ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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一週間以内には出したいなと思ってたんですよ(敗北宣言)


『人間を本当に導くものは言葉ではなく模範である』

「せんせー……『ワープゲート』つかいましょうよぉ……なんでわざわざ電車で行くんですかぁ?」

 

「あっちではイレイザーヘッドと呼べよ、新斗」

 

 現在メスガキと相澤はのこのこと連れ立って駅へ向かっているところだ。可愛らしいゴスロリ少女とホームレスみてぇな不審者が連れ立っているのでまぁまぁ周りに注目されたがゴスロリの方が『オールマイトちゃん』だと分かると心配はなくなり好奇心と興味本位の視線が集まった。周りにもおそらく引率の教師だろうと予想されている相澤が周囲をギロリと睨んでなかったら声をかけられまくっていただろう。

 

「分かってますよっ! ナイトアイ事務所なら場所分かるので一瞬で着きますよ~?」

 

「分かってる、ね……じゃあ『ワープゲート』で行かない理由もわかるだろ」

 

 相澤だって周りが騒がしくなるのは予想できたのでパッと行きたい気持ちはある。だがそう簡単には行かない事情があるのだ。

 

「……雄英の敷地内と違ってせんせーの一存じゃ許可できないからですよねっ! でも大丈夫~! ボクには面倒くさい手続きを諸々すっとばせるコネがあるので~♡」

 

「そういった正規の手続きによらない緊急用の手段はあくまで緊急時のみに……とまでは言わんが、俺は遠慮しておく。……お前のその他人を迂遠にコントロールしたがるところ良くないと思うぞ」

 

 相澤がどのように答えるかなどメスガキは知っている。承知の上でこのようなことを提案してくる理由。

 

「むーっ! 分かってるなら言ってくださ~いっ! ボクとお話したいから電車でゆっくり行くぞって! 言って!」

 

 ここからどう話術を駆使すれば相澤からそのような言葉を引き出せる予定だったのか皆目検討もつかないがメスガキはそうしたかったらしい。

 

「別に話題なんてないんだが……喋りたいなら勝手に喋ればいいだろう」

 

「やだやだやだやだ~っ! ボクとお話したいでしょ! これから行くナイトアイ事務所でボクはめんど~くさい人間関係に苦しめられる見込みじゃないですかっ! たのしー時間くださいっ!」

 

 だるい。面倒くさい。相澤は生徒たちのことをこよなく愛しているし当然メスガキにも多大なる愛情を持っているがだからといって何でも言うことをホイホイ聞くのは相手のためにならないとも思っている。あと普通にだるい。面倒くさい。とはいえメスガキの要求は放置するとどんどんでかくなり最終的には外堀を埋めて強制的に飲ませてくるので程々のところで聞いたほうが負担は小さい。その認識がメスガキの術中であることを分かったうえで相澤は渋々話し始めた。

 

「……じゃあ俺の高校時代の話でもしてやろう。あれはまだ俺が漠然とヒーローを目指していた頃のことだ……」

 

 そうして相澤が話してくれたのは高校時代の様々なエピソードだ。特にメスガキの興味を引いたのは……。

 

「えーっ! 先生って2年生になってもまだ将来どうするかうだうだ悩んでたんですかぁ? 意外~~っ!!」

 

「そうだ。正直今の俺から見たら……『見込みなし』だな」

 

「でも今は素晴らしいヒーローになったじゃないですかっ! やっぱり先生って節穴なんじゃないですかぁ~?」

 

「言ってくれるじゃないか。俺はお前が世界一のヒーローになれると信じてるんだがな」

 

「ふぎゅっ……」

 

 見ろ、見事なカウンターで返した。調子に乗ってるからこうやって痛い目に遭う。相澤はその後も学生時代に学んだことをメスガキの糧になるようにと丁寧に話してくれた。

 

「……なるほど! だから閃走寺さんはせんせーに発破をかけていたということですね! 典型的な嫌なジョックかと思ったらヒーローらしいところもあったんですねえ!」

 

「ああ。俺は思いやりというのは表面上の態度ではなく相手のことを良い方向へ導くことだと学んだ。いいか新斗、行動を見ろ。本質はそこに現れる。主張だけではなくそのために何をしているかを見ることだ」

 

「でも先生はボクに言葉を尽くしてくれますよねっ! これはどうしてですか?」

 

「少し言い方が悪かったか。言葉を話すことも行動の一つだ。お前なら痛感しているかとは思うが……暴力で『解決』できることは多くない。大抵は『解消』に終わり、問題そのものは残る。根本的な改善には知識や知恵が必要だ」

 

 ぶん殴って言うことを聞かせてもそれは問題の先送りにしかならない。ヒーロー活動は世の中を良くするためのものというより悪くしないためのものという側面が強い。そうやって先送りにして生まれた時間で新たな技術により問題が解決したり人々の心が変わったりすることを期待しているわけだ。

 

「やはり……新技術ですかっ! これからの世界を導くホーリーナイトとしてはI・アイランドとのつながりをより一層深めていかないとっ!」

 

「そうだな。だからサポート科とのつながりも大事にしておけよ。絢爛崎は元より……同級生もな。お前より賢くない人間にだってお前には出来ないことが出来る。より正確に言えば……他人はお前にない『発想』を持っている。どんな知識も知恵も、動機がなければ振るわれない」

 

 相澤はどうやらメスガキが発目ともギスってることを知ったようだった。さり気なく……というほどでもないがやんわりと釘を刺してきている。

 

「……たのしーお話のハズだったのにお説教になってるぅ~!」

 

 メスガキの不満顔にも一切怯まず相澤は話を続けた。

 

「この捕縛布も俺が雄英で得た他者との繋がりが与えてくれたものだ。そして俺は開発者の言葉をもっと真剣に聞いておけばよかったと後悔したことがある。かつて俺は強力な敵(ヴィラン)相手には強度が足りないかもしれない、と言われて一笑に付した。この薄さや軽さ、さらには夏はさらりとして冬は温かいこれを信頼していたし、あまりにも頑丈すぎると逆に引きちぎりたいときに困るからな。だが……」

 

 例えば瀬呂の〝個性〟なら本人の意思でぶちっと切れるのでこういった悩みは発生しない。しかし捕縛布はあくまで道具なので想いに応えて限界を超えてくれたりはしないのだ。

 

「……『脳無』の件ですね? 先生はご心配無くっ! もう『目処』は付きましたよ! 『解決は時間の問題』ですっ! 根幹技術そのものは結局のところ〝個性〟の超常性と特性ありきで大した特異性はありませんでしたっ!」

 

「セントラルからはおぞましくも高度な技術だと聞いているんだが……」

 

「全世界の最先端技術が集まったI・アイランドと所詮はいち国立病院でしかないセントラル、どちらのレベルが高いと思います? ボクは学ぶべき事柄を学ぶ場所を十分に吟味したんですよ、せんせ♡」

 

 さらっと『脳無』に関する知見を国外に流出させたことが明らかになってしまった。いやまぁ、相澤はそんな事どうでもいいんだけど……。どうせ敵(ヴィラン)側には流れてる技術だろうし……。

 

「…………公安はそれを知ってるのか?」

 

「もちろん! ボクが無軌道に、制御不能な行動をしだしたら『国家がどう判断するか』分かってないと思います? 『こいつ殺したほうがいいな』って判断されたらボクはとぉっっっても困るんですよぉ?」

 

 困るだけ。しかも困る内容は友達が心配するなぁとか両親になんて言えばとかの心情的なものだけ。国家クラスの武力でもメスガキをどうにかするのは不可能だ。暴力で物事を解決しようとする限り、メスガキと対立したら為すすべ無く屈服するしか無くなる。

 

「そんなことにはならない、させない。俺は国に従っているわけじゃないぞ、新斗。一員としての義務を果たす気はあるが、唯々諾々と従う謂れなどない。お前は俺の生徒だ。何があってもだ。忘れるな」

 

「えへへぇ~……あっ。もぉ~せんせーってば本当にいじわる……」

 

 相澤の生徒は何があっても彼の生徒である。つまり波動もそうです。メスガキがまた難しい顔をして考え込んだので電車を降りてナイトアイ事務所に着くまでの間二人に会話はなかった。しかしながら、その沈黙に気まずさは存在しなかった。あと相澤先生、その他人を迂遠にコントロールしたがるところ、良くないと思いまーす! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ! あいざ……イレイザーヘッド! ホーリーナイト! おはようございまーすっ!」

 

 ぴしっ! とした姿勢で挨拶をしてきたのは波動ねじれだ。ナイトアイ事務所の玄関口で何やら駄弁っていたビッグ3の残りの二人、天喰と通形も朗らかに挨拶をした。

 

「はい、おはよう。ずいぶんと早いな、三人とも。俺達も相当早めに出たんだが」

 

 ビッグ3の三人はナイトアイの事務所に泊まり込みである。翌日の会議の準備ためにクソ忙しい通形を手伝おうと波動と天喰が外泊許可を取って駆けつけたのだ。どうせ翌日来ることになるから、というのもあるが3人の厚く固い友情の賜物である。

 

「おはようございます、イレイザーヘッド! ホーリーナイト、来てくれたんだね!」

 

「しつこくしつこく呼ばれたので来てあげましたよぉ~……ほんと余計なお世話が好きなんだからもぉ~」

 

 天喰は何かを言おうとしてやめるという動きを数度繰り返したあと通形の背後でキリッとした表情を作った。コミュ障……お前それでいいのか。天喰のホームグラウンドレベルに気心の知れている相手しかいない状況なのに……。

 

「一緒に頑張ろうねっ、ホーリーナイトっ!」

 

 にこーっと見るもの全てが笑顔になりそうな温かい微笑みを湛えて波動はメスガキに声をかけた。通形と天喰はそれをドキドキしながら見守っている。

 

「ナイトアイはボクを使うつもり無いと思いますけどね~。そーでしょ、通形先輩」

 

 とりあえず塩対応する気はないようだがやっぱりなんだかそっけなかった。しかし通形はそれに手応えを感じたらしくぱっと笑顔になって朗らかに返事をした。

 

「んーどうかな! 微妙なトコだよね! 今日の『予知』次第じゃないかな!」

 

「??」

 

 波動と天喰はいまいちピンとこなかった。そもそもナイトアイの『予知』に詳しくないのもあるが、強力かつ便利なメスガキの〝個性〟は当然活用されると考えていたからだ。

 

「おい、入口で喋ってないでさっさと行くぞ」

 

「はーいっ!」

 

「あ、私たちは後輩が来るまで待つのでお構いなくっ!」

 

 疑問は残ったものの、波動は麗日と蛙吹、天喰は切島を待つようで玄関先に残った。通形が待っていたのはメスガキだったようで、そのまま2Fの会議室まで案内してくれた。以前の言葉通り波動との仲を気にしてはいつつも余計なことを言うつもりはないらしくナイトアイのちょっといい話を喋りながら和気藹々とした雰囲気のまま会議室へたどり着いた。

 

「来てくれたんだな、ホーリーナイト」

 

 中で待っていたのはそれなりの数のヒーロー、そしてしかめっ面のナイトアイだった。なお別に怒っているわけではなくこういう顔がデフォである。

 

「何を今知ったみたいな……手続きしてるんだから知ってたでしょっ!」

 

「……あなたは私の『予知』でも捉えきれないからな。この目で見るまでは不安だったよ」

 

 ホッとした表情でナイトアイが椅子を引くのを見てぎょっとするイレイザーヘッド。それになんか呼び方も変だったぞ……? あなた……? メスガキの方を見てみるとこちらも不思議そうに相澤を見ている。

 

「???」

 

「???」

 

 両者互いに相手になにかそうさせるものがあると思ったようだったが、どちらも心当たりがなかったので困惑は消えなかった。

 

「? どうしたホーリーナイト。座らないのか?」

 

 ナイトアイはメスガキに椅子を勧めていたのが確定してしまった。

 

「え? ボク? えーっと、イレイザーヘッド、どうぞ」

 

 メスガキが目上の存在としてイレイザーヘッドに椅子を勧めるとナイトアイは「あっ」という感じの表情をしたあとしょんぼり顔になった。目付きが悪いので睨んでるようにしか見えないがしょんぼり顔である。

 

「何だこの状況。ナイトアイ、ホーリーナイトにそんなへりくだって一体何ごとです。図に乗られても困るんでやめていただきたい」

 

「へりくだっているつもりはないが……別にいいだろう、椅子を引くくらい」

 

 良くねぇよ。困惑してるだろ。

 

「えー……参加者全員にやらないならやめて下さい……ナイトアイってボクのテンションを下げる天才すぎませんか」

 

 理由のわからない慇懃さにメスガキも萎え萎えで警戒心は爆上がりだ。

 

「そ、そうか……わかった、全員の椅子を引くとしよう」

 

「そうじゃないでしょ」

 

 だるそうに突っ込むメスガキ。メスガキの椅子を引くのがおかしい、という根本の部分が全く改善されない。さすがオールマイトの元サイドキック、強情なところがそっくりだ。ナイトアイにとってメスガキは尊敬してやまないオールマイトと実力的にも精神的にも対等な……そうなってくれる存在なので、自然と敬意を払ってしまうのだ。つまり本人にあまり自覚はないのでツッコミにピンときていない。

 

「そうですよナイトアイ! 椅子引きは俺がやるんだよね!」

 

「私も! ナイトアイは座ってて下さい!」

 

 通形とバブルガールが「ふんすっ!」という感じで気合を入れ、ニコニコしながら立っているヒーローたちへ声をかけ椅子を引きはじめた。

 

「そうじゃないって言ってるでしょ! ボクの椅子を! 引くな!! 何だこの事務所! 帰っていいですか?」

 

「ごめん、本当にごめんねホーリーナイト」

 

 メスガキの想定をはるかに超える面倒くささ。センチピーダーは今日もとっても苦労しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイトアイさん、それじゃあそろそろ始めましょう」

 

 なぜかリューキュウが仕切って始まった会議。軽い自己紹介を各々がしたあとにナイトアイが語った内容。それは『死穢八斎會』とかいう弱小団体が最近やけに裏で色々やっているという話から始まり、ナイトアイはそれが『敵(ヴィラン)連合』の残党の影響ではないかという見立てをしている、という結びで終わったサーの妄想展覧会だ。

 

「そして最近新たな動きがありました。ファットガム、お願いします」

 

「はーいどもども、ファットさんやでぇ。みんな知っとるね。はいどーん! これ、何の弾丸か知っとる? 今噂の『個性消失弾』や!」

 

 知らねってんだよ。いきなりなんだこのデブ。噂になっていたのは裏社会でのことなのでヒーローたちは全然ピンときてない。

 

「おいおい、『個性消失弾』だぁ? そんなもん聞いたことねぇぞ」

 

 この感じの悪い色黒の男は遺伝子の強いオス、ロックロック。みんな知ってるね。

 

「効果はうちのサンイーターが身を持って体験しとる! な!」

 

 ファットガムが隣に座っていた天喰の肩をぽんと叩くと陰キャパイセンは弾かれたように立ち上がりしばらく口をパクパクさせたあとようやく話し始めた。

 

「さ、サンイーターです……効果についてですが……命中して大体20時間ほどは〝個性〟が全く使用できず、その後少しずつ快方に向かい、完全に復旧したと確信するまでには2日かかりました……う、撃った人物の話によると未完成品、あるいはデチューン版だったようです……」

 

「結構な効果時間じゃねえか。だが戦闘中に撃たれたらやべぇのは普通の弾丸でも同じだろ。……で、完成品があるって?」

 

「まだ噂の段階みたいやけどな。……これを撃ったんはどっかの組織の一員とかやない。一介のチンピラでしかない、フツーの子や。そんなトコにまで行き渡っとるいうことは、すでに本命は完成しとってそれの『宣伝』をしとるんやないかと思う」

 

「なるほど。妥当な推測だな」

 

「そして完成品が出回る前に……といった悠長な話でもありません。イレイザーヘッド、説明をお願いします」

 

「この弾丸はどうやら人の〝個性因子〟を傷つけて働きを阻害する仕組みのようです。俺の『抹消』は『一時停止』なので後遺症などはありませんが、弾丸の方は『損傷』なので何度も撃たれたらマズイんじゃないかと思います」

 

「推定劣化品が出回りつつある現状ですでに脅威っつーわけか。実際のブツの解析はどうなんだ」

 

「連中が持っとった弾は2発。一発はサンイーターに使用され、もう一発はレッドライオットに使用された……んやが! 彼の〝個性〟はニュースにも出たやろ! 『硬化』で弾いて、ほぼ完品でサンプルが手に入ったんや!」

 

 え、俺!? という顔をする切島。そうだよお前だよ。その反応がいい歳したヒーローどもにとっては可愛かったのでぽつぽつと切島の〝個性〟を褒める声が上がり雰囲気が和やかになった。

 

「現物があんなら安心だな。解析すりゃあ予防もできるようになるかもしれねえ」

 

「ところが話はそう簡単でもないんや。中身を調べたらでてきたもんは……人の一部。血と細胞やった……」

 

 緩んだ空気が再び引き締まった。インターン生などはぞっとして顔を青くしている。メスガキだけは「またか……」という感じのうんざり顔だが。

 

「……技術というより〝個性〟の産物ということね? たしかにそれなら予防は難しいかもしれないわね」

 

 リューキュウが自分のところのインターン生を気にしつつも端的にまとめる。

 

「通形先輩、どうしました?」

 

 メスガキが通形の顔色の悪さに単なる嫌悪感以上のものを見出したらしく殆ど対角線上に席の離れた通形に対して声をかけた。

 

「……いや、なんでもないんだよね!」

 

 通形は声を張り上げたがそれはいつもの元気さというより距離があるので大きな声を出しただけだった。

 

「……」

 

 メスガキは不審に思ってることがありありと分かる不満顔でじーっと通形を見つめている。ロックロックはチラチラとその様子をうかがいながらも話を進めた。

 

「その弾丸を捌いているのが『死穢八斎會』だって話か?」

 

「レッドライオットのニュースを見たモンは知っとると思うけど、彼が捕らえた子はもう一つ、別の薬物も持っとった」

 

 チラ、とナイトアイの方を見て話のバトンを返すファットガム。ナイトアイは頷いて説明を引き継いだ。

 

「いわゆる『トリガー』……あるいは『ブースト』とか呼ばれているものです。死穢八斎會は以前にこういった薬物も扱っていた疑惑があり、今回の『トリガー』の流通経路の一つにも死穢八斎會の関連組織があります」

 

「またこじつけくさい話が出てきたな……なにかもっと直接的につながりを示唆する物証はないのか? 現状だとナイトアイが死穢八斎會を捕らえたいあまりに無理やり関連付けているように見える」

 

 何人かのヒーローから同様の疑問が上がる。そもそもこの会議は『死穢八斎會が怪しいからみんなで捕まえようぜ』という感じの『ナイトアイ主導のチームアップ要請』であって警察からの『協力依頼』ではない。ナイトアイの見立てが外れていたら骨折り損のくたびれ儲けである。そしてナイトアイはチームアップを成立させたいのだから「死穢八斎會が怪しい」という主張をするのは当然であるため、そこを差し引いて考えなければならないのだ。

 

「そうですね、この件一つではそう思われるのも無理はない。お手元の資料の7ページ以降をご確認下さい。最初に記載されているのは先日リューキュウ事務所が解決した抗争についてですが──」

 

「……なるほど。こっちも『トリガー』の使用に、死穢八斎會の関連組織の影があるわけだ。……次のページからも似たような事件が大量にあるな」

 

 一つ一つはこじつけのように見えた事件の数々だが、これだけ大量に集まるとむしろ無関係と言われる方が不自然なレベルだ。しかしそれは大量に集めた結果ようやく見えてくるもののハズで、まるで結果から逆算しているかのような情報収集にヒーローたちはナイトアイの〝個性〟によるものかと納得した。

 

「最近多発していた裏の組織同士の抗争は一つの大きな組織にまとまろうとしている前兆……そしてその頂点に立ちそうなのが『死穢八斎會』……と、ナイトアイは言いたいわけだな」

 

 一人のヒーローが総括をするとその場に理解の色が広まった。「今のうちに俺等で潰そうぜ」というのがむしろ『美味しい話』であると分かったのだ。ヒーローはその性質上『事後対応』になることが多いので、逆説的に『事前に潰せた』と公安が判断した場合かなりの『貢献』となる。

 

「死穢八斎會の組長は現在床に伏せているとの情報があります。積極的に動いているのは若頭の『治崎 廻』……〝個性〟は『オーバーホール』。対象の分解と修復を可能とする力を持ちます」

 

「つまり『個性消失弾』の源泉はその『治崎』の〝個性〟だと言いたいわけですか?」

 

「あるいは……親族。もっと直接的に『〝個性〟を破壊する〝個性〟』なんてものを持っていてもおかしくない。かの組には現在頻繁に『敵(ヴィラン)連合』が出入りしている形跡があります。先日我が事務所の『ルミリオン』も推定『死柄木弔』と遭遇しました。16ページをご確認下さい」

 

 確認の時間がややあってヒーローたちから様々な意見が飛び出してくる。

 

「なんとなく事件とも関係のありそうな会話内容だな」

 

「〝個性〟で苦労か……ちょっと分かるな……」

 

 しょんぼりしている通形を見つめてしみじみとつぶやく『Mr.ブレイブ』。まぁ貴方はそうでしょうね。覚悟してるとはいえハゲ確定だもんな。

 

「シュガーラッキーって。誤魔化せてないだろこれ」

 

「この『キメラ』ってやつ最近名前を聞かなかったが結構な大物だったよな? 俺の先輩がこいつにやられてまだ入院してるぜ……」

 

 実際はナインの落雷の方にやられて瀕死になったのだがキメラは『炎を吐く』という情報があったので『電撃も使えたんだな』と思われてなんかすんごい化物としてHNに登録されてしまってる。つまりキメラ+ナインの力を持つとされているのが『大物敵(ネームドヴィラン) キメラ』である。怖いよぉ……。

 

「どうやら『敵(ヴィラン)連合』に加入したようだな。そしてその際に確認された小さな少女。親をなくして引き取られた、か……おそらくは治崎の親戚だろうな」

 

 実際はどっちも違うんだけど……まぁキメラの加入は外からはそう見えるし、エリちゃんも普通に考えたら治崎の親戚で〝個性〟も似てるんだろうって思うよね。

 

「通形先輩。大丈夫ですか? 何か不安があるなら話して下さいね」

 

「ああ……大丈夫」

 

「先輩、無駄ですよ。ボクにごまかしが通用するなんて思わないで下さい」

 

「……個人的な事情さ! 今は皆さんに情報の共有を」

 

「無駄です、無駄無駄無駄! 優先順位が違うんですよッ! 先輩が話す気になるまでボクはこの会議を邪魔し続けるでしょうっ!」

 

「あー、ったくガキはこれだから……まぁここで聞いた話でなんか不安になるようなことがあったんだろうし、関連する話ならいいんじゃねえか、今話しても。ナイトアイ、どうだ」

 

 ロックロックは悪態をつきながらも通形の話を促した。自分も様子のおかしい通形を気にしてたくせにこの態度である。

 

「……そうですね……ミリオ。察するにあの子のことだな?」

 

「あの子……先輩が目撃したその子の身体が弾丸にされてるかも、って今知ったということですか? ナイトアイってほんと情報伝達ヘタクソですねっ!!」

 

 じとーっとナイトアイをにらみつけるメスガキ。ナイトアイのぼうぎょがさがった! 

 

「ああ、なるほど。……というかそもそもなんか変な状況だな。連合の奴らと治崎の親戚の子供が連れ立って外をうろついてたのかい?」

 

 遭遇したシチュエーション自体がなんか妙なことに気づくヒーロー。まぁ不審に思って声をかけるには十分なシチュエーションなので通形が接触した事自体は分かるがそもそもなんでそうなっているのかが分からないのだ。

 

「……死柄木弔およびキメラとその子……『エリ』ちゃんは歳の離れた友人のように……昼食に向かうところだったようでした……」

 

 通形は説明した。良く晴れた昼下がりに街角でばったりと出会った愉快な3人組のことを。彼にとっては死柄木もキメラも『敵(ヴィラン)』には見えなかった。……そう見たくなかった。だって、おんなじだったから。自分と同じように〝個性〟に悩んで、苦しんでる人だったから。

 

「あの子……エリちゃんは……『使命感』を持っていました……個性の消失を、望んでいるのかも……」

 

 通形ミリオはどうすればいいのだろう。彼らをぶちのめして研究を潰して……それで……どうなる? あの小さな女の子の想いを踏みにじって、通形ミリオは誇れるのか。大人としてバシッとアドバイスをしてやろうみたいに思っていたヒーローたちも沈黙している。プロでも黙り込むほどに複雑な問題だ。

 

「だとしてもガキなんだから騙されてんじゃねえのか? 弾丸にすることまで同意してるんだったらガキでもそりゃもう敵(ヴィラン)だろ」

 

 強きオスであるロックロックから出てきた言葉はやはり強かった。6歳児を敵(ヴィラン)認定である。

 

「……裏の不確定な噂やが……『治療薬』も作っとるっちゅう話がある。エリちゃんいう子の『使命感』はそっちに向いとるんやないか」

 

「ファットガム、分かれよな……。作戦の前にガキどもがためらうような情報を追加するなよ。未熟なインターン生が混ざるのはまぁいいが、やる気のねえやつが混ざるなんて冗談じゃねえぞ」

 

 ロックロック構文は分かりにくいがこれは「この任務から外してあげたほうがいいんじゃないか」という優しさである。子供好きなんすよ、彼。最近子供が生まれたのでなおさら敏感になってます。冗談じゃねえとか言いつつも「俺がエリちゃんって子を助けてやんなきゃな」と超モチベアップしてます。

 

「せやかてロックロック。なんも知らんと作戦中に知るほうが危ないやろ。ここでショック受けとくほうがまだマシや」

 

 せやかてって現地だと言わないみたいな話があるから色々調べてみたんですけど諸説あるみたいですね。結論が諸説ありますならいちいち言わなくて良くない? 

 

「各々意見があるかとは思いますが、完成品の売買が始まるのは時間の問題といえます。速やかに治崎を逮捕し、その子供を保護する必要があるでしょう。それがこの合同調査の呼びかけをした理由です」

 

「保護って言えば聞こえは良いですけど~実際は『監禁』することになりますよねぇ? その娘が通形先輩が言うように『使命感』を持ってやってるなら『脱走』して連合の元へ戻ろうとするだけでしょ? その辺りどうお考えですか、ナイトアイ」

 

 メスガキは具体的な危惧を話した。捕まえるのは確定してるのでそこで悩んでいる場合ではない。そのことで通形を責めたりはしないが、会議を進めることにしたようだった。

 

「その可能性は高いだろうな。しかしまずはその子と話してみないことには始まらないだろう。場合によっては研究そのものは継続させるという手もある」

 

「ま、対抗手段の開発も必要だろうからそういう意見が出るのは分かるぜ……だが、本人の同意があると仮定したとしてもだ……ガキを切り刻むのはどうなんだ? あ?」

 

 ロックロックはギロリとナイトアイを睨みつけた。スラム流でしか話が出来ないのか? 束ねる事務所の程度も知れるな──という「誤解」をもたらしかねない言動は慎んだ方がいい……ここまでがワンセンテンスだ、宜しいか? 

 

「切り刻む必要があるかどうかも含めて調査が必要ということですよ、ロックロック。楽観はすべきではないが期待するくらいは良いでしょう? より良い未来を掴めると信じて、そのために行動しなければ。現実は勝手にそうなってはくれないのだから」

 

「分かってんならいい。そんじゃあそろそろ俺等を集めた理由を説明してもらおうか。活動地域もバラバラで〝個性〟にも統一感なし、挙句は初対面だらけと来たもんだ。一体どういう意図なんだ?」

 

 普通の理解力があれば確認は不要だと思うが? などとナイトアイは煽ったりしない。どっかの辺境の煽り気質少数民族とは違うからな。

 

「その前に……そもそも子供の居場所は分かっているのかしら? 『治崎』と『エリちゃん』を同時に確保しないと文字通り片手落ちよね。もちろん『エリちゃん』が無関係なケースもあり得るとは思うけれど、それこそ楽観すべきじゃないでしょうし」

 

 リューキュウは仕切り屋である。沖縄時間(ウチナータイム)という独特の時間感覚がある沖縄でも好かれるタイプの『ルーズさを織り込み済みで仕切ってくれる人』だ。沖縄人は時間にルーズと言われがちだがこれは正確ではない。『なんくるないさー』に象徴される『楽しいことはおおらかにやろう』という許容の文化だ。ノンデリ不思議ガールのねじれちゃんを「いいのよ」と受け入れることが出来るリューキュウの大らかさは沖縄の温かな風土が育んだものである。

 

「順を追って説明します。目標は『生産設備』『治崎』『エリちゃん』の全てを確保することです。どれかを取り逃がせばイタチごっこになりかねない。そこで八斎會と関係・接点のある組織やグループ及び所有している土地の全てをリストアップしております。皆様方の地元ですから見覚えのある施設もあることでしょう」

 

「おっ、準備ええやん! すぐにでも調査すんでぇ!」

 

「ああ……この資料に沿って土地勘のあるヒーローが集められたってことか」

 

「この何処かに彼女が居るのかしら……? いえ、いないのであれば研究には無関係な可能性が高くなるということだからむしろ良いことね」

 

 資料の中にわかりやすくまとめられたリストをみてヒーローたちはテンションを上げた。本当に最後の詰めの部分だけ手伝うだけでがっぽり貢献度を貰えそうなボロい仕事である。そんな感じのことを考えて女の子の夢を壊すはめになりそうというちょっと辛い現実を誤魔化す。だって「じゃあやめましょう」とか言えないもん……。

 

「ナイトアイ! 『予知』は使わないんですか?」

 

 メスガキはそもそも調査の必要あんのか? と思って問いかけた。ナイトアイが見る未来は『対処済みの未来』なのでこの場にいる誰かの未来を見れば顛末や注意すべき点などがあらかじめ分かる。

 

「基本的に調査に使うつもりは無いが……希望者が万が一居るならば使用も検討しよう」

 

「なんだか奥歯に物が挟まったみてぇな物言いだな? いいぜ、俺の未来を見てみろよ! きっと子供も助けてヤクザどもをぶちのめしてる場面が見えるはずだぜ」

 

「その前に私の〝個性〟である『予知』の詳細な説明をします」

 

 ナイトアイは自身の〝個性〟の社外秘でない部分を丁寧にわかりやすく説明した。概要やデメリットの解説。対象の人生のすべてを見ることが出来ること。しかし効果時間である1時間の間に網羅することは実質不可能であること。危険や不幸をピックアップするような機能はないので見逃しがあり得ること。見える未来はおそらく『未来を知ったナイトアイ自身と対象の両名が力を尽くしたうえでの最善の未来』であると予想され、見えた未来に関連のない他者の多大な助力がない限り覆すことは非常に困難であると思われること。その性質上『悪化』があり得るため未来を知るだけでも『頑張らなくては』『もうできることはやり尽くしただろうか』と精神的に負荷がかかることなど、多岐にわたった。

 

「……つまり当人だけでなく親しい人物の未来もある程度見えてしまいます。これにより先程説明したデメリット……すなわち『プライバシーの侵害』が友人や家族の方にも発生します。無論私も関係のないシーンなど要望がなければ決して見ません。しかしそれを貴方がたが信じるかどうか、そして貴方がたの大切な人物が信じるかどうかは私がどうこうできる部分ではありません。加えてこういった調査に『予知』を活用する場合ある程度俯瞰して全体を見る必要があるため、意図せずに何らかの隠し事やプライベートなシーンを見てしまうことはありえます。故に基本的に私は『予知』を敵にしか使いません」

 

 まぁオールマイトの未来は勝手に見たけどな。ナイトアイがこれ見ねえとやべえだろって思うような生き方をしていたオールマイトにもちょっと責任はあるけど。

 

「あー……そういうことか。威勢の良いことを言っといて悪いが俺はひとまず遠慮してぇ。俺のことはいくら見られてもいいが、妻のことを見られるのはちょっとな。やるにしたってあいつに許可を取ってからだ」

 

 このチームアップ中の行動はまぁ見られちゃうってことだもんな。つまり妻とのチョメチョメも我慢しなきゃいけないわけで……おいやめろ馬鹿。この話は早くも終了ですね。

 

「もし希望者がいらっしゃれば後で内密にでもお知らせくださって構いません。私はこの予知をヒーロー活動にのみ使うと誓っています。ただ、無いとは思いますが賭博の結果などを見たいなどといった私的利用はお断りいたします。……ただ1点を除いて、ですが」

 

「あぁ? 私的利用してもいいケースがあるってのか?」

 

「ええ。『死の予知』だけは、私的利用には含めません。調査のためにプライベートを晒す危険性を飲み込んでくれた方のご希望があれば見ますし、お教えいたします。どのような人生の終りを迎えるのかを……そして、もしその死が理不尽なものであったなら……一緒に考えます。どうすればそれを避けられるのかを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミリオ……」

 

 天喰はどう声をかけたものかと迷っていた。パトロール中に出会った少女のことを気にかけていたことは知っていた。どのような事情であるのか分からなかったが、彼女が笑えるような結末にしたいと、通形は言っていた。しかしそれは現状の情報を総合すると絶望的だ。

 

「大丈夫だ……大丈夫……」

 

 全然大丈夫じゃなさそうな表情である。無理しているのが丸わかりな暗い雰囲気に天喰は肩に手を置き……なにか言おうとして失敗するというのを繰り返している。おまえーっ!! ミリオがなーっ! エリちゃんをなーっ!! 

 

「ねぇねぇ通形! 私ね、通形が言ってくれたことちゃんと覚えてるよ! 未来をより良くするのはユーモアだって! ほら、笑おう! エリちゃんって子が笑えるような未来に、一緒にしましょうっ!」

 

 明るい笑顔で通形に励ましの言葉をかける波動。希望に満ち溢れた、未来が良くなると信じて疑わないその声色に通形は強く励まされた。

 

「……ああ……ああ! その通りなんだよね! 塞ぎ込んでても未来は良くならない! あの子が笑顔になれるように、まずは俺が笑わないと!」

 

 まだ笑顔こそ戻ってはいないが気合が入ったらしく腕をブンブンと振ってパワー!! を発揮しだした。ヤー!! 

 

「いつものミリオに戻ったな……よかった……もちろん俺にできることがあれば何でもするから言ってくれ……」

 

「今何でもするって言いました? じゃあまず『個性消失弾』の中身を食べてもらえますかっ! そしたら『治崎』なのか『エリちゃん』なのか分かりますよねっ!」

 

 ぬーっといきなりメスガキが出てきた。あまりにも唐突な出現にぎょっとする面々だったが、なんとか我を取り戻し天喰は回答した。

 

「ホーリーナイト……すまない、俺の〝個性〟は人間を喰らってもその人を再現できないし、性別なんかも分からない……一応手足を増やしたりは出来るけど、例えば顔を増やすと俺の頭が生えてくるんだ……」

 

 きっしょ。とか言うとそういう系の団体がうるさいからやめとこうね! ここまでがワンセンテンスだ、宜しいか? 

 

「ダメですかぁ。いいアイデアだと思ったんだけどな~」

 

「モノによっては〝個性〟の再現も出来るんだけど……『個性消失弾』の効果は無理だね……再現するための〝個性〟が停止するから……」

 

「ん~? もうちょっと詳しく『喰らう』の定義についてお伺いしてもいいですか?」

 

「……俺の口から俺の食道を通って俺の胃に到達すること……消化できるかどうかは関係ないから飲み込めるサイズなら何でもいけるよ……」

 

 波動の『波動』とかも調整して口に入れてもらえば再現できる。汎用性の塊のような〝個性〟だ。

 

「……へぇ~。気をつけないといけませんねっ!」

 

「ホーリーナイト! もしかして通形を励ましに来たの!? そうだよねっ!」

 

 にこにこしながらふわ~っと浮かんでメスガキに近寄る波動。ミリオと天喰はドキドキしながらそれを見守った。

 

「…………」

 

 ふわ~っと浮かんで波動から離れるメスガキ。一定の距離を保ち続けている。通形は大げさにずっこけた。もちろん場を和ませるための大げさなムーブで本当にこけたわけではない。ルミリオンは体幹もすげえからな。

 

「何をやってるんだ、しょうもない。さっさと帰るぞ」

 

 お迎えに来た相澤が雄英への帰還を促すとメスガキはそのまま相澤の背中に隠れた。幼児すぎる……。

 

「あっ! 先生! もうちょっと! もうちょっとだけお話させて! いいでしょ!?」

 

 相澤の腕を掴んで引っ張る波動。イレ先はタイプの違う超かわいいJKが背中と腕にまとわりつくというボーナスステージに一切喜びを見せずただひたすらウザそうにしていた。

 

「はぁ……波動。いきなり距離を詰めても相手は引くばかりだぞ。お前が心を開いたとき、クラスメイトはお前にどう接してくれたか思い出せ」

 

「はっ……! ご、ごめんねホーリーナイト……またね!」

 

「……べーーっだ!!」

 

 まさかのあっかんべーである。これは……メスガキ! 

 

「ムゥーっ!! ちゃんと謝ったのにーっ!! なんで挨拶しただけでベーされなきゃいけないのっ! おかえしっ! べーーっ!!」

 

 まさかまさかのあっかんべー返しに天喰と通形は天を仰いだ。よ、幼稚……! 小学校高学年くらいで情緒が止まってるのは知ってたがこれほどだったとは……! しかしこれは意外な効果を生んだ。

 

「ばーかばーかっ! がきんちょっ! 幼稚園児ーっ!!」

 

 しょうもない罵倒。しかしメスガキから初めて波動に能動的なアクションを行った。

 

「ばかっていうほうがばかだもん! それにこどもじゃないし! 私のほうが背が高いし! おっぱいもあるもん!」

 

「あああああああ!? 宣戦布告かぁ!? ぼかぁねぇ! その気になればねぇ! いくらでも盛れるんだよ!!! 刮目せよッ!!!」

 

 力強い宣言のあとぐぐぐっとデカくなるメスガキ。サイズだけが拡大したのでリノダヨーって感じ。天喰はあっけにとられ、通形はあっはっはと笑っている。

 

「くだらん喧嘩をするな」

 

 リノダヨーにしゅるるっと捕縛布が巻きつきズルズルと引きずられて出口に向かった。相澤はこれが着ぐるみみたいなもんだと知っているので地面を引きずることに全く抵抗を覚えていない。

 

「あーっ! せんせいずるだ! 逃げるなひきょうものーっ! 逃げるなーっ!」

 

 相澤のなにがずるなのか全く分からないがとにかく波動は不服だったようだ。メスガキに味方しているように見えているのだろうか? 不思議! 

 

「ふっふーん! ボクはキミなんかに構う時間はないんだよっ! 負け犬はここで一人で乾いてろっ!」

 

 メスガキもメスガキで何を勝ち誇っているのか全く不明である。相澤と一緒=勝利みたいなルールがいつの間にか設定されているのだろうか? されるがままに引きずられることも間違いなく楽しんでいる。

 

「一人じゃないもん! 私は……雄英BIG3!!! ねっ、通形、天喰くん!」

 

「おっ! そうだね!」

 

「…………」

 

 天喰はとりあえずキリッとした顔だけを作った。何を言えばいいか分からなかったからだ。なんか悪くない雰囲気なので、失敗したくない、喋りたくない! という気持ちでいっぱいだ。

 

「何がビッグ3だよ! ボクが入ってないのにトップに君臨とか言われても虚名だろっ!」

 

「うぐっ」

 

 心はガラスの天喰はほんのり自覚があったのでメスガキの一言にとっても傷ついた。

 

「あああああああ! もうっ!! よくも天喰くんをっ! これはもう……勝負だよっ!!!」

 

 ぷんすか! という感じで玄関までふわふわついてきた波動。相澤は事務所から出るまでに話が終わらなかったので立ち止まってあげた。やさしい。

 

「ハァー?? まさかボクに勝てるつもりなんですかぁ? いい度胸じゃん! ハンデとして勝負の内容はそっちが決めていいですよ、せ・ん・ぱい!」

 

 にや~っと笑うメスガキ。もう本当に邪悪。勝利を確信したいやらしい笑みである。波動はそんなメスガキに眉をきりっとつりあげつつも笑顔で宣言した。

 

「今年は私も本気でやるって決めてるの……文化祭の、ミスコンで決着をつけようっ!!!」

 

 お前ら文化祭の前にヤクザハウスにカチコミするの忘れてないよね? エリちゃんが泣いてるぞ!! いや、泣いてるのはオバホだったわ。じゃあいいか。

 




独自設定とか

・メスガキのコネ:ぶっちゃけプロが許されてることなら何でも許される。でも怒られることはありえる。
・やさしい相澤先生:本人の自覚してない部分でもハードル下がってる。
・I・アイランドの脳無:メスガキの〝個性〟の中で粉々になったやつとか。
・お泊りビッグ3:ねじれちゃんは別室。バブルガールと一緒。当たり前だよなぁ?
・何度も撃たれたら:劣化品でも十分やべえと思う。個性因子って爛れるらしいし。
・座席の位置:メスガキはイレ先の横に座ってるのでミリオから一番遠い!
・捕らえた子:人情噺としてニュースになったのでこういう表現。
・ロックロック:メスガキにかっちゃんとの出会いがなければ揉めていた。
・スラム流:クルタ流まじやべえ。
・死:ナイトアイの個性の使用上ほぼ間違いなく見る羽目になるやつ。そりゃ病むわ。
・天喰の再現:人間食ったらどうなるかどっかで語られてたっけ?ここではこんな感じということで。
・我慢の限界波動:お姉さんぶってたけどダメだったよ……。
・おっぱいまうんと:はしたないですよ!
・メスガキダヨー:圧迫感のある見た目。
・ミスコン:メスガキが出まぁす!
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