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志乃の部屋で巻き起こる異常な現象を前に、紅莉栖と槙島はただ呆然と立ち尽くしていた。空気が震え、まるで時間そのものが揺らいでいるかのような感覚が彼らを包み込む。志乃を包む光はどんどん強くなり、その光景は制御不能な力の暴走を明確に示していた。
「これは…思ったよりも早い…」槙島は冷静な声で呟くが、その瞳の奥には深い懸念が見え隠れしていた。
「早く何とかしないと、彼女だけじゃなく、世界そのものが危険に晒される…!」紅莉栖は焦燥感に駆られ、今にも部屋に飛び込みたい気持ちを抑えることができなかった。
「だが、この力を直接止めようとすれば、どうなるかわからない。」槙島は依然として落ち着いた声で言う。「ここは慎重に、彼女の力を抑える方法を考えるべきだ。」
「そんなこと言ってる余裕があるの?」紅莉栖は槙島を睨みつけた。母親としての本能が、志乃を救いたい一心で彼女を突き動かしていた。しかし、彼女もまた冷静に現実を見つめなければならないことを痛感していた。
「くっ…ダルに連絡して、技術的なサポートをお願いするわ!」
紅莉栖は急いでスマートフォンを取り出し、橋田至(ダル)に緊急のメッセージを送信した。ダルなら、何か技術的な手段で志乃の力を一時的に抑えられる方法を思いつくかもしれないという希望があった。
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数分後、ダルが急いで未来ガジェット研究所に駆けつけてきた。彼の顔にはいつもの軽薄な雰囲気はなく、深刻な表情が浮かんでいた。
「クリスティーナ!何が起きてるんだ!?モニターで見た時、正直、言葉が出なかったぜ…」
「志乃の力が暴走しているわ。私たちもどう対処すればいいか分からない状態よ。」紅莉栖は焦りを隠さずに説明する。
「このレベルのエネルギーが何かに干渉しているとしたら、普通の物理法則じゃ追いつけないな…。でも、デバイスで何か応急処置を施せるかも。」ダルはすぐにノートパソコンを開き、志乃の部屋のセンサーをスキャンし始めた。
「やってみて、ダル。志乃をこのままにはしておけないわ。」紅莉栖はダルに頼るしかない状況に追い込まれていたが、それでも母親としての責任感が彼女を立ち上がらせていた。
槙島は冷静にその様子を見守っていた。彼の心の中では、志乃の力を抑えることが本当に正しいのか、疑念が湧いていた。
「君たちは、志乃の力を制御できると本気で信じているのか?」槙島が静かに言葉を発した。
紅莉栖は槙島の方を向き、強い決意を込めて応じた。「私たちはやらなければならないの。志乃を守るために…」
「守るために…ね。」槙島はわずかに笑みを浮かべたが、その瞳には冷たい光が宿っていた。「だが、その力を無理に抑えつけることが、彼女自身を傷つけることにならない保証はどこにもない。」
その言葉に、紅莉栖は一瞬言葉を失った。槙島の言うことは一理ある。志乃の力を無理に制御することで、彼女がどんな影響を受けるかは、誰にもわからないのだ。
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その時、ダルが小さなガジェットを手にして顔を上げた。「よし、これで少しは時間が稼げるかも。」
彼が開発したデバイスは、周囲のエネルギーを一時的に制御し、力の暴走を抑えることを目的としたものだった。もちろん、それは応急処置に過ぎないが、今は何もないよりははるかにマシだった。
「それで…どうやって使うの?」紅莉栖が聞く。
「志乃の部屋に直接置いて、彼女の周囲のエネルギーを安定させる感じかな。効果は長くは持たないけど、少なくとも混乱を和らげるはずだ。」ダルは自信なさげに言った。
紅莉栖と槙島はお互いに一瞬視線を交わし、黙ってうなずいた。今はそれに賭けるしかない。槙島が先に進み、志乃の部屋のドアを開けた。
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志乃の部屋に入ると、暴走していたエネルギーの渦がさらに激しくなっていた。光の波が壁を包み込み、床が振動している。紅莉栖は緊張した面持ちで、志乃の方へゆっくりと歩み寄った。
「志乃…」紅莉栖が彼女に呼びかけるが、志乃はまるで反応しない。彼女の小さな体は、強大な力に支配されているかのように見えた。
ダルは急いで装置を部屋の中央に置いた。その瞬間、光が一瞬だけ収まり、部屋の振動も徐々に落ち着いてきた。志乃の周囲のエネルギーが安定し、危機はひとまず回避されたかに見えた。
「効果が…あったのか?」紅莉栖は緊張を解き、安心した表情を見せたが、その安堵は長くは続かなかった。
「いや、まだ完全に終わったわけじゃない。」槙島は厳しい口調で言った。「これは応急処置だ。志乃の力そのものが安定しない限り、いつ暴走が再発してもおかしくない。」
「分かってるわ…でも、今はこれで時間を稼ぐしかない。」紅莉栖は冷静さを取り戻しつつ、再び志乃の方を見つめた。
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こうして、彼らは一時的に志乃の力を抑えることに成功したものの、その根本的な解決策はまだ見つかっていない。志乃が持つ特異な力がどこまで世界に影響を与えるのか、誰も予測することはできなかった。そして、その力をどう導くべきか、紅莉栖と槙島の間で再び意見が分かれ始めることになる。