「エーヴィリーベの実」〜わたくしのゲドゥルリーヒはヴィルフリート様です〜 作:ピースちゃん?
あまりにもいたたまれない時間が数秒間続いて、流石に私が耐えきれなくなった。
「と、とりあえず!!その、髪飾りを作るときに妹ちゃんとかの髪色とか!!服の色とかも考えなきゃだから!!そ、相談しよう!うん、今すぐにでも!」
「ん・・・?ああ、そうだな」
そう言うと、シュウは素直にわたしから手を話して、何事もなかったかのように向かいの席に座った。
わたしも、トートバッグから石板を用意して、質問の準備をする。
「それで、何が聞きたいんだ?」
「え、えーっと・・・その、シュウの妹洗礼式のときに着る衣装とか、もう決まってるの?」
「・・・いや、全く決まっていない。けど、全体的にはそんなに目立たない薄い金色にする予定だ。
・・・ああ、そういえば、マインの姉のトゥーリがつけていたあの髪飾り、もう少し豪華にすることはできるか?」
「うん。花の形とか、糸の種類とか・・・豪華にしたいなら、いくらでも指定していいよ?」
「そうか、なら良かった」
シュウはホッとしたように息を吐いて、糸の指定をしてきた。色はまた決めるとして、糸は最高級のものを使ってほしいらしい。
・・・もしかして、シュウの家は結構お金持ち?いや、貴族と接してるとか、小金貨とか平気で渡そうとするとかあったけど・・・
糸にかかるお金を考えていると、私は大事なことに気づいて、顔を上げた。
そう、冬の洗礼式では、沢山の人が髪飾りを付ける予定だ。けど、オーダーメイドで作ったのはフリーダのところだけだということで、特別感を出すとベンノさんが言っていた。
一人でもフリーダと同じオーダーメイドの人が出たら、フリーダの特別感がなくなってしまうのではないだろうか
「あー・・・ごめん。指定、できないかも知れない」
「なぜ?」
事情を説明すると、シュウは、なんの問題もない、マインは心配しなくてもいい、と言って、そっぽを向いてしまった。
――あ、そっか。もしかして、洗礼式とかに出すのじゃないのかな?
さっきシュウが髪飾りが欲しいと言った時、ウソをついたときの男の子の顔をしていた。今も、嘘がバレたときの焦った男の子の顔をしている。
つい口元がニヤニヤしてしまう。流石にここでそこを突っ込んでしまうのは、シュウが可哀想だろう。
「うん。わかった。じゃあ、妹さんの髪と目の色を教えてくれる?」
「・・・ああ。目の色は緑色で・・・髪は、白、だ」
「へー、妹さん、白髪なんだ。じゃあ、濃い色が目立ちそうだね。それで、妹さんの好きな色は?」
シュウが驚いたようにこちらを見つめた。
「・・・マイン。驚かない、のか?」
「何を?」
「だって・・・シュウの妹は、白髪なんだぞ?」
そういえば、この世界の髪の色はとてもカラフルだけど、白をわたしは見たことがない。
もしかして、この世界ではなにか特別な意味を持つのだろうか
「えーっと、わたし、あんまり外に出ないから、よくわかんないんだけど、髪が白い人って、なにか意味があるの?」
「・・・まぁ、別に、マインは知らなくていい」
シュウはその話題にあんまり触れたがらなくなり、
結局、髪飾りはすずらんのような形の花を青紫の糸で縫って、縁は金色の糸。周りを薄い緑色の小さな桜のような花で囲むことになった。
それから、5日後の3の鐘に、門のところで待ち合わせて、お金と実物を交換することになった。
「おーい、マイン。そろそろ帰るぞ・・・あれ?シュウ?」
やっとルッツが森から帰ってきてわたしに声をかけてきた。
初めて見る顔であるはずのシュウを懐かしそうな不思議そうな顔で見つめている。
「あれ?ルッツ、シュウのこと知ってるの?」
わたしの疑問に、ルッツより先にシュウが答える。
「・・・シュウが人攫いにさらわれそうになった時、一番に見つけてくれたのがルッツだ。マインの知り合いだったのか?」
「うん。わたし、体が弱いから、誰かが見てないと外にも出られないの。外に出る時、毎日わたしの体を見てくれてるんだよ」
「マインは急に倒れたりするからな。ちゃんと見とくやつが必要なんだよ」
「なるほど・・・そういえば、ルッツはギルベルタ商会?ってところの商人見習いになると聞いたが、マインも同じ商人見習いを目指しているのか?」
「うん。そうだよ」
「・・・なるほど、だからあんな髪飾りを思いつけたのか」
「ん?シュウ、マインの作った髪飾りのこと、なんで知ってんだ?」
わたしがルッツにシュウが髪飾りを欲しがったことを話すと、ルッツは顔をしかめた。
「・・・なぁ、マイン。それ、旦那様に話さなきゃいけないことじゃないか?」
「うん。だから、今日はちょっとギルベルタ商会によっていくつもりだけど?」
いや、そうじゃなくて・・・と、ルッツが不満そうに言葉をつなげようとした時、
その様子を見ていたシュウが恐る恐る私に話しかけてきた
「マイン、シュウの家も北側だ。だから、マインと一緒についていく」
「なら、途中までいっしょに帰ろっか」
「おい、マイン。待て、髪飾りのことはちゃんと旦那様を通して・・・」
「良かった。シュウ、ルッツとマインと一緒に帰れることが、すごく嬉しい」
シュウがほんわかとろけるような笑顔を見せて、ルッツとわたしは少し顔が赤くなった。