今回もアニメ4期範囲のネタバレをサービスサービスゥ!
またラインハルトに関する独自設定、独自解釈がふくまれています。ご留意ください
純白が拓けた先に現れた無数の書架。そこにある全てが『死者の書』である。
「とりあえず目的には辿り着けた。後は目当ての本を探して帰るだけだ」
そうは言ったものの目の前に並ぶ本の山。ここからある一冊を探し出せなんて砂場に埋もれた宝石を探せ、みたいなものである。さらにその宝石の見た目が砂と変わらない。
この書庫の創造主は性格が破滅している。それはもう壊滅的に。
「あ〜お師様、それは無理ッス」
「は?」
スバルの考えに釘が打たれる。
「無理って言うのは……」
「ここに入っちゃった以上、試験を解き終えない限りここから外には出れないッス」
「仮にだけど出ようとしたらどうなる?」
「あーしが容赦なく皆さんをブッ殺すキリングマシーンになるッス!!!」
「ホントにお前のお師様性格終わってやがる」
到達の難易度も不可能レベルに高く、更に外出も禁止ときた。この塔を作った奴の性格の悪さの天元突破が止まらない。
「他にも決まりがあるのかい?」
「あるッスよ。一、『試験』を終えずに去ることを禁ず。二、『試験』の決まりに反することを禁ず。三、書庫への不敬を禁ず。四、塔そのものへの破壊行為を禁ず。五……あー、五はないッス」
「全部で4つか」
二つ目の決まりがよく分からない。さっきの試験でそれらしいものがあっただろうか。少なくともスバルに心当たりはない。
分からないことはしょうがない。スバルはそう開き直った。
「ってことは書庫を漁るよりも試験の突破を優先した方がよさそうか?」
「僕もそう思う。そこで二層へ行ける階段なんだが………」
見渡す限り本と棚。上に登れる階段なんてものは何処にも見当たりやしない。
「おい、シャウラ。何処から二層に上がればいい?」
「あーし四から上に上がったことないッス」
頼りになりそうだった原住民はこの有り様である。
仕方なくスバル達は総出で階段を探す羽目になった。
〜〜〜〜〜
「ホンット、この塔作った奴の性格ゴミすぎるだろ!!!」
堪えきれない怒りが口をついて噴出する。
二層に続く階段。それは三層ではなく四層の空白スペースから伸びていたのだった。
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「これ無理じゃね?」
頭がクラクラするような本の山。そこにある確証もない『エメラダ・ルグニカ』の本。たった一つのそれを求めてフェルトとクロムウェルはここに連行された。
階段が見つかってから、フェルトとクロムウェルはここで探し物をさせられている。協力する義理なんて無かったのだが、一生ここで過ごせなどフェルトには受け入れられない。
『徽章』を売り払った金でロム爺とあの息苦しい貧民街から抜け出したのに、ここで幽閉などまっぴらごめんだ。
「『テュフォン』に『ミネルヴァ』、こっちは『バルロイ・テメグリフ』………誰だ、コイツら」
知識がないのか何なのか、フェルトにはさっぱり分からない。
しばらく後…
「………あったぞ」
クロムウェルが一冊の本を手に、フェルトに話しかける。
その背表紙には『エメラダ・ルグニカ』と確かに刻まれている。
「ホントか?!!!やっと終わった〜〜!!!!」
はしゃぐフェルトをそのままにクロムウェルは何の気なしにパラッと本を開いた。
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「あぁ、長ぇ………」
二層『エレクトラ』へと向かう階段を登る最中である。三層を飛び越えて伸びているのだから当たり前なのだが、見上げる度に気が滅入る。
「お師様ガンバッス!!」
「こうなってる原因もお前のお師様なんだけど」
大人しく帰らせてくれるならスバルは一秒でも早く書庫を漁り、目当てを見つけて帰りたい。こうしている間にレムやラムが無事である保証はどこにも無いのだ。
そのためにもできるだけ早く試験を終わらせなければならない。
そう思うスバルの視界を白い光が出迎える。
それは三層のそれと同じであり、二層への到達を感じさせた。
長い長い階段を登った先に待ち受けていたもの。
それは………
「今度は『剣』か」
鞘のない抜き身の剣が一本。先端を地に突き刺され立っている。
「これが……あ〜やっぱ何でもない」
「何ッスか?!お師様!焦らされるのは好きッスけど、辞めて欲しいッス!!」
「好きなのかよ!…これが試験ってことでいいのか?」
「分かんないッス!!!!」
「だと思ったから辞めたんだよ!」
スバルとエミリアとラインハルト、シャウラは白に包まれる。二層の試験が幕を開ける。
スバルは突き刺された剣の柄を掴み、上へと引き抜く。
『ーー天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ』
三層と同じ声が脳に響く。
「ーー天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ」
同じ言葉が繰り返される。
「ーー天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ」
同じ声が鼓膜を打つ。
スバルは声のする方向を見やる。
燃えるような赤い長髪、防御に何の役にも立たない紅の着流し、左目を覆う不細工な文様の眼帯。
筋骨隆々のその肉体は流麗で、その瞳の空色はまさしく雲一つない天空のそれである。
その場を圧倒する絵画のような美貌。
その全てを野蛮で残酷で野獣のような狂気の笑みが台無しにする。
「彼は………」
ラインハルトがそっと口を開く。
「『レイド・アストレア』」
『剣聖』ラインハルトは確かにそう言った。
世に語られる三英傑であり、ラインハルトの先祖である。無論彼は既に死んでいる。四百年前の人物なのだから当然のこと。
「――天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ」
燃えるような烈火の如き長髪。レイド・アストレアは機械のようにその言葉を繰り返す。
ピリピリとした空気の中、「ひ」というシャウラの呻き声が聞こえる。トスンという音とともにシャウラが尻餅をついた。
「ひ、ひ………」
分かりやすい程に目を白黒させ、動揺が手に取るようにわかる。心中に狂乱の嵐を巻き起こし、シャウラは目の前の存在に、怯えている。
「――天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ」
一歩も動かずにレイドはただ立っているだけ、同じ言葉を機械のように繰り返すだけでその場にとんでもない威圧感を放っている。右手に引き抜いた剣を持ったまま、スバルはじりじりと後ずさる。
「――天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ」
前方から放たれる炎のような威圧感とスバルの左側から冷気の圧迫感を感じる。
「――天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ」
「――天剣に至りし愚者、彼の者の許しを得よ」
機械に狂いが生じた。
「――天剣に至りし愚者、彼の者の……ゆる、しを……」
「あ?」
「天剣、愚者の……許し、をぉ……あ、ああお、おーおー、あー」
「あ、あ、ああああああ――ッ!!」
レイドの不調は頂に達する。レイドは狂った頭に手を当てて、髪を掻き毟りながら絶叫した。
その絶叫で限界に達したシャウラがスバルの右手にしがみつく。突然のしかかる成人女性分の重みにスバルが耐えられるわけもなく、その場に倒れた。
「ひやぁぁぁ! お師様お師様お師様助けてぇっ! いやッス! 助けてぇ!」
「――るっせえぞ!! 二日酔いの頭に響くンだよ! 喚くンじゃねえ!」
「ふっ………………」
スバルが言葉をかけるより早くシャウラはあまりのショックに失神する。グルグルと白目を剥き、シャウラはその場に倒れ込んだ。
「マジか、お前………」
ご丁寧にシャウラは泡まで吹いている。一目瞭然とはこういうことだろうか。
「『レイド・アストレア』で合っているだろうか」
「なンだ、オメエ。つーか、ここどこだ。ふざけてンのか、オメエ」
「ふざけてなどいない。僕はラインハルト・ヴァン・アストレア。貴方の子孫だ」
「やっぱりふざけてンだろ、オメエ。オレの子孫ならもっとオレ似の顔付きしやがれや、オメエ」
思っていたことを言ってくれたレイドにこの一瞬だけはありがたく思う。
「男、エロい女、雑魚、いいお………」
言葉をつづけようとしたレイドの言葉が詰まる。
「待てや、オメエ。なンでここにいやがンだ、オメエ。……いや、オメエ…あいつじゃねえな、オメエ。ややこしい面してンじゃねえよ、オメエ」
レイドのいう『あいつ』が誰のことなのかスバルはわからない。わかりそうな奴は泡を吹いて倒れてしまった。
「おう、オメエ。説明しろや。なンだ、ここ。オレに何してくれてンだ、オメエ。上等くれてンじゃねえぞ、オメエ。ちゃきちゃき話せや、オメエ。あと、そこの女何だ、ややこしい面してンじゃねえぞ、オメエ」
「いきなり現れて、随分偉そうだなお前」
「あぁン?」
はだけた胸元に手を突っ込み、レイドは自分の胸を掻き毟る。
「なンだ、オメエ。何寝てンだ、オメエ。いいご身分かよ、オメエ。エロい女侍らせて肉布団ってか、オメエ」
シャウラに抱きしめられた腕をスッと抜き、スバルは震える足で立ち上がる。突破しなくていいのなら今すぐにでも立ち去りたい。けれど、そうはいかせてくれないのがここを作った性格最悪のお師様である。
「オレは試験を受けにここまで来た」
レイドは自分のいる空間を見回す。時折理解したような声を出し、
「かっ!」
規則よく並んだ歯を鳴らし、レイドは鮫のような笑みを浮かべる。
「分かった。ーンじゃ、始めっか」
「試験をか?」
「オメエがオレにそう言ったンだろうがよ、オメエ。言ったこと忘れてンじゃねえぞ、オメエ」
「なら、試験はなんだ?」
「オメエ、あンだけオレが言ってやったのに聞いてなかったなンて通じると思うなよ、オメエ。ふざけてンのか、オメエ」
「ーー天剣へ至りし愚者、彼の者の許しを得よ、か」
静かにラインハルトがそう言った。
「そうだ、オメエ。オレとまともにお話したけりゃぁ、オレを倒してみろや、オメエ」
「貴方を倒すこと。それがこの試験を突破する条件と捉えていいだろうか」
「そう言っただろうがよ、オメエ」
「スバル、この試験は僕が突破してみせるよ。僕が貴方を倒せば、他の皆もここを通して貰うよ」
「勝手にしろや、オメエ」
ラインハルトは腰に携えた最高の剣、龍剣『レイド』を手に取る。その場を圧倒する威圧を放ちながら、薄い青の光を放つ刀身が抜き放たれた。
「ルグニカ王国、近衛騎士団『剣聖』ラインハルト・ヴァン・アストレア」
今のこの世界の誰も知らない、語られぬ名をラインハルトが名乗る。
「名乗る名なんざねえよ、適当に呼んでくれや」
世に知れ渡り、語られる名をレイドは名乗らない。
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圧倒的な威圧感と存在感が交錯する。
いつになく真剣なラインハルトと強敵を相手に獰猛な笑いを浮かべるレイドの視線が交差。2人の常外は同時に地を蹴り、その場からかき消えるように移動する。
「カッ!」
2人の得物が競り合う寸前、危険を察したレイドが龍剣『レイド』を横に払い、剣戟が躱される。
生じた間にレイドの得物がラインハルトの横を狙う。
繰り出された得物を体を捻ることで避け、回転を乗せたラインハルトの剣が舞う。
ガン!
金属がぶつかり合うような音が響き、龍剣『レイド』の飾り部分をレイドの一振りが抑えている。
「さすがです、レイド・アストレア様」
「気色悪ぃ奴だが、面白ぇじゃねえか、オメエ。こンな奴ぁ久し振りだぜ、オメエ」
立ち入れば瞬きの間も無く死ぬ。そう思える程のビリビリとした制圧感が広がっている。
「なンか清々したような面してやがるが…まだだ、オメエ。もっと来れンだろうが、オメエ」
「僕はただ一人の騎士として貴方の前にいる」
ラインハルトは龍剣『レイド』を手にレイドを斬り伏せるべく攻撃を繰り返す。それをレイドは狂ったような笑みを浮かべ捌いていく。
「カッ!騎士だぁ?ンなつまンねぇモンに拘ってンじゃねえよ、オメエ。やりてぇこと我慢して、そンなンで人生楽しンでンのか、オメエ。やりたいようにやってみせろや、オメエ」
レイドに煽られるも、ラインハルトの表情に変化はない。じんわりと汗が滲むことも無く、二人は剣閃の中で語らっている。
「分かンねぇ野郎だな、オメエ。人から奪ったモン使えっつってるンだよ、オメエ。全力で来やがれ、じゃねえとオレは倒れてやンねぇぞ、オメエ」
ラインハルトの表情が初めて翳る。
「何故、貴方がそのことを」
「何故って、そりゃあ、オメエ、オレだからだ。それでいいだろうが、オメエ。分かったンなら本気で来やがれや、オメエ」
レイドの言葉を皮切りにラインハルトが大きく踏み出す。攻撃を躱せる距離ではない。かと言って致命傷にもならない。
ラインハルトの肌のあちこちが薄く裂かれ、血が滴る。
「いいじゃねえかよ、オメエ。もっとだ、もっと!」
レイドに煽られ、ラインハルトは更に踏み込む。
「ーー授かった」
ラインハルトが地面に足をついた地点から地面がメリメリとめくれ上がり、レイドを宙に飛ばす。
「ーー授かった」
めくれ上がった拍子に弾けた小さな土の欠片。それだけを足場にラインハルトは宙を舞うレイドへと迫る。
レイドに向けた横一文字。それを容易く流されたところにラインハルトの中段蹴りがレイドを襲う。それがレイドの左肩に命中。外壁に向かってレイドが吹き飛ばされる。
外壁にレイドが炸裂し、土煙が上がる。
「いいじゃねえか、オメエ。歯応えがある。もっと楽しもうじゃねえか、オメエ」
レイドは何も無かったかのようにピンピンしている。
「お前、なんで無傷何だよ!おかしいだろ!!」
「あぁ?茶々入れンじゃねえよ、雑魚ってか稚魚が。ちったあ自分で考えろや」
レイドはそれだけ言ってラインハルトに向かう。
ぶっきらぼうに言い放つレイド。スバルはただ繰り広げられる常外の戦いを見守ることしかできないと痛感する。ここにスバルの席など無いのだ。
「ーー授かった」
宙にいるラインハルトの体が急速にレイドへと迫る。振られた龍剣『レイド』がレイドの得物を寸断し、その身体から紅を垂らさせる。
「まだまだ楽しもうじゃねえか、オメエ!」
腹から血を流しながら、レイドは狂ったように戦っている。
ラインハルトの放った風の刃を斬り伏せ、レイドはラインハルトに迫る。
盛り上がる地面を叩き壊し、レイドはラインハルトに迫る。
振られた龍剣『レイド』がレイドのはだけた胸を微かに裂き、握られた得物がラインハルトの眼前に迫る。
グシャ
肉々しい音と共にレイドの得物がラインハルトの右目に突き刺さる。
ドスッ
ラインハルトの手刀がレイドの鳩尾に突き刺さる。指先はレイドの中に達し、彼の内臓を傷つけている。
レイドの腹部からゴボゴボと血が流れ出し、足元に血溜まりを作る。
「ーー授かった」
レイドの傷はみるみるうちに広がっていく。
「やれや、オメエ。その手でオレを殺せ」
「貴方を倒すことが突破の条件のはずでしょう。僕に貴方を殺す意味はない」
「はンッ!つまンねえ野郎だ。ここまでやってそれで終わりかよ、オメエ。この戦いの中で、オメエは何人殺した?今更だろうが、オメエ」
「殺してなど、いない」
「カッ!オメエ、面白ぇ答えだな、オメエ」
レイドの口から血が漏れ出し、首がダラリと落ちる。
視界が白み、スバルの脳に三層のそれが浮かぶ。
即ち、二層『エレクトラ』の試験の突破である。
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「………やったってことでいいのか?」
「恐らく」
「感謝するぜ、ラインハルト。後は一層『マイア』の試験だけか?」
分かりそうな奴はスバルの足元で泡を吹いて気絶している。四百年の人生の死因が喉に詰まった泡による窒息は何となくくるものがある。
スバルはシャウラの口を下にして、指を乱雑に喉に突っ込む。
ゴボッという音と共に溜まった泡が吐き出され、一先ずの安全が確保された。
「スバル、どうしようか。このまま一層の試験に挑むかい?」
「いや、今日はいいよ。なんかもう疲れた。お前も無傷じゃねぇし」
「僕は大丈夫だ。見た目は血が付いているけど、傷は塞がっている。この目もね」
そう言って指差すラインハルトの右目は再生されており、白目が赤く染まっている。
「気持ち悪い奴だな、お前」
「『地霊の加護』だよ。僕が地面に立っていれば回復してくれるんだ」
「とにかく今日は終わりだ。クロムウェル達の成果も聞きたいしな」
そう言ってスバルは四層へと下って行った。
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「ナツキ・スバル」
四層へと戻る半ば、スバルは呼び止められる。
「クロムウェルか。調子はどうだ………って、何でフェルトを抱えてるんだ?」
クロムウェルの大きな腕の中で、フェルトは死んだように眠っている。スバルはこの様子に嫌な記憶が過る。
「つい先程のことだ。フェルトが眠った。何をしても目を覚まさない。『眠り姫』になった」
次回 #11 『エメラダ・ルグニカ』