ドシュトフロムンド戦記~少年と精霊と大地の果て   作:nocomimi

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王位転覆

「王子アルギレウス殿下。あなたを逮捕します」

 

兵隊たちの真ん中に立っていた隊長と思しき男が言った。その口調は極めて事務的なものだった。

 

「逮捕?どういうことだ?何の容疑で?」

 

アルギレウスは尋ねた。

 

「不法侵入、窃盗および国家機密漏洩です」

 

隊長は淀みなく答えた。まるで何度もリハーサルしたような語調だ。

 

「待ってくれ。意味がわからない」

 

アルギレウスは抗弁したが警備兵たちが近づいてきて四人を包囲した。アルギレウスは両手を上げて抵抗する意思がないことを示しながらも首を振った。

 

「この武器庫は王家直属の近衛兵連隊のものだ。私は今までここを自由に....」

 

「近衛兵連隊は解体されました。現在は執政官の管理下に置かれています」

 

隊長は言い、片手で警備兵に合図した。兵たちが手を伸ばしてアルギレウスから武装を奪おうとした。後ろにいた他の三人にも兵たちが歩み寄ってくる。

 

「動くんじゃねえ」

 

リゴールが声を上げた。それまで弓を肩に担いでいた狩人が、いつの間にか矢をつがえて隊長の頭に狙いをつけていた。一瞬の出来事でフロウにはまるで魔法のように見えたほどだった。矢じりから隊長の頭部までは数十センチしかない。

 

「一歩でも動いたらあの世行きだ。あんたもあんたの部下もな」

 

隊長は目を大きく見開いた。額に汗が浮かんでいる。警備兵たちも雷に打たれたように顔を上げた。

 

「よせ、リゴール」

 

アルギレウスが言った。だがリゴールは吐き捨てるように答えた。

 

「ふざけんな。こんな連中皆殺しにできないとでも思うか?この俺が」

 

狩人の構えは微動だにしていない。だがアルギレウスは重ねて言った。

 

「やめろ。私たちの敵は人間ではない。それを間違えるな。ここで血を流しても魔瘴気が増えるだけだ」

 

フロウとギルモはなすすべもなくリゴールと隊長を交互に見やるばかりだった。だが数秒すると、リゴールは舌打ちしながら弓を下ろした。警備兵が再び動き始め、四人から武装を取り上げた。縄を取り出してそれぞれを後ろ手に縛り始める。アルギレウスは縛られながらも抗弁した。

 

「近衛兵連隊の解体など私は聞いたこともない。いつそんなことが?」

 

「殿下がご旅行中のときです。議会決議のもと即時執行されました」

 

隊長が平然と言った。アルギレウスはなおも言った。

 

「私は三日前執政官に会った。だが彼はそんなことは一言も......」

 

「クーデターってやつさ。あんた嵌められたみてぇだな、アルギレウス」

 

リゴールも上半身に縄をかけられながら皮肉に笑った。アルギレウスは目を見開くと隊長に向き直った。

 

「王政廃止を民が望むなら私は構わん。だが陰謀をもて王位を覆すは神に逆らうがごとき大罪だ。隊長、君もそのことをよく....」

 

「殿下、ここは大学の講義室ではありませぬ。神学議論は別の場所でなされますよう」

 

隊長はにべもない調子で答えると、四人を縛り上げた警備兵たちに再び合図した。兵士たちは沈黙したまま一行を引き立てていった。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

「君はどこの出身だ?親はどこにいる?」

 

机の向こうに座った係官がフロウに尋ねた。フロウは、当初アルギレウスとリゴールとギルモと一緒に刑務所らしき建物に引かれていった。だが、三人が地下牢に連れていかれる一方で、フロウだけが別室に通されたのだ。

 

「僕はフィローネの出身です。親は五歳のとき亡くなりました」

 

「じゃあ孤児ってわけなのか?いわゆる浮浪児か?.....一体どう書けばいいんだ」

 

係官はファイルに記入する手を止めながら頭を掻き、自分に尋ねるように言った。

 

「その後、叔父に育てられたんです。でも今はあの人たちと一緒に旅をしています」

 

フロウはできるだけわかりやすいよう整理してから答えた。だが係官はますます混乱した顔になり、首を傾げながら手元のファイルを確認しつつフロウに尋ねた。

 

「待ってくれ。君は...ええっと...まだ十三歳だろう?」

 

「はい、そうです」

 

「君の叔父さんは赤の他人に君を預けてこんな遠距離の旅をさせたのかい?いや、そもそも地方を跨ぐ旅行は政府の許可がなければできないはずだ」

 

フロウは溜め息をついた。そして牢屋に入れられたらしき三人のことが心配になった。

 

「すいません、あの....あの人たちはどうなるんでしょうか?」

 

「どうなる?」

 

係官は顔を上げた。フロウは言った。

 

「僕にとっては大事な人たちなんです。縛り首とかにならないといいんですけど...」

 

すると係官は首を振った。

 

「さあね。それは(ウエ)が考えることさ。それより君は早く親.....いや、叔父さんのところに戻ったほうがいい。一時的なら王都の児童保護施設で預かってあげられるが....」

 

「叔父はもういません」

 

フロウが答えると係官はまた驚いた様子で顔を上げた。

 

「いない?亡くなったのかい?」

 

「いえ、村ごと消えたんです」

 

フロウの答えを聞いた係官はうんざりした顔をした。

 

「おい、大人をからかうんじゃない。そんなことあるわけないじゃないか」

 

フロウは困惑した。ただ見たことを答えただけだ。これ以上どう説明したらいいんだろう。

 

「あの...どっちにしても僕は家に帰るわけにいかないんです。あの人たちと一緒に旅を続けるしかないんです」

 

「....ははあ。わかった。家出だな?叔父さんに反抗して家を飛び出したってわけだ」

 

係官はペンでフロウを指しながらニヤリと笑った。

 

「違います。僕は友達を助けるために旅をしてるんです」

 

「わかったわかった。君の想像の世界の話はあとで聞こう。今児童保護施設への入所手続きをするから、君はしばらくこの部屋で....」

 

フロウは慌てて係官を制止した。

 

「待ってください!あの人たちと離れ離れにしないでください」

 

少年は、言ったあとこう言葉を継いだ。

 

「せめて....同じ牢屋に入れてもらえませんか。そっちのほうがよっぽど僕には...」

 

係官は溜め息をついた。

 

「おい、君は未成年なんだぞ。法律で決まってるんだ。よほどのことがない限り牢屋になんか....」

 

「よほどのことって....よほど悪いことをしたとか...ですか?」

 

フロウは尋ねた。

 

「そうだ。危険すぎて放置できないケースなどが該当する。だが君は....」

 

だがフロウは係官の答えを聞いていなかった。何とかしてアルギレウスたちの近くに行きたい。

 

その時フロウの頭に考えがひらめいた。ポケットの中にはまだデクの実が残っている。フロウは係官の話を聞くふりをしながらポケットを探り、その実を一つつまんで、ゆっくりと握りしめた。実の殻が割れる感触がする。

 

フロウはポケットから手を出すと、デクの実を相手の顔に投げつけた。黄色い粉が散る。係官は途端に悲鳴を上げて顔を覆い、猛烈な勢いでクシャミを始めた。涙も止まらないようだ。

 

フロウは立ち上がると部屋の扉を開けて廊下に飛び出した。そして大きな声で叫んだ。

 

「みんな!僕は脱獄犯だぞ!凶悪で手がつけられない悪ガキだぞ!捕まえに来い!」

 

廊下を歩いていた刑務官が不思議そうな顔でフロウを見る。フロウは顔の両側に手を添えてヒラヒラと揺らし、あっかんべーをした。

 

すると、先ほどデクの実を喰らった係官が扉を開けてヨロヨロと出てきて、クシャミを連発し鼻水と涙を流しながら呻くように言った。

 

「こ....この...ガキを...逮捕....し...ろ....」

 

刑務官は驚いた顔をしつつも頷いた。持っていたファイルを放り出しフロウに手を伸ばす。だがフロウはその手に噛みつくと脚を蹴り上げた。つま先が相手の股間に当たる。刑務官は怯んであとじさった。フロウはますます大声で叫んだ。騒ぎを聞きつけて数人の刑務官が廊下の向こうから顔を出した。

 

フロウは刑務官たちに尻を向けてぺんぺんと叩いた。刑務官たちは顔を見合わせるとこちらに駆け寄ってくる。フロウは走り回った。捕まりそうになると、噛みつき、爪で引っ掻き、唾を吐きかけた。四人ほどの刑務官が集まり、ようやくフロウは取り押さえられた。

 

「...ッたくとんでもないガキだ。頭が冷えるまでぶちこんでおけ!」

 

デクの実を喰らった係官がハンカチで鼻をかみながら指示した。フロウは両手両足を抱えられて廊下を運ばれ、階段を下り、地下牢に放り込まれた。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * 

 

「リゴールさん!ギルモさん!アルギレウスさん!聞こえますか?」

 

フロウは鉄格子に手をかけながら叫んだ。

 

「.....おお?フロウかぁ?」

 

リゴールが叫ぶのが聞こえた。

 

「僕、牢屋に入りましたよ!ここにいますから!」

 

「へっ....十三歳にして前科一犯かよ。大したもんじゃねぇか」

 

「バカなこと言うもんでねぇ。坊やはおめなんかと違ってまっとうに生きられる子なんじゃ。そそのかすようなこと言うでねぇ」

 

フロウは安心した。アルギレウスの声は聞こえないが、リゴールとギルモが言い争うのが聞こえると家に戻ったような安堵感を感じた。

 

「こら!声を出すな!」

 

刑務官が怒鳴るのが聞こえ、リゴールとギルモが黙った。刑務官の怒声が響いたあと、地下牢は再び静まり返った。

 

フロウは鉄格子に額を押しつけ、暗い廊下の向こうを覗き込んだ。

 

「……アルギレウスさん?」

 

呼びかけても返事はない。代わりに、遠くの方で水滴が石床に落ちる音だけが聞こえる。

 

すると刑務官が足早に近づいてきてフロウの房の鉄格子を蹴った。

 

「しゃべるなと言ったろう!聞こえないのか!」

 

フロウは慌て鉄格子から離れた。だがアルギレウスのことが気になる。床に座り込んで膝を抱えながら少年は考えごとをした。

 

王子であるアルギレウスを逮捕するなんて、そんな大それたことがどうして出来るのだろうか。フロウの幼い頭脳では、その背景を想像することさえできない。だがその瞬間、フロウは思い出した。あの会議での執政官の態度。口調が丁寧ではあっても、アルギレウスの言うことに一切耳を傾けなかった、あの男の顔に貼り付いたお面のような笑顔。思い出せば思い出すほど、不吉で不快な印象が強まってくる。

 

だが一時間ほどもすると、どこからかベルが鳴る音が聞こえ、フロウは思索から引き戻された。しばらくすると、誰かが台車を押すような音が近づいてくる。目を上げると、老人がワゴンを押して廊下を進んでいる。老人はワゴンから盆を一つ下ろすと、鉄格子の下の隙間からそれを押し込み、無言で次の房の前に進んでいった。

 

盆の中にはパンとスープが入っている。スープは冷めきっていたが、パンは上等な白パンだ。空腹だったフロウは喜んで齧りついた。

 

「おい、王都では毎日白パンを喰っとるのけ?」

 

ギルモが驚いて叫ぶ声が聞こえた。続いて、パンに齧りつきスープを啜る慌ただしい音がしたかと思うとまたギルモが叫んだ。

 

「番兵!番兵!....」

 

「なんだ!うるさいな。しゃべるなと言ったろう」

 

「番兵さん...その...おかわり...くれんかの?」

 

「ふざけるな!一人あたりの量は決まってるんだ!」

 

刑務官とギルモの会話を聞いたフロウは声を上げて笑いそうになった。だが食事が終わり、盆が片づけられると再び地下牢に静寂が戻った。

 

遠く暗闇の奥から聞こえる水滴の音だけが規則正しく響いている。

 

フロウは膝を抱えたままぼんやりと天井を見上げ、呟いた。

 

「アルギレウスさん、どこにいるんだろう...」

 

返事がないことが、胸の奥にじわじわと不安を広げていく。

 

その時だった。

 

カリカリと石材をこするような音が聞こえる。フロウは周囲を見回した。だが何も異変は見当たらない。粗い石の壁と鉄格子以外は何も見えない。虫一匹すら見当たらない。

 

それでもカリカリという音は続いていた。フロウは首を傾げた。そして気づいた。その音は上からでも横からでもなく、下から聞こえてきている。

 

フロウは床を見下ろした。間違いない。その音は床の下からだ。モグラだろうか?それともここにはネズミが蔓延っているのだろうか。フロウが思案していると、やがて床の石材が一枚、ボコッと持ち上がった。フロウはびっくりして腰を浮かしそうになった。

 

浮かび上がった石材が、今度はごくゆっくりと横にずれていく。

 

目を丸くしているフロウの前に、鉤爪の生えた毛むくじゃらの手と、濡れた鼻先と、犬のような顔が現れた。

 

「シイッ....声を出すんじゃねえぞ、フロウ」

 

フロウは危ういところで喜びの叫び声を上げそうになったが、辛うじてこらえた。その顔はモグマ族のテツオだった。

 

テツオは穴から這い出ると、鼻先をひくつかせながら周囲を確認した。

 

「……よし、番兵はいねえな。フロウ、急いでこっち来い」

 

「テ、テツオさん……!どうしてここに……?」

 

フロウは相手に顔を寄せると声を抑えて囁いた。テツオは眉をひそめた。

 

「どうしてもこうしてもねえ。聞いちまったのさ。あの会議のときにな」

 

「会議のとき?」

 

フロウは思い出した。三日前の全種族会議の光景を。

 

「俺がたまたま用足しに行こうとして地面の下を移動してたらよ、聞こえてきちまったのさ。あのシャラームとかいういけ好かねえオッサンが言うのをな」

 

テツオはそう言うとフロウの耳に口を近づけ、いっそう声を潜めて囁いた。

 

「『準備は整った。王子殿下を逮捕し処刑しろ、と王都に伝書を送れ』....だってよ。俺っちそれ聞いて慌てちまって慌てて長老に相談したんだ。そしたらすぐ助けに行けって言われてよ。間に合ってよかったぜ.....」

 

フロウは息を呑んだ。

 

「しょ、処刑……!?アルギレウスさんを……?」

 

テツオは真剣な目で頷いた。いつもの飄々とした雰囲気は微塵もない。

 

「そうだ。俺がこの耳で聞いたから間違いはねえ」

 

そう言うとテツオは用心深い仕草で周囲を見回しながら付け加えた。

 

「脱出口は既に掘ってやったぜ。穴に降りたらずっと道なりに真っすぐ進め。ちなみにおめえらの武器は一階の出口の手前にある保管室に集められてる。俺が行って取ってきてやるから、その間におめえら外に出てろ」

 

「あ...ありがとうテツオさん」

 

「どうってことねえさ。俺らにはわかる。王子さんが本当に俺ら亜人のことを考えてくれてるってことがな」

 

テツオは器用にウィンクすると、穴の中に戻った。フロウも後に続いた。穴は狭かったが、フロウの体格なら楽に通れると分かった。四つん這いになり言われたとおり穴を進む。真っ暗で息苦しかったが、しばらく進むととうとう明かりが見えてきた。

 

穴から顔を出すと、荒涼とした空き地の中だった。周囲を見回すと樽や箱が散らばっている。

 

「フロウ!こっちだ」

 

リゴールの声が聞こえた。積み上げられた箱の影に身を隠して手招きしている。フロウは素早く穴から這い出すと狩人の近くに駆け寄って身を寄せた。

 

「テツオの奴に借りが出来ちまったな。今までのポーカーの勝ちがパーだぜ」

 

リゴールが低い声で呟く。しばらく待っていると、穴からギルモが苦労しながら這い出してきた。

 

「ほら見ろ。だからダイエットしろと言ったろ」

 

「うるさい。ワシは固太りだっぺ、贅肉とは違うっぺよ」

 

いつもの口論が始まる。だがフロウは空を見上げながら不思議に思った。一見、何の変哲もない日の暮れかけた空だ。だがあまりにも静かすぎる。鳥どころか、羽虫の一匹さえも飛んでいない。

 

ようようのことで、最後にアルギレウスが這い出してきた。かと思うともう一度穴に戻り、両手に武器をいっぱいに抱えてフロウたちのところに駆け寄ってきた。

 

「日没まで通りには出ないほうがいいな」

 

アルギレウスは自分の剣をベルトに吊るしながら言った。

 

「ああ。追っ手がかかると面倒だからな。....あんたの方針だと、殺しちゃいけねえってことだしよ」

 

リゴールがやや嫌味な口調で答える。フロウもパチンコをベルトに挟み、剣を吊るした。

 

「なんか空がヘンな色だっぺな....」

 

装備を整え終わったギルモが上を見ながらつぶやいた。茜色に染まった空が次第に暗くなっていく。

 

空だけではなかった。通りのほうからも何も音が聞こえない。今の時間帯、普通なら仕事から家に戻る男たち、市場に買い出しにいく女たち、遊びを終えて家路につく子供たちの声でにぎわうはずだ。

 

その時だった。何か動物の鳴き声のようなものが遠くから聞こえてきた。

 

それも一匹や二匹ではない。百匹、いや千匹。いや、数えきれないほどの数の動物たちの鳴き声だ。

 

途端に空の端から黒い塊のようなものが現れた。夕暮れの太陽の光が遮られる。

 

フロウたちは空を見上げて思わず言葉を失った。

 

空一面が一瞬にして埋め尽くされた。耳障りな鳴き声を立てる蝙蝠の大群だ。辺り一帯が突然暗くなるほどの数だ。

 

フロウの脳裏に記憶が蘇った。

 

フィローネ地方からオルディン地方に旅をしていたときに岩棚の上で見たあの不吉な影。

 

『終焉の者』が放った、とアルギレウスが説明していた『影の眷属』。

 

王都の上空一面をその蝙蝠の大群が覆いつくしていた。

 

フロウたち四人はひたすら物陰で身を縮めていた。蝙蝠たちは自分たちの存在を見せつけるように飛び回っていた。建物の屋根すれすれに飛行し、去ってはまた戻ってくる。

 

だが三十分ほども経過すると、やがて蝙蝠の大群は遠ざかっていった。その鳴き声が次第に小さくなり、もはや暗くなった空に消えていった。

 

四人はしばらくの間茫然としていたが、やがてアルギレウスが呟いた。

 

「王都は守られてなどいない。ただ...『奴』の最後の楽しみとしてとっておかれているだけだ」

 

リゴールが皮肉な口調で応じる。

 

「いつでも捻りつぶせるって....いうメッセージなわけだな。ったく性格の悪りぃ奴だぜ。その『終焉』とかいう男は」

 

「行こう。螺旋塔は遠くはない。隠れられるところで一旦休息を取る。そして夜のうちに潜入しよう」

 

アルギレウスが言う。リゴールとギルモは頷いた。フロウもそれに倣った。

 

日が暮れると四人は静かに体を起こし、静まり返った通りに滑り込んでいった。

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