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中央歴1639年3月26日 朝
トルキナ連邦 シーナ共和国 史都 宿館〈本史安〉
メッサルは準備を済ませて自分の寝室を出ると、ザッツ王子が居間で文官達を整列させていた。
「わしは別に行くところがありますので、失礼します」
メッサルは巻き込まれまいと、すぐに退出しようとする。
「なに? 何処に行くのだ?」
「鍛冶屋です」
「鍛冶屋ぁ? なぜそんなところに行く?」
「トルキナの剣ができる様子を確かめようかと」
ギブルス殿のお誘いである。
――きっと何かがあるに違いない!
「では、冒険者組合に行かないのか」
「はい、あとはよろしくお願いします。ギブルス殿がすでに話をしているそうですが、王国として正式に依頼しないと人が集まらないという話です」
「ジルド将軍はどうする? 剣ができる様子を見なくて良いのか?」
「将軍は冒険者組合に行く方が良いでしょう。ギブルス殿の話だと冒険者の寝食はどうなるのかとか、戦いはどこを守るのかとか、指揮官との連絡はどうするのかとか、いろいろと尋ねられるそうですので」
「それもそうか」
「わたしは商人ゼシムと鍛冶頭領ドルゴを連れて行きますので」
ギブルス殿の強い勧めで連れてきた二人だ。
(なぜ連れて行くのかは知らんのだが……)
「そうか。なにか優れた武器があったら買って参れ」
「おまかせを」
「ところで見てくれ! よし、行くぞ。王国万歳!」
「王国ばんざーい…」
文官達があたふたと動く。
「……もう何度も拝見しました。同じことを言いますが、形だけ真似ても皆の尊敬は得られませんぞ」
「わ、わっておる!」
――わかっておられない……
民議院見学の翌日、歓迎式と調印式を兼ねた式典が行われた。
それからというもの、王子はニムディス殿の真似に夢中だ。
「騒ぐとまた支配人に注意されますぞ。殿下の評判が落ちれば、せっかくの見事な演説が台無しになります」
「わ、わかっておる!」
――そう、王子の演説はそれは素晴らしかった。
一昨日の式典は、確かに華やかで賑やかで力強かった。
だがすでに前日の民議院の衝撃でお腹がいっぱいだったメッサルには、円形の野外会場も、ラッパによる大音量のファンファーレも、会場に集まった万にも及ぶ聴衆も、多種族による国歌の大合唱も、魔法で飾られた演出も、連邦軍兵士の行進も、心を揺らすことはなかった。
ただ、王子の演説だけは違った――
調印の儀の後のことだった。
『続きまして、クイラ王国代表団団長ザッツ王太子殿下より挨拶を賜ります』
クワ・トイネのカナタ首相の挨拶が終わり、王子が挨拶する番がやって来た。
『クイラ王国王太子のザッツである。この度はこのような素晴らしい歓迎を――』
練習の成果は出せるだろうか。
殿下が恥を掻けば、それは王国の恥となる。
(…うう、心配だ…)
『――我が父より、伝言を頼まれている。貴国の使者二人からの贈り物は素晴らしいものであった。またジロー殿の角笛の演奏も素晴らしく、楽しいひとときであった。またいつでも遊びに来て欲しい、と。ひいてはここにクイラ国王陛下よりトルキナ連邦に品を贈る。ご覧あれ。我が国で採れたダイヤモンドをあしらったブレスレットその名も〈星の輝き〉二組を!』
文官ケラーが箱を開け、ダイヤモンドのブレスレットを皆に掲げて見せてから、手渡した。
ニムディス殿がそれを受け取ると、四つの腕輪がフワリと浮き上がり、皆を見渡すようにゆっくりと回り始めた。
(魔法をこんな風に使うのか!)
拍手がさざ波のように静かに起こり始め、やがて大きくなり、歓声まで聞こえ始めた。
民議院で王の務めを分担していた者たちも、感嘆の表情で見上げている。
王子を見ると、拍手と歓声を浴び、感銘を受けたのか顔が紅潮している。
ふとクワ・トイネ公国の席に視線をやると、リンスイ外務卿が奥歯を噛みしめているのが見えた。
(ふ、勝ったな)
少なくとも手ぶらだったクワ・トイネよりは我がクイラ王国の方が、トルキナ連邦に好印象を与えたはずだ。
メッサルがほくそ笑んでいると、再び静かになった。
王子はしばらく唖然としていたが、ケラーに促され、また話し始めた。
『幸い、王国と貴国との出会いは幸運に恵まれ、素晴らしいものとなった。クイラ王国は荒野が広がる国だが、石炭と石油が採れる。この二つは貴国の反映に大いに役立つモノだという。わたしはこれを聞いたとき、貴国との交流は互いにとって必ずや有意義になるものと確信した。我が国は長らく、隣国による差別主義の脅威にさらされている。だが貴国が石炭と石油を我が国より買い入れてくれれば、それを元手として備えを強化することができる。我が国は貴国の力に
(ついこないだまでよちよち歩いていた殿下が…すっかりご立派に…!)
メッサルはふと気付くと、王子の成長に感動する爺やのような気持ちになっていた。
実際、ひいき目に見てだが、立派な挨拶に思えた。
万雷の拍手と大歓声もそれを物語っていた――
「あれは見事な演説であっただろう!」
確かに、カナタ首相の平凡な演説がすっかり霞んでしまったほどに、見事なできばえだった。
だが、メッサルは知っている。
「ギブルス殿の例文のおかげかと……」
「それは黙っておくようにと、ギブルス殿も申していたではないか」
「そうでした」
「ただニムディス殿の方が素晴らしかったな」
「あれは兵役訓練の
そう、式典の最後にニムディス殿の挨拶があった。
『では最後に、ニムディス最高監査人より挨拶の言葉があります』
ニムディス殿は悠然と立ち、話し始めた。その姿には気品と、力強さがあった。
両国は馬車と帆船の国であるが、飛竜に騎乗して空を飛ぶ。我々にはない優れた技術じゃ。
我らは新たな学びの場を得たと言えよう。
――そんな話をした後だった。
『トルキナの民よ! わらわに続き皆で唱和するのじゃ!』
“おうっ!”
万を超える人々の声が一斉に響く。
『クワ・トイネ公国の未来に安寧あれ!』
“クワ・トイネ公国の未来に安寧あれーっ!”
大地を揺るがすほどの大きな声だ。
(なんと…)
『クイラ王国の未来に繁栄あれ!』
“クイラ王国の未来に繁栄あれーっ!”
(多種族の人々が一斉に唱えるとかくも力強いのか)
『両国との関係に政令の祝福のあらんことを!』
“両国の――”
(それともこれ程の人数だからか)
『では最後に連邦の存続と繁栄を祈念し――』
ニムディス殿が右拳を高く突き上げた。
『連邦万歳!』
“連邦バンザアアアアイ!”
両国の代表団を除き、皆が一斉に同じ動きをした。
老若男女が、小さい種族が、大きな種族が、人間が、エルフが、ドワーフが、一斉に拳を突き上げた。
そして空を揺るがす圧倒的な声の圧力。
“オオオオオオオオ――!”
万雷の拍手と咆哮が熱狂と興奮の雷鳴となり、会場を覆い尽くす。
メッサルは――すでにお腹がいっぱいだった。
「なんと…見事な…」
その声に隣を見ると、ザッツ王子の目は輝き、顔は紅潮していた。
――そしてこう呟いた。
「王になるより、いっそ監査人になろうか…」と。
(はあ? 何をズレたことを…)
メッサルは呆れた。
この一体感と興奮の理由はおそらく役職の名称とは関係ない。
これは何か別のものだ。
「そのような世迷い言は帰ったら決して口にしてはなりませんぞ」
「わ、わかっておる」
――いや、わかっておられない。
そう思ったのは正しかったようだ。
だがメッサルはそろそろ行かねばならない。
「ではお先に行って参ります」
「ああ、しっかり見てこい」
一階の玄関広間に降りると、宿館の案内人がすぐさま寄ってきた。
「メッサル卿、ギブルス監査員があちらでお待ちです」
「うむ、わかった」
すぐに応接テーブルに向かう。
「おはようございます、メッサル卿」
「ギブルス殿、おはよう」
ギブルス殿と並んでダークドワーフの男が立ち上がった。
すでに御用商人のゼシムと鍛冶頭領のドルゴも来ていた。
もう挨拶を済ませたのだろう。
「こちらは?」
「こいつはわしの友人でしてな。ベルと呼んでいます。ベル、こちらはメッサル卿だ」
「初めまして。ブリンの友人でベルヌース・リグルーンと言います」
ブリン?
ああ、ギブルス殿の名前か。ブリン・ギブルスという名前だったな。
「どうかベルヌースとお呼びください。普段は弁護士をしています」
(なに?)
その言葉に、メッサルはロッシ殿の一人裁判劇を思い出した。
「弁護士だと! わたしは誰も殺しておらんぞ!」
「ハハハ、冗談がお上手ですね」
(いや、冗談では…)
メッサルは本気の言葉は冗談に聞こえたようだ。
「実はもう一人来るはずでしてな…」
ギブルス殿が見渡していると、離れた席から声が響いてきた。
「ブリン! そこに居たのか! あそこで待っていたんだぞ」
振り向くと、ダークではない、ただのドワーフが近づいてきた。
「なんだ、いたのか! 気付かなかったぞ! メッサル卿、こいつはロドルです」
「初めまして、ロドル・ケイディンです。ロドルと呼んでください。会計士をしています」
メッサルは名乗り、すぐに尋ねた。
「カイケイシ? それは何だね?」
「それについては本人からおいおい話してもらうとして、本日はこの二人に卿を案内してもらいます」
「なに? ギブルス殿が案内してくれるのではないのか?」
するとギブルス殿は残念そうに首を振った。
「わしは冒険者組合の方に行かねばならんのです」
つまり王子達の方に同行するのか……
(それもそうか……)
「そうか…ではお願いしよう」
「それじゃ、ベル。わしは案内を頼んだだけだからな。それ以外は、わしにはあずかり知らぬことだからな」
「わかってるって。それではメッサル卿、駐車場に行きましょう」
(ん? 今のはどういう意味だ?)
五人で駐車場に行くと、今までよりずっと小さな輪車が待っていた。
「これはずいぶんと小さいが」
輪車を操るのはケイデン殿だった。四人を乗せて通りを進んでいる。
「ああ、代表団は旅客輪車に乗るんでしたね。これはドワーフ用の乗用輪車です。だから小さいんですよ」
「なるほど。小さい輪車は何度も見かけたが、そういうことだったのか。ところでどこに向かっているのだ?」
「鍛冶工房です」
しばらく話している内に、輪車が止まった。
「着きました。ここは『ステイム鍛冶工房』です」
降りると、ドワーフの男が出てきた。
「工房長のステイムさんです。ステイムさん、こちらはメッサル卿です、こちらは商人のゼシムさん、そしてこちらは鍛冶頭領のドルゴさんです」
「工房長のドルン・ステイムだ。剣を作る様子を見学したいんだったな。ではついてきてくれ」
雰囲気はいかにも熟練の鍛冶屋のようだった。
先が四角いブロックになっている鉄の棒を持ち上げる。
「これが剣になる鉄だ」
すると鍛冶頭領のドルゴが声を上げた。
「ん? ここで鉄を作るところを見せてくれるんじゃねえのか?」
「いや、もしかしてあんた鉄も作ってるのか?」
「当然だ」
「ちなみに、作り方は?」
「鉱石を洗って焼くんだ。炉に入る適当な大きさに砕いて、そのうち鉱石が真っ赤に溶けるから、そしたら炉の下の穴から鉄の塊を取り出す。そしたらその熱い塊を平たい石の上で叩いて精錬していくんだ」
「燃料には何を使う?」
「石炭だ」
「石炭か! 石炭を使う邦外国は初めてだな! まあ、ここじゃ鉄は作ってねえ。仕入れた鉄で剣や包丁なんかを作ってんだ。それじゃ、ちょっと見ててくれ」
棒の先が鉄のブロックになっており、それを炉に差し込む。
「なあ、これは何を燃やしてる?」
「石炭だが?」
「匂いがしねえのはどうしてだ? それに煙も出てねえ」
ドルゴの問いに、工房長のステイムが目をパチクリさせた。
「ああ、そういうことか。おまえさんたちが使ってる石炭は持ってきてたりしてないか?」
「これだ。ギブルス殿に持って来いと言われていてな」
鍛冶頭領ドルゴが袋から出した。
「これはナマ
「ああ、数時間頑張ってようやく少しできるのが鉄だ。鉱石の質が悪いせいか、使い物にならないものができることが多い。まあそこが腕の見せ所なんだがな」
「……ワシらが使ってるのはこれだ」
「これは?」
「
「ムシタン?」
「そうだ。ワシが生まれたローハじゃコークスって呼ばれてた。もう昔の話だがな。地元には変な方言がたくさんあった」
「それで蒸炭というのはどうやって作る?」
「生炭を蒸し焼きにするんだよ」
「どうやって?」
「それはまた後にしよう。それじゃそろそろ鍛えるぞ。おい、始め」
真っ赤に焼けた鉄を金槌で叩くのかと思ったら、金属の台に載せた。台の上の円柱が素早く上下し始めた。
ガンガンガンガンガン
「なっ、なんだこれは?」
「踏輪鍛造機を見るのは初めてか。あいつが踏んで動かしている
長身族だという青い肌の男が、妙な形の椅子に座り、脚で板を踏み回している。
それが機械を動かし、円柱を動かしているようだ。
「これだと両手でうまく調整できる」
「この絡繰り、わしらも使えるのか?」
ドルゴの言葉に、ステイムが首を振る。
「いや、あんたの力じゃ無理だ。これはトルキナ人じゃねえとな」
「そうか…」
そんなやりとりを黙って見ていたメッサルは思わず呟く。
「トルキナ人の馬鹿力か……」
(だが、なぜ鍛冶頭領のドルゴを連れてくるよう言われたのかは分かったぞ)
メッサルはギブルス殿の意図に気付いた。
(今の話はわたしではわからんからな)
ギブルス殿は、この工房長の話を理解できる者を指名したわけだ。
つまり今の話は何か重要な意味があるのだろう。
ガンガンガンガン
――おお!
「みるみる剣になっていくが、こんなに早くできるのか?」
メッサルはドルゴにささやいた。
「いや、こんな速さで叩き続けるなんで無理ってもんです」
「待て」
ステイムの言葉に、踏輪していた長身族の男が動きを止め、機械も止まった。
「わしはずっとこの仕事してる。邦外人用の剣やら包丁やらをずっと作ってきた」
「つまりトルキナ人兵士の剣は作らないのか?」
「新人冒険者とか、兵役中の未成年兵士用を作ることはある。だがそっちはほとんど大手が扱ってる。連邦軍用の剣となると、もう鍛冶屋の出る幕はねえ。古き良き小さな鍛冶屋は、邦外人相手に細々と暮らしてるんだよ」
どうやら彼は、外国人向けの鍛冶屋らしい。
メッサルはすぐに尋ねる。
「なら我が国王陛下や兵士達の剣も作れるのか?」
「もちろん、ちゃんとカネを払ってくれたらいくらでも…とはいかねえが、百本や二百本はすぐに作れる」
「カネはもちろん払う。他に作れる武器はあるか?」
「うちが作れるのは剣だ。長剣に短剣に、大剣も作れるぞ。それ以外の武器でも、注文は受けつけてるぞ。曲刀なら
「そうか。なら頼みたいが…」
「その話はまた後日にしてください。もう一カ所お連れしますので」
「なに? まだ行くところがあるのか?」
再び輪車に乗せられ、運ばれていくと、やがて海が見えてきた。
「海のようだが、港か?」
「はい。邦外国向けの帆船用の港です。邦外の船が訪れるためのものですが、すっかり寂しくなっています」
「こんな所に鍛冶屋が居るのか?」
「鍛冶屋ではありません。船の販売員です」
「船? だがトルキナの船は我々には動かせないと聞いたぞ」
あの時、ジロー殿の説明はそうだった。
「それは輪船の話でしょう。確かに輪船は動かせません。でもこれから会うのは帆船屋です」
「帆船屋? トルキナでは帆船も作ってるのか?」
「はい」
(ならそう言ってくれればいいのに)
そんな話は一言もなかったジロー殿に不満を覚えつつ、リンシャを降りた。
波止場に向かうと、帆船の傍らにドワーフの男が立っていた。
白髪交じりの黒髪と、日焼けした浅黒い肌。黒い目。
どこか普通のドワーフではない顔だが、服装はさっぱりとしている。
「待たせてしまいましたか?」
「いえいえ、よくぞお声を掛けてくださいました」
「こちらはクイラ王国のメッサル外務卿です。メッサル卿、彼はザルゴンさんです」
「うむ。外務卿のメッサルだ」
「西アケア帆船製造社で販売営業をしていますザルゴン・風然と申します。もしや帆船にご興味をお持ちでしょうか」
物腰も柔らかい。
「帆船を売ってくれるのか?」
「はい。こちらの帆船などは主力商品でございます」
「これを売ってる?」
「こちらは元々、別のお客様にお届けするはずだったのですが、お客様が居なくなってしまいまして、この先見つかりそうもないため、買い取っていただける方を探しております」
「ほほう! これはなかなか!」
御用商人のゼシムが感嘆の声で見上げている。
「ゼシム、この船に興味があるのか?」
「はい。このような形の帆船を見るのは初めてでございます」
「これは“
素朴だが船体は細く、帆柱は高く尖っていて、見るからに風を切りそうな船だ。
「見るからに速そうでございます」
ゼシムも同じ意見のようだ。
「貨物を200トン積んだ状態でも、自然の風で時速12、3キロくらい出ます。少ない人数で操れる輸送用帆船です。だから“少な型”と呼ばれるようになったと言われています」
「軍船か?」
「いえ、貨物船です」
「軍船は売ってないのか?」
(欲しいのは軍船なんだが…)
「連邦では軍事利用を目的とする輸出はできませんので、軍船としてはお売りしておりません」
(なんだと?)
「軍事利用を目的とする輸出ができない? ならさっきの剣や槍も買えないということか? ベルヌース殿」
「それについてはわたしから詳しく説明したいところなのですが、弁護士組合の決まりで、タダで教えることはできないのです。申し訳ありません」
弁護士ドワーフは何ら悪びれる表情も見せずにそう言った。
「弁護士組合?」
「はい。タダで教えると“勝手なことをするな!”と同業者から非難の的にされてしまうのです」
「では金を払えば良いのか?」
「はい、後払いで結構です。金貨一枚でおつりが出るかと」
「わかった。いま払おう」
カネなら持ってきている。
「では、こちらにご署名願います。ここにいる皆さんが証人です。わたしが今説明した以上の報酬を受け取るような書類に署名させたら、皆さんも同罪ですよ」
「ならばわたくしが拝見しても」
「どうぞ」
「本日の報酬として金――」
帆船屋のザルゴンが書類を読み上げる。
単に一日の報酬としていくらトルキナのカネでいくら受け取るというものだった。
「値段はこんなものですかね」
ザルゴンに手渡されて、なぜか置いてある机でメッサルは署名し、金貨を袋から出して一枚手渡した。
「では説明してくれ!」
メッサルは早く説明を聞きたかった。
次回の投稿は明日の予定です。