マルドゥック・マジック~煉獄の少女~   作:我楽娯兵

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セコンド・ピアット8

 2095年10月19日(水) -新宿警察署

 

 運転手の捜索――まさかの加熱限界(ヒーティング・リミット)

 藤林の車両捜索――多摩川に沈められた状態で発見/コンテナは取り外された状態で。

 運転手/若年のアウトロー=18日の朝に発見/片腕を失った姿で新宿警察署に駆け込んできた。

 鼻水糞まみれで必死に助けを求めたそうだ――”ツインズに殺される!!“

 警察の対処――少年が違法機械化をしていたためその場で逮捕。

 ただ精神状態が錯乱状態であったため被監置(ひかんち)に。

 藤林から取調をしているとの連絡を受け向かう。

 巨大な建物――新宿を象徴する建造物=新宿警察署。

 大戦のさなか荒廃を極める街/法も何も機能しない――密輸入された銃/戦場から流れた物品/他にもさまざま物が流通しそれは混乱を招く先導者の物になる。

 そんな混沌した中、唯一法が機能し治安が守られた場所。

 要因はさまざまあった。だが一番大きな理由は新宿警察署だった。

 組織犯罪/銃器薬物対策/他さまざまな事に警官刑事が働き、何とか治安が守られた。

 それが象徴とされ新たに建てられた警察署/現在も幅広く活動――メトロの闇たちも新宿に手を出さない。

 藤林と合流しアウトローの取調べに。

 

「保護を申し出たのは池袋在住の男性。名前は大樫(おおかし)亮二、全身に違法機械を施しているわ。頭蓋骨、扁桃体まで機械仕掛けよ。これじゃあ識閾検査も情動魔法も効かないわ」藤林――ガラス越しにアウトローの姿を覗く。

 

 首筋に義体の運動性を抑制する電脳錠を掛けられ大人しくしている男=クラッカーの共犯。

 酷く怯え縮こまっている/片腕は無くなり、もう片方の腕で顔を隠すようにしている。

 

「重度のPTSDと言ったところかしら。機械化での自己認識との違いがさらに状態を悪化させてる」

 

「機械化による自己強化......、そりに対し外敵が一方的に危害を加えた――」

 

「ええ。相手の名前をうわごとの様に証言しているは。”フィニークスに殺される“って」

 

 取調が始まる――ドアの音でさえ敏感に反応し怯えている。

 

 語る――具体的な日付、警備会社の壁を壊し、トラックを運転した。

 報酬である多幸剤(ヒロイック・ピル)を受け取るためメトロに潜った/受け取りハイになっているところフィニークスに襲われた。

 

 ――コンテナはどうしたのか。

 雇い側の指示で品川区の海岸線に放置した。それでいいと雇い側が言った。

 

 ――コンテナの中身は?。

 知らない。ただ警備会社に入らないから壁をぶち抜けと言われた。指示通り抜いてコンテナを引っ付けて鍵を開けただけ。中身は知らない、ただ中から虫が這いずり回る音と女の喘ぎが聞こえた。

 

 ――その腕はどうしたのか?

 さっきも言ったフィニークスに斬られたたんだ!。あの女、皆を笑いながら斬りやがった。あの赤い刀で。

 

 ――そのツインズとは何だ?

 ”調理者“の信者だ。ヴェルミのヴェルミ・チェッリの頭だ。

 

 ――ヴェルミ・チェッリとは?

 最近メトロで活動してる連中。金さえ払えばなんでもする連中。

 

 ――最後に雇い主は誰だ?

 分からない、ただフィニークスが大亜の奴と話してた。たぶんそいつだ。

 

「どう思う?。彼の証言」

 

「そのフィニークスと言う女に襲われて急いでメトロから逃げてきたとしかいえませんね。そしてそのフィニークスの雇用主が大亜細亜連合――」

 

 決してないとは言い切れなかった。

 休戦中の大亜細亜連合と日本――目的は魔法技術。

 それの使用用途まで想像すれば結果が出る――諸外国への威嚇/国内の反乱分子の牽制。

 大亜細亜連合は2063年、大漢を吸収し急速に領土を拡大た/ビルマ北部/ベトナム北部/ラオス北部/朝鮮半島をも征服してできた国家。

 だがその判断は国内にいた反乱分子に民主化をさらに強くさせる要因でしかなかった。

 大戦前から大亜細亜連合は共産主義を強く押し。国民よりも国、国よりも党のためといった思想が強かった。

 そのして差別主義的な考えも強く/民主主義を徹底的に排斥し強烈な共産主義を推し進めるといった行為が見て取れる。

 そんな中。ウイグルやチベット自治区が中心とした大漢復国軍が民主化を目指し反乱。大戦よりもさらに前に起こったドイツ再統一も真っ青な状況になってしまった。

 過去に起こった悲惨な天安門事件――第三次天安門事件を起こさないために強大な力を今でも欲している強国。

 

「大亜細亜連合は大漢復国軍掃討に”火之迦具鎚(ひのかぐつち)“に関する技術がほしかった......」藤林も似たような考えに行き着いたのかそう呟いた。

 

「大亜共産党はその巨体に見合わないほど臆病ですからね。恐らくそうでしょう」

 

「じゃあ。最近起こった密入国は大亜の工作兵の可能性があるということ?」

 

「別の可能性として彼の記憶キャシュに擬似記憶を刷り込んだ可能性もあります」

 

 淡々と答えるナナ/アウトローの様子を眺めながら。

 ビジョン――昨夜のジョエルの言葉。”メトロを調べたいなら金剛石を掘りな、それをオカズにあんたのビックブラザーが最近よろしくしてたわよ“。

 金剛石――大亜細亜連合/メトロに関係している――恐らくアウトローが言うヴェルミ・チェッリ。

 ビックブラザー=USNA情報軍(インフォメーションズ)/オカズによろしくやっている――日本の工作員が詮索している。

 何処まで掴んでいるか分からない。

 

「赤坂でも当たってみますか......」

 

 

 

 2095年10月20日(木) - 東京都USNA大使館

 

 加熱――ジョエルにヒントの答えを求める。

 赤坂――USNA大使館/通常では入れないはずのエリア。09権限で入る。

 存在しないはずの地下室。

 ずらりと並んだサーバー郡/日本に潜伏中のUSNA工作員が送る情報の森。

 工作員の片目と耳を強制的に機械化されている――その目と耳を通し全ての情報はここに集まる。

 大亜細亜連合の調査に当たっている工作員達のサーバーを探す――見つける。

 

「ウフコック、脳波アシスト」

 

了解(コピー)

 

 脳波アシストを繋ぐ――視界に写される情報の海/大亜細亜連合に関する情報を探す。

 論文コンペ/密入国/メトロ/特殊工作部隊――大亜に関する情報が所狭しと表れる。

 ここ最近、大亜の活動が活発化していると工作員が報告を入れ続けている。

 メトロ関係の情報を開く――各自の調査結果が表示される/一つだけ表示されない。

 表示されない一つを調べる。

 工作員名/ジロー・マーシャル。昨日から定期送信を断っている。

 視覚野記憶をナナの視覚野とリンクする――先月から今月に掛けての視覚情報。

 

 高台からの視線。

 どこかの港/船――物騒な銃火器で武装した男達=密入国者。

 視界の端で捕らえる男性二人/服装からして警察関係。

 刀と銃で武装/CADを装備中――密入国者との戦闘開始。

 あっという間に終了/闘争を謀る船舶――一人の魔法で航行が止まる。

 

 次の日付の視覚情報。

 どこかの難民街/目が写す二人の男性――顔立ち/体格=大亜細亜連合の人間/しかも軍属。

 難民街でたむろしているアウトロー/話しかける――何かの交渉。

 アウトローの目から生気が抜ける/徐々に嬉々として話を聞く。

 アウトローの中に見た顔/オリハルコン強奪の時に壁を登った男。

 一人がこちらに気づく――振り向く軍属/虎を思わせる風格をした男。逃げる。

 

 次の日付。

 薄暗い部屋/写り込むスポットライトの光――ステージのタッチショー。

 カウンターに座っている/視界から感じ取れるほど無関心――目線がある人物に映る。

 

(ジョエル?)

 

 『メトロに入りたいならここに行きなさい』小さな紙切れ/マンホールの地図=メトロの地図。

 紙を受け取る/ちらりと見る――どこかの住所/メトロの文字。

 ジョエルに金を渡す。店を出る。

 

 次の日付。

 どこかのマンホール/開ける。潜っていく。

 猥雑とした通路――浮浪者/難民/薬物廃人/未成年娼婦/違法機械化者。

 地上とは乖離した世界/管理されない世界――深く下に降りて行く。

 構内は無数の住居で埋め尽くされ――ある種の町のようになっている。

 銃声――目の前の住居から飛べ出て行る男/血走った目――片手に銃/背後に巨大な影。

 振り下ろされる石刀――男を両断する。真っ二つになった男だった物を何が闇の中に引きずり込んでいった。

 

『おい、あれヴェルミの奴だろ......』ぼそぼそと噂声。

 

 話しかけるマーシャル。『すまない、ヴェルミとは何だ?』

 

『知らないのか?、第三階層の傭兵だよ』

 

『傭兵?』

 

『そう、最近現れた得体の知れない連中だ。あんたも関わらない方がいいぞ』

 

 次の日付――最後の通信。

 何かから逃げている様子/息使い/視線の動き/何か恐ろしい物から逃げているようであった――走り/目の届かないところに。裏路地の奥に。

 足を止め振り返る――何かを探すように。

 かつかつと足音――大柄な体/引き締まった体付き――仮想敵国魔法師のファイルで見たことがあった。

 

人喰い虎(The man-eating tiger)』震えた声/恐怖心。『呂 剛虎(ルゥ ガンフゥ)

 

 即時対処――懐の拳銃を素早く抜く。柔らかく水っぽい物に何かが刺さる音/呂 剛虎がマーシャルの腕を壊していた。

 噴出す血/ただ壊された腕を見続ける。

 暗転――視界がぶれる。倒れる音/殺されたのだろう。目だけがその状況をサーバに情報を送り続ける。

 紙の擦れる音。死体の上に投げ捨てる。

 そしてそれが映った。

 視界の端に映った猫――ピンクの体毛/背中に翼。

視界に映ったと言っても。画面の端に急に映りこんだように現実味が限りなく無い猫。

 にゃーんと鳴くかと口開けたが、聞こえたのは鷹の鋭い声であった。

 頭のハードに流れ込んでくるメッセージ。

 

《アリスは不思議の国を探しているのかな?》

 

 ハッキング――単語が浮かぶ。回線を閉じる。

 

《穴や鏡に入れば戻れない。赤の女王を倒さなきゃいけない》教え子に物を教えるような声。

 

 マーシャルの視界は切り替わる/幼稚園/保育園――そう言った風景が広がる。

 テーブル上に寝そべる猫/デシタル情報の塊――アバター。律儀にナナの座る椅子まで作っている。

 猫は懐かしむように目を細める/正体は分かっていた。

 イライジャにキス(手術)を施した科学者/失楽園の追放者。

 

《白兎は捕まったかな?》

 

「今捕まえる途中ですよ、邪魔をしないでいただけるかますか?」

 

《せっかちになったな。アリスは》

 

「貴方が失楽園を出てからよ。それから急ぐようになった、私も白雪姫も」

 

 目を細める猫/腕を組み考えてるような体勢。

 

《イライジャには悪いことをした》

 

「そこまでして失楽園を出る必要があったの? 大亜細亜連合に亡命までして」

 

《大亜細亜連合とはそりが合わなかった。今は能登島難民街で情報屋をやっている》

 

「はぁ......今からでも遅くないわ。失楽園に戻ってきなさい」

 

《親のような話し方だな。チェシャ猫は死に場所を求めて彷徨っている。それにイライジャは俺を許さないだろう、毛皮にされるのはお断りだ》

 

 悟ったように話す/何かを探しているように。

 

「それで、わざわざ大使館のサーバーにハッキングを仕掛けるまで何をしにきたの」

 

《白兎とジャバウォック(ヴェルミ・チェッリ)について教えに来たよ》

 

「――白兎とジャバウォック(ヴェルミ・チェッリ)?」

 

《この視覚情報を調べているという事は大亜細亜連合について探しているのだろ》

 

「ええ、貴方なら知っているはずよ」

 

火之迦具鎚(ひのかぐつち)についてか。ジャバウォック(ヴェルミ・チェッリ)は随分と物騒なお友達を連れてきた。キドニーとは》

 

「連れてきた? キドニーとヴェルミ・チェッリは同じ集団じゃないの?」

 

《生みの親が違う。ジャバウォック(ヴェルミ・チェッリ)はある科学者が作った狂気の産物だ》

 

「ある科学者? 誰それ」

 

《残念だが、そこまでは調べがついていない》

 

「じゃあ、白兎は?」

 

《ナナも知っての通り大亜細亜連合だ。白兎と言うより猛虎だが》

 

「それで。その兎がどうしたの?」

 

《彼らは内政上逸早く戦場に活躍しうる力が欲しいのだ。それが兵器であれ聖遺物(レリック)であれ魔法であれ》

 

 今まで魔法に関する技術を大亜細亜連合が欲しているとは一度も耳にしていない。

 魔法に関する技術――最も効率よく手に入れる方法は強奪だ。

 日本で手に入れるのは至難の業――「魔法大全・固有名称インデックス」に介入しデータを盗む=警備が頑丈すぎる。

 この時期に強奪を成功させる唯一の場所――一つだけ思い当たった。

 

「......論文コンペを襲うつもり?」

 

《そこまでは知らないな。彼らもわかっているだろう、アウェーでの戦争は意味を成さないと》猫はにやりと笑う。《そろそろ落ちないとばれてしまう》

 

「ちょっと待って! 重要なことを聞いてない!」

 

《続きが聞きたいんなら能登島難民街に来なよ。あと明日の火之迦具鎚(ひのかぐつち)の出発日の海は荒れるかもしれないよ》そう言い残し、気まぐれ猫は消えた。

 

 脳内アシストが無造作に外される/ウフコックが顔の上に乗り額を叩く。

 

「ナナ、大丈夫か?」

 

 現実に帰還――チェシャ猫の悪戯が終わっていた。

 

「大丈夫......」

 

「びっくりしたぞ。何があった、急に意識がネットに落ちていったんだぞ」

 

「大丈夫よ、ウフコック。ちょっとした悪戯よ」




どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。

はい、ようやく思考直立戦車事件の終盤まで着ました。次回ラストです。
そして書いた大亜細亜連合の国内状況。原作の方で確りと書かれていないから無茶苦茶できます。
まあ、参考になったのは中国ですけどね。念のため書いておきます。私は右でも左でもない。
そして中国の内情を良く知らない運珍は、『中国の論点』という本を買いにわか勉強をして書きました。思いのほか面白かったです。
武力強化だけで四葉のいる日本に攻め入る理由がありませんもんね。
魔法式が保存できる聖遺物のためだけに相当量の魔法師突っ込んで負け戦する理由がありませんもん。

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