3月全然執筆出来なかったせいで、これの完成が4月10日になってしまった………
2月中旬。
ついに春がやって来た。
それは雪解けの季節であり、冬の間引き籠もっていた冒険者達が活動を再開し始める季節。
また、モンスター達が冬眠から目覚め、繁殖期に入る季節。
そんな時期に、とあるアクセル一の問題児パーティー達の住む屋敷では─────
「いやー!!嫌よ!だって外はまだ寒いじゃない!あちこちに雪が残ってるじゃない!それなのになんで外に出たがるのよ!そんなにお外に出たいなら、二人だけで行ってくればいいじゃない!」
頭が残念なアークプリーストはソファーの背にしがみつきおり、
「誰が子供ですか!今のアクアの方がよっぽど子供ですよ!ほら行きますよ!?冬にあれだけゴロゴロしてたのですから、そろそろ働くましょう!でないと……」
「街の外では様々なモンスター達が活発化して、農家を始めとする様々な場所へ被害がもたらされている!被害拡大を防ぐのは冒険者として果たすべき義務だ!いい加減に手を離せ!このままでは………」
頭がおかしいアークウィザードと頭が変態なクルセイダーが懸命に引き剥がそうとし、
「「あんな風に、ダメな方になりますよ(るぞ)?」」
「おいお前ら。温厚な俺でも怒るときは怒るぞ。あんな風にとかダメな方とか失礼だと思わないのか?」
「文句があるならそこから出てきて言いなさいよ」
頭が狡い冒険者が首から下をこたつの中へと引っ込めた状態で抗議する。
ようやく普通に動ける季節になったため、冒険者としてモンスター達と戦いたがっているめぐみんとダクネス。
だがそんな2人の思いとは裏腹に、グータラな水の女神と引きこもり気質のカズマは一歩も動こうとしていなかった。何とか外へ出そうと説得を続けるも、2人は聞く耳を持たない。
「体を慣らすためにもいい加減にそろそろ外へ出るぞ!このままでは自堕落生活に慣れてダメ人間になるぞ!」
「ダメ人間とか言うな。俺はこれから商人として生きていきたいから。行くなら勝手に行ってきてくれ」
「お、お前……まだ十代だろうが!いいから早く……!」
「『フリーズ』」
「あぁぁーっ!?」
不意打ちで首元をフリーズで冷やされ、ダクネスは悲鳴を上げる。
「こ、この男反撃しました!カズマ、いい加減にしてください!忘れたんですか!?私達にはウィズとユウセンセへの借金があるんですよ!返すためにもさっさとだらけてないで行きましょああああああー!」
めぐみんが引っ張り出そうと掴んだ手をカズマが逆に掴み、ドレインタッチを発動させて魔力と生命力を吸う。その際に後ろに頭から転んで打ち付けたため、両手で後頭部を抑えながら足をジタバタし出した。
「おいおいお前ら忘れたのか。俺はデストロイヤーやバニルとか数多の大物達と渡り合って来たカズマさんだぞ?それに、借金の返済はいつでもいいとウィズやユウも言ってたからな。外にはもう少し気温が暖かくなってからにする。それでいいだろ」
「た、確かにそう言ってましたが、もうすぐ2ヶ月近く払ってないことになりますよ!流石に危機感を感じるところでしょう!」
「俺は人がくれた優しさには全力で甘える男。相手がいつでもいいと言ったなら、焦らずじっくりと休んでから動くぞ」
「いくらなんでも考えがダメ人間過ぎますよ!もう少し礼儀を弁えて下さい!」
痛めた後頭部を擦りながら苦言を呈するも、カズマにはなびかず全く聞いていない。
「……カズマさんったらすっかり堕落したわね。まぁ私ももう少し休みたいし、特に色々言わないけど。それに、カズマがコタツにいれば私が暖炉を一人占めできるからこのままで良いわ」
「アクアもそこから離れろ!この前、暖炉の側でシュワシュワを飲んで酔っぱらい、コップから零れた酒が暖炉に到達しそうになって危うく火事になりかけたのを忘れたのか!?事故を起こしかけた分カズマ以上に迷惑だぞ!」
さっさと離れろ、と足を引っ張るが、楽な方へ逃げる生き方を教訓とするアクシズ教の女神は自身に筋力増強の魔法をかけて抵抗する。
ギャーギャーと騒がしくなり、どちらも一歩も引かない膠着状態が続き。
「おーいカズマ達ー、冒険に行くぞー」
そして、バンッと勢いよく開かれた扉の向こうからやって来た男によって終わりを迎える。
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「悪いな。いくら呼んでも来なかったから無断で入った。というかスゴい大きい声聞こえてきたけ……ど………」
目に居間の様子が入ると、ピタッと動きが止まる。
「お、ユウか。悪いけど寒いからすぐ閉めてくんない?」
「……カズマ、何やってんだ?お前の事は結構認めてたんだが、今の姿を見るとその欠片を微塵も感じないな」
思わずゴミを見るような視線を向けるも、まぁコイツだし仕方ないかと切り替える。
「いま何を思ったのか聞いていいか?」
「ノーコメントで」
「コイツは放っておいていい。それよりなんでユウはここに?」
「あ、そうそう。これを見せに来た」
持っていた紙を向けると、それは討伐クエストであり、討伐対象のモンスターの内容が書かれていた。
モンスターの名前はリザードランナー。
普段であれば特に危険はない、草食性の二足歩行のトカゲだ。姫様ランナーと呼ばれる、大きなメス個体がリザードランナー達を率いて群れを作っている。
じゃあ、何故討伐クエストが出されているのか。
それは、毎年この時季になると繁殖期に入るからである。繁殖期に入ると、姫様ランナーとつがいになるため群れの中で勝負が始まるのだが………その勝負方法は独特であり、それは二足歩行でとてつもない速さで走る。地球のエリマキトカゲのように。
しかもその勝負というのが、同種族で並んで走って実力を測るのではなく、他種族の足の速い生物を見つけては勝負を挑み、並んで走って抜き去るというもの。
そして、抜き去った数が一番多い者が姫様ランナーとつがいになれ、群れを従える王様ランナーと呼ばれる存在となる。
とまぁここまで生態を説明したが、問題はここからだ。この駆けっこ勝負のためならば相手が馬だろうがドラゴンだろうが人間だろうが怖じけずに何だって蹴る。そして逃げる。
その蹴りは凄まじく、当たりどころが悪ければ骨折程度では済まない。
なのでこの時季、リザードランナーの群れ討伐クエストが発注されている。
「そこでカズマ達のところへ来た」
「………そこで、の意味が分からねぇよ。ユウがクエストの紙取ったんだから、お前が行けばいいだろ」
「いやいや、カズマ達はボクとウィズへの借金があるだろ。このクエストは報酬金が高くつくから、これで少しは借金返せるだろ?」
「いやよ。あんた言ってたじゃない。借金返済は何時だっていいって。まだ外は寒いから出たくないわ」
「そうだ。めぐみんダクネス、お前ら外に出たがってただろ?丁度ユウが来てくれたんだし、一緒に行ってこいよ」
せっかくの提案にあまり興味を示さず、このままではこの通り引きこもってしまう。何とかならないかと弟子が視線を向けてきたので、仕方なく。
「アクア。お前、酒場の人からいい加減ツケを払えって言われてるぞ。このままじゃ無銭飲食で警察沙汰になるけど?」
水の女神はダランと暖炉に向けていた手を下ろし、動きを止める。
「カズマ。この中で一番レベルが低いんだから、ちょっとは上げないとこのままじゃ最弱になるぞ?」
「おいこら、いつの間にこの中で俺が一番低レベルにされてんだよ。アクア……はアンデッド沢山浄化しまくってそこそこ高レベルか。でもめぐみんやダクネスが」
「ちなみに、2人ともレベル20以上はある」
「……え?」
「めぐみんは爆裂魔法でデストロイヤーやバニル、雑魚モンスター一掃で沢山倒してるからね。ダクネスはこの前のバニル騒動のとき、バニルの人形を倒してただろ?あれ結構経験値あるからね。結構レベルも上がってる。……で、活躍こそしてるがモンスターの直接撃破はしていないお前のレベルはいくつだ?」
こたつから這い出し、ポケットから冒険者カードを取り出して確認すると、ピタッと動きを止める。
そんな2人にユウヤは一瞥すると。
「どうやら2人は行きたくなさそうだから、ボクとめぐみんとダクネスの3人で行ってくる。2人は中で温まって待ってていいよ」
「「是非とも俺(私)も連れてって下さいお願いします!!」」
大慌てで2人とも引き止めた。
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「すみませんユウセンセ。本来ならパーティーの私達が率先して動くべきだったんですが……」
「あの2人は働くのが面倒くさいと思ってるタイプだからね。もっと強引に行かないと意地でもやらないぞ」
こういう輩は限界まで追い詰めないと危機感を感じて動かない。なので徹底的にやった方が早く根を上げる。
水の女神は未だにぶつくさ言っていたが、ツケについて口に出せばすぐに黙った。
「……それにしてもユウセンセ。カズマの刀に付けた名前の何処がダサいのですか。普通に格好良いでしょう?」
「君達紅魔族は厨二病の癖に、格好良いよりヘンテコな名前を付ける事の方が多いよな」
道中、鍛冶屋でカズマが注文していたアーマーと刀を買いに行ったのだが、カズマの貧弱ステータスではアーマーが重たすぎて動けないようで返品になってしまい、刀の銘を刻むとき、横からめぐみんが勝手に「ちゅんちゅん丸」と刻んでしまった。
いくらなんでもダサい。紅魔族のネーミングセンスは壊滅的だと知っていたが、これはその中でも特にダサい。
そう口にすればすぐさま襲いかかってきた。時間が惜しいので、眼帯を引っ張って離すとすぐ撃沈したが。
そして、未だちらほらと雪が残る平原に着くと、カズマは木の上に登って、水の女神はその下、ダクネスが一歩前で立ち、めぐみんとユウヤはその隙間に、それぞれ位置に着くとカズマが指示を出す。
「よし、それじゃあ始める!まず俺が王様ランナーと姫様ランナーを狙撃!その二匹さえいなくなればリザードランナーの群れは解散するそうだから、残された雑魚はユウが片付ける。狙撃に失敗してこっちに襲ってきたら、ダクネスが耐えてる間に俺が王様と姫様ランナーをもう一度狙撃。それすら失敗したなら、囲まれる前にめぐみんの爆裂魔法でまとめてぶっ飛ばし、撃ち漏らしたヤツをユウと俺で撃破。アクアは全体の援護、ユウは状況によって上手く援護してくれ。………じゃあ、いくぞ!」
ちなみに、ユウヤが一人で群れを全滅させる事は可能であるが、そうなるとカズマ達に報酬金が入らないので、極力手は出さず、状況に応じて援護するという事に落ち着いた。
やがて遠くに、エリマキトカゲを緑色にして大きくなった二足歩行の爬虫類、リザードランナーの群れが見える。
「ユウセンセ。群れの中でも二回りくらい大きくて、頭にトサカの様なツノの生やしたリザードランナーがいるのですが、あれが姫様ランナーなのですか?」
「あぁ、あれだね。で、姫様ランナーがくっついて離れない、一匹のトカゲがいるだろう?あれが王様ランナーだよ」
後ろを見れば、カズマが弓を引き絞っている。狙い目を見つけたみたいである。これは意外と早く終わるかもしれないと息を吐──────
「そうだわ。任せてカズマ、私に考えがあるわ!駆けっこ勝負で一番になったのが王様ランナーなら、王様ってのは一番速い訳よ!神聖魔法の一つに、敵を寄せ付けない魔法の対になるヤツで、モンスター寄せの魔法があるの!これでランナー達を呼んで、一番にここに着いたのが王様よ!」
──────こうとして動きが止まる。遠くから安全に攻撃するはずが、敵を呼び寄せてしまうという、木を見て森を見ずな事を言い出した。
カズマが何か言って止める間もなく、魔法を唱えた。否、唱えてしまった。
水の女神の手に青白い炎が灯る。その炎は遠く離れたリザードランナー達の目にも映ったらしく、トカゲ達が甲高い悲鳴を上げ、ユウヤ達に向かって駆け出した。
「「「速っ!?」」」
「ったく余計な事を………」
カズマとダクネス、めぐみんが走ってくるリザードランナーの速さに驚愕する中、ユウヤだけは冷静に妖狐を抜いて構える。
続いてめぐみんが慌てて爆裂魔法の詠唱を始めるが、この速さでは完成前に攻撃されてしまう。それを察知したのか、ダクネスがめぐみんの前に立ち、壁となる。これなら間に合うだろう。
カズマは弓を構えて下の水の女神を怒鳴るが、怒られた事で開き直ったのか、ヤケクソになった水の女神が叫び、不貞腐れた様に地面に大の字になって寝転がる。
魔法の効果もあって思わず殴りたくなる衝動に駆られるも、カズマが撃った事に気付いて目で追う。
それは先程姫様ランナーにくっついていた、王様ランナーの眉間に当たった。それを見ると、更に厄介になったと頭を掻く。
「え、なんで王様っぽいの倒したのに、益々凶暴になってんだ!?」
「あー、カズマ。王様を先に倒すと、他のトカゲ達が新しく王様ランナーになれるチャンスが出来るから張り切り出す。だから先に姫様ランナーから倒さないと……」
「ユウ!そういう事は先に言えよおおお!め、めぐみーん!魔法の用意は出来たか!?爆裂魔法の使用を許可する!一気に一掃してやれ!」
「任せて下さい!我が爆裂魔法の餌食となれ!『エクスプロージョン』ーッッ!」
そう意気揚々と叫ぶも、何も起こらなかった。不発という思わぬ事態に、多少ユウヤも驚いた。
「!?めぐみん、なんで発動しないんだ!?魔力はどうした!?」
「な、何で!?……って、ああっ!今朝、ドレインタッチでカズマに魔力を吸われたんでした!」
「こんな時に限ってトラブル!?お前達はどうしてこうも行き当たりばったりなんだ!ギルドでアクセル一の問題児パーティーの肩書きの通りだな……」
「その話について詳しく聞きたいところですが、どうしましょうユウセンセ!姫様ランナーが凄い勢いでこちらへ向かってきてます!」
王様ランナーを殺された怒りからか、姫様ランナーが取り巻きと共にユウヤ達へ迫ってきていた。
「極力手を出すつもりは無かったが……ダクネス!めぐみん達をリザードランナーから守る盾になって防いでくれ!ボクは取り巻きの数を減らす!」
「任せろ!むしろ何体か残しておいてくれて構わん!ふははははっ!さぁ来ーいっ!」
こんなときでも性癖を出しているクルセイダーに防御を任せ、ユウヤはリザードランナー達の群れへ向かっていく。
「『風狐』!」
妖狐を『風狐』にすると、群がっているリザードランナー達を次々に斬っていく。斬られたトカゲ達は傷を負うのと同時に、突風が吹いて大きく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられて気絶する。
「わぁあああああーっ!か、カズマさん!カズマさーん!」
「だ、ダクネース!まだ時間がかかる!耐えててくれ!」
「お、お構い無く!ああっ!こ、これはいい……!」
「ちょ、カズマ!急いで下さい!このままじゃ私死にま……ユ、ユウセンセ!ありがとうございます!」
「回収完了」
水の女神がリザードランナー達に揉みくちゃにされ、ダクネスがゲシゲシと蹴られ、その隙に突進してきたリザードランナーの進路から、めぐみんを回収するユウヤ。
「クキェーッッッ!!」
「狙撃!」
絹を裂くような悲鳴を上げて飛び蹴りを放つ姫様ランナーの眉間に、カズマがカウンターで放った矢が当たる。そして姫様ランナーの足は力を失い、届く事はなかった。
…………が。
「………え?」
姫様ランナーの勢いは止まらず、そのまま木の幹に激突して足場が揺れる。油断して無防備な体勢を取っていたカズマは、そのまま落下した。頭を一番下に落下しており、このままでは落下死の可能性がある。
やがて地面がハッキリ見え、変な体勢でぶつかりそうになり。
「油断するな。戦闘が終わったと安心した瞬間が、一番命の危機に瀕している」
「すいません。肝に命じます」
落下に気付いたユウヤが、ギリギリのところでカズマの足を掴んで事なきを得る。
カズマを下ろしたあと、今日の出来事を振り返る。
水の女神が敵を引き寄せ。
カズマが王様を倒して敵が余計興奮し。
爆裂魔法の不発で敵の数を大きく減らせず。
挙げ句の果てには勝ち誇ったところで落下して危うく死亡しそうになる。
……普通では考えられないほどのトラブルの連発だった。
こんなバラバラな連携でよく今まで生き残っているなと呆れると共に、パーティーでの討伐はこんなに楽しいものかと、羨ましさを感じていた。
ヤバい。執筆してストック用意しないと2日、3日に1本の投稿頻度が危うい……。
追記:ストックが切れました。モチベが低下してやる気が起きないです。数ヶ月くらい休載しますのでご了承ください。
評価と感想待ってます。