東方武神録   作:koth3

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武神と妖夢の出会い

 儀式が始まる。命は一歩後ろに下がり、ただそれを眺め続けていた。本来なら命もその儀式を手伝わなければならないのだろうが、命にはできない。だから、せめて見守り続ける。そう決心したのだ。

 世界に異変が起きる。太陽が昇っている中を、月が反対側から出てくる。二人の神の後ろには、それぞれの司る天体が浮いている。

 

「さあ、始めましょう」

 

 天照の一言ともに、さらに変化は生じる。月が、欠けていた月が(・・・・・・・)満ちていく。

 

「これが、本来の月夜見」

 

 命の目の前には、満月となった月が浮かんでいた。

 

 

 

 

 その少女は、背と比べて大きすぎる刀を腰に指していた。二振りの刀のうち、一振りには花が差してある。緑色の動きやすそうな服を着た銀髪の少女と、少女の左側を浮いている霊体は、命を視認すると同時に動き出した。

 

「覚悟!!」

 

 幾ら命はあちらこちらに敵を作っているとはいえ、こんな少女に命を狙われる覚えはない。そう考えて、これ以上敵を作らないためにも反撃するではなく回避を選ぶ。

 石段から飛び降りて放たれたために、上空から迫る唐竹割りを命は一歩前に踏み出すことでほぼ無力化する。唐竹割を放った少女は、命の余りに急な行動に反応しきれず、

 

「ほぇ?」

 

 先ほどの凛々しい声と違い、阿呆らしい声色で疑問を上げている。命はそのまま気の抜けた少女の右腕を掴み、さらに入り身で左側、つまりは少女の右隣に入る。

 至近距離からの行動に、少女は何が起きたのか認識出来ていない。もしこれで少女の左側に命が移動したのなら、霊体に見られてしまっただろうが、命は少女自身を目隠しにする事で隠れ切ったのだ。

 

「え、ええ? ど、どこ?」

「ふっ」

 

 困惑し、重心が前のめりになってしまっている少女の手首をそのままひねり上げる。ひねった腕を後ろに運び――その途中で少女は刀を強制的に手放させられ、拳を肩甲骨のあたりまで運ばされる。

 

「痛い! イタイタタアアア嗚呼!!!!!!」

「……」

 

 さらには首筋を、少女の腕を動かしている腕の肘で押す事で、完全に体勢を崩しきってしまう。この状態にまで来たら少女一人では抵抗することは不可能だ。石段に潰された蛙のような状態で押さえつけられて、右腕は背中で関節を決められてしまっている。少女に出来るのは、左腕で刀をぶんぶんと振り回す事だけしかない。命のいる方には攻撃が向かってすらいない。

 本来ならこのまま一撃加える事も出来はなくないのだが、少女の服装や、髪色などから考えてこの少女が妖忌の言っていた孫娘、つまりは魂魄妖夢だろうと当たりを付けた。というよりも、気で大体のことはわかっていたのだが。

 

「石段の先が刺さっているぅ~!!」

 

 じたばたと暴れたせいで、自分自身の体重で余計なダメージを喰らっている。そんな少女を見て、命は。

 

「三日で、いや一日目で死ぬやもしれん」

 

 不吉な未来予想図を作り上げていた。

 ――ポキャ。

 

「あ」

「あああああ~~~~!!!!!!?」

 

 

 

 

 白玉楼の一室にて、妖夢は命をジト目で睨み続けている。

 

「いや、すまない。まさかそんなに脆いとは」

「脆いって! 人間よりは頑丈なんですよ!?」

 

 妖夢の片腕には挿し木と包帯が巻かれて、動かないように固定されている。命の診察では軽い脱臼。先ほど、腕からその音が鳴って少女が悶絶していると、命は来ている服の裾がちぎれている。妖夢の腕からポキャという音が響いてすぐに、命は自分の道着の裾を破って包帯代わりにしたのだ。

 妖夢も骨が外れるとは思っていなかったのだろう。また、命自身も予想以上の結果に驚いてしまった。原因は命というよりも実は妖夢にあるのだが。妖夢が暴れなければ骨は外れなかっただろう。暫く地獄の痛みを経験し続けて、絶対的に反抗してはいけないと芯から教え込もうと命は考えていた。その結果がこれだ。災難としか言いようがない。

 

「うう。師匠の代わりがこんな暴力師匠なんて。認めない!」

「認めない云々は構わないが、修行は今から始めるぞ?」

「は?」

 

 埴輪が妖夢の顔に降臨した。口はぽかーんと開いており、瞳は驚きの余り丸くなっている。まさしく埴輪だ。

 

「き、聞き間違いですよね?」

「? 如何聞こえたんだ?」

「いや、今から修行を、って」

「何だ聞こえているじゃないか」

「いやいや! 私の腕外れているんですけど!!?」

「それが如何かしたか? それに、それは先ほど入れ直しただろう。すでに動くはずだ」

 

 ああ、この目の前の人物も、修行中の師匠と変わらない。そこだけは、違う人でも良いかなぁと思った唯一の理由だったのに。

 首を180度近くまで回転させている命を見て、滂沱の涙を流しながら妖夢はそう思い、明日の日を諦めた。

 

(どうせ、死ぬほど修行させられる)

 

 そう考えていたのだ。しかし、妖夢は知らない。妖忌は孫娘という事あって、かなりの手加減をしていたことを。そして、目の前の男が、たとえ相手がどんな存在でも容赦なく鍛え上げる一種の莫迦であるという事を。

 

「そうだ、妖夢。修行の前に言わなければならん事が有る」

「は、はぁ?」

 

 正直もうお腹いっぱいなのだが、それでも黙って聞くしかない。敗北者は勝者のいう事を聞く。それは当り前。そもそもが、本来は師匠である妖忌から伝えられているのだ。それを我が儘言って勝負したのは妖夢自身。これ以上我が儘を言うつもりはなかった。次の一言を聞くまでには。

 

「遺書を書いておいてくれ」

 

 今までになく良い笑顔で、命はそう告げた。




次回、かなり時間が飛びます。具体的に言うと、魔理沙が子供の頃位に。
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