ありふれた異世界で転生特典【ボカロ曲】を使って楽しんでみる 作:夢のまた夢
「転生者?お前がか?」
まあ信用できないのもわかる。俺も急に幸利あたりから「俺転生者なんだ」って言われたら真っ先に頭の病院を紹介する。
「伊織……なんで俺に教えてくれなかった!!」
「ま、反応としてはハジメが正しいだろうな……って、え?」
予想とは斜めの方向にツッコまれ、理解能力が壊滅した。復旧しようと試みるが、ハジメは一向に止まる気配はない。
「転生者なんてラノベの醍醐味じゃねぇかよ!てことは記憶があるんだな?どれくらい鮮明に覚えてる?神様には会ったのか?どんな能力手に入れた?ほらほら早く答えろ!」
「落ち着けこのバカ!説明してやるからちょっとそこに座ってろ!」
スッ
うお、コイツ律儀に座り始めた。しかもコイツご丁寧に正座してやがる!
ま、まあとりあえず落ち着いたようだし、全て話すか。
──────────
「──これが俺の能力とその経緯だ」
「なるほどな。にしても、トータルで見たらそっちの世界死者少なくね?でも文明レベルも同じようだしなぁ……?」
「人という区分がいつ頃から入っているかにもよると思うけどな。だが確かに俺の元いた世界にもボカロ曲はあった」
小さな頃に俺も同じように感じたことがある。
死んだ世界と今いる世界が、怖いほど酷似している点だ。
『ボカロ曲』という文化や、料理のレベル、社会的構造などがここまで似通っていると、とある一つの仮説が思い浮かぶ。
「……!『平行世界』か」
「あり得なくはないだろ?」
どこかの地点を境に分岐した、いわゆる
それならもしかしたらこの世界にも前世の俺もいるのか?
だから
シェルネ、思った以上にアフターケアバッチリだったんだな。今度何か買ってあげよう。
「いやまあその話は別にいいんだ。帰ることが先決だからな。どこまで神代魔法は集まっている?」
「ああ、重力魔法と再生魔法の二つだ」
「お?思ったより少ないんだな。俺は再生魔法と重力魔法、あと空間魔法を手に入れている」
「お前ミレディの迷宮攻略したのか!?ストレス溜まっただろ……」
「もうめんどくさくなって壁すり抜けて透明化してマップ使って魔法陣まで一直線」
「なんともまあチートをふんだんに使いやがって……」
どうやらハジメはミレディの迷宮にて散々な目にあったらしい。鉄球が転がってきたり、スタート地点に戻されたり、落とし穴の先に大量の蠍がいたり、スタート地点に戻されたり、スタート地点に戻されたり……どんだけスタート地点に戻ってんだよ双六か。
「ちなみにどんくらいミレディ嫌い?」
「目の前にいたら容赦なくスクラップにして海に廃棄処分するくらいには」
いや容赦ねぇなおい。目に光がこもってないし、コイツ、絶対するだろ。
なら確かめてみるか。(悪どい笑み)
「【ワープアンドワープ】」
「──────ぁあああ!いて!?イオくん急に何するのさ!」
「おい伊織、誰だソイツは?」
俺は天井から黒い穴を出現させ、ミレディを特殊召喚した。
「え?ミレディ」
そう聞くや否や、それを拒絶するかのようにミレディに向かって発砲する。その後に使った魔法を見て、目を開く。
弾丸を重力魔法で床に埋め込んだのだ。
ちなみにそのとき俺は(下の階の人大丈夫かなぁ……)と心配していた。
「……チッ」
「ちょわ!危ない危ない。いやー、この体じゃなかったらいっぱつでお陀仏だったネ⭐︎」
「おい。お前は本当に、あのミレディなのか?」
さっきの重力魔法を見てもなお、ハジメはミレディのことをうたがっている。だが何も不思議なことではない。俺だって同じ立場なら信じることはできないからだ。
「初対面の人には、まず最初に自分から名乗るって知らないのかなぁ?これだから最近の若者は……」
ため息をつきながらハジメの神経を逆撫でするように、ハジメの聞き覚えのあるセリフを吐いた。
「いや初対面じゃねぇだろうが。なんならさっきの店で会ってるだろうが。それと伊織」
「ん?なんだい?」
せっかく二人のやりとりを肴に酒の代わりでミルクティーを飲もうと思っていたのに。
「なんでわざわざここにミレディを呼び出した?」
「そうだよイオくん!急に呼び出すなんてヒジョーシキだよヒジョーシキ!」
「「お前が常識を語るな」」
話が逸れた。とはいっても別にここで話が終わるのだが。
「ん?意味なんてない。なぜ何事にも意味があると思うんだ?」
「よし、コイツ一旦シバこう」
「賛成」
「OK、OK。二人とも落ち着け。よし、【ワープアンドワー……」
「「させないぜ(よ)?」」
黒の大穴が開く瞬間、ミレディはまるで予測していたかのように大穴と俺の間に挟まるように移動、そしてハジメはまさかの閃光弾を投げ、思わず目を閉じる。
その間にハジメはどこから用意したのかわからない縄を用意、捕縛する。
目を開けた頃には微塵も身動きが取れない、芋虫状態になっていた。手際が良すぎるだろハジメ。
「……あのさ、ここまでする必要あったか?」
「イオくんが逃げなきゃここまでしてないんだけどねぇ」
「亀甲縛りにしなかっただけ感謝しろ」
「俺としては脅す方が悪いと思うんだ」
あとなんでそんな連携取れてんだよ。お前たちさっきまで殺りあってたくせに。というかハジメ何気に亀甲縛りできるのすごいな。
「冗談に決まってるだろ?冗談」
「現にここまでやってる時点で冗談に聞こえないけどな。んで?ここまでしたんだからまだ聞きたいことあるんだろ?」
「聞きたいもなにもまだ話の途中だったろうが。具体的には
「へいへい。わかりましたよ魔王様。あ、でもその前に幸利と恵里も呼んでくる」
その後、ワープホールの先から恵里に抱きつかれる幸利が発見され、シスコン化した伊織が恵里に「嫌い」と言われ絶命するという事件があったが、今回は割愛する。
「え?結局私は何のために呼び出されたの?」
「別に理由なんてないが?強いて言うなら面白そうだったから」
「……私ってなんでこんな人の元で旅しているんだろ」
トボトボ落ち込んだ足取りで帰る、哀愁漂わせるミレディに、心が僅かに傷んだ。
──────────
とりあえず地球組にはこれまでの経緯を全て伝えておいた。すると、我が家の天使である恵里が、心配そうにこちらを見つめた。
「なんか……お兄ちゃん大変そうだね」
「なんだ?恵里。お兄ちゃんを慰めてくれるのかい?」
「調子に乗らないで」
「良いね、遅い反抗期だ。俺は嬉しいよ!」
「なるほどな、これが本物のシスコンか。創作の中と変わらないんだな」
「いや清水、これは創作だ(メタ)。実際はもっと殺伐としてて、少なくとも妹持ちで一人っ子の方がよかったって言ってる奴らが大半だ」
おいそこの魔王、メタと作者の体験談は禁止だと言っただろうに。
「んで、だ。どうする?三人とも。俺は神を殺すためにもさっさと旅に出るつもりだが、ついてくるか?」
別についてこなくても構わない。だいぶ危険な旅だからな、本人の意志がないのに、連れて行くことなんてできないだろう。
……個人的には近くにいてくれると守りやすいから助かるのだが。
「……うん、僕はついていく。お兄ちゃんと一緒にいたいし」
「恵里がそう言ったんなら、俺も連れて行ってもらおうかな」
恵里と幸利の二人は即答した。概ね予想通りだ。
しかし、ハジメは苦悶の表情を浮かべていた。恵里たちと違って、彼はすでに仲間がいる。そう簡単に自分の一存で決めれるもではないのだろう。
え?クラスメイトは仲間じゃないのかって?さすがに他人とまでは言わないけど、仲間っていうほどではないだろ。
「……よし」
あらかた考えがまとまったのか、いつものハジメに戻り、条件を述べた。
「ユエたちの許可が降りるならそっちに同行する。だが、その前に俺たちの受注している依頼を一緒に受けてもらえないか?」
「そうか、わかった」
まあそりゃあね、あんな可愛い子を危険な目に合わせられないもんね。しょうがないね。ざけんなリア充。
にしても意外や意外。あの傲慢不遜なハジメさんが誰かの依頼を受けるとは。
「なんでその依頼受けたんだ?」
「ああ、人数分のステータスプレートをつくってもらおうと思ってな。ほら、俺らのメンバーって規格外が多いから……な?」
なるほど、確かにバレたらやばそうだ。特にあのシアと言ったか、彼女の身体能力には底知れないパワーがある。おそらく出自に何か問題があるのだろう。
ん?でも俺ステータスプレート作れるぞ?
「なあ、俺ステータスプレート作れるだけど」
「「「はぁ?」」」
その場にいる全員の頭の上にもれなくはてながつく。
そんなにおかしいことか?
「ステータスプレートって確かそれをつくる専用のアーティファクトが必要なんじゃなかった?」
「ああ、そのはずだ」
「お前どうやってステータスプレートを作ったんだ?」
「え?どうやってったって……【マジックメイド】」
淡い光が部屋内に注ぎ込まれ、手元にステータスプレートを作成する。
「おお、マジかよ本物じゃねぇか」
「どういう仕組みだ?」
「どうって……コピペみたいな感じで?あと多分現代武器の生成も多分可能だ」
その様子にさしもの魔王ハジメもあまりのチートっぷりに開いた口も塞がらないようだ。
「マジかよ、最高じゃねぇか!俺以外にも銃を作れるヤツがいるなんて!」
あ、違った。同類がいて嬉しくなってるだけだわ。
「てことはハジメが依頼を受ける必要がなくなったわけだが、どうする?」
「いやどうするってさすがに依頼放っておいて同行はまずいだろ。そんな長引くものじゃねぇんだ。チャチャっと終わらせるぞ。明日からよろしくな」
「なあ、それって俺たちもついていっていいか?」
話に割って入ってきたのは幸利。俺たちということは恵里も連れていくつもりか?俺個人としてはあまり危ないところに二人はついてきて欲しくはないが……。
「もちろん荷物持ちでも雑用でもいい。実際に二人の実力をこの目で見てみたくてな」
「むしろ勝手についていくものかと思っていたんだが。ハジメはどうだ?」
「勝手にしろよ。別に俺が決めることなんてないだろ」
それもそうか、と一人納得する。
「じゃ、明日町の入り口に集合な。というわけで、解散!」