伊平屋島沖、そこには三好艦隊とリー中将の米主力戦艦部隊が大規模な艦隊決戦を行っていた。しかし、三好艦隊の艦娘や帝国海軍軍人達は左舷に傾斜する『武蔵』を見て驚きを隠せなかった。
「ムゥッ!?」
「……信じられないかもしれないわね」
「あの『武蔵』が!?」
そして米艦隊も行動を停止した『武蔵』を見て歓喜の声をあげていた。
「やりました!! 敵モンスターは活動を停止!! 左な大きく傾いて完全に沈黙しています!!」
『………いやったァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!! モンスターを仕留めたぞォォォォォォォォォッ!!』
他の者達が喜ぶ中、ディヨー少将は深い安堵の息を吐いた。リンガエン湾で謎の戦艦と交戦したオルデンドルフ少将から話を聞き、実際に目にするまでは自信も無かったが強敵は倒れると証明したのだ。その様子にリー中将はディヨー少将の肩に手を置く。
「よくやってくれたディヨー君。神が君という天才を遣わしてくれなければ我が軍はもっと手酷い損害を被るハメになっていただろう」
「リー中将、恐れ入ります」
「さて……それではモンスターにトドメを刺してやるとしよう」
リー中将はそう言って笑みを浮かべる。
「全艦返針!! これよりJAPの残存艦隊を殲滅する!!」
そして米艦隊が返針しようとした時、航空部隊が到着した。被弾した空母の修理を終わらせたミッチャー中将の機動部隊からの攻撃隊だったのである。
「ミッチャーの航空部隊か……今頃ノコノコと……良いかァァァッ!! 何としてもトドメは我等戦艦部隊の手で刺すのだ!! 航空部隊なぞに手柄を拐われるなァァァ!!」
『イエッサー!!』
リー中将の命令は米戦艦部隊を勢いづかせるのである。そして三好艦隊も飛来した航空部隊に誰もが顔を歪めるのである。
「対空戦闘用意!! ボヤボヤするな!! まだ戦闘中だ!!」
「『陸奥』と『伊勢』が敵『Iowa』級と『ノース・カロライナ』級6隻に攻撃を集中しています!!」
戦艦『長門』艦長の杉野大佐はそう叱咤をする。すると後方にいた『陸奥』『伊勢』が砲撃を開始した。『陸奥』が照準したのは『Iowa』級だった。『陸奥』は主砲に50口径46サンチ連装砲×4(試製46サンチ連装砲)を搭載しており『Iowa』級には十分対抗出来る戦力であった。また『伊勢』も50口径41サンチ連装砲4基(41サンチ連装砲改二)を搭載しているので『ノース・カロライナ』級等にも十分対抗出来るのである。
咄嗟の陸奥の判断に杉野艦長は素直に感謝の言葉を述べるのである。
「有り難い……『陸奥』と『伊勢』が敵の主力を引き受けてくれるか。ようし、このスキに我々は残りの敵を始末するぞ!! 駆逐艦は『陸奥』と『伊勢』を敵航空戦力から護衛しつつ隙があれば酸素魚雷を叩き込め!!」
「は!!」
そして『長門』の周囲に砲弾が着弾し複数の水柱が噴き上げる。砲撃してきたのは『サウス・ダコタ』や『インディアナ』であった。
「うぬッ!?『サウス・ダコタ』か、小癪な!! 此方も砲撃開始だ!! 照準は敵『サウス・ダコタ』級だ!! 『霧島』『金剛』に重巡部隊も我に続け!!」
『長門』らも砲撃を開始し、日米両艦隊は再び艦隊決戦を始めるのである。先に動いたのは『霧島』であった。『霧島』の周囲に40サンチ砲弾が落着すると霧島は直ぐに発令した。
「クッ!! もっと肉迫するわよ!! この距離では私の35.6サンチ砲は敵の40サンチ砲に通用しないわ!!」
「速度、第四戦速!!」
「金剛お姉様に発光信号!! 『我二続ケ』!!」
『霧島』は『金剛』を従えて敵戦艦『インディアナ』との距離を詰めるのを杉野艦長は見ていた。
(味方もよくやっているが……火力の差は歴然か!! 全て40サンチ砲装備の敵新型戦艦部隊と曲がりなりにもやり合えるのは『武蔵』『武蔵』『伊勢』を除けばこの『長門』だけだ!! しかもその戦力差を埋める筈の水雷戦隊は『陸奥』『伊勢』を守り、航空機に阻まれて突撃出来ん……だがどの道、この海戦に敗れれば我が日本に明日は無い!!)
「先頭の艦に砲撃を集中!! 敵の砲撃は全てこの『長門』が引き受ける!!」
『長門』は更に砲撃を続け自艦に砲撃が集中するようにするのである。その様子を戦艦『インディアナ』艦長のトーマス・J・ケリハー大佐が『インディアナ』艦橋から見ていた。
「フッフッフ……JAPの艦隊め、モンスターを沈められて焦っているな……」
「そのようですな。それに16インチ砲を搭載しているのは先頭の『ナガト』だけです。残りは全て14インチ砲の旧式艦ばかりですなぁ」
「……フッ、コイツは面白いッ」
副官の言葉にケリハー大佐はニヤリと笑みを浮かべる。
「旧式の敵戦艦は本艦と『マサチューセッツ』が始末する!! 他艦は纏まって『ナガト』に当たれと伝えろ!!」
「イエッサー!!」
「さぁて……楽しませてもらおうかJAP。少しはホネのある所を見せてくれよなぁ?」
「第三射撃、準備完了!!」
「宜しい、ファイヤー!!」
そして『インディアナ』は『マサチューセッツ』を従えて『霧島』に砲撃を開始する。その砲弾は『霧島』の周囲に落着する。
「クッ、罐室!! もっと速力を出すのよ!! 優速を利して敵に肉迫、四式徹甲弾を叩き込むわよ!!」
「第四射、用意宜し!!」
「撃てェェェェェェ!!」
『霧島』の前部二砲塔が射撃をする。砲弾は大重量砲弾の四式徹甲弾であり、砲弾2発が『インディアナ』に命中するも1発は角度により跳ね返され、もう1発は装甲に阻まれ左舷両用砲を2基破壊するのに留まるのである。
「フハハハ……効かん!! 効かんぞォ!! フハハハ!! 敵の14インチ砲弾はちょっとやそっとでこの『インディアナ』に通用せん!! 当たり前だよな、この『インディアナ』の装甲は自艦と同じ16インチ砲弾にも耐えうるよう設計されているのだからな!!」
ケリハー大佐は周囲の副官や自身にそう言い聞かせるように叫ぶ。
「砲手、よく狙え!! 焦る事はないぞ、どうせ敵の砲弾は効きゃせんのだ!! 旧式の『コンゴー』級なんぞ蜂の巣にしてしまえ!!」
その勢いなのか『インディアナ』が砲撃すると1発が『霧島』の水上機が鎮座していた飛行甲板に命中、火災が発生する。
「飛行甲板火災発生!!」
「消火急げ!! 下駄履きは投棄しろ!!」
妖精達が慌ただしく動き回る。妖精さんのパゥワーにより火災は直ぐに小規模になるが『霧島』が被弾したのは事実である。それを見たケリハー大佐はニヤリと笑う。
「フハハハ!! どうした、どうしたーー!!! これしきで沈んでしまっては張り合いが無いぞJAP!!」
「敵弾を恐れないで!! 速力と気合は『霧島』が上よ!! 一万メートルまで肉迫すれば35.6サンチ砲にも勝機はあるわ!! 怯まないで、両舷全ソォォォク!!」
「両舷全速!!」
『霧島』は三斉射をし三斉射とも命中弾を得るが、そこまでのダメージではなく逆に『インディアナ』からの砲撃で3発が命中、霧島は中破姿となる。
「ククッ!?」
「霧島さん!? ち、畜生!! 火力の違いはどうしようもないというのか!!」
艦橋にいた尉官妖精はそう叫ぶ。その尉官妖精は史実の最期にも従軍しており蘇る記憶に思わず呪うしかない。炎上する『霧島』にケリハー大佐は高笑いをする。
「フハハハハハハ!! 効かん、効かんなァァァァァァ!! 往生際が悪いJAPが!! ボチボチ死んでみるかァァァァァァ!! フハハハハハハ!!」
もう勝利は目前であり『霧島』を片付けたら後続の『金剛』に照準をと思っていた矢先であった。これまでとは違い、『霧島』らより重い砲声が聞こえてきたのである。
「ッ!?」
ヒュルヒュルと空気を切り裂き滑空音と共に『インディアナ』の後方にいた『マサチューセッツ』の周囲に3発の砲弾が落着、水柱を噴き上げる。水柱が収まったと思ったら再度砲弾が降り注ぎ、1発が水柱となるが2発が『マサチューセッツ』に命中したのである。しかもそのうちの1発は艦橋に突き刺さり爆発、『マサチューセッツ』は右舷に傾斜を始めたのである。
「な、何ィィィィィィィ!?」
「マ、『マサチューセッツ』が大破!? 右舷にゆっくりと傾斜しています!!」
その驚愕は日米両軍であった。霧島と杉野艦長は突然の『マサチューセッツ』大破に驚愕したのである。
「ば、バカなバカな!? 敵はそんな大口径砲は持っていない筈だぞ!!」
ケリハー大佐の求めた答えを解答したのは見張り員だった。
『六時の方向に新たなる敵戦艦出現!! 超弩級です!!』
「なッ………」
六時の方向の水平線にポツンと小さいゴマ粒が見えた。それがドンドンと近づいていくと数隻の艦艇が見えてきた。しかし1隻は明らかに巨大な戦艦であり正しく黒鉄の城でありそれは開戦劈頭、日本海軍の期待にこたえるが為に就役した戦艦であった。
「『大和』!?」
「『大和』だ!!」
「『大和』が!?」
「『大和』が!!」
『来てくれた!?』
それは坊ノ岬沖海戦で中破以上大破未満の損傷を負いながらも護衛の駆逐艦と共に奄美大島に退避し応急修理をしつつ沖縄に到着した第二艦隊旗艦『大和』であった。
「『ヤマト』ォォォォォォォォォォォ!?」
ケリハー大佐は新たな戦艦——『大和』の出現に驚愕するしかなかった。情報だと『大和』の主砲は18インチ砲ではないかと……。そして『霧島』艦橋では中破により服装がボロボロになりながらも霧島は笑みを浮かべた。
「……どうやら……間に合ってくれたみたいね」
それは『大和』の艦橋でも同じであった。第二艦隊司令長官の宇垣中将も同じく笑みを浮かべていた。
「……どうやら、間に合ったようだな有賀よ」
「はっ、これでやっと先発していった各艦隊にも面目が立ちます」
「これで坊ノ岬沖で死んでいった兵達や損傷して帰還するしかなかった『矢矧』達の仇も討てるな」
宇垣中将の言葉に『大和』艦長の有賀大佐は頷き参謀長の森下少将も頷くのである。
「ウム!! 存分にやらせてもらうとしようか!!」
そして『インディアナ』艦橋でもケリハー大佐は何とか衝撃から立ち直り、砲撃を続行させるのである。
「えぇい、構うものか!! 皆纏めて海底送りにしてやる!!」
しかし、『大和』から再度放たれた砲撃——四式徹甲弾は大破していた『マサチューセッツ』に命中、『マサチューセッツ』は大爆発を起こしながら轟沈するのである。『大和』が出現した事で沖縄沖海戦は更に混沌になるのであった。
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