僕のヒーローアカデミア トライアングルストライカーズ   作:たくtyan

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頑張って早めに書きました。


第三話「襲撃-③」

―保須市・江向通り4丁目―

 

「この辺りだ!」

 

 きりん含むヒーロー達が目的地に辿り着くと、そこにいたのはヒーローコスチュームを着た三人の学生と、そのうち一人である緑髪の少年を背中に背負っていたプロヒーローの青年、マントを着用したヒーローらしき小さな老人、そしてロープで身体を縛り付けられ、地面に伏せられていた負傷している男だった。

 

「エンデヴァーさんから応援要請承ったんだが…」

 

「子供?」

 

「酷いケガじゃないか。今すぐ救急車を呼ぶから!」

 

 ヒーロー達は目の前の子供達が怪我をしていたのを見て心配した表情を見せる。その一方で、きりんがロープに縛られていた男の方を見た瞬間に何かに気づいたのか表情を一変させた。

 

「皆さん、あれって…」

 

「えっ? まさか…」

 

 きりんの声に反応して皆が男の方を見る。

 

「ヒーロー殺し?」

 

「何?」

 

 男の正体を聞いて老人も驚愕する。ヒーロー殺しステイン。各地でプロヒーローが17人殺害、23人が再起不能になった事件の犯人であり、今世間から最も注目を浴びていると言っても過言では無い人物であった。

 

「すぐ警察にも連絡だ!」

 

 その後、警察への連絡、学生たちの安全の確認などプロヒーロー達はそれぞれ行動を始める。

きりんは彼らを手伝いながらGV、モルフォとヒーロー殺しについて話していた。

 

「アイツが例のヒーロー殺しステイン…」

 

「現代のヒーロー達を贋物と見なし、粛清と称してヒーロー達を殺害し回っている連続殺人犯、だったよね。」

 

「その認識で合ってるよGV。」

 

「この短期間で40人も被害を受けているわ。恐ろしい行動力と強さね…」

 

「直近ではインゲニウムが襲撃を受けてヒーロー活動を再開不可能なレベルの重傷を負ってる。自分の考えを世間に伝えたいからって、無関係な人達をあそこまで痛めつけたり殺したりするのはやっぱり間違ってるよ。」

 

「間違ってる、か…」

 

 きりんのステインを批判する発言を聞いてGVはかつての事を思い出す。この国の平和と未来のために一人の少女の力を利用し、全ての個性を管理しようと計画した少年。個性を持つ人間の自由を目指し、そのために無個性のいない世界を作ろうとした自分の師であり育ての親でもあった男。同じく自分たちを迫害してきた無個性の根絶のために組織を率いて日本を襲撃した少女たち。個性を人類の敵と考え、己の科学力だけで個性を排斥しようとした無個性の科学者の少年。そして個性を持つ人々の自由のためと称して敵対する者を次々と殺害していたかつての自分。誰もがそれぞれの思想や信条のために力を使って戦い、死んでいった。

 かつて第七波動(セブンス)と呼ばれていた力に誰もが振り回され、力を持つ者と持たざる者が対立してい

た混沌の時代、それがGV達の生まれた超常黎明期という時代であった。

 

(もし最初から戦うんじゃなくて、話し合いっていう手段を取れていたら…)

 

 GVは考えていた。戦うための手段を持たなければ生きることの難しい時代だったが、そんな時代だからこそ異なる者同士の対話が必要だったのではと、もし彼らの考えを汲み取り、聞いてあげることができればとGVはかつての自分の行いを酷く後悔していた。

 

(シアンやオウカにシャオ、ジーノ、モニカ、アシモフ。彼らと平和な世界で過ごせるようになってたのかな…)

 

「どうしたのGV。そんなにボーッとして。」

 

「ううん、なんでもな…」

 

「っ…伏せろ!」

 

「えっ?」

 

 きりんに返事しようとするGVの声を上空を見ていた老人の声が遮る。咄嗟にきりん達が同じく上空の方を向くと、エンデヴァーが追いかけていた筈だった翼付きの脳無が飛んでくる姿が見えた。

 

「敵!」

 

「あれはさっきの!」

 

「まだ逃げてたのか!」

 

 脳無は猛スピードできりん達の方へ向かっていき、そのまま至近距離まで近づいた瞬間自らの脚で緑髪の少年の身体を掴むと再び上空に飛び上がろうとする。ほんの一瞬の出来事だったため誰も反応することができず、きりん達は少年が攫われるのを許すことになってしまった。

 

「ちょっ…」

 

「緑谷君!!」

 

「緑谷ッ!!」

 

 少年を連れ去った脳無の左目からは血が流れ続け、その一部が一人のヒーローの頬にへばりつく。それを見たきりん達は脳無がダメージを負いながらもここまで逃げてきたことを感じ取った。

 

(この距離なら、まだ私の雷霆煉鎖でアイツのところに行ける…!)

 

 きりんは少年を助けるために護符を取り出し、脳無目掛けて投げようとする。だがその直前、脳無が急に動きを止め、次第に高度を下げていく。

 

「偽物がはびこるこの社会も、いたずらに力を振り撒く犯罪者も…」

 

 きりんの横を黒い人影が通りすぎる。その正体は先程までロープで縛られていた筈のステインだった。ステインは突然目覚めると、ヒーローの頬に付いていた血を舐めることで自らの個性「凝血」を発動させ、脳無の動きを封じていた。

 

「粛清対象だ」

 

 ステインは地面に落ちていく脳無に飛び掛かると、袖に隠していたナイフで頭を突き刺す。脳無はその衝撃で落下速度を更に上げ、そのまま道路に接触してしまう。その一方でステインは少年を小脇に抱えながら、脳無を下敷きにして着地した。

 

「ハァ…全ては…正しき社会のために」

 

 ステインがナイフを思い切り引き抜く。脳無はステインから逃れようと必死にもがいていたが、最終的に脳を大きく抉られたことで動きを止め、絶命した。

 

(あれが、ヒーロー殺しの実力… 拘束されている状態から私達が反応できない速さで敵を殺すなんて……)

 

 きりんはステインの恐ろしさに戦慄する。相手を確実に殺すための手段を熟知している知識量、それを行うための戦闘能力、技能、そして命を奪うことに何の躊躇いも無いその精神性。目の前の男がなぜヒーロー殺しと呼ばれているのかを、彼女はこの一瞬で嫌でも知ってしまった。

 

「少年を助けた?」

 

「バカ、人質取ったんだ!」

 

「躊躇なく人殺しやがったぜ!」

 

「いいから戦闘態勢とれ、とりあえず!」

 

 他のヒーロー達もステインに威圧されるが、ただ立っているだけでは自分達や少年も殺されると思ったのか、戦闘態勢を取って警戒する。きりんも錫杖に手を伸ばしていつでも刀を抜くことが出来る姿勢を取る。だがステインの真下に少年がいる以上下手なことはできず、その場で構えるしかなかった。

 

「なぜ一塊で突っ立っている!」

 

 きりん達の後ろから声が掛かる。皆が反応して声の方向に振り向くと、エンデヴァーが走って来ていたのが見えた。

 

「こっちに敵が逃げて来たはずだ!」

 

「あちらは、もう対処を!」

 

「多少手荒になってしまったがな。して、あの男はまさかの…」

 

「ハァ…ハァ……エンデヴァー……」

 

 エンデヴァーはステインの方を見る。ステインは脳無を殺した後、少年の身体を左手で地面に抑えたまま膝立ちでじっとしていた。

 

「ヒーロー殺し! やはりまだこの街にいたか!」

 

「っ…! 待て、轟!」

 

「うん?」

 

 攻撃を仕掛けようとしたエンデヴァーを何かを察知した老人が止める。その時、ステインが少年から手を離し、こちらを向いて立ち上がった。

 

「贋物……!」

 

 顔に巻かれていた包帯が解け、ステインの素顔が現れる。その容姿は鼻が削がれ、顔の皮膚も剥がされた不気味な物であり、それを見てしまったきりん達は皆言葉を失った。

 

「正さねば……! 誰かが、血に染まらねば……! 英雄(ヒーロー)を…取り戻さねば……!!」

 

 後ろから三日月がステインを照らす。月光の影響できりん達からは黒い人影と血の様に赤い眼光だけが見えていた。

 

「来い……来てみろ贋物(にせもの)ども!!」

 

 ステインがこちらに一歩踏み出すと、思わずきりん達も後ろに一歩下がってしまう。

 

「俺を殺していいのは…本物のヒーロー……オールマイトだけだ!!!」

 

 ステインを前にして全員が動かなかった。いや、動けなかった。彼の持つ信念と狂気が彼の姿を何十倍も大きく見えさせるほどにここにいるヒーロー達を委縮させていたのだった。それは一人で脳無を倒したきりんも、No.2ヒーローであるエンデヴァーも、100年前の超常黎明期を戦い抜き、何度も強大な相手を倒してきたGVも例外ではなかった。しかし、その威圧も長くは続かなかった。

 

カランッ!

 

 ステインの手からナイフが落ちる。その音に釣られて意識がハッとしたきりん達は再び彼を見ると…

 

「気を、失っている…」

 

 エンデヴァーの呟きの通り、ステインは既に失神していた。

 

「「ッ…!」」

 

「あぁ…」

 

「はぁ、はぁ…」

 

 エンデヴァーの言葉を聞いて安堵したのか、少年達はがくりと座り込んだ。老人も息を大きく吐き、一安心した様子であった。きりんも強張っていた身体を動かせるようになったが、額から冷や汗を大量にかき、息も少し荒くなっていた。

 

「大丈夫かい、きりん。」

 

「う、うん…私は平気だよ。GVこそ、大丈夫なの?」

 

「僕も問題ないよ。」

 

 きりんを心配してGVが声をかける。きりんはまだステインへの恐怖が残っていたのか、どこか不安そうな声で返事をした。

 

(あれがヒーロー殺し…。暴龍とは違う、確固たる意志で犯罪を続けてきた敵…。)

 

 この後、通報を受けてパトカーが来て失神していたステインを連れて行った。きりんとGV、モルフォは救助活動を終えたBB達と合流し、彼らに容態を心配されながらも無事に事務所へ戻っていった。

 

 

 

 

 

―保須市・ビル屋上―

 

「ふざけんじゃないよ…!!」

 

 双眼鏡できりん達を見ていた体中に手の形のオブジェを着けた青年、死柄木 弔が怒りの声を上げる。

 

「何殺されてるあの脳無…! 何であのガキどもがいる…! 何で脳無があんなガキにやられてる…!」

 

 死柄木は現状に対する怒りをしきりに言う。傍にいた全身が黒い靄のような物で構成された男、黒霧はそれを黙って聞いていた。

 

「言いたいことが追いつかないぜ…無茶苦茶だ!! 何で、思い通りにならない…!」

 

 死柄木は怒りが収まらないのか、首元を掻き毟る。

 

「帰るぞ、黒霧」

 

「わかりまし「待て」!?」

 

 ひとしきり首元を掻いた死柄木が黒霧に話しかけるが、後ろから知らない声が聞こえて二人は驚愕する。慌てて後ろを向くと、そこにいたのはビルを次々と飛び乗ってここに来たアキュラとRoRoだった。

 

「誰だよ、お前」

 

「俺の質問に答えろ、敵連合」

 

「ふざけんな、何で俺があんたなんかの質問に…」

 

カチャッ!

 

「なっ…」

 

「大人しく答えた方が身のためだ」

 

 アキュラの質問を拒否しようとした死柄木だったが、アキュラは拳銃を取り出して死柄木に向けて構える。黒霧はアキュラから逃げる手段を持っていたが、下手なことをしたら死柄木が撃たれると考え、その場を動かなかった。

 

「ちっ…わかったよ。で、何が聞きたい?」

 

「俺から聞きたいことは全部で3つだ」

 

「多いな…さっさと終わらせろよ」

 

 死柄木は質問の数に苛立つが、俄然拳銃を向けているアキュラを前に答えるしかなかった。

 

「一つ。脳無を放ったのはお前たちか?」

 

「そうだよ。脳無で町を滅茶苦茶にしようとしたのに、ヒーロー殺しが邪魔しやがった」

 

「二つ。バタフライエフェクトはどこにある?」

 

「バタフライエフェクトだと? そんなものは知らん」

 

「…分かった」

 

 死柄木は別に答えてもいいと判断し、アキュラからの質問に淡々と答える。

 

「最後の質問だ。AFO(オールフォーワン)は今どこにいる?」

 

「なっ!? お前、先生のこと知って…!」

 

「答えろ、死柄木弔」

 

「俺が先生のことを言うわけないだろ!」

 

「奴のことは流石に言わないか。なら無理矢理吐かせてもらう!」

 

 アキュラは拳銃のトリガーを引き、ピンク色のビームを数発発射する。どのビームも致命的な箇所を狙っている訳ではないが、それでも当たったら大怪我は免れない。

 

「ヤバッ…!」

 

「…行きなさい!」

 

「了解した」

 

 ビームが死柄木の身体を貫こうとしたとき、黒霧の手が彼の近くまで伸び、その手が拡大していって黒い穴を作り出した。穴が人間大の大きさまで広がった瞬間にそこから女性が一人飛び出し死柄木の前に立つ。女性は身体全体をマントで覆い、頭の上半分を鬼のようなマスクで隠しており、マスクの後ろからは長く伸びた金髪が出ていた。

 

「これしきの銃撃など。はっ!」

 

 女性は持っていた一振りの刀を構えると死柄木に迫ってくるビームを全て刀で弾く。弾かれたビームは刀に当たった瞬間に消滅し、死柄木に一発も掠らなかった。

 

「貴様も敵連合だったか、ブレイド!」

 

「あの方と死柄木弔を守り、仇なす者を一人残らず斬ることが私の使命だ、イクス」

 

 ブレイドは冷徹な口調でアキュラに向かって話す。その間にも、死柄木は黒霧が展開した黒い穴に入ろうとしていた。

 

「待て!」

 

「近づけさせるか!」

 

 死柄木に向かおうとブリッツダッシュで突き進むアキュラをブレイドが刀から電撃を出し、アキュラに命中させる。電撃を受けたアキュラはダッシュを止められてしまい、膝を付いてしまう。

 

「今の俺は気分が悪い。帰るぞ、黒霧、ブレイド」

 

「わかりました」

 

「次に会うときは必ず貴様の首を斬る。さらばだ、イクス」

 

 死柄木について行く形で黒霧、ブレイドも穴に入っていく。ブレイドの姿が見えなくなった瞬間、穴は消失し、ビルの屋上にはアキュラとRoRoだけが残った。

 

「逃げられたか…」

 

『まさか、カゲロウを無効化されるなんて…』

 

 RoRoがブレイドが攻撃を無力化するカゲロウを貫通して攻撃をこちらに命中させたことを不思議に思う。

 

「俺たちも帰るぞ、RoRo」

 

『りょーかーい』

 

 アキュラはビルからビルをブリッツダッシュで次々と飛び乗り、自分達の拠点へと戻った。




ブレイド

 死柄木に仕える謎の女性。敵連合の一員であり、敵連合や「あの方」の存在を嗅ぎまわる者を始末するのが使命。過去に拠点を攻撃したアキュラと遭遇し、戦ったことがある。USJには別の任務中で来ていなかったが、もし来ていたらA組はおそらく全滅していた。

次回保須市編エピローグです。お楽しみに
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