志す者たちの彼方   作:d1ce-k

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1部 第4章: 「特異性の兆候」

 

 

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時が流れるにつれて、志乃は確実に成長を見せていた。彼女の外見は普通の子供のように見えるが、周囲の大人たちには、何かが少しずつ違うと感じられるようになっていた。

 

紅莉栖は日々の育児と研究に追われながらも、志乃の些細な行動に注意を払っていた。志乃が生まれた当初から、どこか異質な感覚が紅莉栖の中に芽生えていたが、それが具体的に何であるかはまだわかっていなかった。

 

ある日、未来ガジェット研究所での出来事だった。紅莉栖はデスクに向かい、新しいタイムマシン理論について書類を整理していた。研究所内は静かで、窓から入る午後の日差しが優しく部屋を照らしていた。その隣で、志乃はおとなしく本を読んでいた。まるで何事もない平穏な日常だった。

 

しかし、突然、志乃がページをめくった瞬間、空気が微かに揺らいだ。それは風ではなかった。まるで周囲の現実が少しだけずれたかのような、不自然な感覚だった。

 

紅莉栖は顔を上げた。「…今のは何?」

 

しかし、何も変わった様子はない。志乃も、読書を続けているだけだった。紅莉栖は首を傾げつつ、再び書類に目を落とそうとしたが、直後にまた同じ現象が起こった。今度は確実に、何かが歪んでいた。時計の針が数秒逆戻りし、机の上に置かれたペンが一瞬だけ消え、すぐに戻った。

 

「志乃…?」紅莉栖は立ち上がり、娘の方に歩み寄った。志乃は変わらず本を読んでいるが、その表情はどこか無感動だった。

 

「お母さん、何?」志乃は無邪気に顔を上げた。

 

紅莉栖はその純粋な目を見つめながら、何も言葉が出てこなかった。彼女は冷静に事態を分析しようとしたが、頭の中で警鐘が鳴り響くばかりだった。

 

「さっき…何か変なことが起きた?」紅莉栖は慎重に尋ねた。

 

「ううん、何もないよ?」志乃は首を傾げ、再び本に目を戻した。

 

その直後、再び現実が微かに歪んだ。紅莉栖は明確にそれを感じた。まるで空間の一部が捻じれ、時間が一瞬だけ逆行したかのような感覚。それが無意識に志乃から発せられているとしか考えられなかった。

 

紅莉栖は手元のノートパソコンを開き、すぐに槙島に連絡を取った。「すぐに来て、何か奇妙なことが起きている。」

 

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数分後、槙島聖護が研究所に到着した。彼の表情はいつも通り冷静で、何事にも動じない様子だった。紅莉栖は彼を部屋に招き入れ、今起きたことを簡潔に説明した。

 

「志乃が…何かをしている。説明は難しいけど、時間や空間に影響を与えているように思えるの。」

 

槙島は黙って彼女の話を聞き終えると、志乃の方を見た。志乃は依然として静かに本を読んでいたが、彼の目には、何かが違って見えた。

 

「なるほど。彼女の力が徐々に発現し始めているようだ。」槙島は冷静に言った。

 

「力…?」紅莉栖は困惑の表情を浮かべた。「でも、まだ小さな子供なのに…そんなことができるはずが…」

 

「志乃はただの子供じゃない。」槙島は彼女を制止するように言った。「彼女は、僕たちが予期していた以上の力を持っている。その力はまだ完全には目覚めていないが、今は無意識に発動している可能性が高い。」

 

「無意識に…?」

 

槙島は頷き、志乃に近づいていった。「志乃、君は何か変わったことを感じているかい?」

 

志乃は顔を上げ、しばらく考え込むような表情を見せたが、やがて首を振った。「ううん、何もないよ。」

 

「そうか…」槙島は静かに返事をし、その場に座り込んだ。「君が今何を感じているのか、君自身もまだわかっていないだろう。それは君の力がまだ完全に目覚めていないからだ。」

 

「…力?」志乃は不思議そうに槙島を見つめた。

 

槙島は微笑んだ。「そうだ、君には特別な力がある。それはまだ小さな種に過ぎないが、時間と共に成長し、周囲に影響を与え始めるだろう。」

 

「…どういうこと?」紅莉栖はなおも理解に苦しんでいたが、槙島の冷静な口調は、彼がこの現象をある程度予測していたことを示していた。

 

「紅莉栖、君が気づいているように、志乃は時間や空間に無意識に干渉している。それが、彼女の特異性だ。そして、その特異性は今後ますます強力になっていくだろう。」

 

「じゃあ…どうすればいいの?」紅莉栖は不安そうに尋ねた。「このままでは、彼女がどんな影響を周囲に与えるか予測できない…。」

 

槙島はしばし考え込んだ後、静かに言った。「彼女を観察し続けるしかない。彼女の力がどのように成長するか、それを見極める必要がある。」

 

紅莉栖は息を飲み、再び志乃を見つめた。彼女の小さな体には、この世界の理を超えた何かが宿っている。それを理解し、受け入れるのは容易ではなかった。

 

「これから…どうなるのかしら。」紅莉栖は静かに呟いた。

 

「それは、僕たち次第だ。」槙島は冷静に応えた。「彼女の未来をどう導くか、それが僕たちの役目だろう。」

 

志乃は依然として無邪気に本を読み続けていたが、彼女の存在が現実に与える影響は、確実に広がりつつあった。それは、まだ誰も完全に理解できていない未知の力だった。

 

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こうして、志乃の特異性が徐々に表面化し始める。紅莉栖と槙島は、彼女が持つ力の真の意味を見極めようとするが、その道のりは決して容易なものではない。

 

 

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