そのライネルはガノンドロフを否定する   作:ムラムリ

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結局筆が乗り始めちゃいましたとさ。
後、これと繋がりがある事にしました。
https://syosetu.org/novel/296727/


ガノンドロフを改めて擦り潰す事に決めたライネルの話

『あのライネルと、一度話をしてみたいのです』

 秘石を使って未来へ帰る目処が立った。しかし、そこは来た未来とは異なる未来かもしれない……いや、来る直前に見た光景からするに、確実に異なる未来だという事で、ゼルダはどうしようもない不安を抱いていた。

 それを察したラウルが何かしておきたい事を聞いたところ、そんな突拍子もない返答が返ってきた。

 ラウルは心底驚きながらも理由を聞く。

『……それは、何故だい? アレはガノンドロフに背いたとは言え、邪の力から生まれた魔物でしかない。

 今は鳴りを潜めていても、あのライネルがその気になれば甚大な被害を出す事は確実だ。

 故に放置しておく訳にはいかない。復興を進められたならば、秘石を使われようとも討伐を視野に入れるつもりだ』

『それは……』

 ゼルダは続く言葉を暫く言いあぐねるようにしてから、それでも意を決したように口を開いた。

『実は未来でも、私達はガノンドロフ……いや、厄災ガノンを信奉しないライネルに助力を貰っているのです。

 とても大きな助力を』

 そうしてゼルダはつらつらと、未来での話を語り始めた。

 魔物であれど、連綿と続く命の営みの末に生まれたそのライネルは、生まれ持った賢さからか、子供の無邪気さ故か、どんな姿をしているのかすら分からないガノンを敬う事に疑問を持ったらしい。

 当然の結果としてそのライネルは疎んじられ、厄災ガノンの復活と魔族の隆盛にも関わらずに孤独に生き、そしてある時見失った退魔の騎士を探し続けるライネル達によって、特別な任務としてハイラル城……その未来では始まりの台地と呼ばれている陸の孤島にただ一匹、大量のオクタ風船を括り付けられて送り届けられた。

 流刑の意味合いでしかなかったそれはとても皮肉な事に、傷付き、力尽きた退魔の騎士たるリンクが100年の眠りに就いた場所を見つけるに至った。

 ライネルはそこで、霊体となりながらも辛うじて現世に留まっているハイラル王と出会い、ガノンを信奉しない事で受けた仕打ちと、そうして傍から見れば狂っているしかない同胞達を見て、ガノンに仇なす事を決め、その覚悟をハイラル王に示して見せた。

 そして100年の眠りから目覚めたリンクは、その副作用からか記憶も剣術も全てを忘れ去っていたが、その内の比類なき剣術をそのライネルは目覚めさせた。

 妖精を持たせた上で一度受ければ即死するような攻撃を躊躇なく振るう事をひたすらに繰り返すという、拷問にも生温いような方法で。

『けれども、リンクは……二日目にはそのライネルを上回り始めて。十日も経たない内に、ライネルの方が触れる事も出来ないまま妖精を使わされるようになり、そうして旅立って行きました。

 ……あのライネルが居なければ、リンクは剣術を忘れたまま旅立ち、道半ばで斃れていてもおかしくはなかった。

 私はそう思っています』

 ラウルは暫く悩む仕草をしながらも。

『……そうして、平和が訪れたと。

 要するに、ゼルダ。君は……ライネルは、ガノンドロフが絡まなければ、時に友好を結ぶ事も出来る魔物であると信じているのか』

『はい』

 まっすぐな目。何があろうとも折れない意志を覗かせる目。

 ラウルは諦め気味に返した。

『……仕方ない。確証は出来ないがやってみるとしよう』

 ゼルダはその目を輝かせた。

『ありがとうございます!』

 

*

 

 長らく会話をした後に帰ってきたゼルダはまず聞いてきた。

「あの、感じていますか?」

「……ああ。とても嫌な感覚だ」

 隣に控えているミネルが怪訝そうな顔をするが、それより先にラウルは聞いた。

「あのライネルと手を交わしていたが。そういう事か?」

「はい。共に戦ってくれるそうです」

「それは信用に足るものだったか?」

 それに対し、ゼルダは少しばかり言葉を選ぶ時間を経て。

「彼には子供が出来たそうなので、こう言っていました。

 『貴様等は、勝ちたかった訳ではなく、負けられなかっただけなのだな』と」

 ラウルは分かりやすく顔を歪めた。ミネルもまた。

 共生など出来やしない、他者を傷つけずには居られない蛮族ではなく、同じ、温かい血の通った生き物であると認めざるを得なくなったような、そんな顔だった。

 振り返れば、そのライネルも何か魔物達と会話をしていたが、またこちらを見てきた。

 用事があるようだと思えば、胸当てをまさぐり、そして秘石を取り出した。

 ラウルとミネルが警戒するように構えた瞬間、ライネルはその秘石を改めて胸へと押し付けた。

 その瞬間。ライネルの肉体は黄金色に輝いたように見え……実際その通りにまた体の色を大きく変えていた。黄金色、けれどけばけばしくない、まるで王であるかのような。

「……こんな事は言いたくないが……まるで祝福されているみたいだな」

 秘石に善悪を判断する能力はない。手にした誰にも平等に、生まれ持った力を倍化させる。

 そうして改めて歩いて来たのに対し、ゼルダも改めて歩いていこうとしたのを、ラウルが制して。

「今度は私が行こう」

「私も」

「いや、見くびられる訳にはいかない」

 そう言って、ラウルは一人、前へと歩いて行った。

 

 ……勝てるか? ……いや。

 それぞれが実力を見定めるような事を内心思いつつ、近くで相対した。

 天空から降りてきたゾナウ族の末裔。ハイラルの大地の王。

 ライネルからすれば、確と目を合わせて来るその意志の強さは、しかしやはり、ゼルダと比べると一段劣るような気がした。

 多分、どちらかと言えばゼルダの方が異常なのだろう。

 ゼルダが何故そこまでの、何があろうとも折れそうにないような意志を得るに至ったのか、結局会話の中からでは引き出せなかったが、いつしか聞いてみたいものだ。

 そう思いつつ、口を開く。

「一応、邪の力に飲み込まれる事もあるかと不安に思う面もあったからな。

 もうこの場で使わせて貰った」

 秘石を使ったにしても相変わらず胸当ての下に収めているのは、ライネル自身がガノンドロフから秘石を奪い取った時の事を反面教師にしているようでもあった。

「呑まれる事はない……というよりかはもう、その身体に邪の力は殆どないように見受けられる」

「いや、制御出来るようになったと言うべきか。今の己は、邪の力を手に取るように感じて、操る事も出来るだろう」

 それに、どこまでも普通の生命にまで近付こうとも、完全にそうなる事はないだろうと己の感覚が告げている。

「……」

「貴様を納得させる事など出来ないだろうが、邪が光を凌駕する世界を作ろうだなんぞ、今の己は思っていない。

 そもそも、こうなっても己だけで残りの秘石の持ち主全てを上回る程ではないだろう?」

「半数は殺してみせる、と言っていたのは嘘にはならなさそうだがな」

 ラウルは自虐気味に言う。実際、生半可な攻撃では怯みもしないような、白髪から白銀に成るのとは訳が違う、純粋に、桁違いに肉体そのものが強くなったような印象があった。

 このライネルがガノンドロフを踏み潰した時。討伐を選ばなかった自分は正しかったと、つい思ってしまう程に。

 黄金のライネルは続けた。

「それに、それよりも己はこの力を使って為すべき事がある。

 己の子を、そして今生きている魔の全てを、二度と意志すらない傀儡へと戻さない事だ。

 その為ならば、己は邪の力だろうと利用する。どれだけ傷を受けようとも立ち上がって見せよう」

 そして、そんな事を堂々と言ってみせるライネルの事はやはりもう、ただの魔物と看做す事も出来そうになかった。

 ラウルは心の中で大きく溜息を吐きながら聞いた。

「それで、すぐに行くべきだと思うが、魔物側からは貴様だけで良いのか?」

「賢者が全員すぐにでも集まれるのならば、こちらも己だけで行くつもりもないが。賢者達は今も仲良く城に集まっている訳ではないのだろう?」

 ラウルは答えるのを躊躇した。その通りにそれぞれの族長は各地の復興に努めており、そして秘石を渡したままでもあるが、今のこのライネルは各個撃破なら容易く成し遂げて見せそうだったから。

 けれども、その躊躇は答えたとも等しかった。

 ライネルは続ける。

「今となれば、己の欲望の為だけに殺すなど虚しいからな。

 とにかく。それだけなら己だけでも良い。

 それと……一つだけ頼まれて良いか?」

 頼み事? 怪訝になりながら聞く。

「何だ?」

「どれだけ、重くても大きくても良い。己の力に耐える武器が欲しい」

 そう言って、ライネルは背中から剣を取り出した。邪の力が集まって肉体が出来た時から共に……繰り返し肉体が再生すると共に、肉体が強くなると共に変わっていったその剣。

 けれども、再び肉体の色が変わった今、長らく付き添ってきたこの剣は余りにも頼りなく見えた。

 邪の力を操れば作る事もできそうだったが、それでガノンドロフと対峙する訳にもいかない。

 ラウルは困っているようなライネルの顔をじっと見た。

「頼む」

 ライネルは何も取り繕わず、率直に膝を突き、頭を下げた。魔物側が騒ついているのが耳に届いて来る。

 ラウルはそんなライネルの下げた頭がじっと動かないのを見続けて、今度こそ溜息を吐いた。

「言ってしまえば、それより秘石を返して欲しいのだがな……。それは絶対に譲らないのだろう?」

 ライネルは顔を上げた。それには何も答えなかった。

「それに、ここでとやかく言い争いをする時間は不毛なだけだ。地底より伝わる不穏な気配に助力が欲しい……邪の力に抗える貴様が居れば心強いのも、否定出来ない。

 ……ゴロン族が祭事用に作った、アーガスタの振るう大剣よりも更に巨大な大剣が城にある。

 それを持って来させよう」

「助かる」

 ライネルは率直に礼を述べた。

 それには返さず、ラウルは端的に返す。

「日が暮れる前に、大穴の前で落ち合おう」

「それと……」

 ライネルがもう一つ言おうとしたのを、ラウルが遮って続ける。

「それともし、万一にでも、私の留守中に貴様等に危害を加えるような誰かが居たら、それは違わず差し出そう。

 そしてそれは、貴様等も同じで良いな?」

「……ああ、それで良い」

 そうして、その場は解散となった。

 

*

 

 妻が聞いて来る。

「本当に行くの?」

「もし、ここまで邪の力が溢れてきたら、こんなちっぽけな石一つでどうにか出来そうにもないからな。

 それが分かったのもある」

 結局、やはり、己はただの魔物に過ぎなかった。

 己が秘石を身につけたところで、ガノンドロフのように全てを支配出来る程の力が手に入る事はなかった。

 ガノンドロフはやはり、肉体の素質という点でのみ言えば、王足り得たのだろう。

 あくまで肉体だけの話であるが。

 子供を抱き抱える。まだ自分で獲物を狩るどころか、弓を引く事も出来ない、少し力を加えてしまえば折れてしまいそうな程に脆弱で、愛おしい我が子。

 その為ならば、きっと何が起ころうとも立ち上がれる。

 

「……アーガスタには後で謝らないといけないな」

 祭事用の大剣。それはデスマウンテンでのみ採掘出来る希少な鉱石を使って出来る、特別重く、硬い合金で、更に巨岩砕きよりも一回り大きく作られた大剣。

 アーガスタであろうとも振り回すなど出来やしない、ただ重量の一点のみにおいて、実用性が皆無な大剣。

 夕暮れまでに届けるには人力では到底間に合わず、各種ゾナウギアをふんだんに使った車に乗って移動すると共に運ぶ事となった。

「ラウル様から見て、あのライネルはどうでしたか?」

「……言いたくはないが、少なくとも、これからの戦いではとても頼りになるだろう」

「でも信じてはいけませんよ。ライネルが魔物である事には変わりないのですから」

 ミネルが釘を刺すように言った。

「はい。でも……共に帰って来たいです」

 出来れば地底で使い捨てにしたい意思が漏れていたか。

「まあ……見捨てるという選択肢を取る事になったならば、私も忍びなく思ってしまうだろうな」

 ガノンドロフには全く無縁だった、あっても唾棄するに違いない愛という概念。それがライネルにはもうあった。そして後ろに続いていた魔物達も覚え始めている。

「……それは、好ましくない事だろうか?」

 その問いにゼルダが安直に言える事もなく、黙っていると。

「貴方が王なのだから、貴方が決めるべきでしょう」

 ミネルが答えた。

 それは言ってしまえば、ミネルもまた、魔物の全ては絶滅するべきだと言う程の過激な思想までは持てない事と同義だった。

 

 昼も過ぎ、行くべき時が近付いて来る。ライネルの脚力なら、とりわけ黄金色をしたこの肉体ならば、目的地までそう時間は掛からないだろうが、全力で駆ける姿はそれだけで脅威に映ってしまうだろうから、余裕は必要だった。

 そしてまた、地底から蠢いている邪の力は、今も尚この肉体と反応していた。

 相変わらず、不快ではないその感覚。

 しかし身を委ねてしまえば、賢者達に今度こそ滅ぼされる事は確実なそれ。

「……それにしても、ガノンドロフは惨めね。私もようやく分かった」

「惨め?」

「あれだけ大きな力を得て。好きに魔物を生み出して。

 でも、そこには親子というような繋がりは一つもない。

 ただ、強制的に盲信させられるだけ。ただ、力に溺れさせるだけ。

 私が子供を産んで、ただ生きていれば、元気で居てくれればそれだけで幸福になっていくような、そんな子供から返される事なんて、何一つもない。それどころか、貴方のように嫌われて背かれて、踏み潰される始末。

 惨めと言うに相応しいじゃない?」

 随分と手厳しい事を……。

「だから、私達は大丈夫だから。こんな可愛い子を見捨ててまで、狂う事は出来ないから」

「ああ」

「だから、お願い。今度こそ、もう二度と復活して来る事のないように擦り潰して来てね」

「……ああ。行って来る」

「行ってらっしゃい」

 

 先に大穴に着いたラウルの一行。

 中からは濃い、今にも溢れ出して来そうな濃い邪の力の気配を感じる。

「多分、中では新しく魔物も生まれているだろうな」

 それをライネルが殺すのを躊躇する事は考えなくて良いだろうが。

「ゼルダ」

「……何でしょう?」

 考え事をしていたような、一瞬の間があった。

「済まないな。帰ろうとしていたところに、こんな事に付き合わせてしまって」

「いえ、このまま帰る事なんて私には出来ませんから。それに……」

「それに?」

「……いえ、何でもありません」

 ゼルダは、口に出せなかった。この展開が必然なのかもしれないとは。

 この太古の時代に飛ばされる寸前に見た光景に……ラウルが命を賭してガノンドロフを封印するところに落ち着いてしまうのでは、とは。

「……なら良いが」

 しかしラウルも、そんなゼルダの心境を察していた。このままだとずれた未来に帰る事になるかもしれない、リンクの居ない未来に帰る事になるのかもしれないと、独り言ちていたのを聞いた事があったから。

 秘石を付けている右腕。あの時、結局使う事はなかった封印術。それを扱える右腕を眺めて、何度か拳を作って解放するのを繰り返す。

「…………」

 静寂。緊張した面持ち。

 ただ、それはすぐに途切れた。

「来ましたよ」

 ミネルが言うと、後ろからわざとらしく蹄の音を鳴らしながら、黄金のライネルが歩いて来ていた。

「それが? 無駄にチャラチャラしているが」

 祭事用の品であるが故に装飾が凝っているのを怪訝そうな目で見るライネルに、ラウルは返す。

「ああ、『山崩し』だ。ゴロン族でも振り回せない代物だが。

 使えそうか?」

「問題ない」

 そう言うと、ライネルはその脅威的な重量を感じさせないかのように、片腕でひょいと持ち上げてしまった。

 それから距離を取ると、いとも容易く振り回して見せる。更に近くにあった大岩に叩きつければ、一撃で綺麗に二つに割ってしまう始末。

 装飾の半分は既に壊れていたが、ライネルは別に気にする事もない。

 そして、肩に担ぎ直してから口を開いた。

「今の己が振るっても壊れそうにないのは、認めざるを得ないな。『山崩し』という名も気に入った。

 ただ一つだけ残念な点を挙げるならば、鎖もついてないから、背中には掛けられそうにないという事だな」

 呆れたようにラウルが返す。

「……気に入ったようで何より。

 では…………覚悟は良いか?」

「ええ」

「当然だ」

「……はい」

「それでは、行こうか」

 ゾナウ族の末裔の二人、遥か未来から来たその子孫の一人、そしてガノンドロフを否定した魔物の一匹は、再び邪の力が溢れ出つつある地底へと飛び降りた。




黄金のライネル(秘石):
ただの黄金ライネルより更に肉体は一段以上強い。
それに加えて、邪の力をある程度操る事が出来る。
でも、言ってしまえばそれだけ。
ついでにリア充。

武器に関しては、本当は獣神の大剣を作るイベントを挟みたかったんだけど、そんな悠長にしている暇もないよなあって事で。
それと山崩しはオリジナルなんだけど、なんかゴロンシティの長の家の中にクソデカい大剣とかなかったっけってふと思った。

1話書いた時点では、最初は続けるつもりもなかったので、タイトルも後々変えるかも。
=> 変えた。『ガノンドロフを魔王の座から引き摺り落とすライネルの話』 => 『ライネルはガノンドロフを否定する』 => 『そのライネルはガノンドロフを否定する』

後、ライネルに対する性癖が昂って仕方ないのでまたまたハードR18なskebを依頼してしまった。
性癖を狂わされるとこういう事になりますのでね。はい。

ゲーム中からのライネルの印象

  • 誉無き蛮族
  • 誇り高き戦士
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