18期中央大陸には二つの大国があった。大陸南西を占めるサンテネリ王国、大陸北東部を占める帝国。二大国に挟まれ、よく言えばしたたかに、悪く言えば利用されながら命脈をつないできた土地が大陸北西部にある。低地諸国。
僕、ウジェン・エン・リジューが生まれ育ったのはそんな低地諸国南部の街トゥーリマス、
「今度の大晩餐会には行けそうにない。代わりに行ってこい。」
かつて彼女が語った王太子、
貴族の婚姻に惚れた腫れたは関係ない。家と家、国と国の結びつきがすべてだ。大陸一の大国の若き王と隣国のちっぽけな領主の息子。どちらを選ぶかは明らかだ。
それでも一度思い出してしまったものは、考えだしてしまったあり得ない物語は、もしも、もしもと仮定を重ねてしまう。
もしもあの日、彼女に幼い恋心を伝えていたら、
もしも彼女がそれを憎からず思ってくれたら、
もしも噂に聞く若き王が彼女のことを大切に扱わず、彼女と心を通わせなかったら、
もしも帝国が王国を攻め入り、
どれもあり得ない話だった。仮に帝国と王国が再び刃を交えることになったとしてせいぜい
私の中の私が、私をきつく糾弾する。私自身の獣欲に私自身の理性が魔力の鞭を打ち付ける。
彼女と王の不仲を望むとは、なんと身勝手で邪悪な願望なのだろうか。仮にそうだったとしてどうだと言うのだ。その隙間を突いて、彼女の愛人にでも納まるのか?なったとして彼女になにを差し出すことができるのか。一貴族として人並みの才はあるかもしれないが、帝国宮廷内で活躍できるほどの知識や政治力があると自認できるほど自惚れてはいない。男爵家として
もっと言ってしまえば仮にそうだったとして彼女が私を好む理由がない。彼女にとっての私は名前も顔も覚えるほどではない一貴族の子弟にすぎないのだ。
そして一番肝要な、根本的な、
そう、何も伝えていない。
だからもしもは、
そしてついにその日は来てしまった。
実際に式が執り行われるわけではない。既に帝国と王国の同盟の証として帝国の姫が正妃として嫁ぐことが決まっている。彼女は王の側妃となる。側妃である以上は公に結婚はできず、当然婚約も成立しない。
それでも、だ。
隣国の小貴族である私の家にもその招待状が一通届いた。領主である父宛てに。
「名代として参列して来い。」
父の計らいで、私は再び彼女と会うこととなった。
父は忘れろとは言ってくれなかった。
この期に及んで
「何もしていない」と言うだけに千文字も?