汝、誰がために愛する   作:bra_c_ket

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「僕」はついに対面する。


最後の夜会 (3)

「私もザヴィエ殿も低地諸国(そちら)とは()()()()()()良い関係でいたいと願っている。(そちら)はどうかな?」

 

王の言葉を繰り返し頭の中で反芻させていく。夜会(ここ)に呼ばれたのは男爵名代ではない。私個人だ。私個人の考えを伝えるだけのことだ。しかし、だとしても家名(リジュー)を負っていることに変わりはない。下手なことはできない。

これまで通り、これまで通りだ。難しく考えることはない、はずだ。

今回の騒動(こと)をきっかけとした変化を望まない、ということだ。(サンテネリ)大公(ガイユール)も。

 

いや、気付いてしまえば単純だことだ。()()()()()()。どれだけ悩もうと、どれだけ考えようと、私が尋ねられたときの返事は最初から決まっている。決まっていた。

「はい、私も同じ認識です」

首肯する以外にない。私は、私の物語に従う。定められたように。

「それは良かった。なによりだ」

王が再びグラスを傾ける。私もそれに続いた。

()()()()()、と言ったのだから。

 

 

「さて、せっかくの夜会だ。大公殿(ガイユール公)のような立派な方から学ぶものも多いだろうが、そればかりでは少々飽きてしまうだろう。私のようなつまらない男と話をさせるのも申し訳がない」

また返事に大変困る言い回しだ。肯定すれば "飽きている"、"つまらない" と認めることになる。しかし、王の言に異を唱えることもできない。

となればできることはただ一つだ。沈黙。

王の次の言葉を待つしかない。

 

「そもそも(ウジェン殿)()()()招待主と引き合わせないのは道義に(もと)る。ザヴィエ殿も構わないかな?」

「ええ、問題ございません。それに、これ以上待たせるわけにもいかないでしょう」

 

ひょっとしたらという予想、いや願望だろうか。

心内で湧き起こったそれを、その機会を求めていた。何度も。ずっと。

そしてそれが実際に、今、こうして、実現した。実現してしまった。

 

彼女が僕の目の前にいる。

 

「いらしていただきありがとうございます、ウジェン様。ゾフィ・エン・ガイユールです。」

「ウジェン・エン・リジューです。このたびはご招待賜り、心より感謝申し上げます」

挨拶はどうにかできる、できた。できたはずだ。会ったら伝えたかったこと、話したかったこと、なにかあったはずだ。しかし口が開かない。なにもできないまま()()を見守る。

他人事(ひとごと)のように、我が事のように。

僕は固唾をのんだ。




ようやくヒロインが喋りました。
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