王の行幸の
しかし一人だけ場違いな人間がいる。
私が部屋に案内されたのは夜会が始まって一通り挨拶も終わった頃合いだろうか。到着すると侍従の一人が近づいてきた。
「王がお待ちです。どうぞこちらにいらしてください」
すぐに御目通りとなった。
深く頭を下げて礼の姿勢をとる。
「やあ、よく来てくれたね。楽にしてほしい」
顔を起こしてもう一度軽く礼をする。淡い金の髪と翠の双眸、年は自分と五つ程度しか違わないはずなのに佇まいからは
「ありがとう。騒動を
「いえ、自分は何も」
言いかけてはみたものの次の言葉は出てこなかった。王が目配せをしたのか侍従が横から細長いグラスを差し出す。王が受け取ると同じものがもう一つ私の前に差し出された。
手に取ったグラスの底から細かい泡が生まれ、立ち上り、水面で
「
そういうことにしろと言うことだ。王は間違えない、嘘をつかない。王の言葉が真実なのだから。
つまりこういうことだ。
逆に
そのための場違いな夜会への招待。この場にただ一人、帝国貴族の若者がいたという事実がこの噂に説得力を与える。
すべては国と国の関係を保つための打算、そのための一手だ。
となれば、
「過分なお褒めの言葉、身に余る光栄です。」
王が頬が少し緩ませ、グラスを傾ける。私もそれに合わせてグラスを傾ける。
口内で弾けた泡がそのまま喉を過ぎて消えて行く。これまでの悩みと
あの手紙を読んだ時に、少しだけ期待してしまっていた。
僕にとって彼女が特別だったように、彼女にとっても僕は特別だったのではないか、と。
そんなことはなかった。あるはずがなかった。
やっていないことで褒められるのも居心地が悪いものです。