補強するぞォ」

 

「やけに詳しいな」

 

「昔は雪だるま作る度に弟たちに壊されてきたからなァ」

 

「理由が悲しい」

 

「強度を上げるしかなかったァ」

 

「雪だるまで鍛えられる長男力って何?」

 

実弥は鼻で笑う

 

「作戦だが…俺と小芭内で攻撃に回るゥ。海斗は中間で遊撃。冨岡は守りだァ」

 

「承知した」

 

ペタペタと雪を叩いていると笛の音が聞こえた

 

「そこまで!胡蝶様、各チームの雪だるまを見てどうでしょう」

 

「そうですね

てっぺきチームは、上下のバランスが同じように見えますが大丈夫でしょうか

ごうらいチームは、何故か3段の雪だるまを作っていますね。目立ちますが倒れないか心配です

かぜみずチームは、良いバランスで作られてます。これは期待できそうです」

 

笛がもう一度鳴る

 

「構えぇぇぇ!!」

 

実弥と小芭内が前線へ走り

義勇は一歩下がり、雪だるまの横に静かに立つ

 

「オラァ!!」

 

実弥の初撃。パシュッっと鋭い軌道

 

「ちょ、いきなり本気かよ!」

 

獪岳が身を引く

 

その時。ぽすっ

 

「えっ?」

 

背中に柔らかい衝撃

振り向くと、義勇がわずかに目を逸らしていた

 

「…すまん。手が滑った」

 

「守護神が味方撃ってどうするの!?」

 

「手が滑った」

 

「2回言わなくていい!!」

 

前線から実弥の怒声

 

「おい海斗ォ!遊んでんじゃねェぞ!!」

 

「被害者なんですけど!?」

 

てっぺきチームは、悲鳴嶼さんが圧倒的な安定感で雪だるまを守る

時透兄弟も前衛で軽やかに雪玉を避けつつ投げ返す

 

「おおっ、なかなかやるな…!」

 

ごうらいチームは3段雪だるまを杏寿郎が守っていた

宇髄さんが派手に回転しながら雪玉を投げ、獪岳が援護射撃をしている

 

「ふはは、俺様の派手な一撃を喰らえ!」

 

錆兎は冷静に観察して、狙いすまし、雪玉を義勇の顔の側面に掠らせた

 

「うわっ!?今のやばっ!」

 

「……当たっていない」

 

「ギリギリだったでしょ今!!」

 

小芭内が遠くで肩を震わせていた

 

開戦からわずか数分

雪玉が飛び交い、笑い声と怒号が入り混じる雪原

 

「派手にいくぞォ!!」

 

宇髄さんが高く跳び、空中から雪玉を連投していた

杏寿郎も真正面から堂々と投げ込む

 

「真正面突破だ!!」

 

「ちょ、待て!それ守備薄いぞ!」

 

錆兎が冷静に指摘するが、その瞬間

てっぺきチームの雪だるま上段が、ぐらりと揺れた

 

「……揺れましたね」

 

実況席のしのぶが穏やかに呟く

 

「おっと、これはぁ!?」

 

玄弥が慌てて、支えようとするが上段が虚しく落下した

 

ぼすん

 

静かに雪へ沈む頭部。一瞬、雪原が静まり返った

 

「……あ」

 

無一郎がぽつりと洩らした

 

「……バランスが同じ大きさでしたからねぇ」

 

しのぶの冷静すぎる解説

 

「まだだ」

 

低く響く声

悲鳴嶼さんが、ゆっくりと雪だるまの前に立つ

 

「胴体は守る」

 

その背後で玄弥が必死に雪を盛り直していた

 

「今だァ!!」

 

左右から実弥と小芭内の同時投擲して、連続ヒットし胴体に亀裂が入った

 

「うわっ、ひび入った!」

 

有一郎が思わず叫んだ

 

「派手に崩れそうだぞ!」

 

宇髄さんが煽る

そして…ぐしゃと雪だるまが崩れ去った

 

「てっぺきチーム脱落ぅぅぅ!!」

 

粂野さんの高らかな宣言が聞こえ、悲鳴嶼さんは静かに手を合わせた

 

「…雪だるまよ、安らかに」

 

「まだ5分も経ってないんですけど!?」

 

玄弥の悲痛な叫びが響いた

実況席では

 

「これは波乱の展開ですね」

 

「あっさり城落ちだァ!!」

 

残るは

ごうらい vs かぜみず

 

しかしその時。ごうらいチームの3段雪だるまが、じわり、と傾き始めていた

 

「…あれ、自重で倒れそう」

 

冷静に指摘すると

 

「派手さを優先しすぎたかァ!?」

 

宇髄さんが振り返る

 

「気合で支えろ!!」

 

杏寿郎が全力で両手支えているが大混乱の最中

 

「勝ち確だなァ」

 

実弥がにやりと笑った。その時

 

ゴスッ

 

「……?」

 

実弥の背中に雪玉直撃し、振り返ると

 

「誤射だ」

 

小芭内が真顔。

 

「誤射で背中狙うかァ!?」

 

さらに、ぺちっと、今度は実弥の肩に

 

「……風で逸れた」

 

冨岡義勇が無表情で言う

 

「無風だァ!!」

 

思わず腹を抱えて笑ってしまった

 

「仲の良さは如何に、ってこういう意味!?内紛!?」

 

実弥のこめかみがぴくり

 

「後で覚えとけよテメェらァ…」

 

その瞬間、正確無比な一投が遠くから飛んできた

かぜみずチームの雪だるまに直撃した

 

「まずい!守れ!」

 

伊黒が叫ぶ

だがその前に、義勇が静かに立った

 

次の瞬間

ヒュン、ヒュン、ヒュン

 

三連投して、正確に錆兎が投げた雪玉を空中で撃ち落とす

 

「…防御は任せろ」

 

「冨岡、急に主人公やめろォ!!」

 

実弥が叫ぶ

その頃、実況席では

 

「これは…水の呼吸 雪型ですね」

 

しのぶが真顔で適当なことを言っていた

 

「支えろォォ!!」

 

杏寿郎が両腕で3段雪だるまを抱える

 

「派手に傾いてるぞ!右!右だ!」

 

宇髄さんが叫ぶものの

 

「……重心が高すぎる」

 

獪岳が静かに呟いた次の瞬間

 

ぐらっ

どしゃぁぁぁぁぁん!!

三段まとめて雪崩落ちた

 

「……自滅だァァァ!!」

 

粂野さんの絶叫が雪原に響く

 

「派手さを優先しすぎましたねぇ」

 

しのぶがにっこりと笑った

 

「勝者ァァァ!!かぜみずチーム!!」

 

お館様が穏やかに微笑む

 

「皆、楽しめたようで何より。では、かぜみずチームは後ほど夕餉へ」

 

雪原に、笑い声が広がった

 

その日の夜

静かな座敷では、灯りは柔らかく、外にはまだ雪が降っている

部屋の中央には、温かな湯気を立てる料理の数々

 

「今日はよく戦ってくれたね」

 

かぜみずチームの4人は正座して並ぶ

実弥はいつもに増して背筋が伸びている

小芭内は無言だが、微妙に緊張してるみたい

義勇はいつも通り静か

 

料理は、温かな鍋、炊きたての白米、煮物、焼き魚、吸い物

 

「……豪華だなァ」

 

実弥がぽつり

 

「ご褒美だからね」

 

お館様が微笑み、伊黒が静かに呟く

 

「…雪だるま一体で、ここまで差が出るとは」

 

「だから本気出したんだろォ」

 

実弥が肘で小突く、食事が始まった

 

「いただきます」

 

四人の声が揃う。しばらくは静かな時間だったが

 

「うまい」

 

義勇が真顔で言う

一同、止まる

 

「お前が感想言うの珍しいなァ」

 

「事実だ」

 

伊黒が小さく笑った

 

「…今日は機嫌がいいんだな」

 

「勝ったからな」

 

実弥がにやりと笑った

座敷に、また小さな笑い声が広がった

外では、雪が静かに降り続いていた

 

…鬼殺隊、冬の夜

穏やかに、更けていった

 




お久しぶりです
まだまだ、寒い日々が続きますがご自愛ください
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