ラーベと別れ、私にあてがわれたのは元々宿として提供されていた商館の一室だった。生活に必要なものは一通り揃えてあるし侍従もいる。なにか欲しいものがあれば用意させることもできるだろう。お酒とかも。とはいえ私は飲めないし、今は飲む気にもなれないが。
部屋の外には王国軍の黒服が立っている。
空はまだ明るい。今できることもある。私は文机に向かい、筆を執った。
署名はまだしない。封もだ。それを侍従に渡し、送りたい旨を伝えさせる。
しばらくすると侍従が二人の官僚をつれて戻ってきた。一人はにこやかな表情の初老の男。もう一人は私より少し年上だろうか。やや不愛想な面持ちの若い男だ。にこやかな男は自身ともう一人の名と役職を紹介した。外務に携わる雑用係と書記であると。
「確認させていただきました。署名と封をお願いします」
書記の男が私の目の前で手紙を侍従に渡す。侍従がそれを私に渡す。
戻ってきた手紙は私よりも丁寧な字で書き直されていた。内容もほとんど同じだが一か所だけ書き換えられている。
思いがけないことに巻き込まれ帰りが遅くなるが心配しないでほしい。
まだ
私は手紙の最後に署名を入れ、それを侍従に渡す。侍従が封蝋を垂らし、私の印を押して固める。二人の官僚はその様子をじっと見守る、いや、見張っている。作業を終え、封のされた手紙が書記の男に渡された。
「確かに預かりました。然るべき時期に送らせていただきます」
「お疲れのところ申し訳ありませんが、少しばかりお話を伺ってもよろしいでしょうか」
雑用係の静かで、柔らかく、それでいて明瞭でまっすぐな声。始まるのは明日からかと思っていたが、
「ええ、構いませんよ。私の知っていることであればお答えします」
私としても早いに越したことはない。
部屋の中央、応接用のテーブルを囲む椅子の一つに座る。
「ありがとうございます」
そう言うと雑用係が私の向かいの席に座る、その隣に書記が座り筆記具を整える。
部屋の外に既に準備されていたのだろう。茶と茶菓子が運び込まれるとそれを受け取った侍従がテーブルに並べていく。
茶菓子は”