「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜 作:ピースちゃん?
少し肌寒くなってきて、あちらこちらで冬ごもりの準備が始まったある秋の日。
わたしはいつものように、門でオットーさんの計算の手伝いをしていた。
計算が一段落終わって、一息ついていたときだった。
「シュウくん。彼女がマインちゃんだ」
・・・オットーさんが、知らない男の子を連れてきた。
男の子は日本ではよく見た真っ黒な髪をしていて、深く被った帽子の奥から、ルッツと同じ緑色の目で私を興味深そうに見つめている。
「ええっと、オットーさん。そっちの子は・・・?」
「ああ、彼はシュウくん。えーと、たしか貴族と関わりが強いらしいんだ」
私の『身食い』を治すには、どうしても貴族の協力が必要だ。オットーさんの隠れた優しさに自然と顔がほころぶ。
話を聞いてみると、なんと、ある時シュウが人攫いにさらわれかけたときにオットーさんが助けたのだという。
「ひ、人攫い!?だ、大丈夫だったの?それ・・・」
「ああ、別に頭を強く売って気絶させられてただけで、すぐにオットーたちが助けてくれたから、シュウは大丈夫だ」
何故か自慢げに胸を張るシュウくん。わたしが苦笑いをしていると、いつの間にかオット―さんは門のところに戻ってしまっていた。
「・・・オットー、どこに行ったんだ?」
「多分、オットーさんは門のところに戻ったんだよ。今は秋だから、オットーさんも父さんも、仕事で忙しいんだし」
秋は収穫の季節。
とれたての野菜を広場へ持っていくために、門の間では農民がたくさん行き来する。今は門の兵士にとって一番忙しい時期だ。
シュウは「ふぅん」と興味なさそうに一言言って、何も言わずにわたしの席の向かい側に座って、わたしのことをただただじーっと見ている。
・・・き、気まずい!!
シュウくんはもともと無口な子なのか殆ど喋らないけど、何故かわたしにずっと視線を向けてくる。
気まずい雰囲気をなんとかしようと、わたしは話題を探した。すると、シュウくんの持っているトートバッグが目に入った。
「そ、そのトートバッグ!!」
シュウくんが持っているトートバッグは、この前の冬、わたしが遊び半分に複雑な刺繍をしたやつだった。
「ん・・・マインも、これに興味があるのか?やらないぞ」
シュウくんはわたしがそのバッグを欲しがってると思ったのか、取られないように体の後ろに隠した。
わたしは慌てて首を振る。
「ううん。それ、わたしが去年の冬仕事で作ったやつなんだ。だから、気に入ってくれて嬉しいよ」
「・・・そうか、これ、マインが作ったのか。マイン、すごいな」
シュウくんは口調に反してほんわかとして笑顔を浮かべた。さっきまでずっと無表情だったせいか、ついこっちも顔が柔んでしまう。