こんな所で話数伸ばしてたら後が少なくなっちゃう
心が躍る/微かな緊張/会場へ向う――肩に担ぐWOM/”
歩幅が広がる/小走り気味。ステップでも踏んでいるかのよう。
灰色の混じる白灰色の髪――動くたびに靡く/燃えカスが空を舞うように。
見える――会場の光/
「大丈夫か?」ポケットの中から顔を出すウフコック。
「大丈夫、落ち着いてるだけ」
深呼吸/四度呼吸――吸う/吐く/吸う/吐く。
相手は『魔弾の射手』――得点有効エリアに魔弾と称した、ドライアイスを作り出す魔法。
エリア内――全範囲が彼女の射手になる可能性/一方こっちは、ただのサイオン波をぶつける魔法。
それ以外の手段=ユニホームのポケットにあるストレージ/イライジャの作った一つのオリジナル魔法。
「練習を思い出せ、君の
「解った、練習の通りね」反復するように呟く。
ここ最近まで周囲を把握でき、電子機器を遠隔操作できる便利な肌としか思っていなかった、だが別の『機能』を聞いて活用していた。
使っていなかった『機能』――体感覚の
私は私自身を自在に”
ひたすら肌を使い練習/その影響=識閾値は60%を越えた。
大会委員の呼び声――出場。
髪を後ろで纏める/ウフコックを
「妖精姫の七発目の
緊張と興奮の隙間から漏れた言葉が響いた。
**/*****
会場の熱気/観客の視線――どれも七草真由美に向いている。
他の音が聞こえていない/冷たい氷の表情/ウェーブのかかった髪/その瞳――狙い澄まされた銃口と同じ。
静かに射台に上がる――立ち姿は美しく、妖精姫と謂われる理由がわかる。
私も射台に向う――七草真由美とは別のざわめき/どれも一点に注がれる視線/視線の位置――肩に担ぐ巨大なCAD。
一般的に使う競技用CADとはあまりにも違いすぎる。
白の小銃型CADを持つ七草真由美――黒の巨大なCADを持つ私/対照的過ぎて可笑しい。
射台に上がりる/もう一度、息を大きく吸う――吐く/意識を統合する。
――ウフコック。
(なんだ?)
――私、出し惜しみはいや。
(
――ええ
(力を抜いて、力を出すんだ。脱力し、肉体を操作し意思を優先させる。それが無理ならドクターのやり方だ)
――考える必要はない。感覚すればいい。でしょ。
(あぁ、始まるぞ)
肩の力を抜く。
全身を私の物と考える――感覚する。毛細血管に流れる血液/筋肉の収縮/肺の広がり方/瞳孔の動き。
私の体に起こる全ての事柄を感覚する。
会場に響く――開始の角笛/CADを構える――WOM。
五つのライトが時を刻む――最後の一つが変わる。
甲高い音と共に試合が開始される。
同時に発射されるクレー――宙を踊る/交差する赤と白――急速に加速する世界。
頬当てで構えるCAD――銃口が光を放つ/独特な音と共に放たれるサイオンの弾丸。
赤と白が交差する中の白を撃ち砕く――軽いプラスチックのような砕ける音/花びらの様に散っていくクレー達。
加速した意識の中、次の標的に銃口を向ける。
標準機に移る半透明なクレーの姿――標準補助の行き過ぎた予測/それをなぞる様に飛んでくるクレー。
素早く次の標的へ/白に被さる赤――真下から放たれる弾/ドライアイスの弾丸=七草 真由美の
音速に達する白い弾丸たち/ありとあらゆる方向から飛来する=『魔弾の射手』の
さまざま方向より視界を覆い隠す白と赤、ここまでの多さだと標準補助も役に立たない。
肌を酷使し
肌が捉えるクレーの数/ドライアイス――同時に感じるサイオン波の流れ。
代謝性金属繊維研究で偶発的に生まれた機能――サイオンを自在に捉えられる機能。
機能を駆使しサイオン波を検知する――ウフコックが計算を開始する。
飛び交う者達/ドライアイス/クレー/光の波/クレーを次々撃ち砕き、残骸の凍雨を降らせる。
ウフコックが計算を終わらせる――事前に用意した作戦/サイオンの波の
私の双眸には焦りが現れだす――前年度より『魔弾の射手』の速度が上がっていた。
計算を大きく外れた速度――肌が急速に発達するのがわかる/意識の
周囲の声援も喧騒も何もかも遅く、長く、聞こえてくる。ただしっかり聞こえてくる己の心臓の脈動。
得点が離される――30対60
脳や体が沸騰するように熱を佩びる/どこかより聞こえてくる囁きたち。
おお、
誰だかわからない囁き/野太い頼りになりそうなウオークライ/どこかから聞こえる声。
さらに点が離される――48対78
通常の肉体
ドライアイスの弾丸――赤が有効エリアに入ったとほぼ同時に撃ち落す。
血液が煮え滾る/意識を保ち眼球を必死に動かす――サイトにクレーを入れ引き金を引く。
記憶の片隅からあるオペラの情景が思い出される――重なる状況/曲との同一性。
無意識に行う暗示/思い出せない最後の弾丸の行方――口ずさむ曲。
得点――50対95/ウフコックの声。
(
ウフコックの勝利への
肌が教える――サイオンの嵐/勝利への予感。
WOMに押し込む――
隠すことのない歌声が会場に響く/吊りあがった口から漏れる単語。
「
CADの薬室に火が入りる――会場に大きな火薬の爆音を響かせた。
**/*****
「何だこの曲?」
レオの疑問/会場に響く歌声/カウンターテノールの音域。
発声者=昨夜の灰色の髪の少女/サイオンで髪が靡き燃えカスが舞っているよう。
「クラシックよ、馬鹿」
エリカの罵声/それを聞いたレオが怒り出す/美月から訂正。
「エリカちゃん、これオペラだよ」
「えっ」
「お前も間違えてんじゃねえか!」
「なによ!」
子供のような言い争い/注意が入り静かになる。
「で、これ何の曲なんだよ?」疑問に戻るレオ。
「それ私も気になる。ナナの歌ってる曲」同調するエリカ。
「カール・マリア・フォン・ウェーバーが作曲した全3幕のオペラだ。曲名は『魔弾の射手』」
俺が答える/レオとエリカの驚いた顔/深雪と雫は食い入るように見ている。
「達也さん、よく知っていますね」ほのかの褒誉の視線。
「魔弾の射手って会長の使っている魔法の名前よね?」
「ああ、同じ名前だ。恐らく、......彼女なりの皮肉なんだろう、この状況も『魔弾の射手』の曲と似ている」
「ふーん」
関心と不思議さの混じり答えるエリカ/七草会長とナナの点数が離れる。
49対91
会長の勝利はあと僅か――だが不安/あの歌声に隠れている僅かな『音のずれ』
他の人間は殆ど気づいていない――達也には解った/あの歌の正体。
(自己暗示か.....)
ナナの周囲のサイオンが歌声に合わせ、複雑に螺旋を描く。
美月は眼鏡を外し、そのサイオンの動きに見惚れる/深雪も歌の作用に気づく。
「お兄様、あの歌.....」
「ああ、サイオンを使用した自己暗示だ。自分だけに調整されている。稀有な
会長との点数差が離れる/もう追いつけない状況――状況は急激に変わった。
彼女のポケットから取り出される
彼女のCADの変化――形を大きく変える/銃口の先から機関部まで変形したCAD――熱気が漏れる。
硝煙の匂いが会場に一瞬で満ちる――続けざまに発砲/有効エリアに向け飛翔する鉄の弾丸。
連続七発の弾丸が撃たれる/観客の何人かは耳を押さえている。
会長も轟音に驚き肩が揺れる――体勢を立て直し『魔弾の射手』の銃座を有効エリアに配置。
銃座は現れず。冷却された冷気が漂う。
CADの故障=否定/原因――ナナの撃ち続けたサイオンの弾丸。
有効得点エリアを彼女のサイオン弾が掻き回していた。その影響=エリア内での魔法が使用不可能な状況になっている。
エリアに入ろうとする鉄の弾丸――唐突に弾道の軌道を変える/七発の弾丸/エリアの周囲を回る。
一発――有効エリアに飛び込む/飛び込む瞬間、魔法の干渉力が消える/発射された運動量を保持したまま突入。白のクレーを撃ち砕く/エリアの外に出る――再度、魔法が干渉を始め運動能力を取り戻す/複雑な軌道/宙を踊り上に飛ぶ。
先日、開発した飛行魔法/酷似した魔法――所々違う/飛行するのは魔法使用者ではなく使用物/予兆なく消える干渉力――残る使用前の運動力/最も違う点――飛行対象が複数あること/驚きで目が見開かれる。
達也の
それは「飛行」ではなく「移動」――弾丸は指定された位置に向かい移動を行っていた/指定位置に達する時、発射された運動エネルギーを再付与されその運動能力を失われず移動する。
あの大きさのモノなら人間を浮かせるよりも容易――彼女があの術式を作ったのなら賞賛を送るしかない。発想と作戦の勝利と言えた。
だがこの競技では問題だ。
「雫、あれは点数に入るのか?」
「たぶん入る。一応、魔法を使用した物体で破壊しているし。あれがダメならエイミィ
の魔弾タスラムもダメになる」ナナのプレーに驚嘆するように答える雫。
会長もこれにはどうしもできない――エリア内/サイオンの嵐で魔法の使用は不可能。
戦術を変更――有効エリア外から『魔弾』を撃ちこむ/マルチスコープもサイオンの影響でノイズが入る。
銃座/エリア外に出現=発射されるドライアイス――真っ直ぐエリア内へ。
横から飛び込む物体――鉄の弾丸/ドライアイスを真横から撃ち抜く/音を立てて砕ける。
他の場所に銃座を設置/発射――一発を除き六発の鉄の弾丸の群れがドライアイスを撃ち砕く。
破片を飛び散る/宙を踊る白の弾丸――それを喰らう散らかす鉄の弾丸たち。
焦燥感に駆られる会長――銃座を乱雑に設置/発射。
真っ直ぐ有効エリアに入る――赤のクレーに飛んでいく/横から白のクレーが入る――白クレーを粉砕=鉄の弾丸。
クレーの破片に当たりる/軌道がずれる――どんどんナナのペースに巻き込まれる。
複数設置した銃座/を鉄の弾丸が砕く――会場に響く歌声。ドライアイスの割れる音/奏でる
徐々に歌声が大きくなる/それに連れ彼女のペースが落ちだす。
設置された銃座/一つ赤のクレーを撃ち落す――彼女のサイオンが底を突き出す。
原因=七つの弾丸たち/常駐型魔法――弾丸たち/彼女のサイオンを喰らい続ける。
続けざまにドライアイスがエリア内に入る/三つ同時破壊――残り一つ。
鉄の弾丸たち/動きが激しくなる――複雑な軌道を描く/ドライアイスを有効エリアに入れない。
一発だけは有効エリアに入り直線軌道で白のクレーを破壊する=
ドライアイス/出現し飛ぶ――付近の弾丸が群がる。
近づく弾丸――真横から現れる/ドライアイス――弾丸に当たり軌道が上に上がる――標的の上部を掠める/錐揉みするドライアイス。
他の六発が撃ち漏らしを感知/群がる――ドライアイス=有効エリアに入る/弾丸たちの干渉力が消える/直線軌道に切り替わる。
ドライアイスを狙う――一直線
一発――ドライアイスを掠める。
二発――三発目に当たる/音を立て砕ける。
四発――目測を誤る/エリア外に飛んでいく。
五発――距離が開いている/追いつけない。
六発――後部に当たる/ドライアイスが縦に回転する。
(ダメか)
心で呟く――ドライアイスの速度が落ちる/近づく赤のクレー――先端の勢いで砕く。
点数――95対100
会場を揺るがす声――観客の声援/どれも興奮、熱狂の色/拍手と歓声に支配される。
**/*****
最後以後の最後に撃ち漏らす――敗北/悪い気はしない/疲労と倦怠感/私を襲う。
「いい試合だったわ、ナナさん」
七草真由美の声/緑のゴーグルを外す――ワインレッドの瞳/私とは違う色。
クローム・オレンジ変化する
「そうですね、私も楽しかったです。七草先輩」
微笑む七草真由美――疲労の色。
「あの魔法は彼方が作ったの?」
「知り合いが作った物です。......思いのほか疲れました。次に試合があったら負けてますよ」
「そうね、私もこれ以上続いたら危なかったかも」
会話が続く――双方疲れが見えている。
「私はマックスには成れず、道化のカスパールに成ってしまいました」
悔しさの呟き/思わず漏れる――七草真由美は告げる。
「彼方は
差し出される手――握手/僅かに汗ばんだ手。
「他もがんばってね、”
「彼方もマックス」
私の本戦スピード・シューティングはこれで終わった。
どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。
思いのほか書いてて楽しかったこの回。
参項になる資料が小説やアニメが少なくて加熱して書いちゃった。
オペラの魔弾の射手で皮肉を言いたかっただけなのに。
誤字脱字報告。感想、意見、要求などはどんどん受け付けます。