早く九校戦終わらしたな。
2095年8月4日(木)--夜
「お風呂だ~!」
ぺたぺた鳴る足音/目を輝かせる灯子/真っ直ぐ風呂へ――ダイブ。
飛沫を立てるお湯――他の第三校の生徒が入ってくる。
「灯子、飛び込んじゃダメだってば」
保護者のように甲斐甲斐しく世話を焼く鈴玉/灯子の後を追う。
ホテルの地下――人工の温泉/軍人の療養用に作られた場所。
ドクターの気遣い――早撃ちを見ていたせい/リアムを遣し伝言を伝える。
それが灯子に伝わり、鈴玉他数人を誘い温泉に来た。
先に入った灯子を追う/着替えの中から錠剤を取り出す――三つ出し飲む。
錠剤――代謝性金属繊維の安定剤。
早撃ち以降、肌がやけに不安定/元々不安定に作られた場所以外でも繊維の発達が多い。
服を脱ぐ/着衣の内側に付着する銀の粉――発達した金属繊維。
顔を顰め籠に服を入れる。
籠の中に他の衣服――丈の短い女性用の湯着/フリーセックス時代後の悪習。
風呂は体の老廃物を排出し、自律神経をコントロールする場所。そして服は己を外見という装備で武装し大きく見せる、逆にいえば服で己を拘束している道具。
無駄なことを基本したくないナナはフリーセックスが終わって出来たこの風習はあまりよく思っていない。
湯着を取ってみる/白の丈が短い/間違いなく濡れれば透ける――そのまま籠に戻す。
男性に裸を見られるのは嫌だが同性なら大丈夫だ。
あの中に
下着を脱ぐ/ウフコックが抜けたチョウカーのクリスタルが音を立てる/適当に畳む――大浴場へ向う。
「ナナちゃん、なんで湯着着てないの?」
鈴玉に頭を洗ってもらっている灯子が気づく/その言葉に全員がこちらを向く。
全員驚きの表情――そこまで驚くことだろうか。
「そんなに驚かないでよ、私が露出狂のようじゃない」
答えながら体を流す/お湯が体のラインを伝い落ちる。
「ナナ、どうして湯着着ないの?」
鈴玉の質問――その目はなんとなく回答がわかったよう。
他も聞き耳を立てる/聞こえるように言う。
「体を洗うのに邪魔じゃない、あれ」
思っていることを素直に言葉にする。
他は困惑――フリーセックス時代後の教えが枷になる。
本来の目的から外れた教え=頭が痛くなる/体を流し終え風呂に入る。
「お風呂の本来の目的は体の老廃物を流すことよ、それをこんな布きれで阻害したら本
末転倒よ」
身を抱え入る――アルカリ性の温泉が体の筋肉を解す/思わず吐息が漏れる。
「灯子も脱ぐ~」
灯子の元気な声――湯着が空を舞う/飛び込む。
また大きな飛沫が上がる/頭から被るお湯/数秒潜った後、出てくる。
「ぷは~」息を吸う灯子。
「もー何度飛び込むなって!」怒る鈴玉。
顔を出した灯子――豊満な胸が水面に浮く/泳ぐように近づいてくる。
「とーちゃーく」
灯子の笑顔が胸元に来る/ナナの膝の上に座る――脇の下から腕を回してやる。
「家族みたい」
スピード・シューティングの出場者、武田礼がいう。
「やめてよ、家族なんて」
「でも、いい感じだよね。イースターさんと灯子ちゃんと鈴玉の雰囲気て。鈴玉がお母
さん、イースターさんがお姉ちゃんで灯子ちゃんが妹みたい」
バトル・ボードの出場者、長嶋圭子が納得したように宜なう。
「私はまだ子は孕んだことないわよ」風呂の中に入る鈴玉。
「でも私服で一緒に居たらそう見えるよね?」武田礼――長嶋圭子に同意を求める。
「あ、見えるかも」曖昧に同意する長嶋圭子。
鈴玉が否定する「違うわよ」
嫌では無さそう――いつも通り/灯子が膝の上から退く。
安心したように鈴玉の膝の上に座る――灯子の定置。
「イースターさん、本戦の早撃ちの『魔弾』。どうやって手に入れたの?」
目を輝かせ聞いてくる長嶋圭子。
『魔弾』――恐らく最後に使ったイライジャのプレゼント。
「あれは知り合いからの出場プレゼント」
「『魔弾』を新人戦で使ったら優勝間違いないよ」
「その可能性はあるかもね、でもまだわからないわ」
同じスピード・シューティングの出場者/やはり魔法ことは気になるらしい。
不意に疑問。
「ねえ、その『魔弾』て誰が付けたの」
「ネットの九校戦スレッドよ、『
答える鈴玉――ネットのネーミングセンス/なんとなく理解。
「でも
「え~、いいと思うな
「そうそう、
「クリムゾン・プリンスと
唐突に一条君の名前が出で来る――心臓が跳ねる。
「なッ! なんで一条君の名前が出てくるのよ」
「だってねえ、ここ最近一緒に帰ってたんでしょ、噂が立ってるよ」
真相を知りた気な鈴玉/膝に座る灯子の頬を弄ぶ/変な形になっている口から「私も聞きたい」
「私も私も」武田 礼――楽しそうな目/長嶋圭子も興味津々のよう。
一条将輝――最初の生身『人間』の友達/気を許せる人。
最近はよくモノリスの練習をしていたため彼の存在がよくわかる。
考えれと心臓が高鳴る/よくわからない高鳴り――この感情をウフコックに聞きたくなる。
煮え切らない感情――ウフコックの癖が移ってしまっている/自然に下を向いていた。
顔を上げる/皆、生暖かい笑顔。
「な、なに?」
たどたどしく答える/灯子が頬を押さえながら答える。
「ナナちゃん、将輝くん好きなの?」
直球の質問――心臓が跳ねる/体も跳ねる。
好きという感情がよくわからない――この心臓の鼓動が示していることナナはいまいちわかっていない。
余計に混乱する思考/混乱する理由もわからない。
「ほほう、これは脈ありますね」茶化す長嶋圭子。
「ナナさんは一条君か~」納得したような武田礼。
「ち、違う、違う!」必死に否定するナナ/顔は赤い。
鈴玉はその反応に嬉しそうに微笑む/灯子はナナの反応に「わあ」と反応している。
必死に否定するナナ=その行為が茶化しの要素になることもわかっていない。
「違うってばー!」
2095年8月5日(金) - バトルボード競技会場
観客席に腰掛ける――バトルボード観戦/観客の喧騒――日光を反射させる水路の水。
席の前方/右からナナ/一条/吉祥寺。
後方――鈴玉/灯子/大隅――忙しなくきょろきょろ。
一条とナナとの間に空く僅かな距離/昨日の入浴の影響――微かに意識しあける隙間。
ナナ――多少もじもじしている。
一条――僅かな距離に困り顔/何か不快なことをしたのかと記憶を掘り出す。
鈴玉と灯子――ナナの反応を楽しむ/その初々しさを。
吉祥寺――よくわからず状況に困惑/大隅――会場を何か不安そうに目を走らせる。
「イースターさん。俺、何かしたか」一条――顔色を伺うように聞く。
「え、あ、ち、違うの、ちょっと気分が落ち着かないだけ」
両手を振り言い訳/昨日のせいでやけに意識してしまっている。
異性としての意識=わからない感情――その影響で混乱する思考。
鈴玉と灯子は嬉そうにくすくすと笑いう。
睨む/さっと視線を逸らす。
「よかった。何か嫌なことしたのかと思った」
ほっとする一条/ナナは申し訳なさそうに笑う。
開始の一回目のブサーが鳴る/構えを取る選手達。
静まる会場/二回目のブザー――開始されるレース。
先頭に出る姿――一高の渡辺摩利。
後ろに張り付き走る生徒――七高の選手。
第三高は出遅れ二人の後ろを走っている。
激しく波立つ水面――魔法の影響/先頭を走る者達の魔法の影響。
一高の渡辺摩利――先頭を走る/引き波の相乗効果で有利。
七高の選手――巧みなボードさばき/位置的不利をテクニックで補う。
《嫌な匂いだ》
無線通信/ウフコックの声――何かを嗅ぎ取る。
――出場選手で何か見つけた?
《いや、彼女達ではないんだ》
――じゃあ、何?
《あの水路、水で嗅ぎ取り難いが悪意の匂いがする》
――水路に何か潜んでる?
《わからない、だが嫌な匂いだ》
煮え切らない答え/だが信用に値するウフコックの嗅覚。
――わかった、肌で会場をスナークしてみる。
《頼む、俺は彼女のCADを警戒する》
会場とは別の警戒対象に首を傾げる――CAD?
――なんでCADを警戒するのよ。
《七高の選手のCADから悪意の匂いがするからだ》
CADから悪意の匂い――そんな事があるのだろうか/それに該当する魔法を思い出す。該当する魔法が一つ――SB魔法に一つ。
――
《我々の外敵だ》
ウフコックの嫌そうな声/機械化している者達の外敵。
ナナも侵入こそされていないものの、嫌悪感があった。
先頭二人がコーナーに差し掛かる。
一高の渡辺摩利――減速魔法で綺麗なターン/再度加速。
七高の選手――減速しない/どんどん速度を上げる。
《きたぞ!》ウフコックの叫び声/最大の警戒。
オーバースピードを起こした七高の選手――ボードは水面に触れていない/ボードから投げ出される/思わず
会場で起こること全て感覚できた――投げ出される七高選手/前に渡辺摩利。
渡辺摩利――受け止める姿勢/加速を止め新たな魔法の構築/保険――フェンスに飛ばされないように組む魔法。
水中に反応――人間大の反応/それに肌のピントを合わす。
蛇のように体をくねらすそれ/全身を透過させる繊維を纏う――腕にCAD/操作し僅かに水面を陥没させる。
体勢が崩れる渡辺摩利――魔法の発動が遅れる/飛んでくる七高選手/全身で受け止める。
ボードから投げ出される/飛ばされる勢いが強く、フェンスを突き破る。
会場に上がる悲鳴/レースの中断を示す旗。
水中の見えない影――その体をくねらせる/人間では入れない南排水路へ。
席を立つ――鈴玉の声。
「ナナ、何処行くの」不安そうな声。
会場が騒然の中知人が立てば誰だって不安になる。
「ちょっと、お手洗い」
会場を出ようと通路に出る/無線通信でもっとも近くに居る者を探す。
《この通信聞こえてる人いる?》最大出力の通信――反応する者。
《何ですかな、ナナ》
ベンジャミン・バトラーの声――盲目の老執事/警戒する声。
《バトラーさん。今の『見てた』でしょ、南排水路の一番近いで出口は?》
《南会場入口近く、排水施設です》微かなノイズ/すでに向いだしている。
《わかりました。今から向います》
《御学友達を置いて来ていいのですかな?》
《大丈夫です》
それを最後に通信を切る/走り難い制服――できるだけ走り排水施設向う。
どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。
書くことはあまりありません。
書けるのは恋愛描写が書けないことです、これでいいのかな?
出来るここならもう書きたくない。
誤字脱字報告。感想、意見、要求などはどんどん受け付けます。