マルドゥック・マジック~煉獄の少女~   作:我楽娯兵

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やばいよ、やばいよ。
こんな所で話数伸ばしてたら後が少なくなっちゃう


プリモ・ピアット6

 心が躍る/微かな緊張/会場へ向う――肩に担ぐWOM/”私しかいない道(ウェイ・オンリー・ミー)

 歩幅が広がる/小走り気味。ステップでも踏んでいるかのよう。

 灰色の混じる白灰色の髪――動くたびに靡く/燃えカスが空を舞うように。

 見える――会場の光/観客(ギャラリー)の喧騒。立ち止まり気分を落ち着かせる。

 

「大丈夫か?」ポケットの中から顔を出すウフコック。

 

「大丈夫、落ち着いてるだけ」

 

 深呼吸/四度呼吸――吸う/吐く/吸う/吐く。

 相手は『魔弾の射手』――得点有効エリアに魔弾と称した、ドライアイスを作り出す魔法。

 エリア内――全範囲が彼女の射手になる可能性/一方こっちは、ただのサイオン波をぶつける魔法。

 それ以外の手段=ユニホームのポケットにあるストレージ/イライジャの作った一つのオリジナル魔法。

 

「練習を思い出せ、君の人工皮膚(ライタイト)は俺を作った場所で生まれた。うまく活用するんだ」

 

「解った、練習の通りね」反復するように呟く。

 

 ここ最近まで周囲を把握でき、電子機器を遠隔操作できる便利な肌としか思っていなかった、だが別の『機能』を聞いて活用していた。

 使っていなかった『機能』――体感覚の加速装置(アクセラレーション)

 私は私自身を自在に”操作(スナーク)”出来る。

 ひたすら肌を使い練習/その影響=識閾値は60%を越えた。

 修理(メンテナンス)の思い出す――ドクターいわく、肌に合わせ脳が変質した/他、識閾値が他人と違うなどを聞かされた/重力(フロート)電子撹拌(スナーク)の識閾値が綺麗に拮抗し、そのうえ魔法演算領域をも備える貴重な状態だそうだ。

 大会委員の呼び声――出場。

 髪を後ろで纏める/ウフコックを変身(ターン)させる――変光(カメレオン)ゴーグルが現れる/アジュール・ブルーからシュヴァインフルト・グリーンに色が変わる/それで目を覆い会場へ出た。

 

「妖精姫の七発目の魔法の弾丸(フライクーゲル)は何処に向いますかね」

 

 緊張と興奮の隙間から漏れた言葉が響いた。

 

 

 **/*****

 

 

 会場の熱気/観客の視線――どれも七草真由美に向いている。

 他の音が聞こえていない/冷たい氷の表情/ウェーブのかかった髪/その瞳――狙い澄まされた銃口と同じ。

 静かに射台に上がる――立ち姿は美しく、妖精姫と謂われる理由がわかる。

 私も射台に向う――七草真由美とは別のざわめき/どれも一点に注がれる視線/視線の位置――肩に担ぐ巨大なCAD。

 一般的に使う競技用CADとはあまりにも違いすぎる。

 白の小銃型CADを持つ七草真由美――黒の巨大なCADを持つ私/対照的過ぎて可笑しい。

 射台に上がりる/もう一度、息を大きく吸う――吐く/意識を統合する。

 

 ――ウフコック。

 

(なんだ?)

 

 ――私、出し惜しみはいや。

 

了解(コピー)。じゃあ、練習どうりにやるぞ)

 

 ――ええ

 

(力を抜いて、力を出すんだ。脱力し、肉体を操作し意思を優先させる。それが無理ならドクターのやり方だ)

 

 ――考える必要はない。感覚すればいい。でしょ。

 

(あぁ、始まるぞ)

 

 肩の力を抜く。

 全身を私の物と考える――感覚する。毛細血管に流れる血液/筋肉の収縮/肺の広がり方/瞳孔の動き。

 私の体に起こる全ての事柄を感覚する。

 

 会場に響く――開始の角笛/CADを構える――WOM。

 五つのライトが時を刻む――最後の一つが変わる。

 甲高い音と共に試合が開始される。

 同時に発射されるクレー――宙を踊る/交差する赤と白――急速に加速する世界。

 頬当てで構えるCAD――銃口が光を放つ/独特な音と共に放たれるサイオンの弾丸。

 赤と白が交差する中の白を撃ち砕く――軽いプラスチックのような砕ける音/花びらの様に散っていくクレー達。

 加速した意識の中、次の標的に銃口を向ける。

 標準機に移る半透明なクレーの姿――標準補助の行き過ぎた予測/それをなぞる様に飛んでくるクレー。

 素早く次の標的へ/白に被さる赤――真下から放たれる弾/ドライアイスの弾丸=七草 真由美の魔法の弾丸(フライクーゲル)

 音速に達する白い弾丸たち/ありとあらゆる方向から飛来する=『魔弾の射手』の射撃手(シュッツ)

 さまざま方向より視界を覆い隠す白と赤、ここまでの多さだと標準補助も役に立たない。

 肌を酷使し加速装置(アクセラレーション)と立体感覚を同時併用する。

 肌が捉えるクレーの数/ドライアイス――同時に感じるサイオン波の流れ。

 代謝性金属繊維研究で偶発的に生まれた機能――サイオンを自在に捉えられる機能。

 機能を駆使しサイオン波を検知する――ウフコックが計算を開始する。

 飛び交う者達/ドライアイス/クレー/光の波/クレーを次々撃ち砕き、残骸の凍雨を降らせる。

 ウフコックが計算を終わらせる――事前に用意した作戦/サイオンの波の限界値(クリティカル)はまだ果てしなく遠かった。

 私の双眸には焦りが現れだす――前年度より『魔弾の射手』の速度が上がっていた。

 計算を大きく外れた速度――肌が急速に発達するのがわかる/意識の速度(ヴェロシティ)をさらに上げる。

 周囲の声援も喧騒も何もかも遅く、長く、聞こえてくる。ただしっかり聞こえてくる己の心臓の脈動。

 得点が離される――30対60

 脳や体が沸騰するように熱を佩びる/どこかより聞こえてくる囁きたち。

 

 

    おお、炸裂(エクスプロード)よ――!

 

 

 誰だかわからない囁き/野太い頼りになりそうなウオークライ/どこかから聞こえる声。

 さらに点が離される――48対78

 通常の肉体限界値(クリティカル)を超える――標的のクレーを七個数秒間で撃ち落す。

 ドライアイスの弾丸――赤が有効エリアに入ったとほぼ同時に撃ち落す。

 血液が煮え滾る/意識を保ち眼球を必死に動かす――サイトにクレーを入れ引き金を引く。

 記憶の片隅からあるオペラの情景が思い出される――重なる状況/曲との同一性。

 無意識に行う暗示/思い出せない最後の弾丸の行方――口ずさむ曲。

 得点――50対95/ウフコックの声。

 

限界値(クリティカル)は突破した、反撃開始だ。ナナ)

 

 ウフコックの勝利への答え(アンサー)が聞こえる/頬が吊りあがる。

 肌が教える――サイオンの嵐/勝利への予感。

 イライジャ(ザミエル)のからの弾丸をポケットから取り出す。

 WOMに押し込む――弾倉(マガジン)とCADが擦れる/金属同時の噛み合う音/装填される弾倉(マガジン)

 隠すことのない歌声が会場に響く/吊りあがった口から漏れる単語。

 

SHOOT(シュート)......」

 

 CADの薬室に火が入りる――会場に大きな火薬の爆音を響かせた。

 

 

 **/*****

 

 

「何だこの曲?」

 

 レオの疑問/会場に響く歌声/カウンターテノールの音域。

 発声者=昨夜の灰色の髪の少女/サイオンで髪が靡き燃えカスが舞っているよう。

 

「クラシックよ、馬鹿」

 

 エリカの罵声/それを聞いたレオが怒り出す/美月から訂正。

 

「エリカちゃん、これオペラだよ」

 

「えっ」

 

「お前も間違えてんじゃねえか!」

 

「なによ!」

 

 子供のような言い争い/注意が入り静かになる。

 

「で、これ何の曲なんだよ?」疑問に戻るレオ。

 

「それ私も気になる。ナナの歌ってる曲」同調するエリカ。

 

「カール・マリア・フォン・ウェーバーが作曲した全3幕のオペラだ。曲名は『魔弾の射手』」

 

 俺が答える/レオとエリカの驚いた顔/深雪と雫は食い入るように見ている。

 

「達也さん、よく知っていますね」ほのかの褒誉の視線。

 

「魔弾の射手って会長の使っている魔法の名前よね?」

 

「ああ、同じ名前だ。恐らく、......彼女なりの皮肉なんだろう、この状況も『魔弾の射手』の曲と似ている」

 

「ふーん」

 

 関心と不思議さの混じり答えるエリカ/七草会長とナナの点数が離れる。

 49対91

 会長の勝利はあと僅か――だが不安/あの歌声に隠れている僅かな『音のずれ』

 他の人間は殆ど気づいていない――達也には解った/あの歌の正体。

 

(自己暗示か.....)

 

 ナナの周囲のサイオンが歌声に合わせ、複雑に螺旋を描く。

 美月は眼鏡を外し、そのサイオンの動きに見惚れる/深雪も歌の作用に気づく。

 

「お兄様、あの歌.....」

 

「ああ、サイオンを使用した自己暗示だ。自分だけに調整されている。稀有な(システム)だ.....」

 

 会長との点数差が離れる/もう追いつけない状況――状況は急激に変わった。

 彼女のポケットから取り出される弾倉(マガジン)/銃口と視線がクレーの舞う場から巨大な漆黒のCADに――瞬時に装填/銃口をクレー達のエリアに。

 彼女のCADの変化――形を大きく変える/銃口の先から機関部まで変形したCAD――熱気が漏れる。

 引き金(トリガー)が引かれる――爆音。

 硝煙の匂いが会場に一瞬で満ちる――続けざまに発砲/有効エリアに向け飛翔する鉄の弾丸。

 連続七発の弾丸が撃たれる/観客の何人かは耳を押さえている。

 会長も轟音に驚き肩が揺れる――体勢を立て直し『魔弾の射手』の銃座を有効エリアに配置。

 銃座は現れず。冷却された冷気が漂う。

 CADの故障=否定/原因――ナナの撃ち続けたサイオンの弾丸。

 有効得点エリアを彼女のサイオン弾が掻き回していた。その影響=エリア内での魔法が使用不可能な状況になっている。

 エリアに入ろうとする鉄の弾丸――唐突に弾道の軌道を変える/七発の弾丸/エリアの周囲を回る。

 一発――有効エリアに飛び込む/飛び込む瞬間、魔法の干渉力が消える/発射された運動量を保持したまま突入。白のクレーを撃ち砕く/エリアの外に出る――再度、魔法が干渉を始め運動能力を取り戻す/複雑な軌道/宙を踊り上に飛ぶ。

 先日、開発した飛行魔法/酷似した魔法――所々違う/飛行するのは魔法使用者ではなく使用物/予兆なく消える干渉力――残る使用前の運動力/最も違う点――飛行対象が複数あること/驚きで目が見開かれる。

 達也の精霊の眼(しかい)に映る原理――驚きの(システム)

 それは「飛行」ではなく「移動」――弾丸は指定された位置に向かい移動を行っていた/指定位置に達する時、発射された運動エネルギーを再付与されその運動能力を失われず移動する。

 あの大きさのモノなら人間を浮かせるよりも容易――彼女があの術式を作ったのなら賞賛を送るしかない。発想と作戦の勝利と言えた。

 だがこの競技では問題だ。

 

「雫、あれは点数に入るのか?」

 

「たぶん入る。一応、魔法を使用した物体で破壊しているし。あれがダメならエイミィ

の魔弾タスラムもダメになる」ナナのプレーに驚嘆するように答える雫。

 

 会長もこれにはどうしもできない――エリア内/サイオンの嵐で魔法の使用は不可能。

 戦術を変更――有効エリア外から『魔弾』を撃ちこむ/マルチスコープもサイオンの影響でノイズが入る。

 銃座/エリア外に出現=発射されるドライアイス――真っ直ぐエリア内へ。

 横から飛び込む物体――鉄の弾丸/ドライアイスを真横から撃ち抜く/音を立てて砕ける。

 他の場所に銃座を設置/発射――一発を除き六発の鉄の弾丸の群れがドライアイスを撃ち砕く。

 破片を飛び散る/宙を踊る白の弾丸――それを喰らう散らかす鉄の弾丸たち。

 焦燥感に駆られる会長――銃座を乱雑に設置/発射。

 真っ直ぐ有効エリアに入る――赤のクレーに飛んでいく/横から白のクレーが入る――白クレーを粉砕=鉄の弾丸。

 クレーの破片に当たりる/軌道がずれる――どんどんナナのペースに巻き込まれる。

 複数設置した銃座/を鉄の弾丸が砕く――会場に響く歌声。ドライアイスの割れる音/奏でる二重奏(デュオ)

 徐々に歌声が大きくなる/それに連れ彼女のペースが落ちだす。

 設置された銃座/一つ赤のクレーを撃ち落す――彼女のサイオンが底を突き出す。

 原因=七つの弾丸たち/常駐型魔法――弾丸たち/彼女のサイオンを喰らい続ける。

 続けざまにドライアイスがエリア内に入る/三つ同時破壊――残り一つ。

 鉄の弾丸たち/動きが激しくなる――複雑な軌道を描く/ドライアイスを有効エリアに入れない。

 一発だけは有効エリアに入り直線軌道で白のクレーを破壊する=一撃離脱(ヒット・アンド・アウェイ)

 ドライアイス/出現し飛ぶ――付近の弾丸が群がる。

 近づく弾丸――真横から現れる/ドライアイス――弾丸に当たり軌道が上に上がる――標的の上部を掠める/錐揉みするドライアイス。

 他の六発が撃ち漏らしを感知/群がる――ドライアイス=有効エリアに入る/弾丸たちの干渉力が消える/直線軌道に切り替わる。

 ドライアイスを狙う――一直線

 一発――ドライアイスを掠める。

 二発――三発目に当たる/音を立て砕ける。

 四発――目測を誤る/エリア外に飛んでいく。

 五発――距離が開いている/追いつけない。

 六発――後部に当たる/ドライアイスが縦に回転する。

 

(ダメか)

 

 心で呟く――ドライアイスの速度が落ちる/近づく赤のクレー――先端の勢いで砕く。

 点数――95対100

 会場を揺るがす声――観客の声援/どれも興奮、熱狂の色/拍手と歓声に支配される。

 

 

 **/*****

 

 

 最後以後の最後に撃ち漏らす――敗北/悪い気はしない/疲労と倦怠感/私を襲う。

 

「いい試合だったわ、ナナさん」

 

 七草真由美の声/緑のゴーグルを外す――ワインレッドの瞳/私とは違う色。

 クローム・オレンジ変化する変光(カメレオン)ゴーグルを外す/空気に触れる目/晒される瞳。

 

「そうですね、私も楽しかったです。七草先輩」

 

 微笑む七草真由美――疲労の色。

 

「あの魔法は彼方が作ったの?」

 

「知り合いが作った物です。......思いのほか疲れました。次に試合があったら負けてますよ」

「そうね、私もこれ以上続いたら危なかったかも」

 

 会話が続く――双方疲れが見えている。

 

「私はマックスには成れず、道化のカスパールに成ってしまいました」

 

 悔しさの呟き/思わず漏れる――七草真由美は告げる。

 

「彼方は魂を売った道化(カスパール)じゃないは。――魔弾の悪魔(ザミエル)よ」

 

 差し出される手――握手/僅かに汗ばんだ手。

 

「他もがんばってね、”歌姫(ディーヴァ)”」

 

「彼方もマックス」

 

 私の本戦スピード・シューティングはこれで終わった。




どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。

思いのほか書いてて楽しかったこの回。
参項になる資料が小説やアニメが少なくて加熱して書いちゃった。
オペラの魔弾の射手で皮肉を言いたかっただけなのに。

誤字脱字報告。感想、意見、要求などはどんどん受け付けます。
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