こういうのはブルーサイドって言うのかな?()
隣向日葵のネタバレってほどの要素は無いかな。
言うほど百合か?とも思うけど一応注意書き代わりにタグは付けときます、ノンケズラブも()
作者は百合タグ事情もボイロタグ事情も素人なので、お手数おかけしますが何か感じ取った方はしれっとタグ編集をお願い致します。
連載している拙作『隣の君と日を向いて』のパラレルIF世界線的なやつです。
断じて番外とか裏設定とかではありません。
「最低やんけ、ウチ……」
月夜の中で、独り茜は自己嫌悪に唇を噛む。
チラリと目を向けるのは、隣で穏やかな寝息を立てる妹の姿…
〜『贐』〜
自分は所謂『明るい人柄』であっけらかんとしてると言われる。
しかし、よぎるのは史上最大の姉妹喧嘩の時に葵に言われた言葉だ。
『表裏が無いと評されるが、気に食わないことにすぐグチグチと拗ねる』
あの時はお互い切羽詰まっていて、勢いで出た売言葉買言葉なのは勿論分かっている。
でもあの言葉通り、その本質はねちっこいのかもしれない……
そんなことを思いながら、茜は隣の葵にため息を吐く。
見るだけで感触がよぎる程に慣れ親しみ、撫で回してきた滑らかな髪、瞼を包む繊細な睫毛に紅を差す珠のような頬、そしてどこか安らぎの笑みを感じさせる…つややかな口元……
「葵…」
仮にこの気持ちを認めるとして、今まで時間もチャンスもいくらでもあった。
たかだかこれくらいの出来心なら、あの頃であればほんの悪戯で赦されたであろう。
それなのに、何故…よりにもよって、葵が勇気を湧かせて踏み出した『今』になってこの衝動が芽生えてしまったのだろう。
夏の夜、葵とアイツは積み重ねた互いの気持ちを確かめ合い、そして結ばれた。
寂しくないとは言い切れないけど、それでも喜びが爆発するほどに勝っていたのは鮮明に覚えている。
自分が手を牽いていた葵の姿を長く見てきたからこそ、今の彼女が胸を張って自分以外の…況してや異性と幸せな笑顔を交わしている姿は心から嬉しいし、『アイツ』のことも、新しいクラスで知り合って人となりを知って、葵との意識し合っている距離感を知って…その過程を見てきた自分は親友として好いているから、葵のことも信頼して任せられる。
明確にその想いがあるうえで、自分は隣の寝顔に惹き込まれてしまっているのだ。
内向的だけどお淑やかでしっかり者な葵は、元々双子の妹ながら大人びた顔つきをしていたが、彼と出会ったことで、また新たな魅力を開花させたのは目に見えて明らかだった。
大切な人を支えようという覚悟のような凛々しさ。
特別な相手の前では自分も特別でありたいと洗練される色香。
それでいて大切にされている自分自身を噛み締める年相応の幼さ…
その全てに『可愛い妹』以上の価値を見出している姉…
「最低やんけ、ウチ……」
自己嫌悪に唇を噛む。
以前、自分達は珍しいと言われることもあった。
双子で兄弟姉妹をーー況して中高生の年齢でも強く意識しているのは珍しい、と。
自分たちは両親の都合もあり、本当の心の拠り所と言えるものがお互いしかいなかった期間も長い…
自分より少し生まれが早いから頼もしい『お姉ちゃん』と思ってくれる『妹』。
自分の方が少し生まれが早いから『妹』のことを支える使命を抱く『お姉ちゃん』。
それもあってのことだろうとなんとなく納得したものだが、今にして思えば自身に言い聞かせる誤魔化しも含まれていたのかもしれない。
現に自分から未だに『お姉ちゃん』と呼び慕い、昔から毎晩ぴったりと変わらずに寄り添って眠ってくれる彼女とて近しい気持ちはあるのではないか…そんな甘ったれた期待すら燻っているのだ。
『姉妹やし、女の子同士やし…』
『家族やしほっぺくらい…』
未だにそんな情けない言葉がよぎる、これが頼られるべき姉の姿だろうか。
何も知らずに隣で眠る無垢な天使とそっくりの顔をしていながら、今の自分はなんと卑怯で醜い悪魔そのものではないか。
長々と考えてしまったけど……
もうやめよう。
茜は改めて思い直す。
葵のことも、アイツのことも大好きや。
その幸せは、絶対に壊さへん。
葵の赤く熟れた気持ちを守りたい。
その為にも、茜自身の青臭い心はここで捨てなくてはならない。
そう言い聞かせながらも行動に起こそうというのは、『ケジメ』と言うにはあまりにも甘く都合の良い考えだろう。
それでも構わない。
いつか知られた時、拒絶されればそれもまた訣別だ。
こんなにも醜い悪魔を祓うのにさえ代償が必要ならば、最後のわがままくらい貫こう。
「ごめんな、葵。こんな身勝手なお姉ちゃんで…」
柔らかな寝息を立てる隣の葵ーー『最愛の』妹の頬を数度撫でる。
起きる気配はない。
…もはや紅潮する顔に構う暇もない。
高鳴る胸を握り潰す。
それは…自分自身に向き合えずに機を失った悔しさ、これ見よがしに想いを満たせる一抹の嬉しさ、それらを恥じる程の浅ましさ、親友も妹をも蔑ろにする自身への怒りと失望……
その全てを息と共にごくりと呑み、顔を寄せた。
・・・
口唇に触れる、柔らかな感触と匂い。
数秒、その頬の存在を確かめてから、茜は離れる。
「へへっ…『好き』やったで。」
自分であって自分じゃないもう一つの感情は、きっぱりと過去に押し流す。
「勿論、これまでもこれからも大好きやけどな……」
そして、最もよく知っているいつもの感情を取り戻す。
こんな遅くにまでしょうもない事を独りで考え、くだらない罪を重ねたツケだ…明日はきっと、呆れ返った天使からのリアルバイブレーション付き爆音モーニングコールが騒々しくも幸せな目覚めを迎えてくれるだろう。
そんな葵と学校に行けば親友…あかりとゆかり、そして喧しい友達どもに囲まれたアンタとの他愛ないお喋り。
そんなアンタと葵はぴったり隣り合って前を歩く。
そしてウチはそんなアンタらの背中を押す良いお姉ちゃん。
迷い拗れたひと時の過ちを捨て去っても余り溢れる程の『幸せ』が、明日にはウチを待っている。
せやから……
「また明日な、葵…」
そしておやすみ、悪魔だった自分……
〜『贐』〜 E N D
弊茜ちゃん、というか隣向日葵の茜ちゃん、構想とかチェックしてると、想定してた本作の葵ちゃん以上に妹への感情が拗れたお姉ちゃんに片足突っ込んでるのよ。
まぁ本作の葵ちゃん自体かなり『庇護欲そそるヒロイン』感強めに意識してるフシはありますけどもね()