「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜 作:ピースちゃん?
「なぁ、マインはどこに行くんだ?」
シュウちゃんはとても早起きだった。1の鐘が鳴る頃にはもう目を覚ましていて、部屋の掃除をしてくれていた。
テーブルや台所の近くはピカピカになっていて、母さんがシュウちゃんにお小遣いを渡そうとしたけど、シュウちゃんは「家に泊まらせてくれたお礼だ」と言って、一フランも受け取らなかった。
「わたしはベンノさんのところへ行くの。髪飾りをお店に持っていって、お金に変えてもらうんだよ。シュウちゃんも手伝ってくれたから、ちゃんとその分のお金は渡すからね」
「・・・いや、シュウは別に良い。・・・そのかわり、マイン、なんか新しくて美味しいご飯を食べさせてくれ、それでチャラだ」
シュウちゃんは目をキラキラさせてわたしに詰め寄った。シュウちゃんは意外と、美味しいもの好きで新しい物好きらしい。
そういえば、シュウちゃんは昨日の夕食にすごくびっくりしていた。やっぱり、あんな感じに出汁を取ったスープは貴族のところにもないみたいだ。
うーん・・・なんか新しいレシピなんかあったかなぁ?
そこで思いついた。今日はルッツと一緒にじゃがバターを食べる予定だったんだ。
「ねぇ、シュウちゃん。これからルッツと一緒に倉庫に行って髪飾りを完成させるんだけど、シュウちゃんも一緒に来る?」
「・・・なんでだ?」
「そこでちょっと美味しいものを食べるんだ。作り方は簡単だし、使ってる素材も簡単だけど、ちょっと作り方と道具が特殊だから、貴族のご飯に慣れたシュウちゃんでも美味しく感じられると思うよ」
「・・・!ありがとう!マイン!シュウ、すっげぇ楽しみだ!!」
シュウちゃんが本当に楽しそうに笑った。
また、部屋の中の空気が軽くなったような気がした。
それから、ルッツと一緒に倉庫に向かった。
冬の倉庫はキンキンに冷えていた。シュウちゃんとわたしが荷物を手分けして倉庫において外に出ると、ルッツはもう鍋の準備をしていた。
わたしは蒸し器ににカルフェ芋とトロンベを並べていく。
「ジャガバターって食い物なのかよ!?」
ルッツにジャガバターができたかを確認するための竹串を作ってほしいと頼んだけど、どうやらジャガバターでは通じなかったようだ。
蒸し器の中に食べ物があるとわかった途端、ルッツは張り切って竹串を作り出した。
「・・・なぁ、マイン。もしかして、シュウは何も手伝えないんじゃないのか?」
シュウちゃんが恐る恐るわたしに聞いてくる。シュウちゃんはおそらく、暇なのが心配になる社畜タイプの人間のようだ。
「うーん、じゃあ、シュウちゃんは紙が出来上がるまでに、わたしと髪飾りでも作っておこうか?それなら、仕事にもなるし、楽に時間が潰せるよ?」
そう言うと、シュウは驚いたように目をパチパチさせた
「・・・紙?これ、紙を作ってるのか?」
あ、そうか、シュウは植物を蒸しているのを見ても、カルフェ芋を一緒に入れていたので、なにか料理の過程だと思っていたのだろう。
「うん、これが、前に行ってた植物紙。・・・作り方は秘密だからね?」
「当たり前だ。食べたら、すぐにシュウはマインの家に戻るな。大丈夫、製法を盗んだりなんか、しないぞ」
わたしの心を読んだみたいに、シュウは微笑んだ。今まで警戒してたのが、馬鹿らしく感じるくらいだ。
わたしは、そっと息を吐いた。
それから、わたしとシュウは一緒に髪飾りに使う小花を編んだ。
わたしが2つ、シュウが6つできたから、そろそろ芋の様子を見てみよう。
「良いよ!ルッツ、蓋、開けて!」
そして、じゃがバターならぬカルフェバターはよく蒸されてた。素早くバターを間に入れて、シュウとわたしとルッツで分ける。
「・・・なんだ、カルフェ芋かよ」
ルッツはカルフェ芋なら食べ慣れているので、少しがっかりしていたが、
シュウはここまで丸ごと素材を使った料理は初めてだったらしく、今にもよだれを垂らしそうな顔をしながら、カルフェ芋を食い入るように眺めている。
そして、わたしに催促をするようにこっちを見たので、目で食べていいよ、と伝えてみた。
すると、満面の笑みを浮かべて、シュウはカルフェ芋にかぶりついた。
「・・・・!!!おいしい!!」
そう言って、シュウは頬袋をパンパンにしながらカルフェ芋にかぶりついていく。
わたしも湯気がほこほこと立っている芋に大きくかぶりついた。
「ん〜!」
中は熱くて、こんな寒い冬の日に食べると、体まであったかくなる。トロンベと一緒に蒸したせいか、燻製のような香りがついて、それにバターの風味に合わさって、なんとも言えない味になっている。
ほっぺを抑えて悶えていると、ルッツが横でため息混じりにカルフェ芋にかぶりついた。
直後、カッと目を見開いて、わたしと芋を見比べるようにしてもう一度かぶりつく。
「・・・うまい!なんでだ!?」
「・・・!!」
シュウはもう言葉をなくしてただただあっという間に食べきってしまった。すごく満足そうな顔で、こっちまで嬉しくなってしまう