マルドゥック・マジック~煉獄の少女~   作:我楽娯兵

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アンティパスト3

「さて尋問の開始です」

 

 私は彼を見下ろし尋問を開始する。

 男の目には笑い。この状況で笑えるのか?

 私は更に重力(フロート)の出力を上げる。

 

「いッいたッ痛、痛、痛ーーーーーッ、なん......なんだコラァーーー!」

 

 これ以上出力を上げたら潰しかねない/仕方なく出力を下げる/男は然も恨めしそうに私を見る。

 

「オイコラ、テメェーーー女ァ~~~~~ッ!!」

 

「静かに出来ないんですか彼方は?」

 

 男は相変わらずの口の悪さ/危うい立場――少しは大人しい。

 

「では質問です。あなたの目的は何ですか?この国でこれだけドンパチそうそう出来ません。誰かが糸を引いている筈です、答えなさい」

 

「いッいや~、俺はただの死体愛好趣味(ネクロフィリア・マニア)のナンパだよ」

 

 この男はこの状況でよくもここまで冗談が出る。

 

「最後よ。目的はなに、こんなに大量の銃を用意したバックは誰」

 

「ちッ、俺のモノをしゃぶったら教えてやるよ。糞女(ビッチ)

 

 私は限界になり男のまだ繋がっている手を踏み潰した。

 足に感じる肉の潰れる感触/男の苦痛に歪む顔――微かに興奮/本来の目的を忘れそう。

 

『ナナ』

 

 ウフコックの声/私は現実に戻る――尋問の再開。

 

「もう一度聞きます駄犬(カー)。目的は、バックは誰」

 

「……ッチ、目的は護衛だよ」

 

「護衛?」

 

 まさかの返答/この男なら暗殺や殺人かと思っていた。

 

「護衛対象は」

 

「言えねえ」

 

「ではなぜ私を襲った。護衛任務なら対象から離れないはずだ」

 

「『お嬢』は俺をあまり見たがらねぇ。だから離れて護衛(ガード)してた。そこにお

前が来た、ぶっ殺す理由にしては十分だ」

 

 男の悪びれない口調/余裕すら感じる――この私は銃を持ち今にも殺されそうなのになぜ。

 

「では次の質問です、バックは誰」

 

「ははッ、わっかんねェ女だなァ。そんなことすぐゲロしちまう奴いるかよ」

 

 男の余裕たっぷりの顔/そして忠告。

 

「あんたはやっぱただの小便くせぇガキだわ。俺がこんな近くで閃光発音筒(フラッシュバン)のピン抜いてるのに気づかんねェ」

 

 男の手よりこぼれ落ちる筒。

 突如――閃光/目の前を覆う光。

 耳に響く爆音/咄嗟に体を丸めてしまう。

 意識も途切れ重力(フロート)も切らしてしまう。

 

「ひゃーーああははははははっははは!」

 

 男は信じれない速度で壁を駆け上りビルの上へ/私を見下ろし手の甲を向け中指立てファックサイン。

 

「誰は言えねェが組織名なら教えてやるよ。《มังกร หัว ไม่》 あばよ~愛してるぜ! 糞女(ビッチ)!!」

 

 男は背を向け逃げる/彼を追い壁を走りビルに登る。

 登るが男の影は無し――残るは血痕のみ。

 違和感/あの男のファックサイン。

 

「ウフッコク気づいた?」

 

「ああ、君が踏み潰した手が戻っていた(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 異常な再生能力/『失楽園』の科学力以外の可能性=魔法。とびっきりの外法。

 

個別情報体(エイドス)移植?」

 

「おそらく、自己再生する生物の個別情報体(エイドス)を自身の個別情報体(エイドス)に書き足したのだろう。あの異常な脚力もそのせいだろう、明らかな連邦魔法規定違反だ。これで奴を追う理由が出来たな」

 

 私はウフコックを携帯に変身(ターン)させドクターに連絡/数秒のコール。

 

『どうしたんだい、ナナ?』

 

「強襲されました」

 

 ドクターの驚きの声――事情の説明。

 

『じゃあ、よくわからないまま君はその男を撃ったと。そんでもってその男は連邦魔法違反の常習犯』

 

「えぇ」

 

『そして組織名は《มังกร หัว ไม่》、インド・ペルシア連邦の言葉だね』

 

「そうです、その件について調査をお願いします」

 

『ちょッ、ちょっと待って!僕らは今四葉の事件も――』

 

 私はドクターの話終わる前に電話を切る/ウフッコクの諭すような声。

 

「話終わる前に電話を切るのは相手に失礼だぞ」

 

「ドクターはああ言うと話長いから、途中で切った方が調査もしてくれるわ。それに私の大事な里親(パパ)だしね」

 

 私の笑顔にウフコックは溜め息を付くしかない。

 

「これだとドクターはいつか過労で倒れるな」

 

 私はビルを下り帰り夕飯の献立を考える/心のどこかで燻る興奮を憶える。

 獣の欲望――破壊衝動/柔肌に飢えた化け物の心。 

 

「これじゃ一条君の言う通りですね」

 

 

 */******

 

 

 日本に来て約三週間――ようやくこの国の暮らしにも慣れて来た。

 朝ポストの投函物の中に第三校の通知/結果は合格。

 一科・二科制度の第三校では私は専科クラス。

 

「良かったなナナ」

 

 ウフコックの声/私はもう一枚の紙を見て嫌になる。

 

「新入生代表だって」

 

 ウフコックはその意味がわからないようで首を傾げる。

 

「その新入生代表というのは悪いものなのか?」

 

「悪いわよ。入学式なんかで演説の真似事しなきゃいけないし。煽動は私の分野じゃないは、ヒトラーよ」

 

「何故そう思うのか......人の思考は複雑だ」

 

 やはりウフコックはわからないようだ/ネズミと人間の価値観の違いなのだろう。

 

「俺にはわからないが入学できたのはいいことだ。早速制服のデータを入れなければな」

 

「そうね」

 

 私はウフコックを肩に乗せて地下室に下りる。

 薄暗いかなり広い部屋/明かりを付ける/発電機の動く音が響き明るくなり始める。

 機材の山。CADの調整機/さまざまなフレームを加工する機材/それ全てが魔法か戦闘関係する機材。

 更に奥には屋内射撃場も完備している/ドクターの芸術的気質(アーティスティック)がフル発揮の場所。ここを気に入っている私もドクターにかなり毒されている。

 ウフコックを下ろし機材と接続/第三校の制服のデータをウフコックは覚えだす。

 私も自身の役目始める/CADの調整機に向かい私の、私専用のCAD(まほうのじゅう)を作る。

 

「完成の度合いはどうだ?」

 

「フレームと構造は出来た。あとは起動式インストールをすればいいだけ」

 

 

 私は指を動かしながらウフコックと話す。

 

「君は何かを作っている間が一番いい顔をする」

 

「え? そ、そう」

 

 ウフコックのまさかの回答に多少驚く/私はそんなに笑っていただろうか?

 確かに物を作っている間は自分がどの様な『物』かを忘れられる。しかしそれは決して忘れてはいけない物。

 心に落ちた影は消えることなく、黒味を増していく。

 ウフコックには嗅がせたくない――私の匂い。

 

「それより演説の原稿考えなくていいのか」

 

「あっ!」

 

 

 ――2095年4月3日(日) - 国立魔法大学付属第三高校入学式

 

 私は壇上裏で微妙にそわそわしていた/こんなに大勢の人の前で演説をするのは初めてだ。ウフコックはそれを嗅ぎ取ったのか私を落ち着ける。

 

『落ち着けナナ。そわそわしても始まらない』

 

 ――そうだけど、落ち着かないのよ

 

『そういうものか。俺はライセンス交付の演説はそこまで緊張はしなかったぞ』

 

 ――あれ? 録画見たけど何あの宣言?”自分を使用する者を審判しながら受け入れる。”ってある意味ウフコックらしい宣言だけど

 

 私とウフコックの声無き会話/静まり返った場所では非常に役立つ。

 

「続いて新入生答辞。新入生総代ナナ・イースター」

 

 名前が呼ばれ教員の指示が入る。

 

『さあ、君の番だがんばってこい』

 

 ウフコックのさりげない励ましが嬉しい/壇上に上がり答辞の開始――何処でもありがちな答辞――「皆等しく」「魔法技能の向上」/私からしては意味のない薄っぺらい答辞/心に何も響かない/こんなもの良く考えついたと私は思う。

 だがこんなもので皆拍手喝采/ウフコックの鼻はそれが本心だと語る。

 皆、嬉しいのに私の心はいつも冷めている/これは病気なのだろうか。

 答辞も終わり壇上から下りる/教員の指示で式終わりまで待機/この式は立ちっぱなしで足が痛い。

 式も終わりIDカードを渡される/学園内で使えるカード/干渉(スナーク)手術を受けた私にとっては正直いらない紙くずだ。

 

『ホームルームを覗かないのか』

 

 ――どうせ学園案内でしょう、それより図書館ないのかな。ここならいい本置いてそうだし

 

 私の探究心が疼くき出し図書館を探す――それは叶わず。

 他の生徒しかも専科の生徒から質問攻め。

「何処から来たのか」「入試の実技がすごかった」「髪はどうしたのか」

 正直に言おう――面倒くさい/通行人の邪魔にもなっている。

 

「ちょっといいかな?」

 

 見計らったように来る一条君/集まっていた人たちが道を開ける/数字付き(ナンバーズ)威厳を存分に発揮していた。

 

「タイミング見てきたんですか?」

 

「まさか、俺も質問攻めにされていたんだ」

 

 一条君の疲れた表情/おそらく本当だろう。

 そんな入学した日も過ぎ通常授業が始まる/同世代の人間との付き合いが苦手なナナに一条は色々な架け橋を作ってくれた/吉祥寺真紅郎を初めとし/吸収・放出系統の得意とする多少うるさい小動物のような三島灯子/大亜細亜連合の血が入った落ち着いた雰囲気を纏う王・鈴玉(わん・りんゆー)/鈴玉の繋がりで普通科の筆記最高点を叩き出した挙動不審で落ち着きの無い大隅大樹。

 いつもこの五人といる/このメンバーが一番落ち着く/男女別の授業以外大体このメンバーと共にいる。

 

「ナナちゃーん!お弁当たべよー!」

 

 灯子は弁当を持ち私に飛びつく/いつものように彼女を抱える/相変わらず軽く抱えやすい。

 前時代的な弁当――学食はタダだが食堂は混む/人混みは五人全員が嫌い、こうして作ってきている。

 

「灯子、あなたほんとにご飯食べてるの? 今日は一段と軽いわよ」

 

「食べてるよー昨日だってご飯三杯」

 

 それでこれだけ軽いのはある意味病気だ/鈴玉と一条君もその後合流しお昼を取り出す。

 

「大隅君と吉祥寺君はどうしたの一条君?」

 

 一条君はこの状況で多少肩身が狭いのか大人しい/それもそうだろう、主要な男メンバーが二人もいないのだから。

 

「ジョージは少し先生方に呼ばれてる、大隅はCADの調整機に首っ引きだ」

 

「大隅はCADのことになると目が無いですからね」

 

 鈴玉の相槌/本当に彼女のタイミングはいい/話していて楽しい。

 私は弁当のおかずを霞め取ろうとする灯子を押さえつけながら話す/そんなどうでもいい尊い毎日を私は楽しんでいた。

 

 

 */******

 

 

 放課後になり帰宅/灯子の呼びかけ。

 

「ナナちゃんこれから遊びに行こうよ」

 

 相変わらず小動物のような目がキラキラ輝いている――だが今日は行けない。

 

「ごめん、今日はちょっとお父さん(ドクター)に会わなきゃいけないの」

 

「あ、そっか今日ナナのお父さん来てるんだったね」

 

 灯子の残念そうな顔/鈴玉は灯子の頭をなで慰める。

 

「仕方ないよ灯子、ナナのお父さん年に数回しか日本にこれないんだから」

 

「うん、それじゃ仕方ないよねナナちゃんお父さんに親孝行してくるんだよー」

 

 元気に腕を振りさよならを言う灯子/小さく手を振ってくる鈴玉/私も手を振り別れる。

 一人での帰り道は寂しいものだ。

 

『一人ではないぞ』

 

 ウフコックが少し拗ねたような声。

 

 ――そうだったわ

 

『最近俺の存在を忘れていないか?』

 

 ――まさか彼方は私の大切な相棒(パートナー)

 

 ウフコックのまさかの言葉に少し驚く/ウフコックも寂しさを感じるのか。

 拗ねた相棒に質問を投げかける。

 

 ――ねえ、ウフコックあなたに友達っていた?

 

『この場合人間のか? それとも動物?』

 

 ――今回は動物。

 

『昔はいた。犬の友だ』

 

 ――それって09(オーナイン)が出来て間もない頃?

 

『ああ、彼は立派な猟犬(ハウンド)だった』

 

 ウフコックの楽しそうなそして懐かしむような声。

 

 ――今はその子どうしてるの?

 

『死んだ』

 

 ――ごめんなさい

 

『いいんだ、彼もそう望んでいたはずだ』

 

 ――死ぬことを?

 

『あぁ。主人をよく思う立派な忠犬(ハウンド)だった』

 

 悲しそうな声/過去の彼等の存在が私を生かしてくれている。

 そんな彼等が私は気になる。

 過去の09(オーナイン)の姿を。

 

 ――ねえ、もっと昔のこと教えて、つらいことは言わなくていいから

 

『ああ、いいとも』

 

 帰宅しリビングでお茶を入れる/湯のみは三人分。

 ドクターは私たちが帰ってくる前にもう来ていた。

 

「日本は本当に空気が澄んでるね。マルドゥック市とは大違いだ」

 

 そうであろう。マルドゥック市は工業都市だ空気が悪くてもおかしくない/ドクターは鞄を漁り書類を取り出す。

 

「さて、今回僕が日本に来た理由だけど」

 

「四葉事件か先日頼んだことのどちらかでしょ」

 

 ドクターがもったいぶって言うので先に言ってやった/ドクターの残念そうな顔。

 

「ああ、うん。そうだ、先日の件はまだなんだけど、今回は四葉のことだ」

 

「今回はどんなことをするんですの?」

 

 ドクターは関連資料を取り出す/見た感じ建物の見取り図だ。

 

「今回は保護証人の護衛だ」




どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。

今回は初めてのオリキャラ登場です今後キャラがぶれにぶれそうです。
そして、尋問後のやっつけ感が半端ない。どうしよう。
次回で入学編をラストにしようと思います。
ようやく九校戦だ本格的なクロスになるんだぜ。

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