「少し匿ってくれないか。それとそこの商人への口止めも頼むよ」
ノックもなしに入ってきた男はラーベ・ヴォー・フォングラー。私と同じ、低地諸国に領地をもつ帝国貴族フォングラー伯爵家の次男だ。フォングラー伯爵は先日の晩餐会にも列席していた。
「では私はこれで失礼します」
「ああ、あとで使いを送るよ。今日はありがとう」
「承知しました」
貴族との付き合いに慣れているのだろう。商人は何事もなかったかのように部屋を出た。
侍従一人と私、そしてラーベだけが部屋に残るとラーベは椅子に深く座り大きく息を吐いた。さて何から問いただそうか。
「供もつれずに来たのか?一人で?」
「俺は今は街で遊んでいることになっているからな。お忍びってやつさ」
「踊り子と遊んでいるはずの
「はは、順に説明させてくれ」
軽薄な笑い声をあげたかと思うと次の瞬間にその声は重いものになった。
「俺たちが
「公女様を?どういうことだ?」
「今回の行幸を終えれば公女様はもう二度と
「それで大公殿下の使いのふりなんてしていたのか」
「用意した馬車に乗っていただく計画だったんだ。そういう
「私が断ったらどうする?」
「
「なぜそう言い切れる?」
「俺と同じだからさ。公女様に
言葉に詰まった。痛いところを突かれた気分だ。それと同時に一つわかったこともある。
「さっきの
公女様を慕っていた男は私一人ではない。当たり前の話だ。おそらくは
「その計画は公女様ご本人もご承知の上なのか?」
「驚いていただくのも思い出作りのうちさ。公女様は聡い方だ。わかってくださる」
公女様は
「あとで叱られたくないってなら見逃してくれるだけでいい」
若さゆえの衝動、青春の一頁。そこに私も加わる。心がくすぐられる。
「馬車を貸してくれ」
ぼくの物語にはどう書かれているのだろうか。私の選択は。
会話長いなあ。