トルキナ連邦召喚   作:mogatoku

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マイラスとラッサン以外はすべてオリキャラです。



9 マイラスは技術士官 ―― 紛糾する非公式閣議にて

中央歴1639年 4月10日 午前

 ムー 首都 オタハイト 統括軍 情報通信部 情報分析課

 

 

 マイラスは聞き返さずにはいられなかった。

 

「自分が? でありますか?」

「そうだ」

 

 ダルミス課長が頷いた。

 

「ですが、まだ映像の分析が終わっていません」

 

 分かった範囲で口頭の報告は逐一入れているが、報告書はまだ手つかずだ。

 

「なにも正確である必要は無い。内閣は東と西のどちらの調査に注力するか決めたいらしい。軍としては東の新たな脅威について大規模な調査が必要だ、との立場だ。政治屋どもに東方の脅威をわかりやすく説明してやれ」

「しかし、いきなり明日にとは…」

「では任せたぞ! 話は終わりだ」

 

 部下の意見など最初から聞くつもりはない課長には、マイラスはこう返事するしかない。

 

「…わかりました」

 

(大変だ。急いで準備しないと)

 

 

 

4月11日 午後

 ムー 首都 オタハイト 内閣府 視聴覚会議室。

 

 

 マイラスが命じられたのは非公式の会議での説明だった。

 

(まさか自分がこんな中枢の会議に呼ばれるとは…)

 

 視聴覚会議室の中心を取り囲むように、閣僚が並んでいる。

 マイラスの席は国防相の後ろに並ぶ軍首脳陣のさらに後ろだ。

 

(事の重大さをしっかりと伝えなければ…)

 

 ロスラン駐在武官から受け取った報告書と写真、そして映像フィルムは、どれも驚きのモノだった。

 

(こんな兵器を作る国があったとは…)

 

「では始めようか」

 

 そう声を発したのは、アルレッド・ファルネン首相だ。

 ムー政府の首脳である。

 

「政府は今、重大な選択を迫られている。西方では通商が混乱し、一部業界では対策を求める声が出ている。一方で東方では圏外文明国と呼ぶしかない勢力が現れたという。政府としては、限られた予算の中でどちらに優先して対応するのか、決めなければならない。なお非公式の場であるため、この場での発言は非公開とする。皆、忌憚(きたん)のない意見を聞かせてくれ」

 

 つまり国防省と経済省の双方から意見を聞きくための非公式の閣議である。欠席している閣僚もいる。

 

「まずは経済省から主張の趣旨を聞こうか」

「ではわたしから」

 

 そう軽く手を挙げたのはミルダン・エスフォート経済相だ。

 

「西方との通商が、新興勢力の暴走によって混乱している。繊維業を中心に各種業界では西方からの受注が途絶え、海運業界は積み荷を失い、船の寄港地も変更せざるを得ない状況だという」

 

 経済相は、文書の束を出した。

 

「これは多方面にわたる業界団体からの要望書だ。情報提供を求めるものや、西方通商圏の安定に何らかのアクションを起こすことを求める声もある。本日はその中の1人に来てもらっているので、話を聞いてもらいたい」

 

 首相が左に顔を向けた。

 

「次は国防省」

 

 ガルネス・ドリュード国防相が話し始めた。

 

「事前に配布された外務省の資料を見ると、外務省もすでに把握していることがわかるが、国防省においてもパーパルディア皇国に駐在する武官から重大な報告が入った。ロデニウス大陸東方の海域にトルキナ連邦という圏外文明国があったというものだ。報告によると極めて高度に発展した技術を持っており、我々が考えたこともないような深刻な脅威と判断せざるを得ない。今日はその分析を担当した技術士官をこの場に呼んであるので、閣僚も皆も話を聞けば、新たな脅威の深刻さを理解するだろう」

 

(これは…思ったよりも重要な役目じゃないか?)

 

 マイラスは小さく息を呑んだ。

 非公式の閣僚の集まりで、首相に深刻さを伝えてこい。

 そう課長に指示を受けていただけなのだ。

 

 こうして会議は始まった。

 

 経済省が用意した男は、ムー海運連盟という団体の西方航路部長で、名をサマルス・リオルと言った。

 彼の話によると、昨年半ばより、少しずつ西方への海上輸送が減り始めたという。

 

「西方の海運は深刻な事態となっています。とくにイネルティア王国のドイバ港への海運は壊滅的です! 西方商人の間では、グラ・バルカス帝国という新興国が各地で暴れているせいだと、もっぱらの噂です」

 

 西方諸国は荒れに荒れているらしい。

 

「ドイバ港への航路には常に小型貨物船が多数航行していましたが、いまやごくわずかとなっており、このままでは失業者が増えることは間違いありません!」

 

 次はマイラスの番だった。

 首相に新たな現れた勢力の深刻さを伝えるために準備してきた。

 

「まずはフィルム映像をお見せします」

 

 照明が消されると、マイラスは映像フィルムをスクリーンに映写した。

 未編集の小分けしたフィルムを、この会議のために簡易的に一本に繋ぎ合わせたモノだ。

 

「なんだあれは!?」

「翼が一枚なのか!」

 

 百聞は一見にしかず。見ることは信じること。

 トルキナ連邦の技術力の脅威伝えるには映像を見せるのが一番手っ取り早い。

 

「推定時速400キロです。これを機種ナンバー1とします。次はさらに…」

「速いのか?」

「はい。機種ナンバー2です」

 

 スクリーンに映し出された。

 

「確かに先ほどより速いな」

「な…」

「推定時速550キロです。次は機種ナンバー3が映ります」

 

(問題はこれなんだ)

 

「なっ! なんだこの速さは! これは早回しではないのか?」

「記載によると、このフィルムは手回しではなく電動で撮影しています。発電機の燃料が不足していなければ、少なくともこの3機種は単位時間当たりで同じコマ数で撮影されています」

 

 部屋の照明が点灯すると、閣僚達が押し黙っていた。

 言葉を失っているのだ。

 

(この反応は予想どおりだ)

 

 マイラスはさらに説明を続ける。

 

「事前配布された外務省からの報告では、巡航速度は1番遅いモノで時速400キロ、速いモノで時速930キロとなっておりますが、映像で見る限りでは、その倍近い速度は出ていてもおかしくないと我々は考えています」

「930キロの倍近いだと?」

「そうです」

「それは我が軍の軍用機と比べてどうなのか?」

「我が軍最新鋭戦闘機マリンの最高速度は時速380キロです」

「それは…まったく勝負にならんではないか!」

「そのとおりです!」

 

 マイラスはハッキリと肯定した。

 

「ですが首相。飛行機では戦艦を沈めることはできないと聞きますぞ。そうだな? マイラス君」

 

 副首相セリオ・バルネスが同意を求めてきたため、マイラスは頷く。

 

「そのとおりです。ただ外務省の報告書にもありますが、彼らの戦艦の主砲の射程が約100キロとあります。事実であれば、我々の戦艦では全く歯が立ちません」

 

 皆が暗い表情で押し黙る。

 マイラスは話を続けた。

 

「このフィルムを撮影したロスラン駐在武官は、直ちに大規模な調査を開始すべきだと話していました。私もそう思います。これは――」

「良く分かった。ご苦労」

 

 ファルネン首相が遮った。どうやら時間切れのようだ。

 

(自分が話すべきことは話したが…)

 

 ここは政治の場だ。

 技術士官の自分に出来ることはここまでか……

 

 マイラスが不完全燃焼のままフィルムを片付け始めると、ファルネン首相が閣僚に尋ねた。

 

「ミル。経済相として、どう思うかね?」

 

 マイラスがちらりと視線を向けると、ミルダン・エスフォート経済相が眉間にしわを寄せていた。

 

「確かに今のフィルムを見ると、東方に強大な圏外文明国が存在する事実を認めざるを得ない。だが、なぜこれまで誰もその存在に気付かなかったのかね? それは、そもそも遠すぎたためではないかね? レグス、いや、ルマーレ外相?」

 

 レグス・ルマーレ外相が手元の書類をめくり始めた。

 

「事前に配布した報告書に書いておいたが、トルキナ連邦はパーパルディア皇国の首都から7000キロ以上東に位置している。我が国から航路で約2万5千キロは離れていることになる」

「遠いな。脅威であることは認める。外交関係も、そして通商関係も持つべきだろう。だがあまりに遠い。経済にもすぐに影響があるとは思えん。やはり事態が逼迫しているのは西方だ」

「ガルネス、国防相としてどう考える?」

 

 ガルネス・ドリュード国防相が、経済相に冷ややかな視線を向けた。

 

「西方の新興国などレイフォルが対処すれば済む話ではないか。そもそも西はレイフォルの勢力圏だ。我が軍が動く必要が何処にあるのか」

「軍に動けと言ってるのではない。調査が必要だと言ってるんだ!」

 

 エスフォート経済相が語気を強めた。

 ここでファルネン首相がエスフォート経済相の後ろの席に目を向けた。

 

「さきほど話をしてくれた海運連盟のリオル氏、あなたもフィルム映像を見たわけだが、今も意見は変わりないかね?」

「た、確かに驚きの映像でしたが…海運連盟としてはやはり西方に何らかのアクションを望みます」

「団体としてはそうだろう。だがあなた個人としてはどうだね?」

 

 首相はまるでリオル氏の判断力を試すような口ぶりだ。

 

「わたし個人としては……軍に不満があります」

 

 だがリオル氏の返事は全く予想外のものだった。

 

(ん?)

 

 片付けを終え、席に戻ろうとしていたマイラスが思わず振り返った。

 

「軍に不満?」

「はい。以前は海軍情報部から連絡があったり、こちらから連絡したりしていたんです。なのに統括軍ですか? なんでも指揮系統を統合したとかで、どこに連絡して良いのか分からないんですよ。西方が荒れているのに情報がないのはそのせい――」

「おっと、君はその話をするために呼ばれたわけではないはずだ? そうだな、首相」

 

 ドリュード国防相が遮った。

 そこにエスフォート経済相が割り込む。

 

「いや、待て。そもそもなぜ国防省は、海軍本部を縮小したんだ? 『我が国はすでに海運国家として羽ばたきつつある』と経済省報告にも書かれた程に、海運の成長が著しいんだぞ」

「空軍の設立計画策定に伴い、三軍がバラバラに指揮権を持つのは非効率だという結論に至ったのは君も知っているだろう。陸軍本部だって縮小されている」

「だがこうして海軍の情報網が失われているのはどういうことだ!」

 

 ダン!

 

 エスフォート経済相が机を叩く音が響き、自席に戻っていたマイラスは肩が一瞬震えた。

 軍の情報収集能力が問題にされているのだ。

 

「それは…制服組の派閥争いは…政治家には良く分からんところが…」

 

 ドリュード国防相もひるんだようだ。

 そこに別の声が響いた。

 

「首相! 発言を求めます」

「何かね? ドースン統括軍本部長」

 

 ドースン統括軍本部長。

 軍の制服組のトップだ。

 軍人とは思えないほど太……恰幅が良く、見た目の通り簡単には動かない。

 

「エスフォート経済相に申し上げたい。統括軍は効率化のために情報関連部署を一本化したものです。海軍情報部の仕事は現在、情報通信部の海洋情報課に引き継いでおります」

「だそうだぞ。リオル氏」

 

 エスフォート経済相が後ろを振り返ると、リオル氏が苦笑するように言った。

 

「海洋情報課は地理情報とか気候情報を扱うところだと言われましたが?」

 

 その言葉に、エスフォート経済相が立ち上がった。

 

「なんだと! 軍は海運をどこまで軽視するつもりだ!」

 

 だがドースン本部長は動じない。見た目通りだ。

 

「そもそも西方の混乱はレイフォルの勢力圏の問題であり、我が軍が対応すべき事案とは思えませんな。海運の都合で軍の組織を語られても困りますぞ」

 

(政治家相手にそこまで強気に出て大丈夫なのだろうか?)

 

 マイラスはふと心配になる。

 

「だが統括軍が陸軍出身ばかり重用しているという噂が、経済相のわたしの耳に届いているぞ、ドースン本部長!」

 

 確かに海軍出身の参謀は冷遇されている。だがそれは軍内部の派閥争いの結果だ。

 

(それに対して軍の外からも不満が出るとは…!)

 

 マイラスにとっては意外な発見だった。

 

「噂で責められても困りますな。優秀な人材を活用するのはどこの組織でも求められていることですぞ」

「ならなぜ海軍の情報網が――」

「そこまでだ、ミル!」

 

 ファルネン首相が遮った。

 

「議題から外れているぞ。重視すべきは東方か西方か、それが今日の議題だ。話を戻すが、外務省は西方の事態をどう把握しているのかね? 報告書には特に見当たらないが」

 

 ファルネン首相が話題を戻すと、ルマーレ外相が淡々と話し始めた。

 

「西方はレイフォルの勢力圏であり、西方諸国との連絡はすべて在レイフォル大使館を通じて行っている。大使館からは西方に何らかの異変が起きているとの報告が来ている」

「何らかの異変とは、噂のグラ・バルカス帝国かね?」

「そこまでは報告にない。レイフォル政府によると『パガンダ王国では王族に異変があったためか、属国としての報告義務を怠っているようだ。我々が対処するので、貴国が心配するに及ばない』とのこと」

「それはパガンダ王国政府との連絡が取れない件だろう。西方諸国からの注文が途絶えている件についてはどうなのかね?」

 

 首相の問いに外相は首を振る。

 

「それはまだ確認していない」

「パガンダ王国の異変と、グラ・バルカス帝国という噂の新興国との関連はどうかね?」

「大陸西岸諸国との外交ルートでは、特にそのような国のことは把握していない。西方はレイフォルの勢力圏だからな」

 

 それを聞いてエスフォート経済相がまた不満を口にする。

 

「レイフォルレイフォルと、そんなにレイフォルに気を遣う必要があるのかね? 前政権の時には武力衝突もあったんだぞ!」

 

 アルー事件か…

 

 マイラスが子供の頃の話だ。

 

「武力衝突と言っても、あちらの一部部隊の暴走だ。小さなもので、ワイバーンすらいなかった」

「我が国は永世中立国であり、さらには侵略行為を禁じている。という建前を重視した結果の合意だ。今さらどうしようもない」

 

 まるでこちらが手加減したような言い方だがそれは違う。

 

 マイラスは内心で密かに思う。

 

 当時はまだ陸軍の航空戦力は今ほど充実していなかったはずだ。

 あの時、ワイバーンロードが出てきていたらどうなったかわからない。

 当時の政権は外交的に決着した。

 そうマイラスは理解していた。

 

「とにかく、経済省としては、特に実害のない東方よりもすでに実害が出ている西方へのアクションを優先すべきだと主張する」

「国防省は?」

「西の新興国などレイフォルの尻を叩いて対処させれば良い。それより時速900キロの艦載機に射程100キロの戦艦だ。これは重大な脅威だ。そうだな。マイラス君」

 

(わ!)

 

 マイラスは突然話を振られて、立ち上がった。

 

「はい。誘導ロケット弾も目撃されており、魔法と科学を融合させた技術体系を持っていると駐在武官も報告しています。これは我が国のみならず、すべての文明圏の技術体系を脅かす重大な脅威です!」

 

 マイラスは自分の言うべき事を述べた。

 

「副首相。何か意見はあるかね?」

 

 首相が副首相に話を振ったため、マイラスは座る。

 バルネス副首相がやれやれというように首を振っている。

 

「軍の意見も理解できる。外務省の考えも分かる。だが、ムー海運連盟は業界団体として一定の票を持っている。さらには各種業界団体の要望も来ている。これを無視したら次の選挙はどうなるか。そう思うとこちらを優先すべきだろうな」

 

 副首相の結論は西方優先か…

 

「外相は?」

「西方の調査をするということは、もうレイフォルを当てにしないのか?」

「実態調査に限ってはそうだな」

「外交関係は?」

「今までどおりだ」

「なら、西方調査に一票入れよう」

 

 外相もか…

 

 首相が他の閣僚にも一人ずつ意見を聞き、最後に結論を下した。

 

「では西方の調査を優先する。 首相府の主導で合同調査を行うことにしよう」

 

 ダメだったか…とマイラスは思ったが、首相の言葉は続いた。

 

「だが東方の脅威も無視できない。 小規模の調査隊を送ろう。各省は東西の調査に向けて、人選を進めておいてくれ」

 

(よし!)

 

「ならわたしをその東方の調査隊に参加させてください!」

 

 マイラスが手を挙げると、ドリュード国防相が睨んだ。

 

「聞いてなかったのかね。人選は各省がこれから行うんだ」

「も、申し訳ありません」

 

 マイラスは身を縮めた。

 国防相の不機嫌な表情は、軍の意見が通らなかったためだろうか。 

 

 それでも自分は脅威度を最もわかりやすい形で見せたはずだ。

 選挙を優先されたらどうしようもない。

 それに小規模とは言え、調査は行われる。

 

(なんとか参加したいが…)

 

 会議終了後、マイラスはダルミス課長にも希望を伝えた。

 

 

 

4月 統括軍 情報通信部 情報分析課

 

 

 国防省の人選を待つ間――

 

 マイラスは同僚と共にロスランからの報告書を何度も読み返し、写真と映像フィルムの分析にいそしんだ。

 

「“トルキナ兵は魔法で空を飛ぶ”と報告書にはあるが……映像にはないか…」

「巡洋艦も駆逐艦も主砲は推定口径20センチ。機銃はない」

「他の戦艦と重巡の射撃映像はどこにもないぞ」

「速度はどうだ?」

「映像からは戦列艦と同程度に見えますが、撮影が手回しなのでなんとも言えません」

「飛行機の速度は?」

「機種ナンバー1の速度が時速400キロだとすれば、ナンバー3の推定速度は時速1200から3000キロです」

「もう少し確度を挙げられないのか?」

「高度が判らないんですよ。二つとも全長が分かれば話は早いんですけど」

 

 やがて他の部署からも人員が加わった。

 

「戦術士官のラッサン・デヴリンです。よろしく願います」

 

 ラッサンの発言は示唆に富んでいた。

 

「トルキナ連邦の兵装はワイバーンを想定したモノではありませんね。明らかにもっと強大な空中戦力を想定しています」

「ロスラン報告書によると、空母艦載機を戦闘に出していない。明らかに手加減しています」

「戦列艦に乗り込んで制圧したことからも、対人戦闘にもかなりの自信があるようです」

「マイラス技官は兵装以外で何か気付いたことはありますか?」

 

 マイラスは答えた。

 

「はい。トルキナの魔導技術は古代技術の再現ではなく、自主開発です」

「なぜそうだと?」

「まず外観が全く違います。同じ技術を再現したならもっと似ているはずです。それにトルキナ高官の『トルキナでは魔法も科学である』という発言もそれを示唆しています」

「ムーゲ報告書ですね」

「はい。調査隊に参加して、ぜひ直接確かめたいのですが…」

 

 だが軍の人選はなかなか進まなかった。

 

 やがてマイラス達は最終報告書をまとめ、提出した。だが人選はまだ決まらなかった。

 

“ドースン本部長は内閣への協力に消極的だ”とささやかれ始めた。

 

(まさか、軍の意見が通らなかったことに本部長は不満なのか?)

 

 だとしても、それでトルキナ連邦の調査まで遅らせてどうする?

 このまま手をこまねいていていいのか?

 

(ロスラン武官からの報告も、自分が出した報告書も、このまま無駄になるのか…?)

 

 マイラスはふと不安がよぎり、窓の外へと視線を向ける

 

 ――この国は大丈夫なのだろうか…?

 

 曇天の色が、自分の心の内に染みこんでくるような気がした。

 




”ムーは常に勝利する方に観戦武官を送る”
そんな評判を得ているほどに(かつては)情報収集力があったのに、なんで(今は)こんなにグ帝への対応が遅いんだろうか?
とか考えていたら、こんな(海軍本部は縮小され、海軍情報部は事実上解体された、という)話に。。。


次回の舞台は神聖ミリシアル帝国です。
投稿は明日の予定です。
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