「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜 作:ピースちゃん?
次の日、ルツィウスとの剣のお稽古が終わったあと、わたくしは久しぶりにある方とお茶会をしました。相変わらず、側仕えをつけずお一人で行動していらっしゃる、珍しいお方です。
「風の女神シュツェーリアの守る実りの日、神々のお導きにより、こうしてお会いすることが叶いました。・・・ジルスティード、様・・・お久しぶり、に、ございます・・・」
「うむ。そなたも元気そうで何よりだ」
そうやって頷いた方の名前はジルスティード様。エーレンフェストの上級貴族で、領主の傍族の方です。
いつも白いターバンをしていて、目の色や表情などはよくわからないのですが、身振り手振りがあるので、とても楽しいお方だということはわかります。
ターバンは熱がこもりやすく、ジルスティード様は冬や秋などにここにいらっしゃることが多いのです。
「ところで、其方。前にお茶会をしたときと比べて、随分と流暢になったのではないか?」
「ええ・・・わたくし、今日、始めて・・・ヴィルフリート、様に、会いますの・・・だから、少し、練習したのです。
ジルスティード様は・・・ヴィルフリート様、や、フロレンツィア様について・・・何か、情報はございません、か?」
わたくしが笑みをたたえたままゆっくりと首を横にかしげると、ジルスティード様は、少し唸ってから言いました。
「まぁ、ヴィルフリート・・・様は、幼い頃のわた、アウブ・エーレンフェストにとても似ていらっしゃるな。目と髪の色以外・・・雰囲気などはとても似ていらっしゃられる。
其方は逆に、幼い頃のフロレンツィア・・・様に似ていると思う」
それは、ヴェローニカ様にもよく言われます。「ジルヴェスターをたぶらかした女にそっくりになったことですこと」と、
ジルスティード様は、紅茶を一口飲んでから、言葉を続けます
「ところで、其方は今でもフロレンツィア・・・様やアウブ・エーレンフェストのことを、母上や父上などと呼んだりはしないのか?」
「ええ・・・そもそも、呼ぶ、機会がございませんし・・・呼べば・・・もしかしたら、ヴェローニカ様、のご機嫌を、損ねる、かもしれません・・・・わたくしは、わざわざ・・・命の神エーヴィリーベを呼び起こすような真似はしたくはないのです」
無駄な危険は冒したくない、とジルスティード様に伝えると、少し戸惑ったような仕草をしたあと、ジルスティード様はまた紅茶を一口飲みました。
「そうか・・・しかし、公の場では注意せねばならぬぞ?実の母親や父親を名前で呼ぶようなことをすれば、周囲にいらぬ誤解が生まれる」
「ええ・・・気をつけるよう、に、しますわ」
私は、ニッコリと笑って了承の返事をいたしました