「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜 作:ピースちゃん?
眼の前で、細く柔らかい真っ白な手が、そっと魔石を持ち上げました。
わたしは、魔力が心の中で渦巻きながら、いつもどおり美しく微笑を浮かべているツェルフリーナ様をじっと見ていました。
わたしの名はルツィウス。
アウブ・エーレンフェストの長女、ツェルフリーナ様の護衛騎士です。
しかし、ツェルフリーナ様は不幸にも「エーヴィリーベの実」として生まれてしまったばかりに、その人生は、命の神エーヴィリーベでさえも哀れに思い、涙を流してしまうものです。わたしも、いつかツェルフリーナ様が幸せになってくださるようにと、毎日神に祈っております。
わたしの願いを神が聞き入れてくれたのか、ツェルフリーナ様は、双子の兄のヴィルフリート様とのお茶会にご招待されました。
わたしはそれを聞いた時、心のなかで神に感謝を捧げました。
・・・しかし、これは、いわばツェルフリーナ様にとって最悪の決断をするときでもあったのです。
ツェルフリーナ様がそのお茶会で、そのまま南の離れに残るのか、
それともヴィルフリート様に『ゲドゥルリーヒの誓い』を行い、北の離れに移るか、という選択をされました。
エーヴィリーベの実にとって『ゲドゥルリーヒ』は忠誠を誓い、決して傷つけない相手だとされています。
しかし、それだけではございません。『ゲドゥルリーヒ』はエーヴィリーベの実にとって運命の相手なのです。ただの神話ではございません。もとから、決まっているものなのです。
それが誰のなのかは、思春期に入り魔力感知が作動する頃にわかると言われています。
それなのに、まだ洗礼式も終えていない子供に『ゲドゥルリーヒの誓い』を結ばせようとするとは・・・
わたしが怒っても、状況は何も変わりません。ツェルフリーナ様は、ヴィルフリート様に『ゲドゥルリーヒの誓い』を決め、そのままわたし達は南の離れに帰りました。
今は、ツェルフリーナ様の魔力のお勉強の時間です。本当は、洗礼式前のこどもにこんなことをさせないのですが・・・
わたしの他の側仕えたちは南の離れに移るための準備を行っていますので、今、この部屋にいるのはツェルフリーナ様とわたしだけになりました。
わたしは、思わずつぶやきました。
「・・・それで、よろしいのですか?」
わたしの質問に、ツェルフリーナ様は、なぜか、フフ、と笑いました。
わたしは、思わず目を見開きました。
「・・・ルツィウス
わたくしには、生まれた、時から・・・・選択肢など、なくてよ?」
そう言って笑ったツェルフリーナ様は、今までで一番美しく、そして、触れれば消え去ってしまいそうなほど、儚げでした。