トルキナ連邦召喚   作:mogatoku

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オリジナル設定あります。



8 連邦の“ささやか”なる目論見 ―― ホテルと銀行券 

 

1639年3月3日 夜

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 『皇都ホテル』

 

 

 最初の会談は国家戦略局の庁舎で行われた。

 会談の終わりに、ニムディスは尋ねた。

 

「皇都で一番の宿館はどんなものか楽しみじゃ。紹介してくれぬか?」

 

 しばらく待つと職員と思しき男がやってきた。

 

「配下の方々にはすでにホテルを紹介しました。馬車を手配してありますので、ご案内します」

 

 この「ホテル」という()は、連邦でも、北のローハ共和国では方言として普通に使われている。

 ただ連邦公用語では「宿館(しゅくかん)」という呼び方が一般的である。

 

 ニムディスは、夫ジローと、護衛のグリオナとともに、案内された『皇都ホテル』に入った。

 

「なかなかの宿館ではないか」

 

 ニムディスは“素晴らしい宿館”をそう表現した。

 厚い絨毯。

 光沢を放つ木製家具。

 天井の豪華なシャンデリア。

 その淡く煌めく光。

 

(なかなかの宿館じゃ!)

 

 ニムディスは上機嫌である。

 

 足取りも軽く、宿泊することになった広い室内を見て回る。

 寝室に居間に着替え室に小間使いの部屋まである。

 

 壁や天井の装飾は、ニムディスにとって、ある意味で馴染み深くもある。

 

(まるで旧貴族邸のようじゃ。あれも一つくらいは宿館としても良かったかもしれぬ)

 

「前の宿よりもずっと良いのじゃ!」

 

 ニムディスは上機嫌である。

 

 クワ・トイネ公国では宿に泊まることはなかった。

 クイラ王国ではそれなりの館に泊まった。

 だがロウリア王国でジローがとった宿にはガラス窓がなかった。

 代わりに木の窓だったが、部屋がほこりっぽい上に、隙間風で妙に寒かった。

 

(あのような宿はできれば御免被りたいものじゃ・・・)

 

 クイラの王城の客室には窓ガラスがあったゆえ、寒くなかったがな。

 

 馬車の揺れもひどかった。

 

(特にクイラ王国でのあの馬車移動! あれには参ったのじゃ!)

 

 中途半端に舗装された石畳の道。

 その上で跳ね回る馬車はバネも付いていなかった。

 快適からほど遠い数日間であった。

 

(加護があるゆえに痛くはないが……決して心地良いものではないのじゃ)

 

 ただジローが「これも外交の仕事のうちだよ」と話すゆえ、何も言わぬようにしておるが…

 

(その点、ここパーパルディア皇国は良いな!)

 

 首都エストシラントは、ロウリア王国の首都ジン・ハークより二千キロ以上北にあるはずなのに、室内は暖かく、過ごしやすい。

 

(馬車も快適じゃ! バネがきいておる! ガタガタせぬ!)

 

 ニムディスは上機嫌である。

 

 だが違う者もいた。

 

「それにしても、あの者の態度は何なのでしょう!」

 

 憤っているのは、グリオナ・スラトシャール中将。濃色の女ドワーフである。

 彼女とは帝国時代からの長い付き合いである。

 父親は同じく“不老の加護”持ちであった伯爵。その令嬢でありながら近衛兵をしており、当時皇女だったニムディスの護衛をしていた。

 その後、監査府護衛隊の創設に関わった。その護衛隊が(のち)の監査府直轄軍である。

 

 他の職員たちも来ており、別の部屋に宿泊する。

 もちろん護衛の直轄軍隊員も待機する。

 

 この部屋には3人が泊まる。

 寝室が3つあり、もちろんグリオナは別室で寝る。

 いつもはもう1人いるのだが、今回は同行していない。

 

 いないのはゲルダエール・ローハン大将。

 ロウリア王国で許可なく探知阻害魔法を解除し、その罰として艦内での室内待機処分となっていた。

 

 

「エルフのことを亜人呼ばわりされて腹が立ったらしい。特に『奴隷にする』と言われて激怒したようだ。ちょうど魔道士らしき人物がいたから、探知阻害を外して魔力の強さを見せつけようとしたと話している」

「いつもは冷静なゲルダエールが怒るとはな」

 

 話を聞いてそう漏らした。

 ニムディスにとっても意外な出来事だった。

 

「確かに誇り高きエルフが亜人呼ばわりされれば腹も立つじゃろうが、そこは監査人の仕事じゃ。軍人が口出すことではない」

 

 そう言って艦内待機処分に同意したのだった。

 

 

 このため今回はニムディスの護衛であるグリオナだけが部屋に同行している。

 そのグリオナが憤っている。

 今日の会談相手の態度に。

 

(ただ「その場でではない」ところがゲルダエールとの違いじゃな)

 

 今日の会談は話があまり進まなかった。

 

(進まなかったのはあの男のせいじゃが…)

 

「事あるごとに『上位に立とう。優位を示そう』とやっきになっておったが、カワイイものじゃ」

 

 以前、ジローが冗談で話したことを、新聞が記事にしたことがあった。

 

最高監査人、両院を揶揄!

「連邦議会の半分は“共和国間の駆け引き”でできている。残りの半分は“それ以外の駆け引き”でできている」

 

 批判されるかと心配したが、むしろ共感の声があがっていた。

 連邦政府はそれほどに大変なところである。

 

(わらわもまた元老どもの相手をしてきたのじゃ。あのような相手など、たわいもないことじゃ)

 

「ターラと大して変わらないね」

 

 ジローが話に加わってきた。

 

 トルキナ連邦はターラという惑星からこの世界に転移してきた。

 ターラでも、大陸諸国家の態度はどこも、最初は同じようなものだった。

 

(グリオナはあの頃も、部屋に戻ると腹を立てておったな)

 

「“ロウリアの借金問題”を話題にするのは時期尚早じゃな」

 

 馬車の中では話題にできなかったことを口にする。

 聞かれてしまう恐れがあったからだ。

 

(ここなら聞かれることもあるまい)

 

 

『ロウリア王国の借金問題』

 ロウリア王国がパーパルディア皇国に莫大な借金をしている問題。

 もともと王国はクワ・トイネ公国とクイラ王国を征服して亜人達を駆逐し、略奪した富で、返済する計画だった。しかしトルキナ連邦との合意で『亜人殲滅方針の撤回』を約束したため、借金返済の目途が立たなくなったのである。

 

 

 ニムディスとジローは、そんなロウリア王国の負担を減らすことを考えている。

 なるべく引き延ばし、なるべく少なく返済する計画。

 つまりパーパルディア皇国にとっては()()()()()()()()()『長期返済計画』を立て、同意してもらおうなどという、まるで“債務整理の弁護士”のようなことを目論んでいるのだった。

 

「それはそうだ。まずは普通の関係を結ばないと」

 

 そうじゃな。今はとにかく国交を結ぶことじゃ。

 

(その上で、うまく“貸し”を作れれば、言うことないのじゃが…)

 

 国交を結び、付き合いを始め、うまいこと“貸し”を作りたい。

 

(“貸し”とは“相手を助けつつ、首に細い糸を巻き付ける”ことじゃ)

 

 そうやって逃さないようにしてから、

「ところでものは相談なのじゃが…」

 と、ニムディスはやるつもりなのである。

 

(この“ささやか”なる目論見は、まだしばらくは目途も立たぬじゃろうが…)

 

 ちなみに、今回3個艦隊も引き連れているのは決してそのためではない。

 ただの偶然である。

 

「ジローはあの二人をどう思うた?」

 

 ジローが長椅子に座り、腕を組んだ。

 

「ロウリア王国のマオス宰相や、クワ・トイネ公国で雇った現地補助員が語った”高慢なるパーパルディア皇国”を体現しているように思ったね。特にあのカイオス局長は」

 

 

『高慢なるパーパルディア皇国』

 マオス宰相がジローに言った発言に由来。

「高慢なるパーパルディア皇国は、とにかく、自尊心が高い。気を付けられよ。ただ自尊心をしっかりと満足させてやれば、意外と寛大な(チョロい)ところも…(以下省略)」

 

 

 ニムディスも対面に座り、静かに頷いた。

 

(あれはつまらぬ男じゃな)

 

 あのようなつまらぬ自尊心を満足させて、連邦の利益になるとは思えぬ。

 

 もちろんニムディスは、そんな事をするつもりはサラサラなかった。

 

「そうじゃな。もう一人はどうじゃ?」

「国家戦略局のイノス局長かい? なんだか居づらそうにしてたね。『なんで自分はここにいるんだ?』という顔に見えたよ」

「ほう」

 

 確かにあの顔は困惑の表情じゃった。

 この国も一枚岩ではないのかもしれぬ。

 

「送り届けた三人について所属長として礼くらい言うのかと思ったけど、カイオス局長があの調子では、言えなかっただろうなあ。ただ、連邦の制度に興味があるみたいだった」

 

 相手の国を知ろうとするは、公務員として当然の務めじゃ。

 それが国の行く末を左右するかもしれぬのじゃからな。

 

(そういう意味では、あの男は正しい)

 

 疑問に思ったことを率直に質問しておるように見えた。

 相手の力量を知ろうともせずに、ただ上に立とうとする男より遥かにまともじゃ。

 

(あやつとなら話ができそうじゃな……あやつの仕事は何であろうか?)

 

 ニムディスはふと気になった。

 

「国家戦略局というのは、どういうものじゃろうか」

 

 するとジローが考えるように視線をテーブルに落とした。

 

「そうだなあ…連邦の場合、経済戦略は産業省がやるし、金融政策は財務省と顧問銀行がやるし、公共基盤整備計画や国土保全計画は国土省がやる。防衛戦略は防衛省がやるし、外交戦略は監査府がやる」

 

 ジローはよく考えながら話す。

 ニムディスにとっては日常である。

 

「だから国家戦略とは、それらをひっくるめたもの、ということもありえる」

 

(今ひとつようわからぬな)

 

「でも軍艦の技術水準を考えると…もっと単純なものかもしれない」

 

 ジローが顔を向けてきた。考えるのを止めたのだ。

 

(結論が出たか)

 

「もっと単純とな?」

「そう。ロウリア王国への支援から考えると、もしかすると王国を借金漬けにして、借金のカタに港湾などをせしめるためかもしれない。あるいは王国がロデニウス大陸を統一したら、クワ・トイネ公国の穀物やクイラ王国の地下資源などをせしめるつもりなのかもしれない」

 

(まるで高利貸しの“貸し剥がし”じゃな)

 

「こういうことは外交だけではできないからね。さまざまな権益を確保する目的で、外交と通商、経済と軍事などの各所を横断して、一体的に取り組むための部署として、国家戦略局というのがあるのかもしれないね」

 

(ふむ…)

 

 ニムディスは今の話を考える。

 

「つまり昔の顧問府のようなものじゃな」

 

 帝国顧問府――帝国時代の政府機関の一つ。巨大な権限を持っていた。

 

「だいぶ違うと思うけど…」

「違うのはわかっておる。ただ独自に大きな権限でいろんなことをするという意味で言うたのじゃ」

「そういう意味ならそうかもなあ」

 

 ジローが再び天井の小さなシャンデリアを見上げた。

 

(貸し剥がしが目的なら、容易には行かぬな…)

 

 この国のことは何も知らぬに等しい。

 解決の糸口を見つけたいところじゃが……

 

(まず相手をよく知らねばならぬ)

 

 ニムディスが決意を新たにしていると、ドアを叩く音が響いた。

 すぐにグリオナがドアに赴き、開けて、振り返った。

 

「外務局長です」

 

 あのカイオスのことではない。

 連邦監査府の外務局長のことである。

 

 ニムディスが頷くと、グリオナがドアをさらに引き、入室を促した。

 すると、スタスタと女ニンゲンが入ってきた。

 

「話をしに来たんだけど、いいかしら?」

「うむ、よいぞ」

 

 外務局長を務めるジョアンナ・ボールドウィン外務監査官である。

 直轄軍のレオナ・バルト中将も入ってきた。

 

 ジョアンナは局長としてはやや若い。

 そのうち秘書官になるかもしれぬ。

 

(今まで外務局出身の秘書官はいないゆえ、どうなるかわからぬが…)

 

「そちらは、なにか進展はあったのかしら?」

 

 ジローの隣に座ったジョアンナは、いつものようにタメ口である。

 監査府には軍と同じような階級制度がある。

 そして、ある階級以上になると、互いにタメ口で話す。

 監査府の慣例である。

 

「まだじゃな。わが連邦のことを軽く紹介しただけで、終わってしもうた。明日また迎えが来るそうじゃ」

 

 ジョアンナは特に驚いた様子も見せない。

 

「そう。何か決まったら教えてちょうだいね」

 

 決まるのはまだまだ先じゃろうがな。

 

「うむ。そちらは何かわかったのか?」

 

 するとジョアンナが待ってましたとばかりに、身を乗り出した。

 

「ええ。いろいろとね」

 

 肩に掛かる茶色の髪が一度離れて、再び戻る。

 

「まず通貨だけど、この国には“銀行券”があるわ。これが現物」

 

 ニムディスは、いや二人は身を乗り出した。

 

「なんと!」

「なんだって!!!」

 

『銀行券』――連邦が使用している紙幣の呼び方。

 

 ニムディスは思わず目を見開いた。

 ジローが手を伸ばして”銀行券”を奪うようにつかみ取った。

 

「さような国は初めてではないか!」

 

 二人の反応に楽しげな様子で頷くジョアンナ。

 

「でしょう? わたしも驚いたわ」

 

(…道理で72カ国も従えられるわけじゃな……ん?)

 

 ニムディスの目はジョアンナの隣に移る。

 

「ジローよ、どうした? なにゆえそれを持って目を閉じておる?」

 

 ジローが反応しない。

 

「ジロー……?」

 

 なにやらブツブツとつぶやいている。

 

「……ついに……ついに連邦以外に……近代的な……金融制度を……持つ国が……」

 

 ニムディスはジローに呆れた視線を向けた。

 

(……聞いておらぬな。なにを浸っておるのじゃ)

 

 ジローは放っておくことにして、すぐさまジョアンナに顔を戻す。

 

「“銀行券”があるなら“銀行”があるということじゃな」

「ええ。明日、部下を銀行に行かせるわ。もちろん現地人に見える職員から始めるわよ」

 

 ジョアンナが陽気に補足した。

 

 民間人との接触は、なるべく現地人に近い容姿の者から始める。

 多種族国家トルキナ連邦が他国で民間人との交流を始める際のやり方である。

 

「そうじゃな。帝国時代の銀行じゃろうか」

 

 あの頃、ローハ王国には既に銀行があった。

 

「そんな昔のこと、わたしにはわからないわ」

 

 ジョアンナが首を振っている。

 今年は連邦暦395年。もうそんなに経つか。

 

「それもそうじゃな。今の銀行とはだいぶ印象の違うものじゃ。ゆえに同じものとは思わずに、丁寧に確認するのがよかろう」

「わかった。部下にはそう言っておくわね」

 

 ジョアンナが頷き、またすぐ口を開いた。

 

「それと、この宿館はロウリア王国の金貨が使えるそうよ」

「それはいい!」

 

 ジョアンナの隣から声が飛び出した。

 

(ジローの意識が戻ったか)

 

「金の延べ板で支払うのは、いかにも田舎者という感じがして好きじゃなかったよ」

 

『金の延べ板』――連邦の中央銀行である顧問銀行の刻印が押された金の小さな薄い板。

 いままではそれで、支払っていた。

 

 連邦政府は、賠償金としてロウリア王国から金貨1万枚を受け取ることが決まった。

 すでに金貨1000枚を受け取っている。

 これを支払いに使える。

 

「じゃが銀行があるなら、現地のおカネに交換すれば良いのではないか」

「交換できればするつもりよ。でも銀行が取引してくれるかは、まだわからないの」

 

(なるほど…さようなこともあるか…)

 

 さらにいくつか報告を終え、ジョアンナが出て行った。

 

「この国はそれなりに“仕組み”を持っておるようじゃ。『()近代国家』とは言えぬかもしれぬ」

「そうだね。『近代国家』と認定することになれば、この国で連邦刑法を執行するわけには行かないな」

 

 ジローの声が弾んでおるな。

 近代国家の存在がそんなに嬉しいか。

 

(犯人を逮捕するのに“現地政府の許可”を得ねばならぬというに……)

 

 監査府はこれまで、現地政府の許可がなくとも、犯人を逮捕し、あるいは排除してきた。

 連邦市民を襲撃した海賊や盗賊の捕縛、もしくは排除に、現地政府の許可は必ずしも必要ないとされてきた。

 

 それは犯行現場が『()近代国家』だったからである。

 現地領主の気まぐれごときに、連邦刑法が歪められてはならないのだ。

 

 だが『近代国家』となると話が変わってくる。

 そのような国との付き合いは経験がない。

 ただ監査府はこれまで、想定はしてきた。

 何に注意すべきか、あらかじめ考えてはある。

 

(初めてのことゆえ、合意には細心の注意を払はねば)

 

 ふとニムディスは、歩み寄ってくるグリオナに気付いた。

 

(さて、何の話をしておったのか…)

 

 グリオナがレオナと何やら話していたことに、ニムディスの目は捉えていた。

 

 レオナ・バルト中将は監査府直轄軍所属。ジロー護衛部隊の隊員を務める女ニンゲンである。

 

 二人の様子を見て、ニムディスは察知する。

 

(何かあったな)

 

「何の連絡があった?」

 

 何かあれば旗艦から連絡があることになっている。

 もう先日のような失態はないはずだ。

 

 レオナが口を開いた。

 

「この都市の複数箇所で電波が出ていたようです」

「電波か……」

 

 ニムディスはすぐ原因に思い至る。

 

(電波と言えば、あやつらじゃな)

 

「グラ・バルカス帝国か。随分と熱心じゃな」

 

 ロウリア王国でも電波が出ていた。

 早速、調べさせたら、諜報員の隠れ家だった。

 小銃と手榴弾を使おうとしたという。

 ジョン・コールダー情報監査員が、押収した小銃と手榴弾を証拠として見せてきたため、ニムディスは監査人として、殺人未遂容疑者への尋問魔法の使用を正式に許可したのだった。

 

 尋問にはニムディスも参加し、直接話を聞いた。

 

(その内容は驚くべきものじゃった)

 

 諜報員はグラ・バルカス帝国の者で、その国は転移国家である。

 そして「この世界を征服せん」と目論んでいるという。

 

(ならば、この国にも諜報員が潜入しておっても不思議あるまい)

 

「それが、別の集団と思われる電波もあるとのことです」

 

 レオナが補足した。

 

「他にもあるのか!」

 

 ジローがうんざりしたように声を上げた。

 が、すぐに「何でもない」とでも言うように肩をすくめた。

 

「他にも転移国家があるのか?」

「どうかな。現地勢力かもしれないよ)

 

 いずれにしても、新たな脅威の可能性を頭に入れておかなくてはならないようじゃな。

 

「あの無礼者達に教えてやるのですか?」

 

 褐色の顔に不満を浮かべるグリオナに、ニムディスは頷く。

 

「そのつもりじゃ」

 

 ニムディスは既に決めていた。

 

 新たな脅威を確かめねばなるまい。

 現地政府に隠れて調べるのも一つの方法じゃが、ここは現地政府の手を借りて調べるのが正解じゃろう。

 

(これであの男どもが恩を感じてくれれば良いのじゃが・・・)

 

 もともと“貸し”を作る計画なのである。

 これもその一環。

 

(じゃが“礼を尽くす”という言葉を知っておるのかもあやしいのう。そのような相手に“貸し”を作る意味はあるのじゃろうか?)

 

 ふと、声を荒げるカイオスの顔が思い浮かぶ。

 

(期待はできぬな。じゃがするだけはしておこう)

 

 ニムディスは既に決めていた。

 

 

 





 パーパルディア皇国に紙幣があるという記述は原作には見当たりません。
 ですがバンクノート(銀行券)というのは、意外と歴史が古く、原初はルネサンス期までさかのぼります。
 なので皇国にあっても不思議はないと思い、こういう設定にしました。
 ただし、わたしたちが使っている紙幣と同じではないかもしれません。


 次回の更新は明日の予定です。
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