ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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外郭図書館、後日談

セブン協会本部 協会長室

 

数時間後、図書館から戻った三人――トランセンド、フリオーソ、デュランダル――は、揃って床に正座させられていた。

 

正面には、額に青筋を浮かべたセブン協会南部支部長、エアシャカールが仁王立ちしている。

 

「……つまり、てめぇらは調査という名目で図書館に行ったのにも関わらず、ついで感覚で図書館の司書とバトルしてきたってことでいいんだよな? あっ?」

 

「……あはは……まあ、そうなるかな……」

 

トランセンドが苦笑いを浮かべると、エアシャカールの眉間の皺がさらに深くなった。

 

「何やってんだトラン!? 図書館で負けたら本にされるっていうのは知ってる癖に、なんでそんな危険な真似をやろうとした!?」

 

「いやほら……図書館の運営方針が変わったっていうのは、ディエーチのロブロイさんから聞いてたから……ワンチャン負けてもだいじょぶかなって……」

 

「そんな保障がどこにあるってんだ! ったく、フリオもフリオだ。いくら流されたからって言っても、上司の暴走を止めるのが秘書の仕事だろうがよ」

 

「はい……申し訳ありません……」

 

フリオーソは深く頭を下げる。

エアシャカールは舌打ちこそしなかったが、明らかに呆れていた。

 

「あと、デュランダルは1回センク協会に戻って協会長のヒシアマゾンに叱られてこい。あいつ、カンカンだったぞ」

 

「は、はい……ご迷惑おかけしました……」

 

デュランダルまで肩を落とす。

いつもの凛々しい姿はどこへやら、今は完全にしおれていた。

 

その様子を、応接椅子に座って見ていた本部長のビリーヴが、静かに口を開く。

 

「ひとまず説教はその辺りにしておきましょう。三人とも十分反省したようですし。ただし、協会長とフリオーソさんは、しばらく勝手な行動はしないように。あと、ハナ協会と頭への報告書もしっかり書いてくださいね?」

 

「はーい……」

 

「分かりました……」

 

ビリーヴの穏やかな声には、逆らいがたい圧があった。

エアシャカールが荒っぽく叱り、ビリーヴが締める。

それがセブン協会本部の、いつもの空気でもあった。

 

「それと、デュランダルさんはそろそろセンク協会に戻った方がよろしいかと。ヒシアマゾン協会長の堪忍袋の緒が切れるのも時間の問題でしょうし」

 

「そ、そうね……じゃあ私は失礼するわ……」

 

デュランダルが立ち上がり、項垂れたまま退室する。

 

「……じゃあトランもさっさと仕事始めろよ。オレは南部支部に戻るが……次はねえぞ?」

 

「わかったよん……」

 

エアシャカールも退室し、部屋にはトランセンドとフリオーソ、そしてビリーヴだけが残る。

 

「では、僕も仕事に戻りますので失礼します」

 

「分かりました。……ほら協会長、私たちも仕事始めますよ」

 

「そうだね。よし、切り替え切り替え」

 

ビリーヴが出ていき、しばらくして本部長室には紙の擦れる音だけが残った。

 

---

 

セブン協会本部長室

 

本部長室に戻ったビリーヴは、ひとまず自分の仕事に取り掛かる。

 

「やれやれ……協会長も自重を覚えて欲しいものなんですけどね……」

 

その時、ノックの音がした。

 

「どうぞ」

 

扉が開き、セブン協会西部支部長のフォーエバーヤングが、軽やかな足取りで入ってくる。

 

「やっほー本部長!」

 

「ヤン子さんじゃないですか。どうしましたか?」

 

「協会長たちがあの外郭の図書館に行ってきたって聞いたから、西部支部から飛んできたの! アタシとしても図書館については滅茶苦茶興味あるからさ!」

 

ビリーヴは、書類を片手にため息をつく。

 

「言っておきますけど、しばらく調査は許可しませんよ。調査のみという名目だったのにも関わらず、フリオーソさんとセンク協会のデュランダルさんが図書館で戦ったそうなので」

 

「まじ!? そんなことしたの!? やばくねフリオーソさんにデュランダル本部長……図書館側の相手は誰だったの?」

 

「ローランさんみたいですよ。あの伝説の元1級フィクサーの」

 

「ローランさんと!? いいな〜! アタシ、黒い沈黙のアンジェリカさんに憧れてフィクサーになったっていうのに……! その跡を継いだ2代目黒い沈黙のローランさんと戦ったなんて滅茶苦茶貴重じゃん!」

 

「ローランさんの二代目という称号は、非公式ですけどね」

 

「うわ〜……アタシも行きたかったな図書館……協会長たちやデュランダル本部長が羨ましいな〜」

 

ビリーヴは、少しだけ苦笑する。

 

「僕としては、デュランダルさんには止めて欲しかったんですけどね。……まあ、あの人の性格ではあっさり丸め込まれるのがオチでしょう」

 

フォーエバーヤングは、それを聞いて楽しそうに笑った。

 

「えなになに? 本部長、デュランダルさんと知り合いなの?」

 

「昔、快速事務所というフィクサー事務所にいた頃の同僚なんです。シ協会西部支部長のカルストンライトオさんも一緒でしたね」

 

「へー、そんな関係だったんだ」

 

「まあ、そこそこ長い付き合いですので、あの人の性格とか行動指針は理解しているんです。おおかた、ローランさんの剣のデュランダルと刃を交えられるって唆されたんでしょうね」

 

「なるほどね〜。……そういえばシ協会のカルストンライトオ支部長も、とにかく直線と速さに拘るかなりの奇人って聞くけど、あの人とはどういう関係なの?」

 

ビリーヴは、少しだけ書類を置いて答えた。

 

「まあ、振り回されることも多かったですが、満更ではありませんでしたね。なんだかんだあの2人との任務の日々は楽しかったですし。別々の協会に行ってからも、時々集まったりします。ライトオさんも、ああ見えて自分のことは理解してる方ですし」

 

「へえ、良い関係じゃん。アタシは昔はフリーランスのソロでやってきたからさ、誰かと仕事するっていうのはセブン協会に来てからが初めてなんだよね。どこの事務所もなんなーく合わなかったからさ。駆け出しの頃にそういう経験があるっていいことだと思うよ」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

ビリーヴは静かに頷く。

そして、窓の外へと視線を向けた。

 

図書館は外郭へ追放された。

ローランも、アンジェラも、そしてあの図書館そのものも、今は都市の外で息をしている。

 

だが、そこへ足を踏み入れた者たちには、確かに何かが残っていた。

 

興味。

恐れ。

そして、ほんの少しの羨望。

 

都市は情報で回る。

そして、情報は好奇心から生まれる。

 

だからこそ、セブン協会の者たちは、これからも何かを知ろうとするのだろう。

危険でも、面倒でも、時には説教を食らってでも。




トランセンド

セブン協会協会長。
情報収集と分析に長けた、軽妙で掴みどころのないウマ娘。
戦闘力は控えめだが、情報の精度では都市でも屈指。

フリオーソ

セブン協会東部1課所属の2級フィクサー。
トランセンドの秘書兼護衛。
今回は完全に巻き込まれた側だが、責務を果たそうとする真面目な性格。

エアシャカール

セブン協会南部支部長。
理論と数字を信じる現実主義者。
不確定要素を極端に嫌うため、トランセンドの無茶が特に苦手。

ビリーヴ

セブン協会東部本部長。
丁寧で常に妥協しない仕事人。
尖りはないが、安定感と持続力に優れた器用万能型。

フォーエバーヤング

セブン協会西部支部長。
イノベーションを掲げる発想型のウマ娘。
常識を飛び越える思考と軽快なテンションで、協会内でも異彩を放つ。
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