「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜   作:ピースちゃん?

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ツェルフリーナの作戦会議(1人)

服も髪飾りもすべて準備し終わり、とうとうヴェローニカ様とヴィルフリート様とのお茶会の日が3日後となりました。

 

私は、一度服に異常がないか確認するため、もう一度まったく着たことのないお金をかけた服を身にまとい、髪を複雑に編んでそこに髪飾りを指します。

 

「・・・美しいですよ。ツェルフリーナ様」

 

いつもはなかなか喋らないルツィウスが鏡に写ったわたくしの姿を見て、一言そう言いました。

 

わたくしの美醜は、他の人物と比べたことがないのでよくわかりません。

 

しかし、鏡に写ったわたくしはとてもきれいに見えました。

 

カンイチャンリンシャン?によって本当の雪のように白くなったわたくしの髪が、ふわりと揺れています。

 

薄い金色を基調とした服に白い髪はよく合っていて、服には全体には細やかで複雑な赤の刺繍、そして、真ん中には領主一族を表す紋様が入っています。

 

そして、髪飾りの真ん中には大きな青紫のボリエラーリの花が咲き誇っています。ボリエラーリは花びらがとても大きく、散るときは丸ごとぽとりと落ちる不思議な花で、私のお気に入りの花なのです。

ボリエラーリの周りには薄い緑色の小さな花が散らばっています。わたくしの真っ白な髪には良く似合っているように見えました。

 

思わず、ほぉっと息を吐きました。まさか、ここまできれいな衣装に仕上がるとは思っていなかったのです。これならば、ヴェローニカ様に失望されることはないでしょう。

 

それから、体を動かしてみて、服や髪飾りに異常がないかを確かめます。

 

「・・・ええ・・・これで、十分ですわ」

 

わたくしが少し側仕えの方を見ると、3人の側仕えがこちらに来て、スルスルとわたくしの服を脱がしていきます。

 

それから、いつもの男物の服に着替え、わたくしは自由時間となりました。

 

隠し部屋に入り、まとめておいた木札を並べ始めます。

 

これらは全て、ヴィルフリート様についての情報と、あのヴェローニカ様とのお茶会のときにわたくしがどういう態度を取ればよいのかを書き記した木札です。

 

お茶会というのはディッターのようなものです。今では早さを競うディッターが主流のようですが、昔はそれよりもずっと大規模な宝取りディッターがよく行われていたようです。

 

宝取りディッターは、貴族院にいた頃のルツィウスもよくやっていたそうです。

昔エーレンフェスタにはとても頭の良い騎士がいたようで、様々な卑劣で残酷な作戦を立ててエーレンフェストを勝利へと導いていったそうです。

一体、どのようなお方だったのでしょうか、一度お会いしてみたいものです。

 

「さて・・・どうしましょうか」

 

まずは、ヴェローニカ様の目的です。

 

なぜ、あそこまで頑なに拒否していたわたくしとヴィルフリート様とのお茶会を、わざわざヴェローニカ様からお誘いしてきたのでしょう。

 

・・・もしかして、罠でしょうか?そういうふうにして、わたくしを暗殺するつもりでは?

 

そう思ったところで首を振りました。そんな事ができるのであれば、もうとっくの昔にやっていらっしゃるでしょう。今、そんなことをなさる理由にはなりません。

 

 

 

では、もしかしてヴィルフリート様がヴェローニカ様に頼み込んだのでしょうか?

 

 

 

木札の中から、ヴィルフリート様についての情報をまとめた木札を探し出し、眼の前に並べます。

 

 

わたくしをヴェローニカ様が警戒している理由は「わたくしがヴィルフリート様を押しのけて次期領主になる可能性があること」です。

 

ヴェローニカ様は自分の血がつながっている人物にはとても甘いのですが、その反面他人にはとても強い警戒心や嫌悪感をお持ちになります。

 

わたくしの双子の兄であるヴィルフリート様は髪の色以外すべてジルヴェスター様によく似ているようですので、ヴェローニカ様にとても良く可愛がられています。

 

もともと、ヴェローニカ様はアーレンスバッハの上級貴族をジルヴェスター様の第一夫人にする予定だったのですが、フロレンツィア様に一目惚れされたジルヴェスター様がむりやりフロレンツィア様を第一夫人になされたようです。

 

 

そのためフロレンツィア様はヴェローニカ様にとても嫌われております。ルツィウスによると、私の見た目はそのフロレンツィア様に似ているらしいので、その影響もあるでしょう。

 

 

 

ルツィウスからの情報によると、ジルヴェスター様は、実の姉であるゲオルギーネ様との熾烈な次期領主争いを繰り広げてその地位についたため、そのような戦いを我が子にもさせたくないと思い、長男であるヴィルフリート様を次期領主と決定したのだそうです。

 

 

そのためヴィルフリート様はヴェローニカ様に甘やかされて育ったせいか、今まともに基本文字も書けていないそうです。

 

思わずため息をついてしまいました。なんという間抜けなことでしょう。

もしや、ヴェローニカ様はエーレンフェストを滅ぼそうとでもしているのでしょうか?

 

・・・ジルヴェスター様もジルヴェスター様です。次期領主について争うのは、たくさんの子達から、より次期アウブにふさわしいこを選び取るためのもの。最初から選んだとして、その子がアウブに向いてなければ、もうどうしようないではございませんか。

 

わたくしは一度ヴィルフリート様の環境についての情報から目を背け、ヴィルフリート様の性格についての方の木札に目を向けました。

 

 

ヴィルフリート様は勉強嫌いで努力嫌い、そして、実の母親であるフロレンツィア様ではなく、祖母であるヴェローニカ様に育てられたせいか、性格はとてもヴェローニカ様に似ているそうです。

 

つまり、血のつながった家族には甘い、ということです。

 

それに、新しいものが好きで好奇心旺盛なところもあるとのこと。

 

自分の双子の妹が珍しい「エーヴィリーベの実」と聞いたなら、ここまで教育が足りないヴィルフリート様はおそらくわたくしに興味を持ったでしょう。

今までなら、ヴェローニカ様が言い聞かせればなんとかなったのかも知れませんが、ヴィルフリート様はもう5歳です。

 

きっと断れば断るほど、わたくしへの興味は高まっていったでしょう。

 

 

そこで、流石に限界が来たのではないでしょうか。ヴェローニカ様はヴィルフリート様に根負けし、わたくしとのお茶会を設定した・・・

 

 

「・・・そう、考えたほうが、自然・・・ですね」

 

 

ヴィルフリート様はまだ母親に甘えたい年頃。ヴェローニカ様によってなかなかご自分のお母様に会えない中で、フロレンツィア様に似ているとヴェローニカ様に暗に言われたわたくしに会うのです。

 

しかも、わたくしが妹としてとても可愛く、守りたくなるような存在ならば、

ヴィルフリート様からヴェローニカ様にうまくお願いして、うまく行けば、わたくしはこの離れから抜け出し、

ヴィルフリート様の居る北の離れに行くことも可能かもしれません。

 

・・・この笑顔は、やはりこういうときに使うのですね。わたくしは、口元にふわりと笑顔をつけました。それと同時に、体の中の魔力が少し動かしにくくなるような感じを覚えます。

 

しかし、最悪ここでヴィルフリート様に嫌われれば、一生南の離れに閉じ込められたまま・・・いえ、もしかしたらヴェローニカ様に暗殺者を仕向けられるかもしれません。

 

 

「・・・それ、だけは絶対に・・・避け、なければ」

 

 

まずは、フロレンツィア様のマネをしておけば大丈夫でしょう。フロレンツィア様はおっとりした方でいらっしゃるようなので、とにかくおっとりとして、

 

そして、妹としてヴィルフリート様を立て、決して否定せず、それでいて、柔らかく肯定するのです。

 

 

「まずは・・・スラスラ、と・・・喋れる、ようになるところ・・・から、でしょう、か?」

 

 

・・・実際、それが一番難しい気がします。

 

わたくしの1日は、隠し部屋での発声練習で終わりました。

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