「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜   作:ピースちゃん?

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初めてのトロンベ

次の日、わたくしは、3の鐘が鳴ると、平民の服に着替えて、いったん南の門に向かいました。

 

今日は、わたくしの泊まる場所決めです。しかし、残念ながら、お金は1フランも持ってこれませんでした。

 

南門の人たちならば、信用できる人がいますので、そこで相談してみようと思ったのです。

 

歩いている途中に、見覚えのある二人組が目につきました。

 

「ルッツ!マイン!」

 

名前を呼ぶと、二人同時に振り向きました。

 

そのまま二人並んで喋りだします。

 

「シュウ。久しぶりだな」

 

「うん、ちょっと、妹の洗礼式で忙しかったんだ」

 

「シュウちゃんの妹さんって、秋生まれだったんだ・・・あ、ところで、妹さんのお披露目、うまくいった?」

 

「ああ、すごくうまくいった。あの髪を綺麗にする液とか、新しい髪飾り。本当にありがとう。マインとルッツのおかげで、うちの家と妹は安泰だ」

 

「良かったな、シュウ」

 

そんな感じにまずは感謝を述べました。自分のことを自分の妹のこととして話すのは、少し違和感がありますが、それでも、会話の内容は殆ど変わりません。

 

「ああ、マインは今日は門か?それとも、森?」

 

「ルッツは森だけど、わたしは門。オットーさんに呼ばれたの」

 

「じゃあ、今日はオットーも、ギュンターもいるってことだな?それなら、良かった。シュウ、ちょっとオットーとギュンターに質問したいことがあったんだ」

 

「・・・ん?シュウはなにかオットーさんとギュンターおじさんに用があるのか?」

 

「うん。色々あって、家から追い出されたから、一週間ぐらい泊まれるところを探してんだ」

 

わたくしがそう言うと、ルッツとマインは何故か顔を合わせました。

 

「え、い、家を追い出されたの!?」

 

「お、おい、それマジかよ、シュウ!」

 

「う?・・・どうしたんだ、二人とも?」

 

「どうしたもこうしたもねぇよ!」

 

ルッツいわく、下町にとって家を追い出されるというのは結構な大事件らしいです。追い出されれば、他の人の家にはいけません。なぜなら、断られるからです。誰も、そんな問題を起こした子供など家に入れたくないらしい。

 

最後は自分の見習い場所ですけど、そこは親の仕事場所であることがほとんどです。だから、そこでも追い出されます。つまり、家から追い出されれば、孤児になって神殿に入るしか、道はないということであるらしいです。

 

わたくしは慌てて否定します。

 

「いや、いや!違う違う!シュウの家の荷物が移動させるんだけど、それが一週間ぐらいかかるから、外で泊まって来いって言われただけだ」

 

「なんだ、よかった・・・」

 

安心したように、ほっと息を吐くルッツ。しかし、マインは不思議そうに首を傾げました。

 

「え?けど、その家の別の部屋に泊まらせてもらうとか、できなかったの?」

 

「シュウをめちゃくちゃ嫌ってる人が、うちの家の中で一番権力があるんだ・・・それで、移動が終わるまで、外に泊まりに行けって言われたんだ」

 

「なんていうか・・・大変だな。おまえ」

 

わたくしはルッツに苦笑いを返します。

 

そんなことをしている間に、門につきました。

 

「じゃあ、マイン。帰り、迎えに来るから、ちゃんと待ってろよ。シュウ、泊まれる場所、見つかると良いな」

 

「うん、ルッツも採集、頑張ってね」

 

「ああ、ありがとう、ルッツ」

 

ルッツは森の方に向かっていった。マインとわたくしはオットーが居る宿直室に入っていきました。

 

「やぁ、マインちゃん。よく来てくれたね・・・あれ、シュウくん?久しぶりじゃないか。妹さんの洗礼式はうまくいった?」

 

「ああ、すごくうまくいった・・・あと、あの、髪をツヤツヤにする液、妹が気に入ったんだ。もう何個か買えないか?」

 

「それは、俺じゃなくて、ベンノに聞いたほうが良いね。値段は、要相談ってことで」

 

それから、マインとオットーがしばらく話をしたあと、マインが計算の手伝いをし始めました。

 

「・・・オットー、これ、シュウが手伝ってもいいか?」

 

「え?シュウくん、君、計算は・・・ああ、そういえば、君の家は、没落した貴族だったね」

 

「ああ、シュウも、一通りの計算ならできる」

 

「じゃあ、シュウちゃんは、この計算をしてくれる?これが間違いなしで完璧にできたら、もうちょっと多めのものを任せるから」

 

マインは、自分の座ってる方と反対側に少しの木札を乗せてくれた。

 

わたくしは、その木札が乗っている方の席に座って、計算をし始めました。人差し指を回して、時々頭の中で計算しながら、木札に数字を書いていきます。

 

「できた。マイン、見てくれ」

 

「うん、わかった」

 

マインがわたくしが解いた木札を見て、自分の計算と合わせながら、間違いがあるか確かめていきます。少し緊張してしまいますが、こんな形で自分の現在の実力がわかるとは思わなかったので、とてもワクワクします。

 

しばらく木札を見ていたマインが、ふと顔を上げて、笑った。

 

「・・うん。大丈夫ですよ、オットーさん。これなら、シュウちゃんに計算を一部任せても良さそうです」

 

「本当か!?」

 

オットーがいきなり立ち上がった。目がギラギラしてて、怖いです。

 

その後は、マインと木札を半分にしていて計算しました。

 

しばらく二人で計算をしていると、いきなりドアが大きな音を立てて、慌てた様子の兵士がひとり入ってきた。

 

オットーも慌てて駆け出していった。なぜか、外が全体的に騒がしい。

 

・・・何か、あったのでしょうか?

 

「どう、したんだろ・・・?」

 

マインがポツリと呟くのが聞こえました。

 

顔を見ると、マインの目の色がほんの少し変わってきています。おそらく、不安になって、魔力が不安定になっているのでしょう

 

わたくしは慌てて、マインの手を握ります。

 

「マイン。落ち着け、なんも問題ないから。シュウが、ここにいるから」

 

マインが、はっ、としたような顔になって、目をつぶりました。もう一度目を開けたときは、目の色は元通りになっていました。

 

「・・・大丈夫か?」

 

「うん・・・魔力自体は、かなり減ったから、押し込むのも、暴走も少なくなったから」

 

「なら、良かった」

 

そうして、わたくしたちはもとの計算に戻りました。半分ほどが終わった時、オットーが戻ってきました。

 

「森でトロンベが出たんだ。俺は門の方に戻らなくちゃいけないけど、マインちゃんとシュウくんはここで計算しててくれないか?

あと、紹介状が来たら、こっちに回すから、処理はを頼むね」

 

・・・トロンベとは、何でしょうか?

 

それを聞く前に、オットーは門の方に走っていきました。

 

マインの方はそれを聞いて、落ち着いたように息を吐きました。マインはトロンベというものが何か、知っているのでしょうか?

 

「マイン、トロンベって、なんだ?」

 

「あれ?シュウちゃんは森で見たことはないの?」

 

「ない。そもそも、森に行ったことねぇ」

 

「へぇ~、元貴族の人たちって、やっぱりお金持ちなんだねぇ・・・

 

あ、トロンベだったよね?トロンベは、不思議な『にょきにょっ木』だよ。ものすごい勢いで伸びちゃうの。けど、高級な紙の材料になるんだよ」

 

「ふーん・・・けど、兵士が来るなんて、危ない木なんだな」

 

そんな話をしているうちに、ドアの外のほうが、騒がしくなってきました。

 

外に出ると、たくさんの兵士や子どもたちが大中小の様々な木を持っています。

 

ギュンターが大きな丸太を持って、マインに自慢しています。マインは、苦笑いで対応しています。

 

そのうち、細い木をたくさん持っているルッツがマインに話しかけてきました。

 

どうやら、マインの紙に使う材料の木は、細い木であるらしいです。マインが他の子供達がいらない細い木をたくさん集めているのが見えました。

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