カクリヨ・レヴナント   作:華月 珠音

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 今日から第二章の始まりとなります。
 何事もなければ週3で投稿していくので、よろしくお願いします。


第二章:その手に握るもの
プロローグ:畏怖の対象


 玉座の間に集った重鎮は、みな一様に不安げな表情をしていた。

 跪き、頭を垂れていても、彼らが今にも逃げ出してしまいそうなほど慌てているのが分かる。

 自分もそうだ。

 その報せを聞けば、誰だってそうなる。

「妖刀『熾葉』が目覚めたとは本当ですか?」

「さようでございます」

 都の中心、国の要である宮殿の最奥にて。

 玉座に座る少女の問いかけに、御簾を挟んで向かい合う男は額を床に擦りつけながら答える。

 肯定した男の言葉に重鎮たちは口々に言葉を交わす。

「なぜ目覚めたのだ。先の震災が関係しているのか?」

「今になってか? だとすれば遅すぎる」

「……とうとう天羽の小娘が謀反を企てたか」

 誰が言いだしたか。その発言を境に、重鎮たちの口からは謂れのない非難が噴出する。

 しかしそれは、少女が片手を上げたことで一瞬にして静まり返った。

「結論を出すには手掛かりが少なすぎます。他に園から報せは無いのですか?」

「一点ございます。どうやら近頃、新しい使用人を雇ったとか」

「新しい使用人……?」

 不思議な話ではない。

 泡沫の園の主———天羽(あまのは)久遠(くおん)は己の職務を忠実に全うしている。故にある程度の権利は認められており、使用人の雇用や解雇などは彼女の意志に一任されている。

 だが、同時期に熾葉が目覚めたとなれば話は別だ。

「その使用人の素性は把握しているのですか?」

「いえ、そこまでは———」

「なぜ把握していない! 情報を集めるのが貴様の役目であろう!」

 男の失態を認めた途端、重鎮の一人がここぞとばかりに糾弾にかかる。

 追随する他の重鎮たちに少女は小さく嘆息。

 ……本当に変わらない人たちだ。

 国の平安よりも自分の保身、己の義務より己の権利、最低限の義務を果たしただけで大きな顔をするような人種ばかり。

 まるで池に落とされた餌のように四方八方から食って掛かられる男は、それでも不満一つ零さずに無言を貫いている。

 報せを届けに来たこの男の方がよほど真面目だ。

「分かりました」

 少女は言った。ただそれだけで、広い間に響いていた騒々しさが鳴りを潜める。

「あなたの働きに感謝します。もう下がって良いですよ」

「は」

 男は立ち上がって恭しく一礼し、音もなくその場を去った。

「いかがいたしましょう」

「ふむ。まずは本人に話を聞きましょう。天羽久遠と件の使用人を召喚します。使いの者を」

「かしこまりました」

 傍に控えていた侍従の一人が去っていく。

 五日後、遅くとも一週間後には泡沫の園に報せが行くだろう。

「よろしいのですか? 万一天羽が良からぬことを企てていたら———」

「宮の警備は厳重です。熾葉を手中に収めていようとも、勝手な振る舞いは出来ないでしょう」

 ……それに、天羽久遠が裏切るとは考えにくい。

 彼女の実力は確かに恐ろしい。だからといって力に溺れるほど弱い人間では無いことは知っている。少なくとも自分が帝位についた時から園の役目を———熾葉の管理と守護を全うしている。

 問題は新たな使用人の方だ。十中八九、熾葉と何らかの繋がりがある。

 ……見極めなければ。死すべき者か、否かを。

「みなも下がりなさい。この件は国の将来に関わります。懸命な働きを期待していますよ」

 御簾の奥、玉座の上で。

 叢雲国の頂点に君臨する帝の少女は、厳かに告げた。

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