彼ら混合簡易パーティーは現在逃げの一手を取らざるを得ない状況にあった。
A+級冒険者ユードリック・ケンプ、またの名を『
彼の防御力はどんな剣も通さないと呼ばれ、防衛戦ではたった一人で一つの街を守ったと言われている。
A+級冒険者リトリー・アラン、またの名を『
彼女の魔導はどんなものよりも早く、気がつくと魔導が身体に当たっていたと万人に言わせるほどの腕前である。
B級冒険者ルカ・デルフィニウム、またの名を『
彼女の懐には千を越える数多の道具が収納されており、その道具で救われた人は何千、何万と存在していた。
そしてリイシャ、またの名を『同胞喰らい』
彼は、そんな『夜露の誓い』が大打撃を受けるようなダンジョンを、たった一人で25階も制覇した偉業を成し遂げている。
現在その彼らが逃げるしかない状況にある。
「リイシャくん!『何が』欲しい!?」
「LiiSya!」
「了解!」
ルカの
そして取り出されたるはブラッドウィドウの毒腺を蜘蛛糸で包んだ毒袋である。
リイシャは器用に針で受け取ると、袋へ少しだけ傷をつけ投げる。『ソレ』の顔に当たるもダメージを負った様子はなかった。
しかし『ソレ』に追われるユードリックが、蓄えた経験値から判断をする。
「目潰しになってないが……鼻は効かなくなってるよな!?さっきよりも狙いが雑になっている!当たりだ!これならまだ受け流せる!」
その言葉の後に、リトリーが持つ銀色に輝くフリントロック式長銃のような
リトリーは
「……マナの充填完了……!下がって!」
その言葉にユードリックとリイシャは後退しようとするが、『ソレ』は2人を逃さんと蛇腹剣のような尾を絡ませようと伸ばす。
「なんとぉ!
ユードリックの腕が黒く輝きを放ち、その尾を巻き取り掴む。その隙を
「巻き込まれるのをコラテラルダメージと言ったか。
リトリーの魔導補助端末からそれを支える腕までが複数の魔導陣で覆われる。
彼女だからこそ出来る
「
そしてリイシャが生まれ持つ特異性の象徴とも言える
「
『ソレ』に虹の燦めきと銀の杭が刺さり、胴体の中心、そして尾が根本から吹き飛ぶ。
砲撃と杭により向こう側が覗ける程の大きな傷と武器の喪失、それで希望が訪れるはずだった。
しかし『ソレ』から発せられる『
「……クソッ!ルカ!エーテル丸薬まだある!?」
「これ以上は副作用が酷くなる!」「いいから!」
ルカの懐から追加の丸薬が射出され、リトリーの口に入る。
ガリッ!と音を立て丸薬を呑み込み、魔導のチャージを始める。
「供給……展開……圧縮……ぐっ……!」
毛細血管が切れ血の涙を流しながらもリトリーは、更に圧縮を重ね
腹に穴を開けた危険度が高いリトリーから始末しようとした『ソレ』であったが、何度目かの強制的な引き寄せに手元を狂わされる。
「余所見をするなァ!
『ソレ』に表情があれば残念といった面構えになっていただろう。『ソレ』は減った苗床の補充もしたかったが、こうまでなら仕方がない。我が子へ喰わせる食べ物に加工すると考え直してしまった。
そして我が子がここまで抵抗している理由も分からない。もしかしたら洗脳されたのかもしれない。過去にはそんな事をしようとした苗床も居たなと『ソレ』は思い出す。
言わずとも『ソレ』はリイシャの『親』であり、子を思う姿には変わりなかった。
突如崩壊した家族の唯一の生き残りを、『ソレ』は狙っている。
無論リイシャにとっての親とは、『苗床』である。
リイシャは『ソレ』を親と思っていない。
★
子蜘蛛しか居ないし楽勝じゃ〜ん?とか思ってたけど、その奥がヤバかった。すげぇ量の蜘蛛の死体があった。
なんすかリトリーさん。え?こいつらまでは始末出来た?100匹以上子蜘蛛じゃなくて成体が居るよなこれ?
訂正しよう。君たちは駆け出し冒険者では無く中堅冒険者だったのだな。おっしゃ!そんならここら辺に何かがあるんだと。何かって何なんだよ。魔力の痕跡?頑張ってつかあさい……。
そんじゃ暇だし安全確認でもしようか。右良し、左良し、もう一度右。
……右。奥に何か居る。この気配……よろしくない。とてもよろしくない。嘘だろ?アイツが来たのか?
鋭い爪、俊敏な尾、硬い皮膚、そして高い知能。2mはある二足歩行も出来る化物。宇宙から来たとしか思えない風貌のエイリアン。
逃げれるか?逃げるしかないが、まず隠れられるか?彼らにどのように伝えればいいんだ?危険をどう――。
「なっ、
こ、この声は!おいおいおいおいおいおい!!ルカ!なんで来ちゃったの!
来ちゃったならさぁ!守らなければならないんだよな!
覚悟決めろー。因みにアケーディアってなんすか?
でもよ〜なんとなく分かるぜ〜?アケーディアってのはよろしくないってのがよ!
ああ怖い。死にたくない。一人は嫌だ。死体なんて見たくない。アレになってほしくない。
ふぅ。
リイシャ、行きまーす。
「
絶対に外さない。一発で終わらせる気持ちでやる。
「
頭部に目掛けて力込めて!ガツン!いい音ォ!
ガツン!?おいまて穴空いたぁ!?自分いけるっすか?あのヤバそうなエイリアン倒せるんすか!?
「おい!なんだ今の……おとは……」
マズイ!ユードリックのSAN値がピンチだ!き、きつけの為に柔らかそうな部分で薙ぎ払うか!?こぶしのつもりで!
「
ルカ、適切っすね。ありがとうございます。あ、奴もなんか動かないっすね。ありがとうございます……?なんか傷無くなってない?
「あ、ああ!任せろ!」
「リトリー!!聞こえる!?チャージをっ……きゃっ」
なんすかそのとんでもなく太い
そいつで斬るつもりか!?させるかよ!あっちは長剣、こっちは針!でも根性じゃ、負けねぇんだよ!クソエイリアンがよ!オラッ!パリィ擬き!
振るわれた長剣を受け流して、空を斬らせる!
成功じゃこの野郎!でもアイツの尾、あり得ない位重い。捌ききれるか不安になってくる。
しかも俺この針を防御に使うなんて初めてだよ……。ガキンとかいう重い音も響かないでもろてもよろしくて?
「リイシャ!チっ……この子達をやらせるかよ!
うお!なんだユードリックの腕が黒く輝いてるんだけど!カッコイイ!
何それエイリアンを吸い寄せた!?
「リイシャ!やれ!」
何もわからないけど委細承知!「
土手っ腹に穴ぁ!開けて……。開けて……?治っていってる……?
「
「はぁ……はぁ……ここにいたのね。声だけ聞こえてからずっと……圧縮は続けてたわよ」
ねええ!知らない言葉多い!リイシャにもわかる言葉で話して!仲間はずれにしないで!
「もう少しでアレが使える!もう少し粘って!」
アレって何!?教えてくれればもっと活躍できる筈です!いかがでしたか?
とりあえず、後退しながら戦うって事でいい?俺もうね。逃げる。てか逃げれたらいいな。3人が。
おや、ルカさんなんですか?そうですね。私達の弱点は嗅覚のはずです。それをどうにかするものがあるといいでしょう。いかがでしたか?
もしかして毒液効くか?俺も臭くて嫌だもんなアレ。
★
「(……
彼女は暴風を起こしながらミンチを量産し、進み続ける。
「(ブラッドウィドウが浅層に多いのも不思議です。彼らは中層から深層に住むようなモンスターのはず。それが
それから数刻。ブラッドウィドウの波も消え静寂が訪れていた。
「……あら?焚き火の音……?」
白く輝く水晶だらけの洞窟で、ラクナは数刻振りに赤を見た。彼女が曲がり先にある何かを見ようと覗き込むと銀の燦めきが目の前で止まる。
全長550mm、重量8kg、ダブルアクション、装弾数驚異の8発。ヒトでは連続して撃つことも出来ない高反動のロマン溢れる芸術品。
対
「そこの……何者だ。どうやってここまで来た……」
その反応にラクナはくしゃりと破顔し言葉を続ける。
「お忘れですか?ザックさん。『アナタの友が変わったとしても諦めてはならぬ。希望や奇跡は自分達で作れるのだから』」
すると
「おいおいおい!どうしたんだよその姿!『シスター』よりも『ナナリー』に似てるじゃねぇか!?カーッ遂に
突然早口で話し始めるザックだが、それにラクナは目を白黒させた。
「え、ええと……あの時録らせて欲しいって言ってた経典の読み聞かせ、まだ売ってらっしゃったのですか……?子どもたちの為にと聞いてたのですが、ASMRとは何でしょう?ナナリー様がお金の心配入らないよと仰られていたのはこの事でしょうか?」
「お?ナナリーから聞いてなかったのか?あいつが一大ムーブメントになるって言ってたから1枚噛んだんだが……。その時の契約書も残ってるから後で見るといい。ところで、どうしてこんなところにまで来たんだ?」
ラクナは微笑みの中に少しの怒りを含ませながらも柔和に返事をする。
「そのナナリー様から、気にかけてほしい方がここに居らっしゃると神託がありました。その者の名はリイシャと言うらしく、……ご存知でしょうか?」
その言葉にザックは光を細め、声を低くする。
「ご存知も何も、ここのダンジョン名がリイシャダンジョンさ。で、リイシャってのは共食いをする辺鄙な『
「
「今のところは
今は護衛と休憩中さ。ザックはそう言い切り口を閉じた。
「そのギミックはどちらにありますか?」
「ははっ!そうだったな。あんたの得意分野はASMRなんかじゃなく『
「そう呼ぶのはあなた達しかもう居ないでしょうね」
グラブルしてた。古戦場終わったからあげ
ちな、アケーディアには複数の使い方があります。
暴走個体や計り知れない無関心、罵倒などです。