~キス魔が行く艦これ~ 寂しさを埋めるもの   作:波切涼

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やっと冬休み!ということで続きをアップします!
いやあ、忙しかった……。

でも、先週艦これライブに遠征できたからよし!!
遊撃隊マジ可愛すぎる。


第8話 北方より愛を込めて。

「諸君!これから、北方モーレイ海に潜む敵艦隊撃滅のための、艦隊決戦を実行する!」

僕は執務室に集まった艦娘に発破をかける。

 

山城、加賀、鈴谷、龍田、霞、不知火。

着任してから初の本格的な海戦だ。比較的練度の高い艦娘達を選抜した。

 

新装備も明石とコツコツ開発し、長年の初期装備から皆卒業していた。

 

「内容は昨日話した通りだ。」

 

「敵は戦艦と重巡を軸とした水上艦隊。」

 

「こちらも、戦艦と正規空母の火力で正々堂々叩きのめす!」

 

大湊に新しく加わった山城と主軸として、敵を撃滅する作戦を夜なべして練ったのだった。

 

「初めての戦いだが、油断せず行こう!」

艦娘の皆は、力強くうなずいていた。

 

* * *

 

第8話 北方より愛を込めて。

 

 

吹雪が吹き荒ぶ北方海域を、6隻の艦娘が航行する。

 

 

「こちら加賀、航空レーダーに敵航空機の反応有!直掩機が迎撃に向かいます!」

十分に周囲を警戒していた加賀の鋭い声が飛ぶ。

 

『こちら鎮守府、状況了解。手筈通りに敵艦を撃滅してください。』

無線の大井から、指示が来る。

 

加賀は予想していたのか、直掩機を空中で待機させていた。妖精たちが”零”を操り、北方の冬空を駆ける。

 

敵機ときりもみをしながら飛ぶその姿は自由で美しく、さながら番の海鳥のようであった。

 

星型複列に並ぶ14気筒の発動機、”栄”。それが咆哮にも似た唸りを上げ、最高出力の1100馬力を発揮する。

 

排気音の中に、きいん、と音叉にも似た音がする。スーパーチャージャーから発せられるその澄んだ音色は、命を持ったように見える機体には、かえって似つかわしくなかった。

 

明石率いる、大湊の整備妖精の仕事ぶりは、いつの間に芸術の域にまで高められていた。どこの工場にもあるような旋盤やプレスを使って作られた金属部品の公差は、わずか0.001ミリしかなく、もはや神業と言っていい精度を誇っていた。

ピンセットを使って組上げられた”作品”は、絹のような滑らかな往復運動を可能とし、レシプロエンジンすらも高尚な楽器へと変えた。

 

その甲斐あって、加賀が繰る熟練の零戦はずば抜けて高い運動性能を持つ。

 

いわゆるネームドと呼ばれる歴戦の機体は、開発中の新型機にも匹敵する対空性能を誇っていた。

 

「敵艦載機の第一波と会敵!少し漏れたわよ!」

あらかた敵機を落とした加賀が唇を嚙みながら警告し、ポニーテールがふわりと揺れる。

 

しかし、それを読んでいたかのように山城が機銃を構えていた。

「対空戦闘用意!!」

 

「てーー!!!」

残る数機くらいでは、戦艦を含む機銃掃射には耐えるべくもない。

 

「敵戦闘機全滅、制空権確保!」

不知火の声。

 

「ナイス~、加賀さん!」

 

「私は敵機を相手するから、山城、敵艦をお願いするわね。」

経験豊富な加賀が指示を出す。

 

山城は初陣に緊張した様子ながらも、こくりとうなずいた。

 

「敵旗艦、主砲射程圏内!」

雪の中に、重厚な35.6cm連装砲12門の威容が映える。

 

重い主砲が油圧でじりじりと動き、射撃管制レーダーに示された地点を狙う。

 

「敵の移動速度20ノット!偏差修正!」

山城の肩では、射撃担当の妖精が素早く計算を行っている。

 

「全砲門発射用意、主砲、よく狙って、てぇーっ!」

 

途端、音が消え、閃光とともに爆轟が響いた。

 

小さな妖精は、爆風にたなびきながらも、山城にしがみついている。

 

砲門からの衝撃波により、海面が一瞬抉れ、小さな波が生まれる。

 

「これが、戦艦……。」

初めて見る超弩級戦艦の一斉射に、霞は言葉を失っていた。

 

「夾叉弾確認!」

偵察機妖精が弾着結果を山城に伝える。

 

「惜しい!次こそ当てるわ!」

初陣としてはまずまずの精度に、胸を張った様子である。

 

「距離修正良し!主砲構え!」

0.01度単位で仰角の微修正を行う。

 

「てーー!!」

 

戦艦の主砲は射程が長いため、弾着まで数秒の猶予がある。

 

……敵の悲鳴が聞こえる。

「敵旗艦軽空母に直撃、轟沈しました!」

 

「やったわ!」

山城の固い表情が少し緩む。

 

「やるう!旗艦を落とされて、敵が動揺してるよ!」

鈴谷も初戦のはずだが、それを見せないほどに冷静だった。

 

「次は、私の20.3cm連装砲が火を噴く番ね!」

鈴谷は最大戦速まで一気に加速し、敵の重巡リ級に肉薄する。

 

「flagshipかなんだかしらないけど!」

急な突進に虚を突かれた敵艦は、背を向けて逃げるそぶりを見せる。

 

だが、快速35ノットからは逃げらない。

 

flagshipのこめかみに砲門を当て、彼女はためらいなく……、

 

「こっちには提督の”アレ”が待ってるんだよっ!」

引き金を引いた。

 

「リ級flagship轟沈!」

不知火が無線で報告する。

 

この鈴谷の一撃により、戦いの趨勢は決まった。

 

「あらあら、逃がさないわよぉ~?」

怪しく龍田の眼が光り、敗走する敵艦隊を次々と薙刀で仕留める。

 

「次の獲物は、どこかしらぁ~?」

 

「……提督、かしら?うふふ。」

龍田は普段の様子のまま、鬼人のごとき強さを見せていた。

 

『違うって!!敵は、し・ん・か・い・せ・い・か・ん!!』

提督が慌てて無線に割り込む。

 

皆、くすくすと笑っていた。

 

「遭遇した敵艦隊を撃破、S勝利です!」

不知火も骨のある敵の撃破に、どことなく嬉しそうだ。

 

 

『みなほとんど初陣なのにやるじゃないか!』

我らが提督の喜ぶ姿が、目に浮かぶようである。

 

『このまま気を引き締めて、敵地深部に潜入してくれ!』

 

「こちら加賀。了解しました。」

 

「やった!!」

鈴谷が嬉しそうに加賀を抱きしめた。

 

「鈴谷、山城。今戦ったのは前哨艦隊よ。いつ本隊が来るかもわからない。気を引き締めて。」

戦い終えた正規空母は、いつもの鉄面皮を崩さない。

 

「加賀さんは真面目だね~~。」

 

「ちょっとくらい休憩しよう、ね?」

鈴谷は、肩で息をしている霞の方をちらと見て言った。

 

霞はこれまで遠征主体で過ごしており、始めての実戦に空回りしていたようだ。

 

「……交代で休みましょう。」

加賀も意図に気づく。

 

「やった!」

 

「じゃあ駆逐艦の二人は休んでていいよん!」

 

「鈴谷、感謝します。」

不知火は疲れを見せていないが、霞はすこしふらついていた。

 

「あ、ありがとう鈴谷。少し、緊張しちゃって。」

 

「気にしない気にしない!」

鈴谷は、鎮守府きってのお姉さんとして慕われるのであった。

 

* * *

 

しばし後。

小島を見つけ、艦娘たちは交代で休息をとる。

 

疲れの見えていた霞も、持参していたお茶で一息ついたのか、顔色がよくなっていた。

 

……そんな時。

「彩雲のレーダーに反応あり!未知の敵艦隊接近中!」

艦隊の眼である加賀が動いた。

 

「構成は……。」

 

「……え。」

……あの加賀が、絶句していた。

 

「旗艦、……姫級!?」

 

「なんですって!!」

一緒に艦載機を飛ばしていた龍田が目の色を変える。

 

「なぜ、こんなところに!?」

加賀は、悲鳴のような声で無線機に叫んでいた。

 

 

* * *

 

 

「姫級だって!?」

提督は、鎮守府の執務室で無線機からの悲鳴を聞いていた。

「みんな、なんとか持ちこたえて!」

大井は必死で加賀たちと交信を続けている。

 

 

「とても歯が立たないぞ!直ちに退避せよ!」

モーレイ海に姫級が出たという話など、ついぞ聞いたことがない。

 

近くでいるとすれば……。

 

もしかして、北方棲姫か!?、と提督は思い至った。

 

『加賀了解!帰還するため、6隻で回頭中!』

 

『……駄目!回り込まれたわ!』

 

『敵は、駆逐艦くらいに見える、白い深海棲艦!!わ、わ、艦載機飛ばしてきた!!』

焦る鈴谷の声。見た目からして北方棲姫で間違いないだろう。

 

唐突に敵航空機が現れ、味方艦隊に襲い掛かったようだ。

 

『くっ!航空爆弾被弾!山城、中破!』

艤装が重く、動きの鈍い山城がやられる。

 

『ああっ!魚雷が!』

Mk 13 航空魚雷が、霞の近くで炸裂したらしい。

 

「霞、中破……。機関部をやられたから、第3戦速までしかでないわ…。」

 

……くっ!さすがにこの戦力では歯が立たないか……。

 

だが、あの”姫”は陸上型のはずだ。

 

……どうしてモーレイ海などにいるのだろう?

 

劣勢に頭を悩ませながらも、思考を続ける。

 

『……私が、受けて立ちます。あの子から貰った、”零”、皆を守って!』

加賀の凛とした声が聞こえる。

 

『私は、昔とは、違います!!』

普段落ち着いている一航戦が、吠えた。

 

『もう、誰も!沈ませはしないっ!!』

 

『もう、あなたのような艦娘は、生まない!』

 

『赤城さんっっ!』

 

……加賀は、かつて赤城が轟沈し、傷心していたといった。

その心を僕が救ったのだと。

 

飄々とした様子の日常の裏には、激しい後悔の念が、氷山のように渦巻いていたのだろう。

 

その一角が、垣間見えた。

 

『制空権拮抗!』

不知火が叫ぶ。

 

『今のうちに、浮き砲台を狙うわ!』

中破の山城は、戦意を喪失していない。

 

『あいつらは陸上型だから魚雷は効かない!』

 

『だから、わたしがっっ!!!』

 

『決める!!』

 

『ってぇええええ!!』

残る砲門で斉射する山城。

 

加賀が敵艦載機と激しいドッグファイトを繰り広げる中、この場唯一の戦艦が、大口径の主砲で敵艦隊を撃破していく。

 

執務室の僕には、戦場から入ってくる無線しか聞こえないが、

 

皆の姿が、

 

皆の顔が、

 

皆の心が、

 

手に取るように想像できた。

 

「鈴谷、龍田!!」

 

「霞を守りながら牽制しろ!山城を支えろ、あわよくば砲台を沈めろ!!!」

 

『いぇっさー!!』

 

『わかってるわあ、提督。あんなやつら、刃の錆にしてあげる!』

 

「霞、大丈夫か! 少しでも撃てるなら、姫級を狙え!加賀の支援砲撃をしろ!」

 

『…提督、大丈夫よ。……待ってて加賀さん!』

 

これで、指示は出した。

 

あとは、祈るだけ……!

 

「加賀さんの艦戦が枯れそうっ!!まずい、制空権が!」

艦載機の残機を計算していた大井が叫ぶ。

 

「いえ、敵も同じ……!?」

 

 

『ここは、譲れませんっ!!』

 

 

『……! ……ッ!!』

声にならない声。うちの艦娘じゃない、な……?

 

 

『あ!!』

 

『加賀さんのゼロ戦!まだ、飛んでるっ!!』

鈴谷の声が跳ねる。

 

 

「敵艦載機、全滅させました!」

大井が歓喜の声を上げる。

 

 

『……やりました。』

自慢げな加賀。

 

 

「さあ、敵は丸裸だ!総攻撃をかけろ!!」

僕は、命令を出そうとす、るが……。

 

 

『待って!』

山城が無線に割り込む。

 

『攻撃、中止して!』

 

「山城、ど、どういうことだ」

 

『て、提督の言うとおりだよ、どったの、山城?』

鈴谷が困惑する。

 

『私、あの子に助けてもらった気がするの……。』

 

『山城は、自分で鎮守府の近くに漂着してたんじゃないの~?』

龍田が当然の疑問を口にする。

 

『今、思い出したの。』

 

『私がこの世に改めて顕現してから、あの子が近くの海域まで連れてきてくれた……。』

 

『二人、いた、気もするけど……。』

 

『もしかして山城の恩人!?』

霞が驚いている。

 

『そういうことかもしれないわ……。』

 

『だから、耳、澄ませて……。あの子を見て。』

山城がどこか確信めいた声で言った。

 

「提督、全無線周波数に信号あり。」

同時に、大井が妙なことを言い出した。

 

「軍用回線に、何事だ!?」

 

「とりあえず、無線のゲインをあげろ!」

 

「了解、ノイズに埋もれるぎりぎりまでパワー上げます。」

 

「……え?」

機器を操作する大井の困惑する声。

 

「秘匿回線に何者かが無理やり割り込んできています!」

 

「暗号化してるのに!?どうやって?!」

焦る僕たちを前に、声が聞こえる。

 

『……。……!』

 

『……テ!!』

 

『…セテ!!』

 

『会ワセテ!アノヒトニ!』

 

『あの人?』

現地では、直接声が聞こえているであろう鈴谷が、思わず答える。

 

僕にも、例の姫級であろう声が、明確に聞こえる。

 

『アノヒト!アサノ!』

 

『浅野って……。』

 

『提督の名前じゃん。』

鈴谷、建造したばかりでも、僕の名前を覚えていてくれたのか……。

 

嬉しい……って、違う違う!

 

『会イタイ……、アサノテイトクニ会イタイ…!』

 

『って、えええええ!!』

無線の声が裏返りそうなほど、艦娘たちは驚いていた。

 

ついでに、僕も。

 

 

* * *

 

『ここは一時休戦とし、姫級深海棲艦から事情聴取してくれ!』

提督からの指示が艦娘たちに飛ぶ。

 

とは言ってもたこ焼きのような見た目をした、凶悪な砲台が近くにいては落ち着いて話ができない。

 

そこで都合のいい小島を見つけて、そこで武器を置いて話せ、ということであった。

 

なぜそんなに話がすんなり進んだかというと……。

 

「ホッポ!ニンゲン嫌イジャナイ!戦イ、スキジャナイ!」

 

「オ姉チャント、ハグレタダケ!」

こんな調子で、姫級とは言いつつ、単なる迷子にしか見えないからだった。

 

白いワンピースにミトン手袋。そして、裸足。

 

この子供のような深海棲艦が、北方棲姫の姿であった。

 

「それで、ほっぽちゃん、でいいのかな?はぐれたのは分かったけど、どうして提督に会いたの?」

 

「それも、うちの提督に。」

「ホッポ、デイイ!」

とりあえず、人当たりのいい鈴谷が彼女の相手をする。

 

まるで、迷子の面倒を見る女学生のようだった。

 

「ホッポ、アサノト”ケッコン”スル約束、シテタ!」

”姫”が言うや否や、艦娘たちは胡乱な表情になる。

 

「ダカラ、鎮守府ニ、契約、シニイク!」

この姫級は、妙なことを言い出していた。

 

「結婚って、あの結婚?」

いつも笑顔の鈴谷のトーンが、明確に下がる。

 

……まさか、ね。いくらあの提督でも、こんな幼子にまで手を出したりしないでしょ。

 

皆の眼はそう語っていた。いや、蜘蛛の糸のような、そんな一縷の望みにすがっていた。

 

『ウン!ホッポ、テイトクノ、オ嫁サンニナル!』

だが、手のひらの雪の結晶が溶けるがごとく、彼女たちの淡い期待は消え去った。

 

急に吹っ掛けた、横殴りの吹雪の中で、艦娘は自分たちの心まで凍てついていくのを感じていた。

 

あの男、一回沈めたほうがいいのでは?

 

いや、沈めなければならない。

 

大湊所属の艦娘たちは、目で合図しながら、そう決意を固めるのであった。

 

* * *

 

大湊鎮守府には、艦隊が無事帰投していた。

 

姫級と邂逅しながら、誰一人、欠けていない。

 

このような小人数の鎮守府なら大戦果である。

 

……だが、彼女たちは未だ艤装を外していない。

 

戦いがまだ終わっていないことを示していた。

 

「誤解だああああ!!」

執務室で提督が叫びながら、天を仰ぐ。

 

鹵獲?した北方棲姫が椅子に座る提督の胸にしがみつき、首に手をまわしている。

よく言えば、仲のいい親子に見えるだろう。

 

だが北方棲姫は、提督の頬にキスの雨を降らせながら、契約を迫る。

「ケッコン!ケッコン!」

 

「提督~?いい加減にしてほしいかしら~?」

痺れを切らした龍田の圧にも動じない。

 

さすがは、姫級であった。

 

「どうしてこうなった……。」

キスマークをつけながら、提督は呟く。

 

 

窓の外を見ると、冬の大湊には珍しい、晴れ間がのぞいていた。

 

 

 

 

 

第8話 北方より愛を込めて。 了

 

* * *

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