東方武神録   作:koth3

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
原作キャラ登場。今回は誰でしょうか? ヒントはケンイチで良く使われる修行道具です。


武神の修行風景

 月夜見が天照に直訴したおかげか命は月夜見の付添として続けられることになった。これに一番感謝したのは月夜見であり、一番後悔しているのもまた月夜見だった。

 

 「一寸待って!! 死ぬ、死ぬってそれは!!」

 「死ぬ事はない。きちんと見ているからな」

 

 月夜見の目の前にいるのは異常な修行を好んでしたがる変人、素戔命。月夜見が天照に言った内容をを知った彼は感動し、さらにその心遣いに答えようと修行を加速度的に進め始めたのだ。もはや彼女はこの修行についてはあきらめている。何せ何を言っても武術に直結するような思考回路持ちの人間だ。何を言っても無駄だととうに悟っている。

 そして今彼女の目の前は、構えている素戔命がいる。今回彼が月夜見にさせようとしているのは、

 

 「ふざけないで! 目を瞑っているじゃない! それにこれから戦う相手のいう事を信じられるか!!」

 「ふむ。確かにそうかもしれないが、今は関係ない。それでは始めるぞ、組手を」

 

 組手だ。

 古今東西ありとあらゆる武術に格闘技、どんな物にも存在する修行の一つ。ボクシングではスパーリング。空手や剣道などの武術は組手。カポエラではジョーゴ。名前は違えれど全てに存在する修行。

 そして始められたのはお世辞にも組手というものではなかった。むしろこれリンチの方がましじゃない? そう思う人間もいるほどの一方的な戦い。

 手加減として目を瞑っているのにも関わらずに足音で索敵をして、正確無比な攻撃。大振りだが威力も絶大な攻撃の数々。それらに対して月夜見は一方的に嬲られていた。

 

 「グボッ!! ま、待って!! お願い、後生だから!!」

 「フンヌ!!」

 

 しかし答えは無慈悲だった。とっさに月夜見は体を投げ出して避けることは成功した。避けた先で転がりながらも、自分の所を見た月夜見は一気に青ざめた。命の拳が大地に突き刺さっている(・・・・・・・・)。ひじのあたりまでが大地に飲み込まれてそこから放射状にひびが広がっている。あんなものを喰らってしまえばいくら神でも危険だ。もはや恥も外聞もなく逃げ回るしかない。

 

 

 

 数十分後、ようやく組手は終了した。月夜見は汗と泥でドロドロになり、あらゆる所に痣が出来ていた。

 

 「ふむ。予想よりはるかに良い結果だ。少々興が乗りすぎて長引いたが」

 

 冗談じゃない! そう罵りたかった月夜見だが、残念なことに彼女の体はそれすら許さなかった。倒れ伏している彼女を抱えて命は彼女の家へ向かう。不吉なことを漏らしながら。

 

 「そろそろ次の段階か。ふむ、技を教えるのは初めてだから加減が効かぬかもしれんな」

 

 先ほどまで一言も発せなかった体だったがこの時ばかりは動いてくれた。無駄な抵抗であろうがそれでも言わずにはいられなかった言葉を。

 

 「誰か助けて!!」

 

 

 

 人気のない朽ちた里に一人の人間がいた。何らかの理由で里が滅びたのだろう。飢饉か、それとも疫病か。それは分からない。しかし、雨露はしのげる。そのためしばらくその男、命はここに滞在していた。

 今日で滞在三日目。ここ最近は都で情報収集などでしばらくできなかった武術の修行も本格的に行い普段よりも生き生きとしていた。しかし、その修行法は普通の人間が見れば目の色を変えて激怒するようなことを平然としていたが。

 

 「フンッ!」

 

 呼気を吐くと同時に手に持つ物がぐるりと回る。先ほどから行っている事だ。つぶれた家の柱の頂点に立って手に持つ物を振り回している。遠心力で滑りそうになるのをその驚異的な握力で止めながら。

 その手が持つ物は灰色に近い色合いで非常に硬く、普通はそこら辺にあるものだが中には非常に高価な額で取引されるものもある。それは石だ。しかし、大理石のように高価なものではない。むしろどこにでもある岩を削ったようなもの。ただ、それはある形を持っていた。丸い頭に手を合わせた姿で掘られたそれを人はこういう。『お地蔵様』と。

 

 「ヌン!」

 

 信心深いものが見たらもはや殺意しかわかなくなるようなことに地蔵を使っている彼は、しかしそんな事を気にしない。何せ昔彼が使用してした修行道具には普通に投げられ地蔵君。しがみ付くよ仁王などそう言ったたぐいの名前の道具を使っていた。その為に彼は余りそういった事を気にしない。さすがに信仰されているようなものなら修行などには使用しない。だが、今回は滅びた村の地蔵。信仰が無く忘れられたことによりもはや地蔵とは言えなくなっているがゆえに彼はそれを修行道具として使っている。

 

 「セイヤッ!」

 

 ブンブンと振り回される石は加速度的に早く回り始める。台風のように。ジェットコースターのように。そして、

 

 「止めて下さい!!!!」

 

 声がした。突然のその声に驚いて命はその動きを止める。振り回していた腕を止めるとその腕は感性の作用でわずかに動く。その動きにつられるように命の手の中で一人の少女が揺れていた。

 

 「む?」

 「ようやく止まりました」

 

 顔色の悪い少女を手で掴みながら、命はその少女の正体を言い当てる。

 

 「地蔵か」

 「地蔵かではありません!! 貴方は一体何ですか!! 地蔵である私を振り回して! 貴方に信仰はないのですか!! 未だって気持ち悪いですからね!!?」

 

 涙目の少女が体全体を使って命を叱り始める。崩れた家の柱の頂上で大柄な体格の男が涙目の少女に叱りつけられている。かなりシュールな光景だ。

 

 「そこに正座しなさい!! 私が常識というものを一切合財全てを教えてあげます! 二度とこんな事はさせませんから!!」

 「正座するのは構わないが、私が正座するとなるとお前が落ちるぞ?」

 

 柱は一人分が経つ程度の幅しかない。この状態で正座をするとなると手に持っている少女は何処にも立てなくなり、さらに命も手に持つ事が出来なくなる。正座は座るとき手を膝に置く必要があるからだ。

 

 「う! そうですね、では一旦降りてください。そこで説教をします」

 

 緑色の髪に紺色の服。あどけなさの残る顔立ちのこの少女、いやこの地蔵の名前は四季映姫。後に幻想郷の閻魔となる地蔵尊だ。そしてこの最悪な出会いが四季映姫・ヤマザナドゥと素戔命の腐れ縁の始まりだった。

 




この作品では、映姫はこのまま地蔵として生涯を迎えるはずでした。しかし、命がした行為の余りの酷さに実体化して旅をし始めました。地蔵にこんな事をする人間がいるほど今の世の中は酷いのかと勘違いをして。それは勘違いとすぐにわかるのですが、滅びた里に只あるだけでは地蔵とは言えないと考えて旅をして徳を積み閻魔になりました。これがこの作品の映姫の過去です。
まあ、閻魔になってからも命に振り回されたことを忘れていないので唯一苦手と言い切る相手にまで命がトラウマになっています。
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