志す者たちの彼方   作:d1ce-k

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2部 第1章: 「力の暴走」

 

 

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夜の静けさが未来ガジェット研究所を包んでいた。街の喧騒が遠く、外の音はほとんど聞こえない。薄暗い部屋の中、牧瀬紅莉栖は椅子に座り、目の前にある無数のデータに目を通していた。だが、彼女の集中は途切れがちだった。脳裏に浮かぶのは、志乃のことばかり。

 

「志乃……」

 

数日前から、志乃の様子が少しおかしかった。小さな不調から始まり、次第に彼女の周囲で説明のつかない現象が起こり始めていた。紅莉栖はその度に、研究者として、母親として、志乃の異変をどう捉えればいいのか葛藤していた。

 

「時間の歪み……いや、もっと根本的な何かが起きている……」

 

データを何度確認しても、異常を指摘する明確な数値は見つからない。しかし、志乃の周囲で起こる現象には、確実に異変がある。物体が突然揺れ、無から何かが現れ、時間そのものが歪んでいるように感じる瞬間があった。科学的な理解の範疇を超えた力が、志乃の中で発動しているのは明らかだった。

 

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同じ頃、槙島聖護は別の部屋で窓の外をじっと見つめていた。彼の表情は冷静そのものだが、心の中では紅莉栖と同じく、志乃の状態に対する不安を抱えていた。

 

「志乃……」

 

彼は低くつぶやいた。彼女の力が何であるかは、まだ完全には理解できていなかったが、それが尋常でないことは確かだった。彼は、志乃の中に潜む可能性に期待を抱きつつも、その力が制御を超えることを恐れていた。

 

突然、彼の携帯が震えた。画面を見ると、紅莉栖からのメッセージが表示されていた。

 

「研究室に来て。志乃のことで話がある。」

 

槙島は即座に椅子から立ち上がり、無言で部屋を出た。

 

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「志乃の力が、今の私たちの理解を超えていることは確かよ。」

 

紅莉栖は険しい表情で、手元の資料を槙島に差し出した。志乃の周囲で観測された異常現象をまとめたレポートだ。数値的な異常はほとんど記録されていないが、現実の歪みが確かに存在していることはデータからも示されていた。

 

「このデータは……現実がどこかで破綻しつつあることを示しているように見えるね。」

 

槙島は冷静に資料をめくりながら、口元に微かな笑みを浮かべた。

 

「そう。しかもその原因は間違いなく志乃にある。」

 

紅莉栖は苛立ちを抑えきれない様子で続けた。「彼女が力を発動するたびに、世界が微妙に歪んでいるの。こんなこと、普通の科学では説明できない。」

 

「君は、科学で説明しようとしすぎているんじゃないか?」槙島は紅莉栖にそう告げた。「これは科学の枠組みを超えた現象だ。志乃の存在そのものが、世界の理を壊しつつある。」

 

その言葉に紅莉栖は反論できなかった。志乃の特異性を科学で完全に理解することは、最初から不可能だったのかもしれない。しかし、母親として彼女を守らなければならないという責任感が、紅莉栖の理性を突き動かしていた。

 

「だからと言って、放置するわけにはいかないわ。」紅莉栖は硬い口調で言った。「志乃を守るために、私たちは彼女の力をどうにかして制御しなければならない。」

 

「だが、それは容易ではない。」槙島は穏やかな声で応えた。「彼女の力は、君や僕が想像する以上のものかもしれない。」

 

その時、研究所のモニターに突然警報が鳴り響いた。二人が振り返ると、モニターに表示されたのは、志乃の部屋の映像だった。

 

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部屋の中で、志乃が眠っているはずだった。だが、モニターに映るその姿は、静かに眠るどころか、周囲に異様な光が集まり、空気が渦を巻いているようだった。紅莉栖はモニターに駆け寄り、驚愕の表情を浮かべた。

 

「これは……どういうこと?」

 

志乃の体を包み込む光がどんどん強くなり、まるでその力が暴走し始めているかのようだった。何かが弾けるような感覚が広がり、部屋全体が振動しているように見えた。

 

「志乃……!」紅莉栖はすぐに部屋へ駆け出そうとしたが、槙島がその腕を掴んだ。

 

「待て、紅莉栖。無闇に近づけば君も危険だ。」

 

槙島の冷静な声が彼女の動きを止めた。紅莉栖は振り返り、槙島の冷たい瞳を見つめた。

 

「でも、志乃が……!」

 

「彼女を守るためにも、慎重に行動する必要がある。僕たちが焦っても、彼女の力に対応できるわけではない。」

 

紅莉栖は槙島の言葉に従い、立ち止まったが、心の中の不安は収まらなかった。志乃の力が暴走し始めた今、彼女たちはどう行動すべきかを考える時間がなかった。

 

「私たちで、この暴走を止めなければ……」

 

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この夜、志乃の力は制御不能なほどに暴走し始め、周囲に大きな影響を与える前兆を見せていた。槙島と紅莉栖は、この力にどう対処するか、決断を迫られることになる。

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