飯炊系隊員の憂鬱   作:アルピ交通事務局

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飯炊系隊員の憂鬱 その5

 

「秀信くん……ラーメンって作る物なのかしら?」

 

「なに言い出してるんですか?」

 

 ボーダー内にある自販機でココアを購入していると同じくボーダーの売店帰りの沢村さんと三上と鉢合わせをする。

 時間帯的にお昼でボーダーには食堂があるのだが何故か食堂を利用せずに売店で売っている物を買っている。

 

「実は……コレが入荷したって噂を聞いて」

 

「ああ。コンビニ限定の……どうやってゲットしたんだ!?」

 

 三上がコンビニ限定でよくあるあの名店をカップラーメンにしましたシリーズのカップラーメンを見せてくる。

 コンビニ限定だから需要とか価値があるのになんでボーダーの売店で売ってるんだよ!と思ったがあまり叫べば周りに迷惑がかかるので静かにするようにと言われた。

 

「それで、そのラーメンがどうしたんだ?」

 

「ほら、ラーメンって……食べづらいじゃないですか」

 

「……あ、女性的な意味でか」

 

 三上がラーメンが食べづらいと言っているのでなにを言ってるんだ?となる。

 なにを言っているのかを考えてみれば女性的な意味合いで食べづらいと言っているのだと理解した……

 

「女性的な意味合いでラーメンが食べづらいからカップラーメンで妥協してるのか?」

 

「違います……いえ、それもあるんですけど……風間さん達の前で堂々と豚骨ラーメンが食べたいって言うのは」

 

「……女子って大変だな」

 

 豚骨ラーメンが食べたいと堂々と言えない三上。

 女性同士でのラーメンならばギリ行けるが男性を含んだ……比率的に言えば3:1で1の方が豚骨ラーメンを食べたいと言い出す。それが女子は厳しいな。

 

「うどんとか蕎麦ならばギリありだけど、ラーメン、しかもこってりな豚骨ラーメンが食べたいって言いづらいかなって」

 

「そんな事を言い出したら俺なんてケーキ屋でケーキを購入してその場で食べてんだぞ」

 

 野郎同士でこってり濃厚な豚骨ラーメンが食べたいと言い出したのならばいいが、男が居る中で豚骨ラーメンは言い出しづらい。

 中々に難しい悩みだがそんな事を言い出したら俺はケーキ屋でケーキを購入して優雅に紅茶と一緒に飲んでいるぞ。

 

「むしろ豚骨ラーメンは敷居が高くないだろう。個人経営の飲食店で鯖味噌定食を頼む方が難易度は高い」

 

「言いたいことは分かるわよ。でもね、それでも女子が周り男子だけの状態で食べに行きたいのが豚骨ラーメンって言い出しにくいのよ。三上ちゃんからラーメンは流石に手作りが難しいけど、食べに行きたい時があるからどういう風にすればいいのかって相談を聞いてたのよ……それで偶然に秀信くんを見つけてラーメンは食べる物であって作る物じゃないわよね?って聞いたのよ」

 

「風間さんにそれとなくフォロー入れときましょうか?」

 

「あ、いえ……いや、でも……」

 

 ただ純粋に豚骨ラーメンを食べたい、それを言い出すのが物凄く難しい。

 菊地原のためにトマトゼリーを作れるほどに女子力が高い三上でも流石に豚骨ラーメンは早々に作ることが出来ないのだとなり、俺に話を振った。風間さんになにか食べに行く時にラーメンを出しやすいようにするかと、あの人の場合はカツカレーを食べたがるから割と店はしっかりリサーチしている。チェーン店でもなんでもないちゃんとしたカツカレーって置いてる店は意外と無い。

 

「……分かった。こうしよう。三上がラーメンを作れるようになるというのを」

 

「いやだから、ラーメンは後はお湯を入れたり茹でたりするだけのインスタントで本格的なのは難しいって話で」

 

「沢村さん、俺がラーメンを作れないとでも思ってるんですか?……俺は何処ぞの支部長と何処ぞの本部長が無性にラーメンを食べたい!と言い出して失敗したから、手打ち麺を覚えさせられた男ですよ?」

 

「え、アレが出来るの!?」

 

「出来ますよ」

 

 手打ち麺が出来ると言えば沢村さんは驚いた。

 ラーメンは色々とコスパが悪いから作らないだけで作れないわけじゃない。何処かの誰かさんの為に極々普通のラーメンぐらいならば作ることが出来る。製麺機なんて便利なアイテムを当時は持っていないので手打ち麺も覚えたよ。

 

「秀信さん、教えてください!ラーメンの作り方を!」

 

「……三上、ラーメンは外で食った方が美味しい。後、沢村さんも無理にラーメンを作るよりも出汁巻き玉子の方が」

 

「いえ!ラーメンならば飲んだ〆で誘えるわ!」

 

 1対1の飲み会に忍田本部長を誘えない人がなにを言っている。

 俺には見える。東さんか林藤支部長が一緒にラーメンを啜っている未来が……好きな人の為に手料理を覚えるのはまだわかる。好物を覚えるのもまだわかる。だが、好きな人の為に手作りラーメンは重くないか?二重の意味で。

 

「じゃあ、ラーメン作りをするぞ……まずは雑草を集めに行くぞ!」

 

「はい!……え?」

 

「秀信くん、なにをふざけた事を言っているのよ?」

 

 三上は自分の為に、沢村さんは忍田本部長の為にラーメンを覚える。

 三上は豚骨で沢村さんは醤油なのでスープに関しては後回し、先に覚えるのは麺だと麺作りから始めることとなり……雑草を拾い集めるところからスタートする。

 

「雑草からラーメンを作るところがスタートするんですよ……本部長も通った道ですよ?」

 

「嘘言わないの!何処の世界に雑草からラーメンを……まさか、ラーメンに最適な小麦粉づくりからとか言い出すんじゃないわよね!?」

 

「それは流石に言いませんよ……でも、ラーメンを作るのにまずは雑草を集めないといけないんですよ」

 

「…………どういうことです?」

 

 自分なりに色々と考えた結果、ラーメンと雑草の繋がりが見えない。

 やっぱりかと思ったので説明をする。

 

「ラーメンにはかん水と言う水が使われている。このかん水はドライイーストと同じで顆粒出汁の様に粉末を水で割って使うが、それは科学技術が発展してかん水を簡単に手に入れれるようになったから。嘗て本部長や林藤支部長が失敗したラーメンの麺はかん水が入っていなかった。そのせいで不味いなにかになった」

 

 かん水が入っていない麺は存在しているが、ラーメンの麺と他の小麦を使った麺料理の一番の違いはかん水だ。

 それがあるだけで麺のコシやモチモチとした食感が生まれてラーメンの麺の独特の味が生まれる。

 

「で、かん水を手作りすることだけど……ルートとして2つ、1つは重曹から手作りすること。もう1つは植物の灰を煮込んだ汁、作ること……重曹から手作りするとな……沢村さんが……いや、うん……」

 

「ちょっと、どうしたのよ?重曹から作れるルートがあるなら重曹からでも」

 

「重曹の作り方は食塩水、二酸化炭素……そしてアンモニアです」

 

「「っ!!」」

 

 工業的な方法だけれども一応は重曹の作り方は頭に入っている。

 食塩水と二酸化炭素、そしてアンモニアである……そう、この2人はちゃんと勉強が出来る人でありアンモニアと言えばなにがパッと浮かぶのかと言われれば言うまでもない。

 

「忍田本部長に沢村さんのアンモニアを食べさせ」

 

「ダメェええええええええええ!!」

 

「ぐふぉ!?」

 

「ダメ!ダメ!ダメ!ダメよ!流石にそれは人として倫理的にNGよ!!それは最早プレイの一種よ!」

 

 沢村さんから採取する事が出来るアンモニアを忍田本部長に食べさせる。

 その事を言えば鳩尾に綺麗なストレートを叩き込むので膝をついた……流石に自分のアンモニアを食べさせるのは嫌か。

 

「重曹を作るルートが失敗している以上は雑草を焼いて灰にして水に浸して煮込んで上澄みの綺麗な水もとい、かん水を作るところからじゃないとダメだ」

 

「……その辺のスーパーで売ってる顆粒のかん水じゃダメなんですか?」

 

「あ、じゃあ後は頑張ってくれ」

 

 三上がその辺のスーパーで売ってる顆粒のかん水じゃダメなのかを聞いた。

 その辺のスーパーで売ってる顆粒のかん水とか言い出すんだったらその辺の製麺所で売っている麺でも買って自力でスープでも作れという話だ。

 

「っく……私から採取したアンモニアを……」

 

「沢村さん、キモいです……とりあえず、雑草を取りに行くところからスタートで」

 

 自分から採取したアンモニアを愛しき人に食べさせる。

 変な方向に目覚めかけているのでハッキリとキモいと言い雑草を取りに行くところからスタートし、雑草を燃やして灰にしてその灰を煮込んだ。

 

「昨日からずっと居ると思えば、かん水を作っていたのか」

 

「あ、はい…………ももも、勿論雑草からですよ!」

 

 かん水を作るのに思った以上に時間がかかったりしたもののかん水が完成した頃に忍田本部長が現れた。

 かん水を作っていたのかと納得をしたら沢村さんは自身のアンモニアでなく雑草から作っていることを教えた。

 

「雑草から!?……それはまた随分と手間が掛かっている。ここは向こうの世界じゃないから顆粒のかん水ぐらい、簡単に手に入るのに」

 

「この2人がラーメン作りたいって言うから……ほら、女性のラーメンって難易度高いじゃないですか」

 

「……確かにそうだな……」

 

 あ、この人一瞬女性のラーメンって難易度高いかどうかが分かってなかったな。

 女性のラーメンが難易度が高いと言えば一応は納得をしてくれた。かん水が出来たので生地に混ぜた。

 

「秀信、久々にアレをやってみていいか?」

 

「え〜……ここまで来て美味しいところとるんですか?」

 

 生地が完成したので手打ちラーメンの名物とも言える手延びラーメンをやろうとすると忍田本部長がやりたいと言い出した。

 ここまで来てそれを言い出すのは卑怯だと思いながらも沢村さんが忍田本部長に作らせてくれと睨みつけられたので渋々譲ることに。

 

「1本が2本に、2本が4本に、4本が8本に、8本が……あ……」

 

 手延べ麺をしていれば最初こそ順調にいくのだが途中で千切れた。

 この数年間、全くと言って手延べ麺を全くと言ってやっていないので明らかに腕が落ちている。

 

「……これは私が」

 

「あ、大丈夫です!私が食べます!」

 

 失敗したから自分で食べると言い出す忍田本部長。

 沢村さんは待ってましたと言わんばかりに自分が食べると言い出す……カーっ!卑しか女ばい!

 

 その後に普通に俺がラーメンを手延びさせてちゃんとした手打ちの手延べ麺を作った。

 今回は鶏ガラをベースにした普通のスープで市販の醤油を入れて極々普通のラーメンにした。

 

「秀信くん、ありがとう……忍田さんの手料理が食べられたわ」

 

 生地を作ったのも、スープを作ったのも、チャーシューを作ったのも俺だが麺を延ばしたのは忍田本部長だ。

 忍田本部長が作ったラーメンを食べさせてくれてありがとうと沢村さんは満足そうにしていた……

 

「次は沢村さんのアンモニアから作った重曹で」

 

「それは人として超えたらいけないラインだからダメ!!」

 

 因みにだが三上には豚骨ラーメンのスープの作り方を後で教えた。

 今度から仕事上がりにラーメン作ってたんですよと風間隊に振る舞う事が出来るようになった……

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