マルドゥック・マジック~煉獄の少女~   作:我楽娯兵

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セコンド・ピアット3

 傾きだした夕陽――並んで歩く二人。

 頬に張られた湿布/疲れた顔し、摩る将輝。

 少々不機嫌なナナ/見た目で判断された。

 警備隊の訓練を受けたいといったナナ――警備隊長は鼻で笑った。

 少々腹が立ち組み手勝負をした――ナナが勝てば警備隊入り。負ければ帰る。

 結果――ナナの勝利。圧勝だった。

 白兵戦術を無意識で解るナナにとっては柔道の組み手は生温かった。

 ハンデを付けると言っていた警備隊長/事態が理解できず再戦を申し込む――惨敗。

 最後は平謝り――ナナの機嫌は少し良くなっていた。

 女だからと言って舐めて掛かると痛い目に遭う――将輝が身を持って体験したこと。

 九校戦の練習にさんざん着き合わされ投げ飛ばされてきた/笑った警備隊長が可哀想に思えた。

 その後練習に参加したナナは、他参加者を投げ飛ばし続けた。100人組み手並の試合/荒々しい雌豹のように食い潰す。

 将輝も試合をして散らされた。綺麗な上段後ろ回し蹴りを顔にくらった。

 練習も終わった所でナナに呼ばれた――自身を守る力を教えるらしい。

 一条邸を過ぎ数件のところのナナの家――招き入れられる。

 不要な物は一切無い玄関を過ぎる/地下室への扉が開く。

 着替えて来るといったナナは二階へと上がっていった。前のように固い床に投げ飛ばされかと思い気持ちが沈む。

 暗く、肌寒くら感じる地下室/発電機の音――バチッと電気が蛍光灯に通る音が響く。徐々に明るくなる部屋/眩しく目が自然と閉じる。

 フレーム加工機/射撃台/戦争でも出来そうな銃火器の数々。普通とは思えない部屋――テロでも起こすのかと思ってしまう。

 彼女の里親――USNA所属の連邦司法局直轄マルドゥック機関。

 それの現在責任者であるイースター。

 ナナの事件を解決するためとはいえ、これだけの銃器を持ち込む必要があったのだあろうか?

 彼女が身に着けているチョーカーには物になれるネズミ、ウフコックがいるのだから。

 新カルタヘナを無視した魔法実験――体が炭化するほどの現象。

 ナナの言う発火点(フラッシュポイント)/目の中で燻り続ける焦げ付きの正体。

 何処までも痛々しく悲しい目つき――思い出す九校戦の最後。

 

 人で居たい。

 

 体を金属に変えた少女の叫び/心から願望だと思いたい。

 階段から人が降りてくる/パーカー姿のナナ。肩に金色のネズミ、ウフコックが乗っていた。

 

「お待たせ将輝」

 

「お、おう」

 

 急いでシャワーを浴びたのか、彼女の灰色の髪は艶っぽく感じられた。

 それすら過剰に反応し声が上ずってしまう。

 

「じゃあ、練習を始めよっか」

 

「今回もこの固い床に投げ飛ばすのか?」片足で床を叩く。

 

「残念、今回は別のことをするわ。来て」

 

 手を取られる。やわらかな感触、僅かに香るシャンプーの香りが鼻孔をくすぐる。

 この頃ナナは将輝に心を許しだし、ハグ程度なら大丈夫などと言っている。

 健全良好な青少年に女体でハグなどをしたら大変だ。麻薬とも言ってもいい、邪な妄想が脳内によぎる。

 射台に連れてこられ立たされる。

 

「今回は実弾銃の練習よ。魔法が効かないサイボーグが現れたんだし、40口径は撃てるようになってもらうよ」

 

 片手に持っている銃/射台の上に置く。

 黒鉄の自動拳銃――一発だけ入ったマガジン/サイボーグを追う時に渡された銃とは大きさが違う。

 

「じゃあ、あの弾道ゼリーを撃って」ナナが指差す目標。

 

 手に取る/ズシリとした重み――想像してたほど重くはなかった。

 弾倉を押し込む。かちりと音を立て装填された。

 右手で銃を押し出す/左手を添える。見てきた漫画や映画の見よう見まね。

 指を引き金に掛ける――ゆっくりと引く。

 ぱーんと音が響く。排莢口から薬莢が排出される。

 あらかじめ設置されていた弾道ゼリーに迎い飛んでいく。一瞬だけ捉えた弾丸/僅かながら電気を佩びている。

 弾道ゼリーを貫く――直後ゼリーが膨らみ弾けた。

 前に撃った銃よりも反動が少なかった/にもかかわらずゼリーが弾けた。驚きで瞬きが増える。

 

「驚いた? 対サイボーグ用弾頭」

 

「どうなってんだあれ、ゼリーが風船みたいに膨れ上げって弾けたぞ」

 

「当たり前よ。あの弾頭は着弾時に荷電粒子を発するの、それで中を一瞬で灼き尽くすの」

 

「じゃ、じゃあ。あれがもし人間だったら......」

 

「人間の(フワ)が美味しく焼きあがるわ」

 

 顔の血の気が引く。

 

「でも、これはいい方よソフトポイントだし。これがホローポイントだったらもっと酷いことになってる」

 

「君はこんなのを撃ってきたのか」

 

「......ええ」

 

 鐘のように心臓が脈打つ/手に残る衝撃の余韻――微かな興奮。

 硝煙の匂い/銃声の音/銃弾の光。CADとは違う感覚/もっとも原始的な闘争心がうずく。

 佐渡島事件で笑いながら銃を撃っていた兵士の姿――今ではなんとなくその意味がわかる。

 楽しい。

 もっと撃ってみたい。もっとやってみたい。好奇心が突き動かす。

 空になった弾倉を取り出す。

 

「気に入ったようね」

 

「あぁ、佐渡島での兵士達の気持ちが分かった気がする」

 

「一丁と一発で......ね。まあ、いいわ。あと二カートリッチほど撃ってみよっか」

 

 二つの弾倉を射台に置く。ウフコックが肩から下りる。

 

「ちょっと上に弾丸を取ってくるから続けて」

 

 そう言いナナは上がって行く/見送り、弾倉を再度押し込む。

 一発だけではなく今度は数発連続に撃つ。

 光が目を刺し、音が耳を裂く。匂いが鼻を突く/衝撃が腕を伝う。

 数発撃つごとに腕が痺れる――撃ち出された弾丸はゼリーを弾く。高揚。

 楽しくなってくる。絶対的武力に酔う――言葉の通りに。

 優越感/昂奮。CADのように感覚の無い引き金とは違った感触。

 撃てば間違いなく人が傷つく道具に酔いしれる――闘争心。燻っている暴力。

 動物が持っている本能が、銃によって起こされる。

 ウフコックは将輝を見上げている。

 

「何だ? ネズミ」

 

「君は楽しんでいるのか?」

 

「そうだが......」

 

「人を殺す道具で、か」

 

 ぎくりとする/その言葉に。手に握っているものに。

 

「CADは人を殺すが魔法の選択で人を助けることも出来る、だが銃は違う。撃てば人が傷つく、当たり所が悪ければ死んでしまう」

 

「そうだが......」

 

「君は死の匂いを嗅いだことはあるか」

 

「死の匂い?」

 

「悲しみ、不安、焦り、恐怖、苦しみ、憎悪、諦め。俺が今まで嗅いできた死の匂いだ。人は死んでも匂いは残る、死体は正直だ。皆死にたくないと感じる、他の匂いを感じるのは極稀だ」

 

「何故それを俺に話す」

 

「ナナがその匂いを君に纏ってほしくないと感じるからだ。死は孤独だ。誰かの死が人生を慰めてくれるわけでも、自分の死の価値を高めてくれるわけでもない。相手に死を与えるものも、死を与えたものと同じ匂いを纏ってしまう」

 

「死を纏う?」

 

「物理的な匂いを漂わすわけではない。罪悪感や破壊衝動、興奮は似たものだ。悲しみや怒りは罪悪感や破壊衝動の対極にある。あるが故にその匂いは同一の香りを漂わせる。彼女は彼女のように同じ『死』を纏、死者に捧げる者になってほしくないと考えている」

 

 射台をゆっくり歩くウフコック――9mm弾を撫でる。

 

「ナナは己が行った行為を嫌悪している。人を殺したことを、殺すことで楽しんでいた自分を。君をナナと同じ火種に死者を捧げ続ける哀れな存在に落ちてほしくない。ナナのためにも」

 

 火種/死者――その単語に彼女の発火点が重なる/死者を捧げる――別の何か/他人の存在。

 

「火種に死者を捧げ続ける......、魔法実験の被験者は一人ではなかったのか」

 

「彼女を合わせて九人だ。彼女自身、罰を欲している」

 

「何故罰を欲する、彼女は被害者だ。救いの間違いだろう」

 

 首を振るウフコック。「違う、罰だ。ナナは同じ被験者のために人を殺している。無意識的に八人の代行復讐をしている。その行いで彼女は他の子供達が喜んでくれると考えている。だが、別の思考で否定されるべき行為だとも考えている。他者に罰を与えられ自分を否定してくれる存在がほしい。その存在が君であってほしいと思っている」

 

「俺が彼女に罰を与える? 俺には無理だ、無理に決まっているだろ。彼女の行いは許されなくとも、完全に否定は俺には出来ない」

 

「ナナもそれはわかっている。君が何処までも甘く、青臭い人間だということは。それでも彼女を『機械の兵器』ではなく『一人の人間』として認識している者に裁いてほしいのだ。人間として」

 

 何処までも哀れ存在――ナナ自身の精神。

 死者の感触――火種の繋がり。

 自分の手に握るものは彼女の罰になりえるのか/死人と同じ匂いを纏う――同じ立場に立てるだろうか。

 将輝も人を殺した――爆裂で。

 今でも夢に見る戦場――後悔はしていない/国のために国民のために。

 責任――十師族の義務/その中で感じた名誉感。

 人を殺して褒められた/畏怖された――その立場に満足している。

 彼女は違った――人を殺して楽しんだ/嫌悪した。

 罰がほしかった。

 ナナに罰を与える存在――一条将輝/自分という存在。

 

「俺はそんなに誇れた人間じゃない」

 

 

 

 2095年10月10日(月) -日本陸軍地上兵器開発軍団第三開発所

 

 壁に残された爪跡――微かに匂う血の腐臭。

 ムーバル・スーツの開発に忙しい真田 繁留/自分の作った兵器(こども)の元に向かう。

 日本軍の施設に現れた化け物と娘/食い散らかされた隊員と研究者だったものの後処理に追われる。

 身元も分からなくなってしまった遺体――一箇所に集められている。

 

「酷いことするもんだね~」

 

 暢気な口調/死体を入れた袋を抱える隊員とすれ違う。

 抱えられた研究員の頭――驚きで死んでいることを気づいていないといった表情。

 化け物のせい――黒く異様な巨大な犬。

 自然界では存在しないであろう獣――遺伝子異常でもあのような形になるか怪しい。

 足が止まる――化け物と娘が消えた部屋。”火之迦具鎚(ひのかぐつち)“の保管庫。

 四メートル近くある直立戦車が佇んでいた/横で忙しくキーボードを叩く男。

 

「真田、俺はもう一般人だぞ。変なことで巻き込まんといてくれ」

 

 愚痴をこぼしながら作業をする男――沖山清吾。

 開発軍団を辞めた科学者/元四葉出身の魔工師。今は国立魔法大学付属第三高校の魔法歴史科の講師を務める奔放男。

 

「そう言わないでくれ、これは私と君の合作じゃないか」

 

「合作ゆうても殆どお前が組み上げたもんだ。俺はこいつの人工知能(あたま)を作っただけど」

 

「それでも君の作ったAIは立派に他国軍の戦術データ・リンクを覗いているよ。立派な成果じゃないか」

 

「俺の覗き趣味が受け継がれただけど、もう少しでいいもんが出来たが、それ作ったらでか過ぎるからな」

 

 フッと鼻で笑った真田/ゆっくりと”火之迦具鎚(ひのかぐつち)“の足に触る。

 僅かな衝撃に反応し装甲に光が佩びる/オリハルコンのエイドス溯行現象。

 

「魔法をものともしないロボットの開発。見事に狙われたな」煙草に火をつける沖山。

 

「ええ、夢とは他者の干渉でいともたやすく変質してしまうものなのだね」

 

「それはそうだ。科学や研究はそんなもんだろ。ツィオルコフスキーの研究は宇宙旅行だけでなくミサイルになった。ライト兄弟の飛行機は今では立派に敵を撃ち落している。思想の違い。価値観の違い。俺はそれが嫌で軍を辞めた、そう言ったよな」

 

「それでも守ればならないのだよ、国を。でないと研究が続けられない」

 

「万民に届ける平和な魔法科学、か。俺はもう夢を終えないからな」

 

「それは残念だ」

 

 本当に残念そうに笑う/”火之迦具鎚(ひのかぐつち)“を見上げながら。

 

「バグは取っておいた。後は自分でやれ、明日の授業の準備で忙しい」

 

 荷物をまとめ席を立つ沖山/咥えている煙草を揉み消す。

 

「また遭えたらな。お前と我々と心を『共有』出来ないのが残念だ」

 

 そう言い残し沖山は古巣を後にした。




どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。

 自分で書いていて面白くないなて思ってしまう内容を書いてしまった気がします。
ごめんなさい。私の想像力不足です。
 最近になってこの作品ほんまにおもしろいかな?面白くないかもなって、書いて居て自慰の後の賢者のような気分になります。

誤字脱字報告。感想、意見、要求などはどんどん受け付けます。
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