一人の紅い服を着て色い大きな袋を持った男が人里の家々の屋根を飛び、侵入していく。そのさまは泥棒としか言えないはずなのに何故か家から出てくると担いでいる白い袋が小さくなっていき、むしろ何かを置いていっている。
此れが外界の人間ならこう答えるだろう。それってサンタクロースじゃないか? だが、此処に居るのはサンタクロースじゃない。たまたま外の本を読んで知ったサンタクロースのまねごとをしている命が正体だ。此れでも彼はこういった話は好きで、子供たちに夢を与えてやりたくてこういった格好をして家々を渡り歩いている。
「次はルーミアか」
人里から離れてとある森の中。ふわふわと浮いている闇を見つけた命は、闇から隠れて一つの荷物を闇が進むであろう進路においておく。そしてそれをルーミアが見つけるまで木陰に隠れながら見張っている。此れで気が付かなければもう一回置き場所を調整する必要があるからだ。
「ん? 何だこれ?」
しかし、その心配は外れて闇の中で見つけづらくなっているにも関わらず、ルーミアは白い箱を見つけられた。
「お肉の良い匂いなのだー!」
そう、箱の中から香ばしい良い匂いがしたからだ。その匂いに引き寄せられてルーミアはプレゼントの白い箱に気付き中のプレゼントを見つけられた。中にはおいしそうにこんがりと焼けた肉が入っており、ルーミアは喜んで食べ始めた。
「よし、次だ」
そのまま、森を進み霧が立つ湖に向かう。そこに居るのは蒼い妖精。氷でできた羽を持つ妖精と、近くには緑色の髪につたのような模様が見える羽を持った妖精がいた。
「チルノと大妖精。丁度良いが、今の時間帯普段は妖精なら眠っている時間帯のはずなんだが」
不審に思いながら遠目から物陰に隠れて伺っていると、
「サンタっていうのは何処だ! 見つけてやるんだから!」
「チルノちゃん、サンタさんのお仕事の邪魔にならないかな?」
どうやら、サンタの正体を知りたかったようだ。何処で知ったかは分からないが、此れではプレゼントを渡せない。
「仕方がない」
命は彼女たちから一定の距離を保ったまま少しずつ後ろをとる。そして、
「かはっ」
「え? ってチル―」
気づく隙を与えないように高速で接近して首筋を叩いて気絶させた。
「サンタの正体は知られてはならないそうなのでな。すまない」
そのままチルノの頭の近くに青い箱を、大妖精には緑の箱を置いて立ち去って行く。その先は赤い館。吸血鬼の館。
「紅魔館は何とかなったが、何故あそこまで人が起きていた」
普段眠っていた門番が何故か起きていて侵入する際に戦闘を行う羽目になってしまった。しかし、何とか門番を下して(ついでに星形のシールが貼ってあるプレゼントを置いて)、紅魔館中にプレゼントを配り歩いていた。しかし、メイドを始め、当主に、当主の妹までが起きていた。気づかれないようにかなり気を張って行動したため何とか気づかれなかったが。命は知らないが、レミリアがサンタの正体を知りたく、メイドにサンタを捕まえるように言ったため、このような事態になった。フランは面白そうと参加したのだが。
他にも多くの妖怪や人間たちのとこに行き、プレゼントを置いてきた。具体的に言うと紅魔館。白玉楼。神社。マヨイガ。魔法の森。人里。天界。妖怪の山。旧地獄。命蓮寺。更には月の都にいる綿月姉妹と月夜見にも。
「そして、此処か」
目の前にはあるのは太陽の畑。とある大妖怪が好む畑。今は時期が時期でヒマワリなど咲いていないが今日この場所に幽香がいることを偶々命は知っていた。だからこそ来たのだが、
「そんな怪しい姿をしている侵入者は殺しちゃって良いわよね?」
目の前でサディスティックな笑みを浮かべた幽香が立ちふさがっていた。
「さて、貴方は多くの荷物を持っている。それを私から守ってさらに正体を知られてはならないそうね。私からどれだけ守れるのかしら? ねえ、最強の武人さん?」
「さてな。ただ私はお前からこのプレゼントたちを守ってやればよいだけだ」
片方は笑い、もう片方は白い髭を歪めて構えをとる。両者の戦いは今まさに切って落とされた。
赤かった服をぼろぼろにしながらも、何とか幽香を下して幽香にもプレゼントを置いて迷いの竹林を足を引きずりながらも命は歩いていた。
「くっ、幽香の奴め。時間が無いというのに最後まで私の邪魔をするとは」
実際倒れている幽香の顔は笑っており、命の邪魔と同時に、時間を奪う事に成功して、笑っていたのだ。さすがアルティメットサディスティッククリーチャーの異名を持つ幽香だ。
「此処で最後だ」
此処に来るまでに妹紅の所にはプレゼントを置いてきた。他の場所にもいき、プレゼントを置いてきた。
目の前の屋敷は永遠亭。
「輝夜に優曇華院。てゐか」
一人だけ、たった一人だけ彼は言い忘れていた。いや、彼にとって今回のプレゼントは子供たちや
「これで終わりか」
担いでいた袋には何もなくなり、空になっていた。
命はてゐの寝床に最後のプレゼントを置いて、立ち去ろうとした。そう、
(ば、莫迦な!! この距離で気づけなかっただと!!?)
しかも、
(体が、動かない!!?)
汗が一粒頬を伝い、顎にまで落ちてきた。
「さて、貴方に一つだけ聞きたい事が有るわ」
ゆっくりと一歩一歩歩いてくる永琳に対して命は何もできずにいた。
「何で私にだけプレゼントが無いのかしら? それは私がピチピチの若者じゃなく年寄りだと言いたいのかしら?」
「いや、待て! 何を言っている!!?」
ゆっくりとぎしぎしと軋みあげる弓を取り出して命に向けて、
「私のプレゼントはいま決まったわ。武人の丸焼きで良いわ」
そのまま容赦なく放たれた。
「ふわ~、今日も絶好の悪戯日和ね」
朝、目が覚めたてゐの不穏な発言は誰にも突っ込まれることはなかった。なぜなら、
「って、何この黒焦げの物体?」
聞いている人間がいなかったからだ。
「まったく!」
命に対する説教を終えた永琳は不機嫌そうに自室にまで戻り、あるものを発見する。
「あら、何かしらこの箱は?」
白い箱に赤いリボンでくるまれた何かがそこにはおかれていた。
「爆発物ではないみたいね? 他のトラップも仕掛けられていないようだし中身は」
ゆっくりと慎重に開いた中には、
「あら、これは秤?」
古いながらもしっかりとしたつくりの調剤の際に重さをはかるのに便利そうな秤がその中には入っていた。
けれど、一つだけ問題なのは、
「いったい誰がこれを?」
結局月の頭脳ですら分からなかったプレゼントの主。それはいったい誰なのだろうか?
シャンシャンとすずの音が鳴り続ける中、トナカイが引くそりに乗った少し太り気味な老人が幻想郷中を飛んでいた。彼は優しく微笑みながら一軒一軒を回り、プレゼントを置いていく。そして、幻想郷の結界を抜けていく去り際、一言を残して消えていった。
「フォフォフォ、メリークリスマス!!!!!」
最後の赤い服の老人は一体誰だったのでしょうか?
読者様はもちろんわかりますよね? 世界でもっとも有名な聖人の名を。